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学問の世界からの「指定管理」の論じ方 [指定管理者制度]

開票速報でテレビというメディアを一度も利用しなかった。今朝、ぼーっとした頭で奥さんと義母さんがつけてるワイドショーを眺め、背筋がゾッとした。あんなの視てるとバカになるぞぉ!

さても、去る土曜日、本郷はかねやすの向こう、東大の法文教室で、「行政構造改革が芸術文化政策に与えた影響」に関するシンポジウム、というものを見物して参りました。その気になれば「ほぼ速記」を貼り付けられるんですけど、どうもそういうもんでもなかったので、報告と言うよりも、感想を記しておきます。ぶっちゃけ、自分のためのメモ。
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最初にまず手短に主催者の小林真理先生が「行政改革」というものの流れを歴史的に概観なさいます。始まる前に、眺めに来ていた知り合いの某企業文化部署関連ご隠居と海苔弁喰いながら「明治以降の日本国の歴史で、行政改革ってホントにしたことあるのかしら」という与太話をしてたもので、あらためて勉強になりました。
ポイントは、「戦後の昭和期に何度か行われた臨時行政調査会による行革は、行政の近代化とその効果のチェックにあった。が、前世紀末から今世紀にかけての橋本内閣以降の行革は、行政改革といいつつ、実は「どのような社会を目指すか」という日本国経済社会のシステム再構築の中での話になっている。」なーるほどねぇ。勉強になるなぁ。

続いて、3つのテーマでの発表。最初は「市町村合併」がテーマで、研究者の先生お二人と、実際に群馬県で市町村合併をやりつつ、新しい地域に中之条ビエンナーレというアーツ・フェスティバルやナカノジョウ大学という市民大学で活性化させた、入内島さんという前町長さん(前、なのかな)が具体例をお話下さいました。
興味深かったのは、続く小林先生の発言。学者さんたちの予想と異なり、市町村合併で統廃合した文化施設はあまりなく、それよりも市町村合併後の新たな地域アイデンティティの創出のために、かえって文化イベントなどが増えている、ということ。これからもまだ100館もの新しい文化会館が出来るそうです。ま、考えてみれば、国家であれ自治体であれ、新しく出来た瞬間こそブンカの政治的役割が最大に発揮されるときなわけですから、当然と言えば当然なんでしょう。

それから、「指定管理制度」。これまた研究者さん2名の間に、逗子が直営館としてやってるなぎさホールの担当者、伊藤裕夫氏が喋ります。説明の必要もない有名人さんでしょうから、詳しく知りたい方はググってみてくださいな。逗子のホールは直営から指定管理に移行するそうで、その具体的な話。
京都からいらっしゃった坂本崇先生の「二つの効率性と官・民の役割」という話は、「指定管理」という考え方が日本でいつから出て来たかから始まり、その理論的な問題性といか、曖昧さというか、えーかげんさというか、極めて理論的に指摘して下さった。ぼんやりと「それってなぁ…」みたいに感じてたことをしっかり言葉や概念にしてくれる話で、アホなあたくしめはまたまた勉強になるなぁ、と思わせていただきました。一頃盛んに言われたPFIと指定管理の関連はどーなってるんだ、とずっと不思議に思ってたんだけど、前者がうまくいかなくて後者にしていった、とあっさり言われて、ああああやっぱりそういうことでいいのね、と納得。今更こんなこと判って喜んでるんだから、情けない我が身よ。いやはや。
明治大学の鈴木先生の話では、ガイ・ピータースという学者さんが2011年の論文で「市民という概念を顧客や依頼客に置き換えることは、個々人の興味と公益に対する関心の間の区別を混乱させ、政治的権利義務をもった市民相対を、顧客要望をもった個々人の集まりに再構成してしまった。」と仰ってるのは、なんだい、それって、いつも我が家で嫁さんと話してることじゃんか、と爆笑してしまった。やっぱり学者さんもそう思ってるんだな、現場の幻想じゃないのだな、とちょっと安心した次第です。

休憩を挟んで、「公益法人改革」の話。横浜の曽田先生も、神戸の藤野先生も、共に研究者でありつつ、公益法人改革の現場に関わっていらっしゃる方々なので、研究者としての側面と、現場の話との微妙な違いが面白かったです。面白い、なんて気楽に言うのは失礼なんですけどねぇ。ゴメンナサイ。
公益法人と認定NPO法人が並立する一国二制度状態をうまい具合に使えないか、という曽田先生の現場っぽい発想に、苦労なさってるなぁ、と感じる次第。

さても、なんかレポートにもなってない内容で、期待してた方はいなかろうが、何とも情けない作文だなぁ。正直、長くて最後は疲れてしまった。歳は取りたくないものだ。いやはや。

個人的に最も勉強になったのは、指定管理を巡る学問の世界の捉え方と、小生が普段接している現場レベルでの捉え方とが、随分と異なっていると判ったこと。
なんせ現場では、「指定管理はコストカットの口実に使われるだけで諸悪の根源」とされていて、そうじゃない意見なんてからっきし出てこない。だけど、学問レベルでは、指定管理の可能性を前向きに評価したい空気がはっきりあるようだ。現場代表として登場なさった方も、比較的そういう傾向の方でしたし。どうなんでしょうねぇ、地域創造、公文協的な世界とは随分と違う、これが学者さん、ってことなんでしょうか。

もうひとつ印象深かったのは、「政治」という要素がまるで語られないこと。なんせ翌日は衆議院選挙で、文化庁の現場などは大阪で騒動を起こしてくれてる方々が中央にどっと乗り込んできて引っかき回されたら大変だと戦々恐々としているときだっただけに、立法府の意志とまるで無関係に行政府の動きを議論するだけで日本国の文化政策を論じて良いのでしょーか、そんなもんなんでしょうか、ってずっと感じていたですよ。

これに関しましては、壇上にいらした先生から今朝になってフェイスブックでご意見いただいたりして、なるほどねぇ、などとまた別の感慨を持ったりしたわけですけど、ま、それはそれ。

てなわけで、なんの纏めにも報告にもなってない作文でした。すいません、今日はどうも腹に力が入らぬです。明日は選挙前日で大盛り上がりのソウルに舞い戻るというのに。ふううう…

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