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室内楽ネットワークというもの [演奏家]

こんな演奏会に行って参りましたです。
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Qアルモニコと「びみょーに澤Q」によるメンデルスゾーン弦楽八重奏曲がメインで、前半にハイドンの《ラルゴ》が付いている。主催は、また別の項目を立てて議論せにゃならん公益財団さんの無料コンサート。演目からお判りのように、午後6時に開演して正味一時間、要は「ラッシュアワー・コンサート」ですな。新浦安でやるかぁ、と湘南やら多摩地区の方々から突っ込まれればそれまでだが、それなりの人口と独自のコミュニティが存在する浦安新住民やら、蘇我方面にお帰りになろうという千葉都民、はたまた武蔵野線で帰れる沿線住民からすれば、案外と良い立地なのかも。

ま、そういう議論はそれとして、ともかく久しぶりのアルモニコでありまする。チェロが安定してからもう10年、とはいわないまでも、ずいぶんになるような。やくぺん先生ったら、どういう訳かこの連中が演奏会をやる日はいつも日本にいなかったりなんか先に入っていたりで、きっちりハイドンを聴いたのはこのメンツになってから初めて…かな、ヘタすると。んで、アルモニコの必殺技とも言えるさやちゃん(などというともう失礼なレディでありまするが)のお茶目さ炸裂、あああああ、久しぶりのアルモニコだなぁ、と感慨深かったものでありました。

今となればもう時効でしょうから記してもかまわんだろーけど、今世紀の頭くらい、山岡先生の大プッシュでマイスル御大のところに預けられるように「藝大初の弦楽四重奏として大学院に入った4人」がヴィーンに渡り、グラーツで優勝し、なんのかんのなんのかんの。あのときに、ヴィーンで出会った日本人ではないチェロを迎え、音楽の都に骨を埋める決意をし、なんのかんのなんのかんのなんのかんの、とかするなんてことになっていれば…そうねぇ、今のシンプリーQみたいなポジションには付けられた可能性もあった。アマデウスの爺ちゃん達を魅了した、上手いだけと揶揄されていた日本の団体にはなかった独特のキュートなセンスの良さは、正に90年代アマデウスの子供たちの最後の末裔として、大流行の「HIP」なんぞ何処吹く風のスタイルで、同じ頃にやってくるクスやらベルチャやらエベーネやらの新世代との世界覇権の闘いの中に独自の地位を占められたかもなぁ…なああああんて、失礼と言えば猛烈に失礼な妄想をかき立てられながら、ホントに懐かしく、そして、それなりに経験もお歳も召した音楽に浸っていたわけでありまする。

あああ、こういうことを考えるようになったら、ホントに隠居老人じゃのぉ。

んで、問題は後半じゃわい。なんと、こんなん!
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いちやんが都合でキャンセル、代打は我らが吉田様ではあーりませんかぁあああ!

うううん、エクは今年になって、少なくとも2回はこの曲をやってるし、夏の甲斐路で共演した方が本日もいらっしゃったりする。舞台上からアルモニコ・シン・チェロ氏がお話になるに、かなり急な話だったみたい。ともかく、話があって時間が合えば、はい行きましょ、ってちゃんとアンサンブルがやれる。音楽としてはもう林さんノリノリで引っ張り、曲のキャラとして第1ヴァイオリンはどんどん行ってくれ、あとはみんななんとかするから、というアンサンブルがほいやっ、とやれてしまう。

正に、ニッポン首都圏(林さんが東京かはともかく)の室内楽ネットワークはそれなりにきちんと機能しておるなぁ、と感深いものがありました。

室内楽には、はっきり「業界」があります。そこで商売が成立するフィールド、お金の動き方という意味ではなく、要は「〇〇弦楽四重奏団のヴィオラ奏者が急病だ、じゃああいつに連絡しよう」というネットワークのことです。こういうネットワークの中に入ってくる、そういうことが出来る奴と認識される、それがホントの意味での「室内楽業界に入る」ということ。こういう広がりがどれくらいあるかが、その都市の音楽的実力になる。

無論、そんなネットワークがきちんと出来れば国境を越えた対応も出来、例えば最近ではモディリアーニQのアメリカ公演が、ヴィオラがコロナ絡みだったのかな、ともかく渡米出来ず、さあどうする。で、声がかかったのが、前アタッカQのルークくんだったそうな。無事にツアーが全部出来たかは知らないけど、ともかく、代打には入れたらしい。ニッポンでもいつだったか、イェルサレムQだかがチェロがダメになって、たまたま日本にいたボロメオQのイーサンに声がかかった、ってのがあったような。そういうのは全然珍しくなく、「業界」としては当たり前。そうそう、最近ではプラジャークQのカニュカ氏がヴィーハンQの日本ツアーに入ってたっけ。

こういうことが出来るネットワークが、ちゃんとニッポンにもある。分母の規模がどれくらいなのか、ってのはまた別の問題だけどさ。トーキョーも、なかなか捨てたもんじゃないじゃんか。

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