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『Beyond Talent:日本語版』出版~終わりと始まり [音楽業界]

ニューイングランド音楽院キャリアサービスセンター・ディレクターのアンジェラ・ビーチング氏の労作"Beyond Talent"の日本語版、正確には「日本版」が出版されました。最終の印刷課程でアクシデントがあり、出版がちょっと遅れましたが、なんとか無事に出版のお知らせが出来るようになりました。
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この書物日本語版については、こちらをご覧あれ。ここに全てが書かれています。
http://sqcafe.at.webry.info/200807/article_1.html

せっかくだから、こちらが著者と訳者。去る1月、NYCはヴィレッジで行われたNetwork of the Music Career Development Officers' Conference会場にて。日本語版カバー用に撮ったものだけど、結局使わなかったんで、もったいないから貼り付けます。えいっ。なんかこのふたり、醸し出す空気がそっくりなんだよねぇ。
IMG_2450のコピー.jpg
なお、訳者によるフォローアップ・ブログも、当電子壁新聞の左下の「お友達ブログ」欄に加えておきます。
http://beyondtalent.blog.so-net.ne.jp/

ある意味で、極めて特殊な読者層が対象の著作です。その題名が示すとおり、「才能の向こうに」です。つまり、いわゆるクラシック音楽という世界でプロとしてやっていけるだけの才能があり、日本国内(正確には、日本の国内法が適応される文化圏)で音楽で喰っていきたい人は、どのようにこの社会で行動していくべきかを、極めて具体的に示している。御上が芸術家に金を出すのは当然と信じていらっしゃるヨーロッパ系の方なら、「いかにもアメリカっぽいノウハウ本」って皮肉るでしょね。

当電子壁新聞を立ち読みなさっているような音楽業界関係者の方とすれば、「プロ志望の演奏家の卵はこうやってこっちに仕掛けてくるぞ」という相手の手の内を知るためにも、絶対に読んでおかねばならん本です。一般の音楽ファンの方とすれば、「ふううん、音楽家ってのも大変なんだなぁ」と思いつつ、自営業者さんやら個人企業家さんならば、「おお、こりゃ俺たちと同じだ」と思ったり、「へえ、音楽家ってのはそんな風になってるのか、俺たちの世界でもこのやり方は応用できるぞ」と思ったりして楽しめるかも。

なんにせよ、音楽家がどうやって自営業として商売していくか、現時点では日本の学校ではなーんにも教えてくれないんだから(そんなことは考えない方が偉いと思ってる先生たちは流石にもう現役ではいないでしょうけど)、全てのプロを目指す音楽家は、直ぐに予約しないとまずいでしょーねぇ。勿論、その親御さんたちは必読。

とはいえ、この本を読んで、「よーし、こうやれば良いのか」と思えるかどうかは…あたしゃ、判りません。「プロになるには、上手な上に、ここまでやらねばならないのか」と暗澹たる気分になる、って方が殆どなんじゃないかな。「それだったらあたしはやっぱり固い職業の人のお嫁さんになって、ピアノの先生でもしていましょ」って思うかも。
でも、この本を手にすることで「自分には音楽を職業とするのは無理だ」ときっちり悟るのも、とてもとても大事なことです。だって、いままではだーれもそんな冷然たる事実を事実として示してくれようとしなかったんだからね。←極端に言えば、日本とか韓国のクラシック音楽業界は、そういう風に思わせないことで業界の下部構造を支えるようになってます。これはまた別の話。
例えば、当電子壁新聞にしばしば登場するクァルテット・エクセルシオの「エク・プロジェクト」は、正にこの書物に書かれていることを真っ正面から実戦しようとしている、日本ではドンキホーテのようにも見える珍しい努力。その実践のために、彼らは「実業家」としての仕事にどれほど貴重な時間を割いていることか。

ちなみにこの「日本版」は、武藤舞さんに捧げられています。彼女はこの書物の出版を心待ちにしているひとりでした。
http://yakupen.blog.so-net.ne.jp/archive/20080609

この書物がゴッソリ佃厄偏庵の土間に積み上げられた日に、拙著の絶版が決まり、ここに庵を結んでいる理由だったアートNPOと厄偏庵との直接の関係も本日7月末日を以て終わりとなる。

今後、当電子壁新聞の記事内容も、当然のことながら、変化するでしょう。ま、そーなったらそーなったで、わしゃ知ったこっちゃないぞ。どーせ「書いてあることは嘘ばかり」のヨタ記事アカ新聞なんだからね、悪しからず。なんっつたって、何人がよもーが一銭にもならん、つるつるてんの無料メディアなんだもん。

終わらなきゃ、始まらない。「いつまでも続きます」なんてしゃーしゃーと言う奴や組織は、あたしゃ一番信用しない。

だから、終わりましょ-、おわりましょ。で、また、始めましょ。うん。

佃厄偏庵に出入りしてる皆々様、まだ来たかったら、いつでも勝手に酒抱えておいでなせー。おっと、4日までは住吉さんの例大祭だぞ、法被背負って足袋履いておいで。嫁も新職場は6日からと決まったんで、ずっと祭りに参加してまっせ。まずはとにもかくにも、祭りだ祭りだぁあああ!

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皇帝きむち

いつも楽しく読ませていただきます。この本さっそく注文しました。読ませていただくのが楽しみです。音楽家が自営業としてやっていく・・・・我が師黒沼俊夫も考えて実践していましたね。参考にさせてもらいます。
by 皇帝きむち (2008-09-04 21:34) 

Yakupen

皇帝きむちさま、関西はその後いかがでしょうか。「大阪クラシック」だかで、みんなが少しは大フィルや音楽のあり方を考えてくれるといいんですけど。

なーるほどねぇ、考えてみれば、「日本で唯一弦楽四重奏で喰えた団体」というのは、意識して自営業をやってた、ということですもんねぇ。尤も、小生など、どうしても黒沼夫人の苦労話の方が先に頭に浮かんでしまうので、日フィルを辞めたあと、しんどい生活をせねばならなかった家族のことを思ってしまい…

なんであれ、ここで黒沼先生の名前が出てきて、いろいろばらばらなものがまたひとつの流れにつながって見えてきました。ご指摘有り難う御座います。黒沼夫人にも久しぶりにご連絡してみようかしら。
by Yakupen (2008-09-05 00:40) 

皇帝きむち

おお、コメントありがとうございます。「大阪クラシック」では友人が多数出るんですが、これを機にみんなが考えているかは・・・・・どうなんでしょうね?

 黒沼先生の奥様の苦労話・・・・よくは知らないのけど、でもきっと苦労されたんでしょうね・・・とは推察します。 学生時代にはとにかく暖かい先生としか見えていなかったけど、よく考えてみたら凄い事やっていたんや・・とはあの本(柏の森書房刊)から改めて全体像知りました。私確かに不肖の弟子です・・。「葬儀」の写真の端に私も写っているのは唯一の誇りです。
ミュンヘンでのレポート楽しみにしています。
by 皇帝きむち (2008-09-05 23:23) 

さら

はじめまして

アメリカで音楽の勉強をしたあと、九州の片田舎で音楽講師やら英会話講師やら合唱指揮者などしながら、虎視眈々と声楽家としてのチャンスを伺っているものです。

『Beyond Talent』をたまたまアマゾンで見つけて購入し、訳者の箕口氏のサイトにアクセスし、巡り巡ってこちらのサイトに行きつきました。(2009年から更新がないようですが、何かご存じでしょうか?)

ここ5年ほどは古楽のほうにも足をつっこみ、「ゆふいん音楽祭」のことを知ったのと、音楽祭の終了を知って衝撃を受けたのがほぼ同時。サイトを拝見するとやくぺン先生がそれに関わっておられたのを知って、またまたびっくり。

とりとめのない文章になってしまいましたが、色々と教えていただき感謝しています。ますますのご活躍を!
by さら (2013-05-06 22:17) 

Yakupen

さらさま

『びよんどたれんと』、通称ピンク本、売り切れになって、著者も改訂版を出しているので改訂をせねばならないんだけど、箕口さんが忙しすぎて出来ないでいるうちに、昨年の秋に倒れてしまい、この4月まで仕事を休んでました。どうなってるの、というと、本人パニックを起こしますので、お許しを。一応、なんか考えてるみたいですけど。

ゆふいん音楽祭本はなんとか6月までには脱稿します。秋の初めには出します!尻を叩かれてます。スイマセン!

by Yakupen (2013-05-07 13:08) 

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