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Z時代古楽到来…か? [演奏家]

昨晩、こんな演奏会に行ってきたです。
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やっぱりなんのかんのあったコロナ禍もまる2年目となった上野の春、官立イベントでは不可能な年度跨いで開催される東京春音楽祭の最後の公演であります。最後ってのは別に意図したわけではなく、びわ湖監督率いるオケをバックにスターが燃え上がる炎背負って「さらばさらば」と叫び終わりになる筈だったのが、なぁんということでしょう、ヴォータンがコロナに罹ってしまいキャンセル。んで、これが最終公演となってしまった。

いやはや、コロナは全然終わってません。なんせこの演奏会の主役だって、先月にコロナに罹ってしまい果たして国に戻れるのか、ましてや息が命の楽器の演奏家、ご本人twitterで大変だぁ、と仰ってたわけですし。

ま、いろいろなすったもんだはあったものの、無事に演奏会は開催され、会場はいかにも「古楽」って感じの様々な種類の鍵盤楽器がまるでミュージアム・コンサートでもあるかのような舞台上。上手下手のチェンバロやらフォルテピアノやらはともかく、真ん中には奇妙なレトロ電子楽器らしきものまで並んでら。舞台前に人々がワラワラ寄って眺めてる、ってのも伝統の古楽演奏会であるぞ。
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主人公の柴田氏も、トラヴェルソ2本どころかモダンの楽器まで持ってきて、ますます会場は「古楽」っぽい風貌でありまする。

中身は、上の演目リストをご覧になれば判るように、バッハのフルート・ソナタがメインに据えられているものの、実質は「柴田くんとアンソニーがあれこれの楽器を次々繰り出して延々と楽しい音楽の時間を提供する」というもの。ぶっちゃけ、今、何の曲をやってるのかはどーでもいい。C.P.Eバッハだろうが、グラスだろうが、はたまたクルタークだろうが、まあ、どーでもいー。なんせアンソニーったら、「まるでバッハっぽい即興」とかいくらでもやっちゃい、学校の隅っこにあるぶっ壊れたハルモニウムの音を増幅してくれるようなレトロ電子ピアノの椅子に座ってカッコ良く笛の調性をする柴田君をニコニコ見守って、はいよ、って次の曲に入っていく、途中の拍手はしたけりゃしてね、って。要は、昨今のドイツグラモフォンのアーティスト主導コンセプトアルバムみたいな造りでありまする。

あああ、なるほどぉ、これが「Z世代古楽」なのかぁ。一昔、二昔前の「古楽器」界に漂っていた「私だけが本当の音楽のあり方を知っている」「このやり方が正しくてカザルスもフルトヴェングラーも間違った音楽をやっているのだ」ってカルトっぽさは皆無。スッキリ爽やか、気持ちよい空気が流れる2時間とちょっと。

20世紀に入り、世界をマーケットとした録音や放送媒体が音楽消費のメイン媒体になってきたときに一生懸命求められた「誰にでも判る楽譜通りの正確さ」「誰もが文句が言えない上手さ」なんてものが、もう価値として追求されなくなってきている。そういう中で生まれてきた、良くも悪くも好きにやってる(風に見せる)音楽のあり方を、どうやってマーケットの上にのっけ続ければ良いのか…それにしてもこういうやり方をやるなら、ずっと座って聴いている必要は全然ないわなぁ。

…なーんてどーでも良いことを後半はずーっと考えてた、まだまだ寒い春の宵だったとさ。こんな風にすぅっと終わるお祭りも、あって良いのかな。

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