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聖金曜日だから《パルシファル》を視よう [音楽業界]

まだ朝夕は肌寒いとはいえ、うらうらとした春の風が吹き抜ける「非常事態宣言」3日目の荒川放水路東の新開地、天からドバでもほーほーさんでもない真白き鳩さんが舞い降りる(のか?)聖金曜日の朝でありまする。

この世界パンデミック騒動が、最初はアジア系遺伝子だけが罹るんだろ、って高見の見物をしていた欧州などキリスト教文化圏に飛び火し始めた頃、外出禁止例を頂点とする非常措置はいくらなんでもイースター休暇明けには解けて、そこからは夏のフェスティバルや来シーズンに向けての準備は出来るようになるだろうとなんとなくみんな思っていたのは遙かな昔。今や、今年は秋シーズンまでダメ、予備審査をイースター明けから始めねばならない大規模国際コンクールや仕込みに半年以上かかる大規模な舞台は、秋以降のシーズンもダメかもしれないねぇ、という空気が漂い始めるイエス昇天の朝でありまする。ちなみにイースター休暇(ってもなぁ…)真っ最中の本日、リンカーンセンターからは「夏のモストリー・モーツァルト音楽祭は今年は中止します」という連絡が来ました。イースター明けくらいに次々とこういう連絡が来るだろうと思っていたけど、ま、今は季節が滅茶苦茶になってるのかな。

2020年の世界がどうなっているにせよ、春はやってきて今日はイエス様がアホなニンゲンのかわりに死の苦しみを味わってくださった記念日でありまする。ここぞとばかりに世界中の合唱団やオーケストラが無料ライヴをネット放送してくださるでしょうから、おうちで受難曲をお聴きになるのがいちばんよろしいのでありましょう。こちらが決定版ですな、なにせライプツィヒの聖トーマス教会からです。コラールを一緒に歌ってくれ、とのこと。
https://www.arte.tv/de/videos/097176-000-A/johannes-passion-aus-der-leipziger-thomaskirche/

なにしろ、人類史上こんなに暇してる人がたくさんいる聖金曜日は過去に無かったでありましょうから、《ヨハネ》が始まるまで待つなら、やっぱり《パルシファル》ってことになろーぞ。

てなわけで、世界の主要歌劇場、こぞって本日からイースター週末にかけて《パルシファル》舞台収録の無料送信をやってくださってます。総まとめをやらかすかぁ、と勢い込んだら、先月のびわ湖《神々の黄昏》でtwitter上での勝手連解説を敢行なさり絶賛を博した日本でも数少ない現代欧州のオペラ劇場最先端演出研究家「オペラ表象分析」専門家の中央大学経済学部准教授M先生が、ご自身のブログで既に纏めてくださっておりました。流石、専門家ですな。まんま、貼り付けます。ご苦労様です、ありがとうございますです。
https://84679040.at.webry.info/202004/article_4.html

この一覧を眺めて興味深いのは、「欧州劇場でのオペラライブ上演のきちんとした収録がいつ頃から始まっているのか」が良く判ることですね。今やDVD初期にお馴染みだった演出家さんの名前などなく、アムステルダムの御大が長老格かぁ。今や世界で唯一1950年代くらいの伝統様式を伝える舞台で世界中の保守的ヴァーグナー愛好家さんが争奪戦を繰り広げるというマンハイムの舞台とか、是非ともこの機会に出してきて欲しいものであります(追記:なんと、夕方過ぎに、そのマンハイムのヴィオラ奏者の方からの情報で、「パルシファル2020」というドキュメンタリーが暫くストリーミングされあます。この60年やってる演出についてひたすら関係者が喋るだけ、という凄くストイック名映像で、舞台は一切ありません!https://www.nationaltheater-mannheim.de/凄い世界になったものだぁ!)。また、なによりも、初台の劇場がオープン以来、片手に数える程の世界のオペラ界への貢献として賞賛されるべきかの《仏教パルシファル》を世界に示す最高のチャンスだと思うのだけどなぁ。

《ヨハネ受難曲》だろうが《パルシファル》だろうが、そんな悠長なもんはいかな暇とはいえ眺めていられない、という気の短い方の為には、イースターらしく、こちらをどうぞ。このコロナ禍の中、毎日、ご自宅から自作のカバーを一曲づつYouTubeで世界に向け歌っているというポール・サイモン氏の、《アメリカの歌》です。
https://www.youtube.com/watch?v=wVYPVvS-mI4
お判りのように、ライプツィヒのライブでも一緒に歌ってくれということになるのであろう、《ヨハネ受難曲》にもちょろっと出てくる《マタイ受難曲》コラール「ちしおみたたーるぅ」を下敷きにした音楽。鳥の声の中でのライヴは、今年のイースターに相応しいかな。

このときがあけたら、新しい時代がやってくる…のでしょう。亡くなった方が戻らないように、2019年末までの世界は、もう戻らない。それがどんな世界かわからないけど…

[追記]

結局、午後2時前から日暮れ頃まで、メトの《パルシファル》を見物しました。メトのヴィオラ奏者さんが先週だかにコロナで亡くなったとのことで、その追悼という気持ちもありまして。その方が乗っていたかは判らないです。

意外にも引きが多い映像で、やくぺん先生がメトでお馴染みのファミリーサークル下手側から見下ろしたような絵面もかなりあり、なんか、懐かしいなぁ、という感じ。尤も、3幕最後の自暴自棄になってるアンフォルタスの表情など、やはり天井桟敷からじゃ絶対に判らぬなぁ、とも思ったりして。

かくて、最後は窓開け放って、暮れゆく葛飾の夕日の中に「グラールを開帳せよ」というありがたぁいペーター・ホフマン様の雄叫びを響き渡らせた聖金曜日の夕方でありましたとさ。第3幕がパンデミックの世界に見えるな、というのが無理な春の夕方。

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タッチ

九州のF市のタッチです。コロナ禍で暇です(といったら不謹慎ですが)。ミーハー(死後?)路線で、ラトルのパルジファルをちょっとだけ拝見しました。何もわからん素人ですので、演奏に関してはコメントできないのですが、あれっ?と思ったのは、樫本さんが奥に座ってられたことです。当初、第2ヴァイオリンの頭を勤められてるのかなと思ったのですが、演奏されているのは第1ヴァイオリンのパートのような。。。(違ってたらごめんなさい )。。。どなたか専門の方、ご解説いただければ幸いです。
by タッチ (2020-04-10 18:17) 

Yakupen

タッチさま

小生はベルリンフィルの会社としての人の差配の仕方に関してはその筋の滅茶苦茶詳しい方のような知識はありませんが、一般論として、オケのシェフが勝負曲みたいな大曲をやるときはコンマス二人が頭に並ぶこともあります。スイマセン、全くの一般論で。

by Yakupen (2020-04-10 18:57) 

タッチ

やくぺん先生ありがとうございます。そうなんですよ。N響で堀さんとまろさんの両頭とか、Q響で豊嶋さんと村田美英さんが並んでるのとか(いつの話ですか)見たことあるんですが、今回の映像では、通常のコンマス席から3つ奥、ふつう第2Vnのトップの席にいらっしゃるのです。。。で、ぼけっと眺めてたら、前奏曲のおしまいのとこ、弦楽器は第1Vnだけのようですが(海賊版みたいなDover社のスコア)、樫本さんの弓が動いてて、コンマス席のおじさんは休んでました(ベルリンフィルの団員に詳しくないので、どなたなのか知りません、ごめんなさい)。ホールの響きだのなんだの複雑な理由からなのか、ワーグナーが指定してるのか、最近のベルリンフィルはこんな並びなのか・・・・。だれか説明・コメントされてないか、今日全部みた後、ネットの海のブログやウェブサイトを探してみようと思います。こんなアホなこと気になるのはワシだけかなぁ。
by タッチ (2020-04-11 12:18) 

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