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新しい日常のための舞台劇 [音楽業界]

今年2021年はストラヴィンスキー没後半世紀の記念年でありまする。一昔前なら、「さあ、著作権がフリーになるからジャンジャンやれるぞ」という記念年だった没後半世紀なのに、いつの間にやら没後著作権がドンドン伸び、地域の特殊事情などもあるし、今やもう訳が分からぬことになっており、実利的なお祭りではなくなってしまったのが残念であります。

なんにせよ、「没後半世紀」というのは、その創作家さんがホントに社会的なアイコンとして定着しているかを判別するひとつの指標としては便利な長さではあります。というのも、このくらいの時間が経つと、その作家さんと直接の知り合いだったり、演奏へのアドヴァイスを貰っていたり、あるいは創作に関わっていたような人は流石にもう世を去っている。再現芸術の場合、もう「作家を知っている」というアドヴァンテージがある人もいなければ、逆にハンディキャップのある人もいない。みんな横並び一線で楽譜なり戯曲なりに取り組めるわけですな。とはいっても、まだまだ半世紀前ならその時代の空気を知っている人は山のように生き残っていて、リアリティを感じられる人も多い。若い頃にどっぷり浸った、なんて人も、老人になったとはいえまだまだ文句を言ったり、あれまぁと驚いたりも出来るし。

「20世紀の音楽史に最も影響力があった作曲家のひとり」と言われ、まあそうなんだろうなぁ、とみんななんとなく思ってるストラヴィンスキーが、没後半世紀の厳しい歴史の洗礼を受ける年…の筈が、なんとまぁコロナ禍が始まってまる1年になろうというのに収まる気配すらなく、庶民にとっては実質鎖国ニッポンの音楽業界も、組織を維持するために無理しても公演を作らねばならぬオーケストラやオペラはぐぁんばってるけど…という惨状。ちっとも記念年の盛り上がりなどないのは、皆々様お感じのとーりでありまする。

そんな中、コロナ騒動が一段落付いたように感じられた昨年の初夏くらいから、みんな想い出したように取り上げているストラヴィンスキー作品がありまする。そー、今から100年ちょい昔、第1次大戦末期から直後の戦乱とスペイン風邪で劇場なんてまともに機能しなくなっちゃった状況を前提に創り出された、《兵士の物語》でありまする。

どういう経緯で創られ、どのように上演されてきたか、ま、いろんな人がいろんな風に語っている作品ですから、調べたい方はてきとーに調べて下さい。舞台の規模が小さいだけでなく、かなり造りが緩いアングラ上演向けの作品だから、上演史をきっちりフォロー出来ている研究などは存在しないでしょうけど。

実際、昨年の初夏くらいに欧州の劇場がおそるおそる再開したとき、最初に新作プロダクションとして出てきて話題になったのが、シュトゥットガルト歌劇場が駅の東辺りの公園で野外劇として上演した《兵士の物語》でしたっけ。
https://www.b-academy.jp/hall/play_list/060055.html
ううむ、いかにもな演目だなぁ、と納得したものでありました。

鎖国ニッポンでも、たまたまか予定してか、日本フィルが気鋭のメディアプロデューサー落合陽一氏とコラボする秋の演奏会でも、この作品を取り上げました。これがまぁ、会場にいては起きていることの半分も判らないインターネット中継に特化したプロダクションだったようで、芸劇に座ってたやくぺん先生には評価のしようがないものでありましたっけ。これもまた、コロナの新たな日常の中での舞台、なんでしょうねぇ。
https://www.classica-jp.com/event/17586/
https://www.tpam.or.jp/program/2021/?program=76

ストーリーだってあるんだか無いんだか、テーマだってどうにでもなる、それどころかメインが音楽なのか舞踏なのか、演劇なのか、それすらどうにでもなるなんとも自由な設計図でしかない《兵士の物語》というミニ総合芸術作品、コロナの時代の制約や新しいテクノロジーなどをいくらでも持ち込める。舞台制作ばかりか鑑賞にも様々な制限制約がかかりまくる2021年には、ストラヴィンスキーの舞台作品の中では、《道楽者の成り行き》やら《夜鳴き鶯》やらを遙かに凌駕し、世界中でいろんなやり方で上演されることでありましょう。

そんなひとつの事例が、明日、現在ニッポンのどこよりもコロナ対策が厳しく、公共文化施設の活動に制約がかかっている地域のひとつ、横浜市で示されます。こちら。
20201219152938-0.jpg
https://peatix.com/event/1695057

本来ならば今日明日のかなっくホールでの公演だった筈が、一般のライヴ鑑賞はなく、明日のネットでの配信チケットのみになったようですな。ご覧のように、「狂言と舞踏と音楽」というやり方での再現で、コロナ対応に関してはこちらが詳しいのかな。
https://peatix.com/event/1652455/view

まだまだ配信チケットは申し込めるようですので、お暇な方は是非どうぞ。1時間くらいの作品ですから、ツルッと観られますよ。

かなっくホールがどこにあるか、なんて説明はしなくても良いのは、なんか寂しいなぁ。

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