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日本でも「長老」が聴ける [弦楽四重奏]

お彼岸も過ぎてあれよあれよと神無月となり、御上がやってる芸術祭も知らぬうちに始まっている今日この頃、コロナ禍で中止になっていた新帝都首都圏の室内楽シリーズもそこここで再開しています。

そんな秋の夜長、2020年冬までの首都圏では「弦楽四重奏のメッカ」となっていた横浜の東の隅っこ、鶴見はサルビアホールで、2011年の311後に始まり、226アベ要請直前まで続いていた「SQSサルビアホール・クァルテット・シリーズ」が再開されました。みなさん、コロナ時代対応でいろいろ大変です。
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これが歴史。
https://musikverein-yokohama.jimdofree.com/%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%88/%EF%BD%93%EF%BD%91%EF%BD%93%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%AF%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/

んで、これが当面のこの先。
https://musikverein-yokohama.jimdofree.com/%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%88/%EF%BD%93%EF%BD%91%EF%BD%93%E3%82%B5%E3%83%AB%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%AF%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88-%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/

なんだか当電子壁新聞のような0年代からの古いブログ編集では、もの凄いリンク先アドレスになるようですが、呆れたデジタルレトロとお見逃しあれ。

昨晩の演奏会、本来はプラジャークQの現メンバーによるサヨナラ演奏でもあるベートーヴェン弦楽四重奏全曲演奏会のひとつが予定されていたもの。当然、100席のホールは満席だったわけですけど、ギリギリまで頑張ったけど中止。その交代公演として、ニッポンの長老、我らが上野の学長さん率いる澤Qがこの小さな空間に登場なさった次第でありました。

澤Qといえば、意外にも、と言ったら失礼だけど、創設から30余年、メンバーがひとりも交代せずに続いている珍しい団体。日本には長い時間続いている団体ってそれなりにあるのだけど、続いている理由は「年に1度か2度、演奏会を前提に集まって普段はやれないクァルテットの楽譜を(半ば持ち出しで)弾く」という状況が殆どだから。つまり、嫌になって喧嘩になって誰かがこれはもう無理だと辞める、などという状況にまで追い込まれないので続いている、というのが殆ど。それを悪いとは言わないし、若い世代にはもうそういうものだと割り切っている団体もあるようですな。

澤Qが凄いのは、アマデウスQに澤先生が習いたいから、というある意味で無茶苦茶な理由で結成され、そのメンバーでアマデウス・アンサンブルやら(欧州ではアルバン・ベルクQがやっていた役回り)、アマデウスの弟子筋のヘンシェルQとの付き合いやらが出来、欧州公演もしたりして、しっかりと常設メンバーの団体としての活動を続けてきていた。流石にこのところ、市坪さんを含めてみんな大長老になり学長クラスが並ぶとてつもないことになってしまったわけで、かつてほどの活動は出来ないにせよ、きちんと団体として機能している。いやぁ、こういう「長老」団体が日本にもあるんだなぁ、って。思えばプロムジカは岩淵御大のワンマン団体で次々とメンバーが交代したわけだし、今や伝説どころか神話レベルの巖本真理Qにしても実質的な活動期間は60年代後半から70年代いっぱい、20年くらいなものだった。澤Qがどんなにすげぇか、お判りかな、皆の衆。

そんなニッポンが誇る長老の奏でる古典派とドビュッシー、ぶっちゃけ、「押さえるポイントはきっちり押さえ、あとはその瞬間に任せる」という音楽。つまり、エベーヌとかベルチャとかの世界的に売れてる団体の「CDみたいだぁ」って作り込んだもんとは真逆、もう判ってるからあとは舞台でやろうぜ、ってもんです。

もう大フィル首席を退いてからどれだけになるのか、すっかり背筋の曲がり具合など往年のロヴェット御大っぽくなってきている林さんが角度の浅いチェロのかまえ方からブンブンと響かせ、澤先生は安心してデル・ジェスの許容量デカすぎと呆れそうな表現に身を任せる。若い連中だったら「それ、やりすぎ」と叱られかねないことも、この人達なら、なんか格好が付いちゃう。ホント、冗談じゃなく、ブレイニン御大にも迫る無礼人ギリギリの境地。《不協和音》第3楽章のトリオとか、この狭い会場には収まりきらない表現力。っても、パシフィカなんぞがここで弾いたときの会場壊れるかというような物理的なパワーとは、まるで異なるんだけどさ。

《ラズモ》第3番の終楽章フーガも、若い連中がやるような速さ比べは鼻で笑って、きっちり深い歩みを維持しつつ、物理的ではなく感覚的なスピードをひたすら盛り上げていく。どうやったらああいうことが出来るのか、細かく眺めていくとこれはキリがないけど、やれちゃうんだから仕方ない、ってか。終わって、市松模様、半分の客席で満員の聴衆は大拍手。
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こういう芸を見せてくれる団体が、この列島にも生息しております。若い人は真似しちゃダメな巨匠芸、皆さんおいそが氏なので次はいつの機会があるのか判らないけど、チャンスがあったら、是非どうぞ。

サルビアホールのシリーズ、コロナがどうなるか見えないけど、ともかく、次々と若手中堅が来演いたします。乞うご期待。

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