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パリの聴衆って [音楽業界]

世界のあちこちの街で、結果としてやまのような聴衆ウォッチングをすることになるのだけど、ここパリというのはどーにもよー判りません。ま、ホントはどこもちゃんとは判んないんだけどね。

こちらのオケできっちり職をお持ちになって生活が長い方なんぞに言わせれば、「パリの客は音楽に関心ないからねぇ・・・」だそうな。音楽というのはあくまでも、夜なり午後のある時間を過ごすためのひとつの風景。その後に食事に行ったり、ロビーでいろんな人と会うのと込みで「演奏会」が存在している。純粋に音楽なんて聴いてる奴なんて殆どいやしない。だからこそ、ちゃんとした出し物を示さにゃならんわけです。ホントに関心ない奴は、一番良いものしか欲しがらないもん。

ま、尤もなご意見であって、たしかにシャンゼリゼやらシャトレ座なんぞの平戸間の空気がそんな感じなのは、この街は可能な限り避けている小生のような人間にも納得はいきますな。

ところがどっこい、一昨日来、既にアルディッティ、ブレンターノ、ボロディン、ロザムンデ、プラジャーク、シネノミネ、とレコード屋さんにCDがいっぱい並んでそうな名前の「一流どころ」(ブレンターノはちょっと別かな)ばかりの、一切手抜きない、アンコールまでついた時間以上のフルコンサートを朝から晩まで詰め込んでるここ、シテ・デ・ラ・ムジークの音楽堂内部は、ちょっと違った雰囲気なんでありますよ。

なんせね、楽章間で咳をすると、「シッ!」と厳しい揮発音が飛び交う。プログラムを落とした小さな音がすると、前の鶏ガラみたいなおばちゃんが怖い顔でこっちを向き、舌打ちする。切れる聴衆、というか、静かにしろとでかい声を出してまわる聴衆、という感じ。そんな空気なのに、昨晩、アルディッティがカーターの4番をやった演奏会では、なぜか2階正面にいたいけな子供2人を連れた親子が座ることになってしまい、周囲の空気が完全に固まってました。ま、子供はなーんにも感じずにつまらながって、後半のプラジャークの「死と乙女」になるまで平気でムズムズしてましたけど。周囲の緊張っぷりったら、まあ。いやはや。

そーなんです、ここの聴衆は、しっかり音楽を聴きに来てるんですわ。パリにこんな空気が漂うところがあるなんて、ちょっと吃驚。

もしや、自分の言いたいことだけは言うくせに他人の意見なんか全然気にしないパリの連中って、実はその裏返しにもの凄い権威主義的で(ディレクター氏と話しててちょっと仄めかされた、来週末に某フランス地方都市で開催される日本では異常に有名な音楽祭への皮肉なんかには、東京以上に強烈な中央集権の臭いが感じられたなぁ)、「弦楽四重奏とはきっちりと座って真面目に、静かに聴くべきだ」という意識が猛烈にあるのかしら。ま、パリの北千住か築地みたいなこんな場末、わざわざ音楽を聴く奴以外は来ない、ということらしいんだけど。

なんにせよ、「パリの聴衆は・・・」とか「ヨーロッパは日本と違って音楽が文化に根付いているから・・・」とか、それっぽい一般論がいかにえーかげんで嘘ばかりか、あたらめて思わされる事態であります。

さても、本日はツアー中で最も過酷な、綱渡り的対応が必要とされる最大の山場。果たして12時間とちょっとした時点で、無事にハーゲンQのコメントは撮れているのやら。ふううう。

さぁてと、お仕事お仕事。目の前にパリ高等音楽院を望む、冷たく晴れた朝10時前。


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