SSブログ

優勝団体に遭いにいく・その4パートⅡ:第3回大阪国際室内楽コンクール第1部門ベルチャQ [大阪国際室内楽コンクール]

久々のシリーズ、ベルチャQ編の第二部。本拠地ロンドン編であります。

なお、当シリーズ期待の最新版(って、期待しているのは関係者数人だけだけどさ)として予定されていたアルカディアQ編でありますが、哀しいかな、来る日曜日にウィグモアホールで予定されていたロンドン大会の過去の優勝団体顔見せコンサートは、「演奏者の怪我の為」キャンセルになりましたぁ!なんてこった、このために朝っぱらにニュルンベルクから帰って来なければならんので、残っているのはファーストクラスだけなのに涙なみだで大枚投下したのにぃ、えええええん…

もとい。んで、昨晩のウィグモアホールでのベルチャQであります。とはいえ、実はベルチャQは1997年のロンドン大会では3位で、優勝はしていません。地味真面目堅実なアウアーQがきっちり優勝したときで、だけど別にその後を予見するわけでもなんでもないけど、やくぺん先生は何故かベルチャQはやたらと印象が強く、当時のメモを見返しても「勝てないだろうけど、いいじゃんかぁ」みたいなことを綴ってる。その後、風の便りながらなかなか存続が難しい状況になってるという話を耳にし、ああ、あのベルチャちゃんってもの凄い東スラブ系美人さん、やっぱり弦楽四重奏なんて廃業してソリストの道を選ぶのかしら、まあ、しょーがないよねぇ、メディアが放っておかないもん…

ったら、ベルチャさんとヴィオラ君は創設メンバーのまま、新たな二人を加えて大阪に乗り込んできてくれて、過去最大の日本団体参加数だった(と思う)乱戦とは別次元の自力で難なく勝ち進み優勝。その半年後、エヴィアンから追い出されてたコンクールをボルドーが拾って秋に行われた最初のボルドー大会で、大阪のタイトル引っ提げ余裕の闘いかと思ったら、意外にも伏兵の北米で学んだ中国の団体に追い上げられなんとか鼻の差で逃げ切った、という感じの闘いで優勝を飾り…その後は華々しいキャリアを積むことになったのは皆様ご存知の通り。チェロとセカンドは交代したけど、前者は今やギルドホール音楽院の室内楽部長であり、イギリスのヤング・コンサート・アーティストのディレクター(ロンドン大会ではテープ審査をしており、一昨日だかも会場で挨拶しました)。後者は確かECOのトップかなんかをやってる筈。現在のベルチャQは、恐らくは大阪が生んだ「ギャラが高い」という意味では最も成功したスター、英語圏弦楽四重奏の中で今やトップのスターになっているわけでありまする。

ううん、成功譚というのは気持ちいいもんですなぁ、他人事であれ。

さても、そんなベルチャQ、昨日は英国のトップ団体として堂々と若いもんにお手本を見せる、というステージでありました。
IMG_1967.jpg
ほぼ満員のウィグモアホールで、ハイドン作品20の4はまあ、昼間には若い達者な連中が今時のいろんなスタイルのいいとこ取りをしようとしては中途半端になったり無茶をやったりしているのを尻目に、「君たち、自分らなりに様々な演奏スタイル情報を選択して提示するなら、ここまでやんなきゃダメなんよ」って堂々たる演奏を披露。英国の弦楽四重奏趣味の根底にある「解釈ごっこ」というか、「解釈過剰」というか、この楽譜にどんな風に仕掛けるかを聴衆があれこれ突っ込んで楽しむ、という伝統(というか、風潮、というか)に真っ向からネタを提供、でもどの趣味嗜好から眺めても一応どれも納得させられる、というもんです。うううん、プロのお仕事、って感服するしかないぞ。

リゲティの1番も、徹底して娯楽に徹した大柄な表現で、極めて判りやすく、説得力がある。最後の《アメリカ》は、曲自身が「さあ、君たちはこのちょっと壊れ気味だけど素敵な楽譜をどーしますかぁ」というところがある作品なんで、あれやこれやの仕掛けが次々と繰り出され、もう娯楽の殿堂ベルチャQいぇいっ!

大阪の若きプロデューサー氏曰く、「ベルチャって、個々人が自分のことをあれだけ出しながら、他を邪魔しないんですよねぇ。当たり前のことなんだろうけど、なんであんなことが出来るんだろう」って、極めて現場的な感心をなさっておりました。誠に以て仰る通り。

無論、聴衆は大受け、大喝采。これぞ今の英国の室内楽趣味のひとつの頂点なのだ、というご披露でありました。考えてみれば、そっからもうひとつ次に行こうとしているドーリックQもしっかり優勝させている大阪って、実はスゴい鑑識眼持ってるじゃん、って自画自賛したくなるぞぉおお!

さても、本日はロイヤル・アカデミーお通いの最後の日。夕方にはセミファイナリストが出ます。日本では日付変わってると思いますが速報しますので、明日はネット環境整え、請うご期待。

nice!(2)  コメント(2) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 2

nahokomusic

和さん、こんにちは。三年ぶりのロンドンにようこそ。明日どちらかのセッションに顔出しますね!
by nahokomusic (2018-04-14 05:54) 

nahokomusic

承前)と思ったら、和さんはニュルンベルクですか〜!
by nahokomusic (2018-04-14 07:27) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。