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祝! 潮浜亭 [閑話]

20世紀の初め、まだ循環してない山手線が西側部分だけ開通したばかりの頃、目白の台地が神田川に向けて落ちる吃驚するほど険しい南向き斜面の、遙か新宿から代々木練兵場まで臨む辺りで、ご幼少の腕白秀磨ぼっちゃまは大陸任侠みたいな輩と遊んでいた。なんのかんのと時が移り、百年まではいかないくらいの時間が流れ、オヤカタの館は、学習院の宿舎から、日立のプライベート迎賓館みたいな「アールデコの空気漂う洋館」になり
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20世紀、じゃなくて21世紀だった、も7年目のゴールデンウィーク最後、やっと五月晴れがやってきて、ついでに栗花粉も飛び交う初夏みたいな真昼、借りてきたなにやらみたいな格好したやくぺん先生夫妻が、目白旧近衛亭のバンケットホールの真ん中の席に座ってる。

そお、今日は目出度い結婚式。それも、我が佃厄編庵に出入りしては、酒飲んだり、本棚ひっくり返したり、どうしようかと己の未来に悩みこんだり、果ては泣きそうになったり、とうとうオフィスで寝ちゃってたりしてた若いもんら(若くない、なんて言わせません!)が、何の因果か新たに家庭を持ち、しばし湾岸は木場の辺りに住みつこうか、ってことになっちゃったんだもん。いやぁ、目出度いの目出度くないのって、こんなに目出度い話もそうそうあるもんじゃあないわいな。

目の前じゃ、色打ち掛けの袖紮げた新婦が、あんまり調律具合はおよろしくないピアノに向かって、新婦妹様と連弾してます。とっても怪しいフランスの楽譜が開かれ、鳴ってるのはベートーヴェンの作品18の5です(どっちかってと、セプテットの変奏楽章、って感じだけどね)。ちょっと長かろうが、著作権なんぞないし、ご祝儀気分なんだから、貼り付けちゃいましょ。ほれ。
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ミロQの作品18全曲演奏会で衝撃を受けた、だからこの席で是非とも皆様にご披露したい、って弾き始める新婦の気持ち、敢えて目白の近衛御殿で八百万の神様の前に御祓いて、嫁さんのピアノ叩いてる姿を特等席でニコニコな眺めてる新郎の気持ち…そんなもん、判る奴だけ判ればれば良い。

何の祝日だか良く知らん初夏の午後、ラインだかドナウだかのノーテンキな船頭小唄が呑気に流れる。ずっと昔むかぁし、この場所で、秀磨も聴いたかもしれない、もしかしたらピアノを前に歌ったかもしれない、素直で陽気なベートーヴェン。

素っ頓狂なほどの素直さが普通の日々になれば、それはすごおおく幸せなこと。嫁さんの隣で、ノーテンキな小唄に酒飲んで、酔っぱらって寝ちゃえるようになったなら、もーこの世は天国!だからさ、今日の良き日、厄編庵主たるあたくしめもなーんも考えず、素直に言いましょ、「潮の香りに誘われて、わけのわからぬあいつらこいつらがふらりふらりと寄ってくる、そんな庵を結んでくだしゃんせ」ってね。

ほらほら、潮浜亭のおかみさん、旦那、早速、酒飲んで寝ちゃってるよ!

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コメント 3

すみこ

楽しそうですねー。洋館で打ち掛けでベートーヴェンというのがまたなんとも奇抜な組み合わせ。ご本人達からいろいろお話を伺えるのを楽しみにしています。
ところでやくぺん先生、今って21世紀じゃなかったっけ??
by すみこ (2008-05-07 15:36) 

Yakupen

おお、そうです。直しておきます。これから新婦がいろいろ荷物取りに来ます。パリではよろしく。
by Yakupen (2008-05-07 16:12) 

toty

歌舞伎座で第九の折はお世話になりました。

この目白のお館、学生時代を送った親戚、管理人をしていた知人もあり、

建物がずっと存在するということは、歌舞伎座だけでなく、さまざまなところで郷愁を引き起こしますね。
昔の話と言うと、しゃしゃり出て申し訳ありません。
by toty (2008-05-07 19:09) 

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