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西村朗のクァルテットを聴きましょう [弦楽四重奏]

宣伝です。まあ、この電子壁新聞を立ち読みなさってる方々には、もう今更だと思うんですけど。

明日の夕方6時から、晴海のトリトンで、エクが西村さんの1番と2番、それにシュニトケの2番と3番をやります。ちゃんとやります。あることでご心配なさってる方は、心配する必要ありません。大丈夫ですから。

先週のいつだったか、このところの前頭葉の限界を超えた酷使で座ってるだけで涙が出てくるような状況になってたもんで、いつのことやら記憶が定かでは無いんだけど、ともかく、豊洲運河を越えた向こうの大学で、エクが実演をしながら西村さんが自作を説明する会がありました。こんなマニアっぽい集まりにどれくらいの人が来るのか、正直心配だったが、驚くなかれ100人弱くらいはいらしてたんじゃないかしら。所謂「現代音楽オタク」系の人たちばかりではなく、かなり多彩な客層だったのが印象的です。

やっぱりNHK効果なのか、はたまた「カザルスホール・ティータイムコンサート」以来の20年に亘る地道な積み上げの成果か、西村さんは今や日本で一番話すのが上手い作曲家さんと言えましょう。だじゃれや内輪受けじゃなくて、ホントに作品に関連したかなり面倒くさい話をしながら、自虐と誇りを笑いに塗しつつ、それと判らせません。あの話をお聞きになった聴衆は、西村作品の難しさと、ある意味での猛烈な判りやすさの秘密を知ったような気がしたんじゃないかしら。

ホントはここに採録したいんですけど、そんなことする元気も暇もない。で、幾つか記憶からポイントだけを拾っておきます。再確認してないので、データとしては信用しないでください。引用したりしないように。

●西村さんは第1番以前に24音技法による猛烈に頭でっかちで難しいクァルテットを書いていた。で、その一部が、第1クァルテットのある部分にそっくり数ページ収められているそうな。こんなもんは誰もやれんだろうと思ってたら、エリザベート国際コンクールの作曲部門でグランプリになっちゃって、まさかまさかパレナンQが音にしてくれた。それを聴いてこれはいかんと思い、改訂版を造ったそうな。今回演奏されるのは、楽譜が簡単に買える改訂版の方です。

●第2番に関しては、第1番を演奏したアルディッティが「ともかく難しい曲を作ってくれ」と言われたので勢い込んで書いた、というのは有名な逸話でありましょう。耳で聞いているとノリが異常に良いケチャの部分、スコアでみるとパート毎に別のリズムをやってて、それが合わさって逆に単純なリズムに聞こえる、という殆ど無意味といえば無意味な書き方がされてます。その辺りの分析をさらりとやってくれる語り口は、流石に御達者でありました。なお、アーヴィンは「この曲を弾くと真っ直ぐ歩けなくなる」とぼやいていたそうです。何カ所か意図的に仕掛けた難所があり、いきなりピチカートになる部分もそのひとつ。これまでここを完璧に弾けたのは中国の団体だけだそうな。へええええ。

なお、エクの演奏に関しては、「こんな響きのないところでやるのは猛烈に大変。よくやってくれました!」と大絶賛でした。

ちなみに、シュニトケと一緒にやるのはどんなもんじゃいな、と尋ねたら、「そりゃ僕の曲だけでやるべきでしょ。相手が死んじゃってるからまあいいけど」とのこと。あ、この言葉、書き下ろすと猛烈に不遜に聞こえますねえ。無論、冗談ですから。

てなわけで、お暇な方も、お暇じゃない方も、明日の夕方はトリトンにいらっしゃいますよーに。断言します、予習は要りませんよ。よっぽどパワーのある曲ですから、なにしようが、ライブを聴いたらぶっ飛んじゃいます。現代音楽と言われる演奏会には異例の、猛烈に純音楽的な娯楽性の高い一晩になることでありましょー。

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コメント 3

北

ああ上野の開演が2時ならば間に合うのに。
悔しいっす。明日は上野から新橋に向かう電車の中でもっと悔しくなるに決まっているのが、本日ただいまの悔しさを増幅させます。

西村明は打楽器(含むピアノ)の人という印象が強いので、弦楽器でどうなるのかナマでききたかったです。
おそらく頭だけでなく身体の内側ぜんぶがグワングワン共鳴している状態でロビーによろよろと這い出て一息、となるのでしょう。なんだか予想できるだけにますます悔しい。
by 北 (2010-02-05 23:32) 

Yakupen

北さま

上野は奏楽堂で若者達ですか、それとも駅前の「首ちょんぱ」ですか。

今世紀に入って、それまでは集客が悪いと避けられていた「都心部ホールでの週末の演奏会」が際立って増えてきました。このSQWだって、最初は「ノー残業デー」の筈の水曜日にやってたのだが、評価員会から集客が余りにも悪すぎる、と毎年指摘され、じゃあ週末なら良いのか、と移動させたわけです。御陰で、バッティングが猛烈に多くなり、逆に来られない、という意見も出ている。

こればかりは抜本的解決策はないですねぇ。主催者側とすれば、常に悩みながら、周囲の状況を眺めて一歩先の手を打っていく他にはない。聴衆とすれば…諦めるか、怒るかするしかないわなぁ。

by Yakupen (2010-02-06 16:49) 

北

書かずもがなのお返事ですが、駅前のほうでした。開演アナウンスのイントネーションが「カルメル改修童女の…」でした。

終演の拍手もそこそこに東京文化会館5階の遮音扉をエイヤと開けてから30数分後には、第一生命ホール2階ロビーの給水器で口を湿らせることができました。その気になれば案外近いですね。勝どき駅から坂の手前まで走りましたけど。
ホール間移動のレコードホルダーとか、我こそはハシゴの帝王なり、なんて方はいらっしゃるのでしょうかいませんよね。


~~~~~~
チラシと曲順を入れ替えていただいたおかげで西村明は2曲とも聴けました。シュニトケの絶望的な空洞感もかなり好きなのですが、どちらを選ぶかというと今回は絶対に前者なので有り難かったです(シュニトケも1曲目の第2楽章あたりからTVで聴けました)。
とにかく澄んだ演奏でムッチャクチャ良かったっす。


室内楽は曲順の入れ換えもききますが、オーケストラはそうもいかないでしょうね。来月のようにインバルとスクロヴァチェフスキーが同日同時刻にヨーイドンで同じブル8を始める、なんてのはもうお手上げです。
Twitterでどこまで進んだかを実況しあう位しか、溜飲を下げる方法を思いつきません。

与太話、失礼しました。
by 北 (2010-02-06 22:34) 

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