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聖杯も〇〇〇〇もない聖金曜日 [音楽業界]

新帝都はすっかり桜も散ったイースターの日曜日、夕方の便で羽田を発つ前に、内堀の外のニッポンを支配する経団連系大手企業本社ビルのバベルの塔建ちまくる谷間におります。以下、全く内容のない駄文。2ヶ月間使っていなかった頭を治すためのウォーミングアップですぅ。

一昨日の聖金曜日、ヴァイオリニストの森下幸路氏が上野の小ホールでブラームスのソナタ全部をやるという演奏会があり、佃縦長屋のお嫁ちゃま家族の居候になって最初の夜のコンサート通いとして、出かけて参りましたです。

1年前に始まったコロナ禍、「東京春音楽祭」も、やくぺん先生の世を忍ぶ仮の姿のニンゲン体が当日プログラム・エッセイを執筆させていただいた演奏会もキャンセルになり、メイン会場の東京文化会館演奏会案内板も、無残な有様。
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うーむ、やはり本来の予定ならば、聖金曜日とイースター日曜日に《パルシファル》があったんだなぁ。トーキョーでは、ありそうでない季節風景なだけに、是非ともやって欲しかった。個人的には、「東京春音楽祭」のヴァーグナーは、もう一巡したのだから、あとは毎年キャストやら演奏会形式なりの演出やらをとっかえひっかえして毎年《パルシファル》を聖金曜日とイースターにやる、って風にしちゃえば良いと思ってるんだけど…そういうわけにもいかんのですかね。

ま、それはそれ。この日の目的は小ホールでありました。仙台フィルのコンマスなどを務めたこともある森下氏、豊嶋の下の矢部世代が多数輩出した優秀なコンマス群のひとりとして世に知られる方でありましょうが、独奏はともかく、室内楽デュオの活動は地道に継続なさっている。今回も、しっかり固定客がいらっしゃり、こんな状況にあって、それなりにお客さんがいらしておりましたです。
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演奏の中身は、ブラームスの楽譜と自由に対話する、という闊達な音楽で、いろんなものにとらわれるのはもう止めました、って音楽。こういう風になるまでにどれくらいの道を辿ってきたのやら、申し訳ないけれどずっと眺めていたわけではないものの、四半世紀以上昔のカザルスホールの楽屋とかまで想い出される春の宵。みんな、それなりに歳を取ってきてるねぇ…

なーんてノンビリ思ってたら、ふと違和感に気付いた。あれ、なんだろう、あ、そーかあ…

まさか演奏中の写真を盗撮するわけにいかないので、上の写真ではお判りにならないでしょうが、なんとこの演奏会、譜めくりさんがいないんですわ。

ピアニストさんは、鍵盤から手を離してぽちょっ、っと譜面台の上のものに触っている。そー、タブレットでの二重奏でありました。ピアノの場合、ペダル操作があるからどうするのかと思ったら、足はフリーにして、手での操作でしたね。ま、内部奏法なんかを考えれば、なんてことない負担なのかな。

あらゆる分野でリストラが進む21世紀の20年代、いよいよ室内楽の譜めくりという最後の牙城も陥落しつつある。思えば、まだ偉くなる前のアルディッティQがロンドンの北千住みたいなアルメイダ劇場で演奏会したとき、奏者ひとりひとりに譜めくりがついて、まるでオクテットみたいになって巨大な楽譜を捲っていたのを想い出してしまった。

春が来て、花も散り、時代もまた、じわじわ、着実にかわる。

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