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捨てた名前への追悼 [売文稼業]

本日、ほぼ同世代の同業者さんの訃報を知りました。

やくぺん先生が、実質上その一部を切り取った2020年版改訂みたいな面倒な仕事をこの数日ずっとやってる『クァルテットの名曲名演奏』という小さな新書版書籍を神楽坂の出版社から出したとき、今は某著名雑誌の名物編集長となっている当時の担当編集者さんが、同じシリーズでもの凄く趣味的と言われそうだけど、類書のない貴重な本になること確実なものを出してました。こちら。
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コンパクトながら、恐らく過去に日本語で出たイギリス音楽文献としては最も情報量が多く、語り口も趣味的になり過ぎない、とはいえこんなジャンルを手に取る連中のマニア心も際どく擽ってくる、なかなか英国風に老獪な入門書。腰を抜かしたものです。こんなものをやれる奴がいるんだぁ、って。

ぶっちゃけ、今はなくなってしまったONブックスシリーズの中でも、際立った名著であります。

著者の山尾敦史氏、その後、どういうわけか知らないが、この名前を捨てました。書き手のやり方とすれば、「ディーリアン三浦先生亡き今、英国音楽は山尾」とひたすらその路線を突っ走ればそれはそれでありなのに、止めてしまった。勿論、知ってる人は知ってるわけで、そういう方面の仕事をしていないわけではないようだったけど、メインの仕事はちょっと違う方向に振っていた。不思議とも思える使命感で、そっちをやってるように思えた。今世紀に入ってもう20年、あの人がこの山尾先生、とは知らない編集者さんや若い同業者さんも増えてきてたみたいだったし。

追悼とは、「こういう人がいたことを、みんなで忘れないようにしよう。みんなが覚えていれば、その人は生きているのだから」という行為だとすれば…本日、あらためてこういう書物がある、ということだけでも紹介しないわけにはいかない。ってか、やくぺん先生に出来る追悼は、「この本がある限り、あんたはピンピンしてるぜ」と、燕になって天国への道へとさっさと去ったペンギン男の背中に、デカい声で叫ぶくらい。

ゴメン、もしかしたら、嫌だったかな。

合掌

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