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唐津の日本フィル [演奏家]

広島からの春秋航空が午後10時15分前に成田にタッチダウン。成田周囲の住民の反対押し切り強引に運用を11時までにしたので悠々なのかと思ったけど、土曜の夜というわけでもなく京成電車で葛飾オフィスまで戻る道は相変わらず限られ、なんと各駅停車上野行きで延々と1時間25分かけて葛飾オフィスに戻っています。広島まで戻れるわい。コートを来ていると汗が出てくる、まだ税金に手を付けていないとは思えない如月半ばの千葉の夜。

さても、昨日から今まで、佐賀県は唐津から広島と駆け足で回って戻って参りました。広島はがっつり商売もん取材なんでこんな場所に記すわけには来ませんけど、唐津は長期的なスパンの取材といえばそれまでながら、今は「見物に行った」としか言いようがない。目的は日本フィルの九州ツアーの唐津公演の見物であります。
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日本フィルという団体は、1973年の分裂後に、日本全国に「日本フィルを聴く会」みたいな任意団体を組織し、中央や地方の音楽事務所やプロモーターが関わる興行とも、はたまた今は当たりな「地方ホールの主催事業」として公金を投じた演奏会とも違う、「ボランティア主催者による招聘」というのを組織し地方公演を行う「市民活動」をしてきました。今時の若い世代が生理的に拒否反応を示す「シミン」でんな。
時代的には労音活動がもうピークを過ぎ、民音や音協などのアンチ労音系鑑賞団体の活動も必然的に鈍っていた70年代後半以降であります。もうちょっと早ければ地方労音などに乗っかる可能性も合ったのでしょうが、日本フィルの市民運動って、ちょっとそれから時代が遅れた。「あの頑張っている日本フィルを助けよう」、というノリの主催団体が日本各地に出来てきたときの話です。

最盛期は北海道演奏旅行、東北、はたまた関西から四国なども「日本フィルを聴く会」のツアーを行っていたわけだが、だらしない70年代が過ぎ、ぼーっとしているうちにバブルの時代となり、日本フィルも資本財界との大和解も成ったりして、組合どころか市民活動も特殊な「プロ市民」と認識されるような空気になっていき、組織が維持できないところが出てくる。で、東北ツアー、関西ツアー、北海道ツアーなどは終焉を迎えることになった。無論、この辺り、地方オーケストラの充実という背景もあるのだが、どうも今回の唐津でいろんな地元の方に話をきくと、そんなに話は簡単ではないみたい。以上、ちょー短い「日本フィルを聴く会」地方組織の背景説明でありました。

おっと、話が先に行ってしまったぞ。もとい。ある意味、「歴史的な使命は終えた」と言われても仕方ない「日本フィルを聴く会」主催による地方ツアーですが、なぜかどうしてか、九州だけは生き残ってしまった。このところは毎年2月くらいに、九州各地で2週間ほどの日本フィルのツアーが行われており、今年2020年で45回目だそうな。

ぶっちゃけ、やくぺん先生の関心は、この「なんで九州だけ?」なんですね。お判りの方はお判りのように、その裏には『クラシックコンサートをつくる。つづける。』やら『ゆふいん音楽祭35年の夏』などの著作の系列の関心があります。要は、「弦楽四重奏」「現代オペラ」と並ぶ、やくぺん先生のお仕事としての本職のひとつ、ってこと。現時点では全く持ち込む媒体もないし、単行本にするというもんでもないしねぇ。助成金出版が狙えるネタでもないしなぁ。

今年はたまたま広島での取材があり、おお、その頃は日本フィルが九州ウロウロしてるじゃんかぁ。それに、昨年秋の記者会見を某Web媒体に紹介記事を書いちゃったので、書いちゃった以上、眺める責任があるわけだしさ。完全赤字だけどねぇ…

※※※

ま、そういう「売文家業」ネタは、またそれはそれ。で、今年の日本フィルさんの九州公演、前首席指揮者のラザレフ御大が率い、演目もプロコフィエフの《ロメオとジュリエット》組曲のラザレフ版という楽器がいっぱい使われるような大曲を連れて歩いている。ほかにも、堀米さん独奏でベートーヴェンのでっかいヴァイオリン協奏曲とか、ブラームスの第2ピアノ協奏曲とか、「九州各地の実行委員会の皆さん、日本フィルが皆さんの大好きな名曲もって皆さんの町にやってきましたよぉ」ってのとはちょっと違う。そもそも数年前には、唐津でもマーラーの5番やったりしてるみたいだし、普通の定期と違わんものをやってます。

昨日バレンタインデーの唐津市民会館公演は、丁度ツアーの後半の始まるところ。宮崎に始まり、鹿児島、熊本、そこから九州の北半分に向かいいきなり北九州、大分までで5公演。そこからは佐賀福岡長崎の辺りを、マチネ乗り打ち含めまた5公演。繰り返しますが、これらの各地の演奏会は、佐賀やら大牟田あら宮崎やら大分やら唐津やら福岡やら長崎やらの行政が税金でやってる公共ホールの主催公演などではありません。ボランティア主催者が仕切る完全な民間公演で、あくまでも公共ホールを借りているだけ。九州ツアー全体を統括する連絡係みたいなものはありますが、福岡にいるその事務局長さん(という名前なのか)も普通の某大手企業サラリーマンさんのボランティア。公金は一切投入されてません。だから、ホールが主催する九州交響楽団公演とかN響公演とかとはお値段も違うし、市の公報に宣伝が掲載されたり、駅や町中張りポスターがこれでもかと貼ってあったりはしません。

だけど、どういうわけか、やくぺん先生が停まった宿のフロントのオッサンは「ああ、日本フィルですか」と知っているし、唐津市役所隣のバスセンターのカフェのマスターも「7時からでしょ、大丈夫、急ぎますから」って演奏会があることを知っている。どうも唐津市民会館大ホールには九響が来ることなどなく、オーケストラといえば年に一度の日本フィルだけだそうな。へえええ…

もう面倒になってきたので、「コンサートレポート」みたいなことはしません。手短に。

開演前、再来年からの建て替えが予定されているというくらいの古びた、二昔前の1000席くらいの市役所裏の市民会館前には、熟年中心の聴衆が列を成す。みんな基本は車移動で、隣の神社の駐車場も兼ねているのか、会館前には広い駐車場がある。
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館内は見事なまでのバリアフリー前様式で、どこにいくのも階段だらけ。さほど稼働率が高くないのか、最近はどこもひたすら充実させるカフェとかレストランはなく、周囲に食い物屋がないのが困る。唐津って、原発マネーで潤う隣の玄海町が合併を拒否したお陰で、行政区としては今はそれほどお金が豊かじゃないのでしょうねぇ。原発マネーが落ちていれば、福井のホールくらいのものは簡単に建ったんでしょうが。おっと、話が別になるところであったぁ。

半島が向こうにある唐津は、九州北部のあちこちの古い町と同様に、昔は豊かな場所だったと良く判るところ。徴用工なんかがどういうものなのか、ある世代以上は実感として知ってるような場所です。どういうわけか、そういうところの常として、「文化活動を自分で主催する」一般市民がポコポコ出てくる。堀米さんが軟弱さ皆無でガッツリとベートーヴェンを弾き(うーん、ホントに不思議な曲だなぁ、このニ長調の協奏曲って)、アンコールを2曲やり、その後にラザレフ御大が全く響かないホールにドッカンドッカンと管楽器打楽器爆発させる《ろめじゅり》やって、最後に客席煽りに煽る古典交響曲ガボットだか《ろめじゅり》だかどっちか良く判らんやつやって、大盛り上がり。花持ってきた女の子たちを「みよ、これはお前らの唐津日本フィルを聴く会の代表だぞ、さあ拍手しろぉ」ってポディウムに立たせちゃう元社長お馴染みの大パーフォーマンスまでやって…
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客の高齢化は否めないし、なにせ唐津の実行委員長さんをやってきた方は80代半ば。だけど、どうやら、今はまだまだ動ける世代の事務局長さんが後を継いでいるようで…って、こういう話もまるっきりゆふいんと同じだなぁ。翌日の大牟田(昨日まで熊本と信じてたアホでしたっ!)マチネを控え、多くの団員は博多に戻ったけど、唐津に陣取る猛者達は11時を過ぎるまで打ち上げで盛り上がっておりました。
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長老団員さんに拠れば、昔は朝の3時4時までだったという。これもゆふいんと同じじゃわい。

てなわけで、報告にもなってない報告だけど、いろんな意味で「なるほどなぁ」と思わされた唐津の夜でありました。

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