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舞台美術家としての岡本太郎 [閑話]

ジャンルがないので、「閑話」に入れておきましょか。

昨日は岡本太郎生誕100年お誕生日を生田緑地の岡本太郎美術館で祝うことになってしまい、なんとも目出度い1日でありました。
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どうも、記念年をネタに岡本太郎ブームを起こしたい人達がいるみたいで、あっちこっちで芸術爆発やってるみたいですねぇ。どうなんでしょうかねぇ。正直、岡本太郎とか成田享とかって方々のお仕事は、1950年代から60年代に日本国に生まれてメディアの奔流が始まった中を生きて来ちゃった人間にしてみれば、もう血となり肉となってる造形であって、例えば「太陽の塔」の顔とかパイラ人の目ん玉とか、エレキングやらジャミラやらダダやらが存在しない世界なんて、想像もつかない。空に太陽があるように、台地に緑があるように、この世に存在しているモノである。音楽で例えれば、第9の終楽章のメロディとか「カルメン」前奏曲とかが存在していない世界なんて、思いもできないでしょ。そんなもんです。

だから、今更、いきなりおかもとたろーまんせー、とか言われても、はいはいはいはい、としか言いようがない。ま、ホントに圧倒的にスゴイ「げーじゅつか」というのは、限りなく自然や神に近い、ってことでありましょう。

で、全く当然のことながら会場全体が「たろーまんせー」状態の個人美術館を眺めて歩きながら、なんだかなぁ、という不思議な気持ちがしないでもなかったわけだが、ある展示パネルの前ではたと足が止まったのでありました。岡本太郎のいろんな面を振り返る、ってコーナーで、この造形作家さんの舞台美術家としての足跡がちょっとだけ紹介してあったのですわ。

ちょっとだけ、というのは、別に美術館やキューレーターさんが手を抜いているわけではなくて、そもそも岡本太郎という人のキャリアの中に舞台美術はそれほど大きな比率はなかった、というだけのことです。全日本国民がご存じであろーかの晴海岸壁やら大田区辺りのどっかの路地にいきなり出現した友好宇宙人パイラ人がその代表であります。これ。皆さん、いちどくらいはどっかで見たことあるでしょ。
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蛇足ながら、岡本太郎ミュージアムのショップに行けばパイラ人のフィギャは絶対に買えるだろうと思ってワクワクしてたんだけど、売ってない。広報さんに「どーしてパイラ人売ってないの?」と訊ねたら、「よくそう言われるんですけど、権利関係がありまして…」とのことでした。大人の事情、ってことなのね。

さても、音楽業界、ってか、日本の演奏史に少しでも興味のある方なら、岡本太郎御大(じゃなかったね、まだ)が、1959年に国立競技場で行われた野外オペラ「ローエングリン」の美術を担当しているのは、ご存じかと思います。それなりに有名な事実ではあるのだが、小生は寡聞にしてその舞台写真というのをこれまで眺めたことがありませんでした。一度で良いから眺めたいものである、なんせ、これだけ大規模な舞台だから、新聞報道はジャンジャンされただろうし、実際に見物した人だっていっぱいいる筈なんだが、どうしてか、見たことがなかった。
岡本太郎はセットをやっただけなのか、衣装までやったのか?まさかローエングリンが等身大のヒトデで目がひとつだったりしたらどーするんじゃ、白鳥って空飛ぶ円盤じゃないのか、なんて想像たくましくするしかなかったのでありました。

で、昨日、とうとうその舞台写真を眺めることができたわけであります。白黒で2枚だけ、それも細部は全然わからぬ代物なんだけど、なんだか相当に異様なものであったことだけは理解出来る。過去の「ローエングリン」の舞台で、こんなに妙テケレンなもんは見たことないぞ、って。だって、会場のあっちこっちに太郎お馴染みの図形が描かれ、「太陽の塔」から顔を取り去った樹木みたいなもんが何本もドカンドカンと生えているんだもん。ブラバンドの民と思われる人々は、イースター島の「土人」(←ATOKで変換できない差別用語!)か、はたまた海底軍艦に立ち向かうムー帝国原住民か、って感じでアヤシサ満開(写真から想像するに、衣装はどうも太郎じゃなさそうですね)。

舞台とすれば、広い空間をきちんと使えているとは思えず、スカスカな場所がいっぱいなんだけど、それはまあ、太郎氏の責任ではないでしょ。武智鉄二の演出がどんなものだったのか、なーんにも判らぬ。なんであれ悪いのは演出家だろーなぁ。

とにもかくにも、あの写真が見られただけでも、出かけた価値はありました。もしかして、そんなもんどこそこにいけばいくらでも転がってるぞ、というような代物かもしれないし、本気で調べようとすればそんなに難しいネタではないとは思うけれど、ま、自分でなんにも積極的に調べずに眺められたのは有り難かったであります。

だからオペラファンはみんな生田緑地の岡本太郎美術館に行くべきだ、なんて言ってるわけじゃありません。そんな妙な趣味の方は、なんかのついでに見物に行かれても悪くなかろう、ってこと。この美術館、隅から隅まで芸術が爆発しっぱなしですので、結構疲れます。体調を万全にしてお出かけあれ。

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