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政治の季節 [演奏家]

所謂クラシック音楽の演奏家という人達は、当たり前にどっかの社会で生きてるふつーの人々に比べると、「政治」という世界に近く身を置くことになるのは皆様もなんとなくお判りでございましょう。

なにせ、今やヨーロッパ大陸や英国系社会、それにアジア諸国などは、「補助金」なり「助成金」なりを税金から頂かないとクラシック音楽やらオペラは公演が成立しないのが常識。そうじゃないアメリカ合衆国型の社会でも、民間や個人からの資金援助や財政的な保護がないとやっていけない。幸か不幸か、商売になる興行としては殆ど、存在し得ていない世界。

それに所謂「クラシック音楽」ってジャンルは、あらゆる芸術ジャンルの中で最も国境の敷居が低く、結果としていろんな国やいろんな社会をバックグラウンドに持つ人達がひとつところに集まって来て一緒に現場で作業をすることになる。そのために、具体的な事務作業で大使館やら文化庁、文化省などの国家組織にはやたらと御世話になることになり、「国」というものを極めて具体的に感じることになる。

てなわけで(だかなんだか判らぬが)、政治ネタをふたつ。ひとつは、こんなの。

http://news.klm.com/reaction-on-media-attention-pianist-in-klm-inflight-entertainment-system/
KLMオランダ航空の公式ページです。これだけじゃ全然意味が分からないでしょうが、要は、「KLMの機内エンターテインメントで演奏が流れているウクライナ出身のピアニストさんが、数ヶ月前にウクライナとロシアの紛争地域上空でロシアのミサイルで撃墜された(らしい)KLM共同運航便のマレーシア航空の事故について、ロシア側に理解を示すような発言をツィッターだかFacebookだかでしたらしい。それを知ったオランダ人のお客さんが極めて不愉快に思い、KLMにいろいろ言ってきた。で、KLMとしてはこの人の演奏を機内エンターテインメントから外しました」ってことです。

やくぺん先生とすれば、このピアニストさん、デッカだかから何故かフィリップ・グラスのピアノ作品集なんて不思議なもんが出てるなぁ、と思ってた人で、へええええ、としか感想の持ちようがないんだけど、ま、ともかく、そーゆーことが世の中では起きている、ってことです。こんなことが起きるってことは、KLMからはゲルギエフの演奏は全部削除されてるんでしょうかねぇ。

もうひとつ。こっちはもっと直接的に「政治的」な話です。バレンボイムがイランからの入国を拒否された、という話。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150831-00000013-jij-m_est
ご存知のように、バレンボイムという方は今はイスラエル国籍だけど、パレスチナとイスラエルの若者の合同オケを作って世界中で公演したり、それこそノーベル平和賞候補になるような活動を盛んになさってる。やくぺん先生も2011年だっけ、8月15日にこのオケが板門店で第九を演奏するのを取材に行きましたっけ。Qベルリン・トウキョウのセカンド君なんかもあのオケにいたんじゃないかな。

日本では自衛隊海外派兵法案の騒動の真っ最中で殆ど話題にされなかったようですが、先月、イランは西欧世界と歴史的な和解をした。その関係でいろんなことが起きていて、ヴィーンフィルだかも行く、なんて話もあった筈だけど、どーなってるのかな。ドイツは20世紀前半からトルコ、イラン、イラクという辺りは非常に関係を深くしてきた訳ですから、首都のオケが出るということだったんでしょうか。なんにせよ、オーケストラというのは極めて政治的な動きに使われる、という事例でありますな。

で、今回はイラク側からバレンボイムの国籍が問題にされた、ということらしい。これ、バレンボイムという人を知ってる我々とすればちょっと意外といえば意外だけど、イランの外交当局とすれば当然のことなんでしょうかねぇ。

てなわけで、音楽は極めて政治的なものなのであーる、という話でした。日本国でも、まさかまさかフランス革命に託した歌が東京は国会の真ん前で歌われる季節。

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