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「弦楽四重奏曲」という題名の管弦楽曲 [弦楽四重奏]

驚くなかれ、「緊急事態」下にある2021年5月もあと1週間を切ったところで、やくぺん先生ったら「弦楽四重奏」というフォーマットのライヴ演奏をひとつも聴いておりませんっ!もう言うのも哀しい、本来ならば今月は大阪大会で、最低でも10団体、演奏会の数としてはなんのかんので少なくとも2ダース以上の力の入った本番に接する筈だったわけで…ま、それが「コンクール」というものなんだから当たり前なわけだけどさぁ。

もといもとい。んで、それらがなくなっても、緊急事態宣言と言いながら地下鉄浅草駅に降りる人がひとりもいなかったような昨年の同じ頃とは様相は様変わり、演奏会はなんのかんのやってる。特に、「演奏会やオペラの開催に補助金を出す」というニッポン独自の文化助成制度のお陰で、既存のオーケストラやオペラ団体などは客席がどうあれともかく公演を行わねばならぬという世界に類例のない奇妙な事情があり、その類いの音楽は(がっつり禁止されている大阪を除き)鳴り渡ってるのは皆様ご存じの通り。

だけど、弦楽四重奏の演奏会は全国的にほぼ壊滅で、予定されていたものは前の日曜日の故岡山先生のご自宅サロンでのエルディーディQとか、去る土曜日のつくばでのアマービレのちょっと特殊な演奏会とか、数える程しかなかった。んで、どっちも諸事情で行けてない。

このままじゃあ、これだけ演奏会があるのに「弦楽四重奏曲」が全くない皐月かな、って思ってたら、いえいえ、あるじゃあないかぁ。そー、この演奏会があったぞ。
https://www.operacity.jp/concert/calendar/detail.php?id=14358
ご本人は勿論、パリから遙か極東の島国まで来られる筈もなく、出演者も当初の発表からはあれやこれやの変更があったようですが、どうやら無事に開催されるようでありまする。んで、そのプログラムの中に、「弦楽四重奏曲第6番」なる題名があるじゃあないかい。

ああ、なんとか今月もひとつくらいは聴けるかぁ、と思えば、妙な副題がある。曰く、「~弦楽四重奏とオーケストラのためのハパックス」。そー、この作品、世にも奇妙奇天烈なことに、「弦楽四重奏曲」と謳いながら、なんのことはない、実態は弦楽四重奏とオーケストラのための協奏曲なのでありまする。

この作品、数年前の夏のサントリー音楽財団フェスティバルでデュサパン特集をやり、サントリーが委嘱した新作として初演を前にしていた《ペンテジレーア》の抜萃を出してきたという委嘱した側とすればちょっとムッとするようなことをされてしまったときに、遙々初演のアルディッティQを招聘して日本初演されてます。
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/schedule/detail/20140821_M_3.html
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2014-08-20
それほど昔のことではないので、覚えてらっしゃる方も多いことでありましょう。やくぺん先生とすれば、日本初演の前のパリの弦楽四重奏ビエンナーレでも聴いてるのはやっぱりアルディッティ御大で、別の奏者での演奏は明日が初めてなわけか。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2014-01-18

なんであれ、幸いにも明日の初台でチェロ務める猛烈お忙しの山澤氏が、ご自身のtwitterにデュサパン御大の解説をアップなさっているので、ご覧あれ。
https://twitter.com/operacity_hall/status/1397512854010466306/photo/2
うーむ、「なんであんたはこの曲を弦楽四重奏曲と呼ぶんねん?」という素朴な疑問に、腑に落ちるような答えがあるかはなんとも言えぬですが、こんな形態で二度と書く気はない、とはっきり仰ってますな。残念ながらパリでも映像収録はしていなかったようで、YouTubeにも音しかありません。こちら。

デュサパンって、正直、なんだかニッポンの音楽学校の優等生が卒業制作で書いて学内最優秀賞を獲得したり、芥川賞の候補作として演奏されたりするような昨今の若く才気溢れる作曲家さんが書きたがるような曲のお手本みたいな感じがあり、所謂「現代音楽」を聴き慣れた方なら、妙に懐かしさすら感じるような響きがするのだけど、この作品も全く抵抗感、ないでしょ。なんでこれ、弦楽四重奏曲なんじゃ、という疑問は、やっぱり残り続けるでしょうけど。

なんであれ、弦楽四重奏とオーケストラの協奏曲といえば、シュポアに始まり、エルガー、シェーンベルクの擬似バロック、くらいしか定番はなく、あとはガンサー・シュラーと、最近のヒット曲で我らがアタッカQの持ちネタたるアダムスの《アブソリュート・ジェスト》があるくらい。新作はそこそこあるものの…やっぱり、誰がどう見ても管弦楽曲でしかない楽譜を「弦楽四重奏曲第×番」などと堂々と名告ってるのは、古今東西デュサパン御大しかおらんみたいだわなぁ。

てなわけで、お暇なら、話のネタに明日の初台にいらっしゃいな。蛇足ながら、初台で「弦楽四重奏」が演奏されている丁度同じ瞬間、溜池でも「弦楽四重奏」が鳴ってます。
https://www.nhkso.or.jp/concert/20210527_2.html
こっちは、弦楽四重奏の弦楽合奏版。どーしてみんな、妙な変化球ばっかり投げるんじゃいっ、素直に4人で弾いてくれよぉ!

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