SSブログ

鵠沼室内楽愛好会が会場を探しています [音楽業界]

当私設電子壁新聞開設以来、最も切実で、最も重要な呼びかけです。

神奈川県藤沢市鵠沼海岸を拠点とする「鵠沼室内楽愛好会」が、2010年初頭からの会場を探しています。
この団体。http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurobe56/ksc/ksc.htm

日本を代表する地方民間室内楽主催団体のひとつです。

世界中のどこでも、室内楽というジャンルを支えているのは、それぞれの地域に根付いたローカル民間室内楽愛好団体です。要するに、その地域の音楽が本当に好きな人たちの集まり。50人から100人程度の規模の会場で、大きな宣伝もすることなく、きちんとした室内楽の演奏会が月に1回程度開催される。聴衆は基本的に地元の音楽愛好家だけだけど、でも聴衆の質は凄く高くて、好い加減な手抜き演奏などすると同じような規模の音楽協会ネットワークで瞬く間に噂は広まり、その演奏家にとって致命的な打撃ともなり得る。

アメリカやドイツ、イギリスの室内楽奏団体は、年間数回の演奏会のうち、そういうところでの仕事が8割方。そんな厳しい室内楽愛好家の前で腕を磨いていく。ウィグモアホールやらベルリンフィルハーモニー室内楽ホール、コンツェルトハウスのモーツァルトザール、ムジークフェラインのブラームスザール、カーネギーのワイルリサイタルホール、ボストンのジョーダンホールなど、かつての東京カザルスホールなど、全国紙の評論家が来るメイジャーな室内楽会場での演奏会など、年に数回しかありません。

つまり、殆どの室内楽とは、そういう場所でやられ、受容され、人々の心を豊かにしている。そして、室内楽団体というのは、そういう場所で本当の力を磨いてゆく。コロンビア・アーティストやアスコナス・ホルトはレヴァインやラトルをスターに仕立てることは出来るかも知れないけど、業界権力者なんぼのもんじゃ、と自分らで勝手に好きな演奏会をつくってるこういう地方音楽協会の猛者の前では深々と頭を下げるしかない(それが判っていないマネージャーなんぞ、所詮はチンピラの小者です)。ソニア・ジメナウアー事務所なんかは、こういう小さな場所をとても大事にしているから、ヨーロッパの室内楽総元締めになれている。財政的にも地方文化財団や教育委員会など税金を用いる公的な文化支援と無縁で、地方権力者が文化なんぞいらんと暴れようがどこ吹く風、音楽だけ純粋に展開する、言葉の本来の意味での「ムジークフェライン」。

日本にも、数は少ないながら、そんな場所がいくつかあります。続いているものもあれば、何度かの試みで頓挫したものもある。音楽祭のような形に発展したものもあれば、月例定期をやる音楽協会として安定してるものもある。自分でホールを持ってしまったルンデやアートスペースオーみたいなものもある。晴海のNPOトリトン・アーツ・ネットワークがトッパンホールや王子ホール、紀尾井ホールなんかとちょっと違う感じがするのは、あそこの主催公演が「ワールドワイドに眺めた晴海のローカル室内楽協会」を目指した実験でもあったからです。

もとい。そんな地方室内楽協会の東の雄、鵠沼室内楽愛好会が、現在発表されている11月までの演奏会をもって、長くホームベースとしていた鵠沼海岸のラーラ・ビアンケを離れることになりました。とても残念ながら、会場側の都合でこの場所での開催が不可能になるとのことです。これまで地域の音楽愛好家の自主的な集まりに無償で会場を提供下さったレストランには、本当に頭が下がります。藤沢市の市民文化栄誉賞かなんかをさし上げたいくらいですね。こんな場所でした。ギッシリ、でしょ。
IMG_1759.jpg

というわけで、来年からの会場が必要になりました。現在、一生懸命探している最中とのことですが、なかなか難しい。

「湘南近辺ならそれこそいくらでも小さな市民会館があるじゃないか、そのための市民会館だろう」との意見があるでしょうねぇ。ですが、このような民間地方音楽協会にとっては、そういう場所は案外使いにくいのです。なによりも、このようなサロンコンサートには広すぎる。100人を越える聴衆を集めるのは、こういう民間地方室内協会には無理なんですね。客を集めることが目的になってしまい、本末転倒になってしまう。
それに、どんなに小さいサロンでも、来演する演奏家は「世界で活躍する」人たちです。ですから、ブッキングは最低でも2年先くらいまで決まっていて、日程も1年前には決まっている。だけど、地方の公民館などはギリギリにならないと借りられるかどうか判らないし、それに特定の団体が毎月1度借りたりすると、他の市民から「差別だ」という声が上がりかねないので、優先的に貸して貰うことは不可能。なんせ、自治体の主催じゃない、あくまでも民間団体ですからね。そんなこんなで、日本のシステムでは、市民会館や公民館は民間音楽協会には極めて使いにくい場所なんですな。

湘南地区の皆々様、皆様の近くに、100席程度までが収容できる空間で、月に1度、夜を定期的に開放でき、ある程度の演奏会設備を整えられるような場所はありませんでしょうか。教会、大きな家の広間、レストランのボールルーム、などなど、どんな場所でも結構です。遮音は問題ではありません。なにせ鵠沼のこれまでの会場は、上空を厚木基地に向かう米海軍機が飛び、前の道を江ノ島に向かう車が轟音を立てていた。それでも、目の前で弾かれる音楽は、そんな騒音を圧倒していたんですから。

こんな場所がある、と思われる方は、是非とも当電子壁新聞コメント欄か、小生の個人アドレスにご連絡下さい。そのまま直接、鵠沼楽友協会関係者の方に情報を伝えます。

鵠沼室内楽協会が無くなるなんてことになれば、カザルスホールが潰されるどころの騒ぎではありません。名古屋にどんなに素晴らしい小規模ホールが出来ようが、ルンデが無くなった穴が埋められていないように、東京圏の室内楽に大きな穴が開いてしまいます。よろしくお願いします。

ちなみに鵠沼では、今晩も演奏会があります。原田禎夫さんらが、ツェムリンスキーのクラリネット三重奏をやります。原田さんも、「鵠沼がなくなると本当に困る」と嘆いていらっしゃるそうです。ご近所のお暇な方は、今からでも遅くなりませんので、お急ぎあれ。

nice!(0)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 3

Yakupen

壁新聞前をお通りの皆々様

何人かの皆様から、「こんな場所がある」、「ちょっと遠いかもしれないけどこんなところでサロンコンサートをやっている」などの情報を、メールで直接お寄せいただきました。有り難うございます。上の写真でお辞儀しているH先生にお伝えします。

なお、今後もこんな場所がある、という情報はお寄せ下さいませ。この先、しつこくアップしていきます。こういう記事にはウェブログというスタイルは向かないんですけど、なんとかするしかないでしょう。宜しくお願いしますです。
by Yakupen (2009-02-18 12:59) 

佐藤裕志(さとうひろゆき)

初めまして、湘南鎌倉クリスタルホテルの佐藤と申します。
この度、ホームページを拝見しメールを差し上げます。
場所はJR藤沢駅から徒歩5分でとても便利な場所にございます。
当ホテルはヨーロッパの雰囲気を持ったクラシカルなホテルで、開業25年を迎えます。
室内楽の会場をお探しとのことですが、会場として使用できる広間はは、いくつかご用意できます。
また当ホテルは、パイプオルガンを備えたチャペルも併設し、ここでのミニコンサートも今後積極的にご活用できるよう考えています。
先ずは、会場をご確認いただきご判断していただければ幸いに存じます。
イベントの開催にあたっては、地域文化向上に積極的に関わっていく所存ですので、何卒よろしくお願いし申し上げます。
h.sato@raphaelchapel.com
by 佐藤裕志(さとうひろゆき) (2022-03-07 15:42) 

Yakupen

佐藤様

返信遅れまして、スイマセン。ご覧のように、当電子壁新聞は2005年の創刊時からの過去原稿が全て読めるようになっており、そこがFacebookやtwitterなど「消えてしまうこと」が前提のメディアとの大きな違いとなっております。検索に関しましても、発足当初から意図的に伏せ字に近いやり方を使い広く一般的な検索からは逃れるやり方をしておりますが、この記事のように「可能な限り広く知ってもらいたい」というものは、様々な検索に引っかかるように記してあります。

というわけで、鵠沼騒動の記事に反応いただき、有り難く存じます。ご存じと思いますが、今や大人気の小規模個人サロン型会場コンサートが話題になる前から続く鵠沼室内楽愛好会、この会場問題はその後なんとかクリアーされ、現在も鵠沼海岸駅から徒歩10分ほどのレストランで続いております。小規模サロン型、個人持ち出しOKの趣味のプロデューサー型ではない鵠沼ですから、今後も何が起こるか判りません。ご関心をお持ちいただき、ありがとうございます。沼南地区には演奏家も音楽消費者も多く、様々な可能性がある場所ですから。
by Yakupen (2022-03-25 08:01) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0