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オケが指定管理者になると… [指定管理者制度]

「指定管理者制度」というカテゴリー、一体、いつ以来のことやら。今やすっかり忘れられた話題になってしまいました。なんせ、現政権になって「文化政策」とは「劇場音楽堂を拠点に地域再開発」とか「文化に拠るまちづくり」とか、芸術文化基本法や劇場法の本来の趣旨とは些か異なる「どうやって文化ネタで金を稼ぐか」というところが関心の中心になってしまいましたからねぇ。善し悪しの問題ではなく、事実としてそうだ、というだけで、いずれ「あの頃は…」と振り返られる日が来ることでしょうが。

ま、そんなわけで、誠に以て久しぶりのこのカテゴリー、今更ながらに引っ張り出した理由は、先頃、某演奏団体に取材し、その中で「指定管理」が大きな話題になったから。何を隠そう、先程初稿を入れたその取材の原稿には、結果として「指定管理」の部分は殆ど使えませんでした。要は、毎度お馴染みの「取材したけど出せないままになってもーた」でありまする。

んで、表原稿に差し障りのない形で、極めて興味深い「指定管理の今」について、ちょっとだけ記しておきましょうぞ。テーマは極めて明快、「オーケストラが音楽堂の指定管理者になったら何が起きるか」です。おお、普通ならA4版4ページくらいはいただけそうな、きっちり表の原稿になる堂々たる王道テーマでしょ。でもねぇ、これがどこにも売れないのがニッポン音楽業界(アート業界、文化業界、かな)の厳しい現実でありまするよ。いやはや。

愚痴はここまで。さて、もう隠してもしょうがない。大阪府の北、伊丹空港に向けて飛行機が頭の上を降りて行く辺りに、豊中市というところがあります。大阪音大がある場所で、今や既に忘れられかけている現総理の大疑獄事件たる森友学園騒動の舞台となった場所でもあります。ここに数年前、「豊中市民芸術文化センター」というヴェニュが出来ました。その劇場&音楽堂&諸処文化施設が指定管理に出て、以下のような結論になり、今年で既に運営が始まって3シーズン目です。このネタ、当電子壁新聞でやったっけ、まるで記憶がないぞ。
https://www.city.toyonaka.osaka.jp/jinken_gakushu/bunka/hall/siminhoru-siteikanri.files/senteikekka.pdf
ご覧のように、指定管理騒動で名を馳せた栗東の文化会館以下、日本各地で指定管理を取ってる専門企業ケイミックスさんと争って勝った連合体に、同じ豊中の府営公園の中、かつては府営だったここオーケストラホールに今は借家住まいをしている
IMG_0101.JPG
大阪府から離縁されたオーケストラ、日本センチュリー交響楽団が加わっているわけでありまする。

「オーケストラが自分が活動拠点とする公共ヴェニュの指定管理を取ってしまう」というのは、ちょっと考えれば極めて自然で合理的だと思うわけだが、どーしてかニッポン国ではそういう例はほぼ皆無。現在、オーケストラが指定管理に加わっている例としては、こちらがあるくらい。
https://www.kanagawa-arthall.jp/
出し物を見ていただけばお判りのように、ここは5年前からカナフィルが指定管理やってます。
https://yakupen.blog.so-net.ne.jp/2014-06-11
日本で音楽の実演団体が指定管理者となった最初の例でありまする。先頃、目出度くも二期目が決定したばかりです。って、他に応募はなかったんね。ううううん…やっぱり指定管理はオワコンなのか。
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/hy8/prs/r7537518.html
ここはカナフィルは定期演奏会はやらず、要はレギュラー練習場の指定管理をやってる、ということ。日本センチュリーで言えば、「緑地公園内のオーケストラハウスをオケが指定管理する」みたいなもので、本来それが最も合理的なんですけど…いろいろあってそういうわけにはいっていない。話をカナフィルに戻せば、こんなイベントがもうすぐあります。
https://www.kanagawa-arthall.jp/project/kanaphil-land-2019/
眺めに行こうかなぁ、と思ってます。夏のオープンハウス、といえば聞こえは良いが、要は縁日夏祭り、ですな。オケの規模ではこれくらいが妥当なところかなぁ。

もうひとつ、今進んでいる話としては、こういうのがあります。
https://www.pref.yamagata.jp/ou/kanko/020073/yamagataekinishiguchiseibi/shiteikannrisyabosyu/kouhosya.pdf
山形に新しく出来るホール、となんとなく思ってる「山形県総合文化芸術館」で、点数は低かったんだけど総合的な評価として山響が加わる事業体が指定管理を取りました。面白いのは、やっぱり「平等性の確保」というところで低い点が出ていること。そりゃ、山響が指定管理するとは山響が優先的に使うに決まってるわけで、この辺りで「指定管理」というシステムと実演団体の相性が悪い部分が露呈してますねぇ。Ⅲという項目でも負けているのは、やっぱり経済性だなぁ。つまり、「経費削減が出来るか」ってことでんな。ふううう…

とにもかくにも、12月のオープンに向けて山響さんも動き出しているとのことです。

さても、問題の豊中ですが、日本センチュリーが指定管理になって3年目、ここもかながわアートホール同様に、指定管理しているオケが定期演奏会を移してきているわけではありません。練習場も歩いて20分くらいの場所に今は大阪府からの賃貸があるので、カナフィルみたいに指定管理している場所でやってるわけじゃない。どういうことをやってるか、もう記すのがめんどーになってきたので、こちらをご覧あれ。
http://www.toyonaka-hall.jp/
センチュリーは年4回の名曲定期とか、いろいろなスペシャルコンサートとか、団員の室内楽とかやってるです。定期はシンフォニーで、あとハイドン定期をいずみでやってる。

というわけで、現状、日本に36団体あるオケ連加盟プロオーケストラのうち「指定管理」をやってるオケは3つある、という事実を確認したメモでありました。だからどうだ、という話は…どっかで表でさせてくれるところ、ないかなぁ。今や「指定管理」は文化ネタとしてはオワコンになっちゃってるんで、まるで商売にならんわい。ふうううう…

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ヒロノミン

 厳密には「ホールの指定管理をやっていうオーケストラ」ではありませんが、36オーケストラの中に、オーケストラとホールの運営主体が完全に一体化している、という珍しいケースが岡山にあるので紹介させてください。それは岡山シンフォニーホールを本拠地とする岡山フィルハーモニック管弦楽団です。
 岡山フィルの事務局がホールの指定管理をやっている訳ではなく、岡山シンフォニーホールの指定管理者である(公財)岡山シンフォニーホールが岡山フィルハーモニック管弦楽団も運営している、という形態です。
http://www.okayama-symphonyhall.or.jp/okaphil/
http://www.okayama-symphonyhall.or.jp/okaphil/pdf/sanjo.pdf

 会員組織も「岡山フィル・岡山シンフォニーホール友の会」と、こちらも一体になっています。
http://www.okayama-symphonyhall.or.jp/page26.php

 さらに面白いことに、岡山シンフォニーホールは、地元国立大学の中にあるホールにおいて主催公演もやっていて(指定管理ではなく、連携協定という形ですが)、岡山フィルの団員や、首席指揮者のシェレンベルガーが(オーボエ奏者として)コンサートに出演しています。
http://j-hall.med.okayama-u.ac.jp/cgi-bin/web/index.cgi?c=topics-2&pk=313

 ホールの運営主体がオーケストラを持っていて、さらに外部のホールのコンサートの運営もやっている、というのは、なかなか他の都市にはない形態かと思います、参考までに。
by ヒロノミン (2019-07-23 20:48) 

Yakupen

ヒロノミン様

情報、ありがとうございます。大昔の話ですが、岡山シンフォニーホールが出来る前、オープニングプロデューサーの岡村さんが(okamuraカンパニーの岡村さんのご主人です)なぜかうちのアパートに来て企画書書いてたことがあって、懐かしいなぁ、と思ってしまいました。その頃は、指定管理なんて話はまるで無かったし、岡山もプロオケ無しでこんな立派なハードを作ってしまってどうするのか、とぼやきながらの作業でしたっけ。

指定管理をどう迂回するか、は逆に今最も関心があることかもしれませんね。例えば演劇では、平田オリザ氏などの今やろうとしている事例は、ある意味で「指定管理迂回のノウハウを探る」やり方ですし。岡山の例、まとまった記事にするときにはきちんと取材しないといけないなぁ、と思います。ご指摘、ありがとう御座いました。
by Yakupen (2019-07-26 09:38) 

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