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新アルテミスQのヴァイオリン [弦楽四重奏]

当電子壁新聞で最も人気のない(哀しいかな、事実…トホホ)「弦楽四重奏」カテゴリーのミニ情報記事。

今、店頭に売ってる「音楽の友」誌に小生が「アナリスト」という肩書きを付けるのが最も正確な類の記事を書いてます。で、そこで「アルテミスQプロジェクトの失敗」という表現を使っていて、まあ、ハンブルグの某事務所が見たら怒るやら苦笑するやら、そーだよなぁ、と肩をがっくりさせるか(それだけは、ない)、なんであれ、そういう表現を使っている。

これはアーティスティックな意味ではありません。小生は商売でアーティストの中身の評価をする評論家じゃあないですから(そんなおっかないことやれんわ)、言うまでもないことでしょう。あくまでも「商業プロジェクト」としてです。最近ではロンドンの某音楽事務所が20年がかりでやった、まるでマクラーレンがルイス・ハミルトンを売り出すみたいにしてやって見事成功した「ラトル・プロジェクト」、同事務所が同様に仕掛けているが情報コントロールの変化でどうなるか微妙なところにある「ハーディング・プロジェクト」などと同じような意味です。

失敗とは、もう単純なことで、「一気にクァルテットの創設メンバーがふたり抜ける」なんてとんでも無い事態を引き起こしてしまったこと。この数年の「こいつらが次の世界一」って調子の商業展開を続ければ、当然内部に溜まってくるある種の無茶や負のエネルギーを、音楽事務所のマネージメント能力で力業で処理することが出来なかった。S社長とすれば忸怩たるものがあるでしょうねぇ。

さても、彼らがミュンヘンで優勝するプロセスを全部眺め、その後もなんのかんの眺めてきて、ある意味、「アルテミス・プロジェクト」の日本語文化圏での片棒をかつぐ結果となった小生とすれば、やっぱりこれから先も眺めていかねばなるまい。で、昨年秋に、新メンバー加入後の最初のミュンヘンでの演奏会を見物に行ったりもしたわけですわ。なお、これ、小生が「アルテミスQが好き」なわけじゃありませんからね。好き嫌いと、商売として眺めていかねばならないのは、まるっきり別です。同じ事はABQもそう。

もとい。で、そんな追っかけにご関心のある方のために、訂正記事、ですな、一種の。

この記事をご覧下さい。まだ今日明日は読めるはず。見られなくなってたらゴメンナサイ。
http://www.nytimes.com/2008/04/19/arts/music/19arte.html?_r=1&ref=music&oref=slogin

先週の土曜日、1月にパシフィカQがカーター全曲やった会場で、新アルテミスQのニューヨーク最初の公演がありました。トマシーニ御大による、そのときの批評。批評の中身は毎度ながら、「NYの丹羽せんせー」ってところかしら、王道を往く穏当な「紹介批評」です。論旨はもう題から明らかでしょう、なんせ「食材が代わっても味はそのままの場合もある」ですからね。題読んだらもう中身読む必要なし。ある種の芸だなぁ。

問題は批評の中身じゃない。ふたり代わって中身が同じ筈ないわけで(同じじゃ困るでしょ)、小生が聴いたときのような皇帝ヨアヒムを前にした安全運転の優等生演奏が変化しているのかどうかも全然判らない。まあ、それはどーでもいい。

舞台写真です。ほれ、ファーストがあの「ベルリンの麻呂」って感じのでっかい奴になってる!

へええええ、新アルテミスQ、ナターリャのファースト固定路線で行くのかと思ったら、相変わらずファーストとセカンドの交代でいくのかしら。これ、トマシーニ御大絶賛のカプースチンのクァルテットを弾き終えたところなんだろうけど(ミュンヘンでのベートーヴェンとチャイコフスキーはナターリャが頭でしたから)、新レパートリーに関してはトップ交代をやってみてるんだなぁ。

エマーソンQが専売特許みたいに始めた(わけじゃないんだけど、世間ではそう思われてる)このヴァイオリンのローテーション制度、その理由は全然アーティスティックなものじゃないんです。詳しくは何年か前の「音楽の友」に小生が前ヴィオラのヤコブセン(6月にレッジョで会える)としたインタビューを見よ、って言いたいところだが、そういうわけにもいかんじゃろ。まさか原文貼り付けるわけにもいかんし、必要な部分だけを小生がインタビュー著作権を持ってるのだろうと判断して引用すると、以下。
「(ヴァイオリン交代制度だと)確かに練習量は増えるともいえますが、慣れてくると逆に時間の節約になるんですよ。だって、現実的な話として、第一ヴァイオリンは音が高くて技術的に大変なことが多いですね。ハイドンとかモーツァルトか。ですから、第一ヴァイオリンに専念する人がいると、その人の大変さに付き合わねばならない。交代すれば、それが半分になるわけです。とてもプラクティカルなことです。(ヤコブセン)」

へえええええ、でしょ。クァルテットってもんは、商売としてずっと続けていくためには、再生音を前にスコア広げながら聴いてたんじゃまるで想像も出来ない、猛烈に現実的なアーティストマネージメント、時間マネージメントが重要なんです。

さても、再生アルテミスQ、日本へのお目見えはあるのかしら。その辺りは、まだ内緒。ってか、商売がらみの正直な芸術性評価が絡んでくるので、小生なんぞがどうこう言えることじゃない。ただ、新メンバーによるライブ録音が早速出てきているみたいなんで、気の短い人はそちらをどうぞ。シューベルトのクィンテットですから、連休の有楽町大移動音楽遊園地の予習にもなるでしょ。ミュールクとの契約があって、どうしても期間中に出さなきゃならなかったんじゃないかと推察されるお皿です。この先、新アルテミスQがヴァージンに録音するか判らない。だから、この「四重奏断章」は貴重です。弾き始めたら最後まで直すところのない、すごーくおっかない曲だし。
http://www.hmv.co.jp/news/article/804030089

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chibarei

弦楽四重奏ネタ、毎回楽しみに拝読してますヨ。
今後も沢山載せてください。^^
by chibarei (2008-04-25 14:30) 

Yakupen

chibareiさま、有り難う御座います。当壁新聞は、「読者に読んでいただく」という表の商売作文とは違うとはいえねぇ。仰っていただくとちょっとは有り難いです。SQネタは現場は常にやっていて、昨日も大阪まで来ていずみホールでベートーヴェン全曲シリーズのためのレクチャーを見物、アルモニコを久しぶりに条件の良い場所で聴き、上村さんの作品に対する本音を伺えました。これから、ボッセ先生にゲヴァントハウスQについてのインタビューです。媒体はいずみホール広報冊子。
というわけで、ま、やることはやってるんで、おいおいポロポロとはみ出した内容を中心に綴っていくことでしょう。お暇があれば眺めてやって下さい。
by Yakupen (2008-04-27 09:05) 

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