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この楽器はなーに? [演奏家]

飛行機の中では殆ど寝られないので、結果として北米に到着した日は出来るだけ寝ないで引っ張り、36時間くらい寝ていない完全徹夜状態にしてその晩に一気に寝て時差を直す、という作戦をとるのだけど、歳を取るに従って無茶も出来ず、とはいえマンハッタンが宿が異常に高くなった今世紀は1週間も滞在するなら一度日本に戻ってきてしまった方が安い場合もあり、人生の貧乏さは酷くなる一方なので、無茶な日程が多くなる。かくて昨日も、猛烈な海胆頭を引っ張って、到着したその晩にカーネギーでのJ.E.ガーディナー御大率いる革命時代&ロマン派管弦楽団とモンテヴェルディ合唱団による第九に出かけることになったわけです。

この団体、出てきた頃からレコード産業が斜陽化したおかげもあってか、結局、まともな日本語の翻訳名称が作られないままにダラダラと異常に字数の多いフランス語系カタカナ読み表記が成されているようで、これはこれで困ったもんだなぁ。ま、あまり自分には商売で関係がないからいいけど、団体の名前書いただけで凄く字数が取られるって、困るわなぁ。

もとい、日本には結成直後くらいに来ていろいろやった記憶はあるが、その後は日本に来てるのかしら。ディスクもアルヒーフを追い出され、自主レーベル立ち上げてえらくセンスの良いバッハのカンターターのシリーズを録音してて、調べたら最近では昨年のやはりカーネギーでのベートーヴェンの5番と7番を再録音していたり。ってことは、昨晩の第九と今晩の「ミサソレ」は、いかにも録音しそうですね。

で、当電子壁新聞にはあまりない感想文ネタ…ではありません。質問です。昨日、小生はドレスサークル(日本の表記なら4階になるのかな)の上手隅っこから36ドルかなんかの席で見物したわけです。まあ、すっかり「上手なピリオドオケ」の演奏で、リズムはっきりぱんぱんてきぱきと進む、サクサク快速系第九で、金曜7時というマンハッタンとすればちょっと不思議な開演時間、「静かな海と楽しい航海」がおまけについていても、終演は8時半前でした。
なんせ半分寝てたような頭にもあちこちでへえええと思わせる面白い出し物。日本国では本日書店に出た筈の「音楽の友」12月号で都響のファゴット奏者さんにインタビューした際に、この時代のファゴットという楽器の進化についていろいろ話を伺っていたものだから、ピリオドオケ、それも猛烈に上手な団体(ホルンのソロが期待されるようなところで期待されるようにひっくり返りかけるのも、ピリオドではこんなにこのフレーズは大変なんですよ、とアピールするような見事なコケ方だったのはちょっとわらかしてくれた)でまるでパッケージもののように安心して聴かせていただけたのは、今回のマンハッタン勝手にベートーヴェン音楽祭のオープニングに相応しいものでありました。人の身長の倍くらいありそうな真っ直ぐなコントラファゴットとか、やっぱり目立つわなぁ。ソリストは合唱団の前の下手より、ホルンの後ろに並べる、って配置も不思議。終楽章まで出番なく待ってたピッコロさんが、トルコ行進曲になると立ち上がって吹いて、最後のコーダでもまた立ち上がって、ひとりマーラー第1番終楽章ホルン群と似たようなことをさせられてたのも面白かった。

もの凄く印象的だったのは、第九終楽章の合唱で「神様はいてくれなければならない」と叫ぶところのMussをもの凄く子音の響きを強くして強調していたこと。なーるほどねぇ、20世紀の神学まんまやなぁ。ってか、なんだい、今、日本の劇場でエヴァちゃん騒動にもう隠れつつある神山監督脚本の009のテーマと同じやないけぇ、ってかね。結局、ピリオド奏法とか、古い時代の再現って、もの凄く現代の関心なのよねぇ、とあらためて思わされたです。

で、このどーでも良い作文の目的はここから。これが終演後のアプローズ、あちこちから焚かれる携帯のフラッシュに、もう表方さんもどーでもいいやと諦めてるとき、何も知らない哀れなお上りさん観光客のふりをして撮ったもの。わざとちっちゃくしてありますから、よく分からないかもしれないけど…
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この写真の一番上手の客席側にあるポジティヴオルガンみたいなもの、なんなんでしょうか?ストコフスキーなら終楽章にオルガンなんて入れそうだけど、流石にそりゃなかろーし。単なる打楽器小物を並べておく台なのかしら。
何を隠そう、小生の席からはこの辺りは全然見えず、終演後に立ち上がるまでこんなものがあるなんて知らなかった。「静かな海と楽しい航海」に使われたのでしょうか?それとも、ガーディナー御大、第九ではなんかこんな不思議な飛び道具をいつも使うのでしょうか?

凄く気になります。この団体に詳しい方は日本語文化圏にもいっぱいいらっしゃることでしょう。どなたか、哀れなアホにご教授下さいな。ヨーロッパで聴いてる方もたくさんいらっしゃるでしょうし。

蛇足ながら、昨晩のカーネギーの舞台でもうひとつ印象的だったのは、オケにも合唱団にも、アジア系がひとりもいないこと。キムさんも孫さんもさとーさんもいません。メンバー表を眺めても全くいないので、今晩のミサソレも同じでしょう。これって、ロシアとかを除けば、今時の世界のメイジャーオケでは凄く珍しいんじゃないかしら。

おっと、もうこんな時間だ。では、メトのアデス「テンペスト」、それが終わったらまたカーネギーに行き、「ミサソレ」です。ウラウラ暖かい、感謝祭祭日前の週末土曜日。

追記
今、「ミサソレ」が終わって戻ってきました。いゃぁ、ピリオド楽器でやると、第九以上に滅茶苦茶な曲だということがよーく判りますね。ベネディクトスのヴァイオリン独奏が出てくる前のオーケストラのみの部分でのもの凄い微妙に汚い和音の動きとか、アニュス・デイの近づいてくる戦争描写でのティンパニーの打っ叩かせようとか、初演のときは聴衆がぶっ飛んだだろーなぁ、と思わせてくれました。

で、問題の「あの楽器はなあに?」ですけど…あっさり解決されました。ご覧あれ。
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なんのことはない、本日使用するオルガンの鍵盤を、昨日からステージに出しておいただけでしたぁ。チャンチャン。

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