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ちいさな訃報 [新佃嶋界隈]

本日2020年11月1日午前10時、佃在住、箕口ぶん、急逝いたしました。

朝、いつものように「♪ピヨピィーヨ・ピヨピヨピィヨ」と鳴いて塒の扉を開けろ開けろと騒ぎ、寝てる住民を叩き起こし、いつものように週末朝飯定番のスパゲッティを食い散らかし蜂蜜を舐め、足下で生後半年の若造と喧嘩し、足の裏をつっついたりしてた。ちょっと席を外し、あれ、追いかけてこないなぁ、慌てて扉を閉めなくて良いのでラッキー、と思って戻ってきたら、若造がごろんと寝転がった爺さんの姿を横でぼーっと眺めておりました。

愛してたんだか良く判らない嫁さんを失って半年、特に病気でもなく、若い頃の大冒険で片足のツメをひとつ失っているので脚力は弱っていたものの、どうすればカバー出来るかちゃんと知って自分の世界を朝から深夜まで問題なく飛び回ってた。何を思ったか、急に嫁を追いかけあっちの世界に行くことにしたようです。いきなり、パタンと、大川端から新帝都を見晴らす小さな世界から去って行きました。
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享年8歳8日。驚くほどの長寿というわけではないものの、この小さな命に神様が与えられた時間は充分に使い切った大往生でありました。

2012年11月、うちのお嫁ちゃまが前の職場でひとつ大きな仕事を終え、一気に反動が来たかのように体調を悪くし長期休暇を取っていた頃、小さな命の責任をとってみるのはどうだ、という医者からのアドヴァイスを真にうけ、ある日突然、豊洲のホームセンターから生後2週間ほどで毛も生えていない小さなブンチョウを連れてきました。「来るか?」と尋ねたら、目が合ってウンと応えた売れ残りだった。今の自分に新しい命の世話など出来るか心配だったそうですけど、ともかく、お嫁ちゃまが付き合ってきた歴代ブンチョウの定番命名方式により「ぶん」と名付けられた男の子は、お嫁ちゃまから直接食い物を与えられ育ち、狭い縦長屋の中を起きてからお嫁ちゃまの腕の中で寝るまでずっと勝手に飛びまわる生活になり、すっかり「ヒト」として育っていきました。

ちいさな命を育て、物理的な大きさが違う生命体に配慮しながら一緒に暮らすことで、うちのお嫁ちゃまも病からから恢復したばかりか、80年代半ば過ぎからやってきた職種を離れ、若い人を育てることに専念する(=現場を去る)決断も出来ました。まだ自分にもやれることがある、という自信を与えてくれた、人生の小さな恩人であります。

いつまでもひとりでは可哀想ということで、3年のヒトだけとの付き合いを経てお嫁さんを迎えたものの、結局、形は同じで自分より弱い別の種族に敬意をもって接する、という夫婦関係だったようです。奥さんの方はダンディで礼節を弁えたぶんに首ったけだったんですけどねぇ。

コロナ禍に嫁さんに先立たれ、直ぐにひよっこ坊主がやってきて、なんじゃこの騒々しい奴は、と思いながらも歌だけは仕込み、あとは、やくぺん先生が縦長屋に戻ってくるとさっさと掌や懐に入って来てはうとうと寝てしまう、気楽な隠居爺生活をしておりました。お互い、どっちが先かな、とは言わないけどさ。

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ライフスパンの違う命と一緒に生きていくとは、日常の中に常に死を意識すること。ありがとう、ぶん、わしらはもうちょっとこっちの様子を眺めていくよ。

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