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拠点劇場の数は… [音楽業界]

毎日新聞の本日のウェブ版に、このような記事が上がりました。書き手の名前をウェブの海で検索するに、書いてるのは演劇系の文化部記者さんみたい。記者が自分のジャンルをやってれば本が出せた最後の世代の人ですね。
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20100205k0000m070112000c.html
取材した先がミエミエの記事で、ある意味、とっても正直な記者さんなんだろうなぁ、としか思えぬわけですが、ま、情報の出所が判らんよりはよっぽど良い。

この電子壁新聞の前に立ち止まってるような輩には余計かもしれんですけど、蛇足ながら一応、説明をしておきます。
この新潟のタンツ・カンパニーの主催者さんは、地方文化振興業界というべきか、公立芸術カンパニー業界では有名な若きカリスマ論客さんです。きっちりと纏まったことを喋ってくれるし、結果も出している、最も取材がしやすい相手。新政権の中枢がイメージする「あるべき日本の文化政策」のひとつの例として、最も成功しているカンパニーの方であります。他の方々はみな演劇業界の超有名人さんですから、説明は不要でしょう。

劇場法の議論を地域振興の話にまんま引っ張ってくるなんて、小生にはとてもじゃないけど考えつかぬなぁ、と勉強させていただきました。皮肉じゃないですよ。記事の最後の「地域には潜在能力があり、個性的な芸術文化を競演させることは十分可能なのではないか」なんてご意見は、小生とすれば「空は青いのである」とか「冬は寒いものだ」とか、当たり前すぎて誰も言わんような間抜けなことをどーどーと仰ってるようで、アッと驚かされるわけでありまするが…3秒くらい立ち止まって考えるに、ことによるとそれが世間一般の人々のご意見なのであろーか、と大いに反省しないでもないであります。はい。

小生にとってこの記事で興味深いのは、今、巷に売ってる「ストリング」誌に小生が書いているこの数ヶ月の「仕分け」騒動の纏めレポートで取り上げた文部副大臣の意見と、平田オリサ氏の発言とが、微妙に違ってるところ。1月半ばの時点で、副大臣は「マニフェストでは拠点劇場を300としているが、まあ80くらいが当面の目標」と仰ってました。この毎日の記者さんの記事では、内閣参与のオリザ氏は拠点劇場を30から50と仰ってますな。

あれ、また減ったんかいな。

30くらい減っても良いじゃないか、政府内部での意見の違いだろうに、と思われるかもしれないけど、ところがどっこい、この30が大問題なんですは。音楽業界、では。

はっきり言います。地方の公共劇場は、この記者さんが仰るような劇場法の制定に向け、様々な競争を始めています。これは既に政権交代前から起きていたことです。政権交代で一気に現実性が高くなってきただけのこと。この記事で出て来たようなディレクターさんも、劇場法が制定されたときに自分らの劇場が拠点団体として認定されるための先走ったメディア・プロモーションを行っている、とも言えるのです(もう定年の記者さんですから、そこまで判った上で書いているのか、なんとも判断出来ません)。

そんなの大きな流れの中で、音楽業界はすっかり取り残されてるのが現状であります。日本中の公共民間問わず音楽ホールの中に、劇場法で制定される拠点団体、この記事の言い方をすれば「作る劇場」、となることをはっきり目的にして動いているところは、殆ど皆無です。

音楽業界的に言えば、口は立つ、政治はやれるの演劇の連中を前にして、拠点をむしり取れる程の実績のある音楽堂は余りにも少ない。いかにもな水戸とか、兵庫とか、びわ湖とか、千歩譲って三鷹とか、演劇とセットにしていわきとか、オケを音楽ホールに組み込んじゃって金沢とか、音楽祭一本槍で宮崎とか北九州とか札幌とか松本とか…せいぜい80中の10くらいが音楽堂への割り当て枠かしらねぇ、という感じだった。あ、もうここに列挙しただけで10じゃないの。

それが50になっちゃうという発言を見るに、なんじゃい、平田オリザ氏は音楽関係を全部切るつもりなのか、と勘ぐってしまうわけでありますよ。NPOや財団が運営する民間ホールを含め、音楽堂は完全に蚊帳の外になった、と考えればなんとなく帳尻が合う数字ですしね。

だとしたら、「仕分けは文化予算をカットするのか」どころの騒ぎじゃあないんです。なんせ「仕分け」は法的拘束力も何もない、単なる提言に過ぎなかったことは今や誰の目にも明らかだけど、これは政府中枢に繋がる内閣参与の発言なんだから。

ってなぁ、これじゃあ小沢幹事長の言動に右往左往するのと同じじゃんか。いやはや。

今ここで記しているのは、自民党はとっくに「右の共産党」的趣味の政党となり、ミッチー息子とマスゾエの大メディア絡めた権力闘争に勝った方が「みんなの党」党首として禁断の共産党・社民党・公明党との連立で民主党から政権を奪取するか、というような状況になった頃にやっと業界で騒ぎになるかならないかの、先走りすぎた憶測話でありました。

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アホストロ

これってもしかしてお呼びじゃない?\(^O^)/

劇場法ねぇ・・・そのカネはどこからとってくるんでしょうか?というマトモな感想は。。。お呼びじゃない?それならば、

日本放送協会第1110回経営委員会議事録
http://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/giji/giji_new.html

には、私なんかの戯れ言のレベルを越えたご発言が委員から出されていますね。

---------------------引用
私は、今の若者に徴兵制はだめとしても、徴農制とか、徴林制とか漁村に行けとか、そういう法律で、テレビの番組も何時から何時まできちんと見るということにすればいいと思います。この番組を見なければ会社に就職させないとか、抜本的に政策を変えないと、日本は本当に大変なところへ行くのではないかと思います。したがって、そういう面でNHKの役割は非常に大きいので、許される範囲を超えるものもあると思いますが、もっときつい方策をとらなければならないところまで来ているのではないか思います。
---------------------

「劇場法」の行き着く先は、「徴客法」でしょうか?毎年収入の●パーセントを劇場とホールに使えっちゅう法律・・・やっぱり、お呼びじゃない?

引用まずければ削除してくださいませ。

by アホストロ (2010-02-07 17:32) 

Yakupen

アホストロさま

この電子壁新聞の小生の本職へのフィードバックは、「わしらが当たり前に考えていることが、あんがい世の中の人々には伝わっていない」ということを知ることにあります。

劇場法につきましても、業界ではもう10数年来ずーっと議論になっていることなので、誰でも知っているように錯覚してしまう。まずは「劇場法とはなにか」からきっちり話を始めないといけないのだなぁ、とあらためてお教えいただいた次第。

そのうち、劇場法とはなんなのか、きっちりやりましょうかねぇ。って、こんな電子壁新聞でやることではないから、表のメディアでやらんといかんなぁ。これは音楽雑誌の編集長さんといろいろ話してみます。

凄く簡単に言えば、今の日本国では、法律的に「劇場」の定義がないのです。図書館とかミュージアムには、国による規定があり、それを満たしていない私設は「自称図書館」であり「自称美術館」なのですね。ところが、そういう言い方をすれば、全ての音楽ホールが「自称ホール」だし、全てのオペラ劇場が「自称オペラ劇場」なんですわ。まずはそこんとこをきちんと定義しないと、国が劇場や音楽堂を助成の単位にしたくてもできない、ということです。

長くなりそうなんで、これまで。

by Yakupen (2010-02-07 20:23) 

北

立て続けの書き込み、スミマセン。

えー斜め読みではありますが、なんとなく某誌の
「使命をはっきりイメージさせななーんも申し開きでけまへんで」
「あんたはんはそう仰るがな(茶をすする)、今までこれで回ってきたんや、申し開きせんならんようなやましいこともしとらんさかいな、別にええやろ」
というやりとりを連想いたしました。


「空は青い」「冬は寒い」を生まれてこのかたマヤカシの次元で(たとえばTVの天気予報やローカルニュースで流れる映像)のみ“学習"しておられる方々も昭和30年代以降の首都圏には多々おられる訳で、こういう身体感覚の違いこそがトーキョーと地方の根本的な差異はないでしょうか。
何かのときに身体感覚に立ち戻り、リスタートできるという意味で。


まあ地方は地方でタコツボ的鬱屈と怨嗟が渦巻いている訳ですが。
農地解放で事実上マッカーサーから貰った田んぼを先祖伝来のものと「錯覚している(確かに耕してましたけどね)」年寄りと変わらないような気もします。

支離滅裂ですね。すみません…でも書かせてください(ぺこり)
by 北 (2010-02-09 01:48) 

Yakupen

北様

正直、仰ることを完全に理解しているかどうかよーわからずに記すのですが…この毎日の演劇記者さんの「都会の人の感覚」について論じ「こういう感覚にもリアリティがあるんだよ」と仰ってるのだと理解しますれば、なーるほどねぇ、という感想を持たせていただきますです。

ただ、あくまでも小生が感じるところでは、この記者さんの意図はともかく、「地域」というのは別に「東京首都圏や関西圏ではない場所」ではなく、東京の中やら首都圏の中にもいっぱいあると思うんですわ。具体的には、小生が今世紀の始めに佃という「銀座東京駅から一番近い田舎町」に庵を移してきたのも、それこそ歌舞伎座があり明治座があり、王子ホールがありヤマハホールがあり有楽町の国際フォーラムがあるこの地域を、「ローカル」であり「地方」であると発想するための実践でもあったわけです。とーきょーにはとーきょーローカルの問題がいっぱいある、ってこと。

小生が個人的にある程度以上ローカルな状況が感覚的に判るのは、なんのかんの20年近く広報を手伝った湯布院だけなんですけど…うううん、どうなんでしょうねぇ、なんせ「地域の潜在能力を引き出す」ということでは先駆的な場所で、その失敗や問題も先駆的なのかもしれないので、この記者さんの考えてるような「地域」じゃあないのかもしれないし。

なんだか訳の判らんお返事でスイマセンです。

by Yakupen (2010-02-09 09:45) 

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