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宗次ホール東京に誕生 [音楽業界]

東京の西の果て、もう向こうは多摩は調布の京王線仙川駅からコロナ禍でも妙にオシャレで元気な商店街を抜けること5分のところに、桐朋学園があります。やくぺん先生的には若き日を過ごした東京のチベット深大寺から自転車圏の場所で、懐かしいといえば懐かしいけど、あんまり思い入れはない場所。

今更誰に説明する必要も無い桐朋学園でありますが、なんとなんと、戦後の女学校の中に音楽塾が借り住まいするみたいな頃から今に至るまで、本拠地の仙川には「ホール」と呼べるものが存在していなかったとのこと。無論、遙か富山には立派なホールも備えた滞在型の分校みたいなものはあったりはしたけど、ヘッドクオーターには広い練習室はあっても客席やらバックステージを備えたオーディトリアムはなかったそーな。ま、他の学部もあるし、広いとは言え近くのICUとかに比べれば猫の額程度の場所ですからねぇ。

そんな仙川の桐朋に宿望のホールが出来ました。場所は、駅から田園調布の方に向かう細い道を向け抜けたC&Cカレーの先、桐朋学園の門を右に曲がり、道沿いにキャンパスの西の端まで行ったところに音楽部の入口があり、その向こうに21世紀20年代のニッポンでいちばんの建築ヒットメーカー隈研吾設計と誰の目にも明らかな木造建築が。
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なるほど、これが話題の「桐朋の新しい木のホール」でんな。
https://toho-pr.wixsite.com/toho-munetsugu/%E8%A4%87%E8%A3%BD-%E3%81%94%E6%8C%A8%E6%8B%B6

このホール、あくまでも学内の施設であります。席数も最大でも234席、人口数万の町の公民館とか、民間ならトッパンよりも小さい、ハクジュとか王子とかくらいの小ホールです。ですから、公共や民間のホールが新しくできましたよ、というのとはちょっと意味が違います。

世間の普通の音楽ファンには関係ないといえばそれまでなんですけど、やはり学校ホールとはいえ学校には公共性というものがありますし、実際、藝大の奏楽堂以下、日本や世界津々浦々の学校のホールというのはそれなりに地域に開放されたり、学内コンサートが一般公開されたりするのが当たり前。かつての津田ホールや、いかな運命になるのやら石橋メモリアルホールのように、普通に一般貸し出ししている施設も珍しくない。全く非公開といのは、日本では日本大学カザルスホールくらいなんじゃないかしらね。

んで、本日、こんな演奏会があったので見物させていただきましたです。
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要は、今月頭からお披露目の「オープニングシリーズ」を行ってるわけですね。
https://toho-pr.wixsite.com/toho-munetsugu
詳細は上のURLをご覧あれ、と言いたいところですが、おや、まだアップされていないなぁ。先程広報の方に聞いた話に拠れば、この数日中にラインナップを発表します、とのこと。ちょっとお待ちください。コロナ禍の緊急事態宣言が出ているので、普通の意味での演奏会の一般公開が出来ない、皆さんに広く聴いていただきたくないわけではないのだが、様子を見合わせている、とのこと。無論、9月頭から3月までのオープニングシリーズのラインナップはきっちり決まっており、現場にはチラシも置いてあり、世間の様子をみている。状況が良くなれば10月以降にはコンサートチケットの一般発売をしたいとのことであります。発表をお待ちあれ。

この新しいコンサート・ヴェニュ、わしら普通の音楽ファンとすればポイントはふたつ。

ひとつは、なんといっても人気建築家隈研吾イズム爆発の「木のホール」ということ。今や東京郊外とも言えない仙川に巨大木造建築を造る、なぁんて視点からも話題になっている建築物ですな。

外装も、ロビーももの凄く木の感覚が表に出ている空間で、オーディトリアムに入ってもこんな感じ。
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この空間の質感は、写真やウェブ画面ではちょっと伝わりません。なんと言っても、匂いと湿度の感じがはっきりと木造であります。

いちばん印象的だったのは、ラズモ3番2楽章頭でのチェロのピチカート。ブン、という1音が、ホールにどっしりと響き渡る。一緒に舞台上で弾いていた第1ヴァイオリンの西野さんが「ビックリしました」と終演後に目を丸くしてらっしゃいましたです。好き嫌いは分かれると思いますが、いちどは遙か仙川まで出向いて聴いてみる価値はあるんじゃないかしら。個人的には、「新しいのに昔からあるみたいな響き」という印象が強かったです。

もうひとつの話題は、その名称であります。公式名称は、「桐朋学園宗次ホール」です。そー、あの宗次さんのドーネーションで建てられ、その功績を顕彰しホールの名前にする、というアメリカ合衆国タイプ。施設の名称はオーナーさん名かネーミングライツというのが常識の日本では、ありそうで案外ないやり方ですね。知る人ぞ知る、宗次さんは東京藝大の第6ホールにも多額のドーネーションを行っており、内部では「宗次ホール」と呼ばれているとのこと。
https://www.geidai.ac.jp/news/2014042517222.html
つまり、名古屋、上野、仙川と三つ目の「宗次ホール」が誕生したわけでありまする!

ちなみに、名古屋のホールの関係者さんに拠れば、数日前から宗次さんご自身から「今後は名古屋宗次ホールと呼称するように」との伝達があったそうな。

というわけで、今、母校の新ホールで演奏を終えたエクも、記念写真でニコニコ顔。
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果たして初夏の調布音楽祭なんぞでも室内楽会場に使われるのか、今から楽しみにしておきましょう。

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