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聖金曜日のマンハッタン [マンハッタン無宿]

移動日まで含めると総計23日、最近では比較的長めのたびの空の最後は、小雨交じりの半端に暖かい聖金曜日。

セントラルパークのザ・ランブルや苺畑では、湿った春先の空気の中に、ロビン(あんなの絶対にロビンじゃないけど、この街の人はロビンと呼ぶのじゃ)がつぐみん性を露骨に発揮する縄張り争い声が響き、世にも騒々しいイエスズメたちが藪の中を追いかけっこ。上空には、今日も今日とてNYPDやらなにやらの機械螇蚸らが跋扈し、もっと上には生ぬるいハドソン河からの西風にこっちに向けて離陸してくるラグァーディアからのそこそこでかい機械鳥たちがかすめてく。

数週間前にまた値上げし、貧乏極東列島の住民には今や料金300円に近くなってしまったバスや地下鉄に乗れば、イースター休暇らしくお子ちゃま集団やデカイ乳母車持ち込んだ親子連れで溢れてる。マンハッタン厄偏庵横の世界一のスーパーFは、「大セール$5弁当!」なんて特価大セールやってカリフォルニアロールなんぞ売ってるけど、それでもまだTOKYOの弁当屋やコンビニ弁当よりも2割はお高い。
こうやって数週間、列島を離れてほっつき歩いていると、今の日本国政府がやってることは要するに「日本国全体3割大ダンピングセール」であることがよーく判ります。やっぱり我らがアベせーけんの究極の目標は、北朝鮮のような実質鎖国なんだろうなぁ、いやはや。

この「たびの空」の間に、ふたつのOceanとひとつの海峡を越え、10の空の駅に足を付け、6つの駅で荷物を引っ張り回し、8つのフロントで「はぁい」をした。どれだけの人に会ったか、どれだけの音符を聴いたか、もう訳が判らない。やった作文仕事は判っていて、そこそこ大きいものが3つとポチョポチョで総計40数枚程。今回は「アッコルド」をサボらせてもらったんで、この程度で済んだ。ま、2015年の聖金曜日を迎えるにあたり、ともかく磔にならずに済みました、ってとこでありましょーか。

夕方6時過ぎにJFKを出るANAさんが、ちょっと遅れると連絡してきた。午前中に最後の原稿をマンハッタン厄偏庵で入れ、2番の地下鉄でセントラルパーク北駅まで行き、ふらりふらりと雨が落ちてくる中を「北の森」の林を抜ける。
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厄天庵の文鳥君たちのように手に乗ってきそうになる人を怖がらんアメリカコガラさんと遊びながら、100丁目の出口までダラダラと傘を手にお散歩。
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聖金曜日の森は、花が咲き乱れずとも、ムクドリモドキ以下、騒々しい鳥さんたちは充分に騒々しく歌い、岩盤の間の清い流れになんか目つきの悪いカージナルが舞い降り、沐浴をなさってら。勿論、ピジョンもダブも舞ってます。
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ヴェトナムや中国の公園みたいに意地でもBGM流しちゃうぞ、ってスピーカーがあちこちに配されてたりはしないから、どこかからともなく《パルシファル》3幕の音楽が流れてくることはないけれど、頭の中ではあのヴッパタールの舞台の奇妙な聖金曜日風景が頭に浮かんで来て…

それなりに長い3週間だったこと。あの頃がもう何年も前のことみたい。パルシファルが歩く時間と空間を越えた巡礼みたいな、奇妙なたびの空(パルシファルの放浪を「ウラシマ効果」として描き、クリングゾルやクンドリーを高次元世界の存在として捉えるハードSF系演出って、どっかドイツの田舎でやってそうだなぁ)。

中央公園を出て
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ブロードウェイまで歩き、下って、96丁目では一度だけ生スポックのお姿を拝見させていただいたことがあったレナード・ニモイ劇場の横で、全然出来ない「長寿と繁栄を」サインをしようとしてやっぱり出来ず
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更に数ブロック下っては、一頃は42丁目にまで店を出していたのにこの数年で一気に撤退を始め、リンカーンセンターのMac屋の隣の店まで撤収し、今や発祥の地たるコロンビア大学正門前で細々と店舗を開いているだけの中華屋Oの最後の生き残りテイクアウト店に入り、「エッグヌードル、ローストポークのっけ」(よーするに叉焼麺)を$7程で買い、店の隅のカウンターで喰らう。
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この何の出汁の味もないスープの麺と、スーパーFのオレンジジュースが、やくぺん先生にとってのこの街の味。ま、後者はともかく、前者はなくなっても、ちっとも哀しくなんかない。なくなるものはとっととなくなれ、それがこの街で生きるということ。

さて、104番のバスで戻って、荷物を引っ張って、地下鉄乗り継いでJFKに向かいましょ。数年前にマンハッタン厄偏庵に入って、この宿がとうとう始めた朝飯サービスでボーイをやってたフィリピン出身のにーちゃんが、なんか今回はフロアで黒いにーちゃんたちなんかに偉そうにしてるんで昇進でもしたのかと思ったら、、おやおやなんとジャケット羽織ってカウンターにいるじゃないの。へえ。もう10数年にもなるいつも疲れた顔をしたイタリア系雇われちょっとイケメン店長も、随分と頭の天辺が寂しくなったなぁ。

聖金曜日のマンハッタン、ホントにホントに、全て世は事もなし。春がやってきて、奇跡が起きたのかは知らぬがそこそこ偉くなる奴もならない奴もおり、そして、確実にみんな、歳を取り、死すべき人は順番に世を去り…

奇跡など 無縁の街も ぐぅっふらいでー

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