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新開地に夏が来た [葛飾慕情]

水無月一日、とうとう夏になってしまったじゃないかぁ…

毎週金曜午後遅すぎない時間に恐る恐る京成電車と都営地下鉄に乗って佃の塒に戻り、月曜朝の燃えるゴミ出しのために日曜夜からは川向こうの新開地葛飾巨大柿の木下オフィスに巣籠もり逗留、町工場に向いた表の公道に落ちまくっている柿や桃、サルビアの葉っぱや花弁の掃除の他には、近所のコンビニにすら行かない…ってな生活が始まったのは、今を去ること10週間も前、春のお彼岸頃からだったか。

早々と咲いた桜に上野公園に人がどっと繰り出す三密(そんな言葉は、まだ無かった)を抜け、旧奏楽堂でのベートーヴェンのピアノ三重奏全曲演奏に3日間通ったとき、俺は絶対にコロナ・ウイルス保菌者になったぞと確信。年寄り家庭の佃での危険極まりない家庭内濃厚接触を避けるために、自主隔離を決意。これだけの期間、所謂コンサートホールや劇場や、はたまた練習室やサロンやらに足を運ばないなんて、40年ぶりくらいじゃないかしら。

このパンデミック世界に突入する前は、いよいよこの葛飾オフィスも建て替え話が進んでいて、巨大柿の木が実を付け公道を赤く染め、甘い香りで満たす秋も昨年でオシマイになるところだったが、どうも銀行さんも工務店も根こそぎ話がひっくり返り、それどころではなくなってしまったこの「新たなる日常」とやら。ニンゲンの世界がどうあれ、春の訪れから初夏に至るまで、時間の変化を教えてくれるのはこの地球上の最強生命体植物の権化たる柿の木と、桃や蜜柑、それにこのかつての親の家が葛飾オフィスとなってから植えた覚えもまるでないのにみるみる巨大に聳えつつあるサイプロス。季節無関心な裏のギンモクセイも、雀たちの寝床になっているだけじゃなくて、地味な白い花をしっかり咲かせては落ちていくのをあらためて知る日々。

本来ならばこの季節、5月半ばの大阪国際室内楽コンクールを今年の最大のイベントとしていろいろなことが起き、今はサントリー室内楽お庭から、北イタリアはレッジョの初夏の光の中に燕たちが飛び回るのを眺めていた筈。天才パスカルくんも7月の《ルル》のためにトーキョー長逗留にやってくる。新帝都が世界大運動会で大騒ぎになるときには、久しぶりの道夫先生復帰のゆふいん音楽祭が遙か大分で待っていた…。

そんな仮想世界のタイムラインを愛でても仕方ないと思いつつ、なぜかフライトが95%削減になって外国航空会社などひとつも乗り入れていないのに「輸送力増強」のために強引に始まった羽田新北風離陸ルートを巨大柿の木の上まで登ってくるちっちゃな737や320、はたまたダッシュ9まで姿を見せるようになり、たまぁに78や350がやってくるとなんてデカいんだと感嘆する奇妙な空を眺めると
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もう柿の木上空を支配するのはひよちゃんでもなければシジュウカラさんでもなく、遙か高みを滑空しつつギチギチ歌う燕さん。朝になると秋に大きく実るまで待てずに落ちていくちっちゃな実と蔕の絨毯と化している巨大柿の木や、堅そうな実をつける桃
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周囲では、蜂さんたちが一生懸命本来のお仕事をなさってら。
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共にお籠もりの日々を過ごす友のために出してやっている佃のセレブなぶんちょう(食いしん坊のべっぴんさんは、コロナで没したロヴェット御大と同じ日に、一緒に天国に付いていってしまった)の食い残しは、ノンビリおっとりほーほーさん
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それに半ダースほどの雀ファミリーが占拠。なくなるとじゅぐじゅぐほーほー仰るのは困るなぁ。嘴の黄色い雀っこよ、虫はもういっぱい飛んでるんだから、ちゃんと自分で採れるようにしないとダメでちゅん!
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デジタル弱者の爺には仕事など振って来ないコロナの日々、このオフィスを維持する固定費と食費が賄えるかどうかの収入しかない今日この頃ながら、紙の本は佃オフィス撤収時からまだ図書館に並べ切れていない程あるし、「レコ芸」原稿をやれるほどまともなオーディオ装置はないもののデジタルアナログ音源も山積み。楽譜は必要最低限のものしかないが、まあ、デジタルでなんとかなる。もう死ぬまでかけてもこれらを処理し切れないのは明らかなライブラリー積み上がる葛飾巨大柿ノ木下で、こんな生活が続いても、それはそれでええんでないかい、ねぇ、ほーほーさん。

かくて、川向こうの新開地は葛飾、元町工場だらけで周囲の住宅地の建て替え作業が次々と始まりつつある年老いたステルスタウンにも、ぼーとしてても夏が来た。

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薫風に 柿の子落とし 春はゆく

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