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加藤のくにちゃんがバッハを弾くと… [演奏家]

どうやら新帝都中心は宮殿前広場では新帝戴冠祝賀式典が賑々しく取りおこなわれるらしい秋の午後、皆々様はいかがお過ごしでしょうか。数日前、こんな時期にトーキョーに居座って呆れるようにいろんなオーケストラ聴きまくってる某カナダ在住米国人同業者氏から「体悪くして日本にいるんだって、じゃあ、どっかのホールで会えるね」って連絡があり、お互いの日程を付き合わせたら、なんとまぁ、ベルリンフィル、ヴィーンフィル、コンセルトヘボウ管、フィラデルフィア管と世界各国から新帝祝賀のフェスティバルに結集しヴィオラ中心に力一杯に弾きまくる…わけでもない突拍子もない新帝都にあって(あたしが文化庁の偉い役人なら、政権党のアホな政治家の顔色見てる暇があったら、宮内庁とつるんで各音楽事務所主催者ホールに「新帝祝賀フェスティバル」の菊の御紋章押しつけて歩くけどなぁ)、そんなもんのどれにも顔を出さず、記者会見にも行かず、弱小室内楽団体やら無名作曲家、零細オーケストラ、貧乏現代音楽集団らを眺めて歩いてる酔狂な隠居爺であることが今更ながらに判明し、我が身を呆れるばかりであったのじゃわい。いやはや。

んでもて、昨晩はこれって殆ど木枯らしじゃね、と言いたくなるような風に吹かれ、新帝祝賀ヴィオラ・フェスティバル、ならぬお祭り騒ぎの準備進む馬場先門から霞ヶ関抜け、チャリンチャリンと溜池に至った次第でありました。目的は、こちら。
IMG_1826.jpg
右側の方ですっ。公式のサイトはこちら。
https://www.kuniko-kato.net/ja/home-j/
バッハの無伴奏弦楽器作品をマリンバ独奏で弾くという、既にディスクで世に出ていて、高い評価も受けている再現のライブでありました。こちらがディスクの紹介。
https://www.hmv.co.jp/news/article/1704060037/
ブルーローズを縦使いにし、高くしたステージの上にマリンバが置かれただけのシンプルな演奏会、中身に関しては「あああ、そういえばこの方って、床にべったり座り込んでなんかぼそぼそ呟きながら小さいけどとっても綺麗な音でなんかカンカラ叩いてるちょっと変わった打楽器さんだなぁ」という前世紀末頃、池袋の喫茶店だかで初めての彼女のCD曲解を書くための打ち合わせで初めて出会って、えええサイトウキネンに乗ってましたっけ、気がつかなかったぁ、なんて情けない会話をして笑われた頃のお姿を、久々に思い出しましたです。小さい体に髪振り乱しエネルギッシュにクセナキス叩いてたり、若い生徒達の前ですっかり先生というよりもリーダーとして音楽作りを引っ張っている逞しい近影の向こうに、インディーズで自分の曲出してますぅ、って感じの、70年代フォークの世界の隅っこにちょこんと静かにいらっしゃりそうな空気感。とりわけイ短調ソナタのアンダンテ楽章のピアニッシモから、マレット2本だけに持ち替えたアレグロへの音色の変化、ハ長調ソナタのフーガの意味を響きの中に解体変容しちゃってるような静けさなど、ああああ、小さい綺麗な音が素敵な加藤のくにちゃんだぁ、って凄く懐かしかったでありまする。

うううん、どうも最近、物事に対する関心が爺くさくて困るなぁ。ま、しょーがないけどさ。

そんなこんなの時間が過ぎ、それにしてもこの会場でああいう繊細な響きの差がよくまあ聴こえるものだなぁ、とあらためて当日刷り物を眺めるに、一番最後に
transcribed and performed by kuniko
sound design by yuji saga
とちっちゃく書いてある。このサウンドデザインってなんじゃらほい、とスタッフさんに尋ねると、なるほど、この演奏会、もちろんライブでありますが、音響的な補正が行われているそうです。ほれ、と指さされた方を眺めると、確かにいちばんうしろにこうこう方々が控えていた。
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なにをどういう風にやっているか、立ち話で説明は受けたのですけど、正直、やくぺん先生にはほっとんどわーかりませーん。ゴメン。でもともかく、ディスクでの演奏を聞き込んできた方々に可能な限りそのイメージを崩さないような、空間全体としての音作りをしたとのこと。

なるほどねぇ、これが21世紀10年代終わりの「ライヴ」のあり方なんだなぁ。

先頃のアムステルダムでの《光》サイクルでも感じたのですが、ともかくライブでの音響補正は文字通りの日進月歩。人が音楽を聴く環境がオーディオルームという閉ざされた特別空間ではないのが当たり前になってきている状況に合わせ、ライブのあり方も変わっていって当然なわけだしさ。

どんな状況になっても、加藤のくにちゃんはそこらにペタンと座り込み、その辺にあった棒で周りを叩いて、あ、綺麗な音がするな、ほら、こんなにちっちゃい音だけど…ってしてる。それは全然変わってないし、その密やかな素敵な音がみんなにも聴こえるようにするのは、当然といえば当然のこと。

多分、あたしゃ、ディスクでは聴かないだろうけどさ。

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