SSブログ

太鼓叩きが笛を吹きゃ [現代音楽]

こういう演奏会を拝聴して参りましたです。
https://teket.jp/9096/31447

なんで田舎もんのあんたが、欧米シーズンオフで円安にもめげず外来著名演奏家演奏団体のステージてんこ盛りの新帝都におるのに、とんと縁のないバロック笛!ましてや、曲の内容よりも真作偽作の話が常に先に出てきて頭がクラクラしてくる古今東西「名曲」の中でも極めつけの困ったちゃん、曲目解説などシロートは間違っても引き受けちゃならん、ってメンドーなもんを聴きにいくんじゃい…ってね。

トラヴェルソ奏者の永野さんが我が田舎盆地から由布岳越えた向こうの大分芸短の先生という地縁でもなければ、盆地音楽祭でいろいろ付き合いのあるフルート関係の先生方のお知り合いというわけでもありません。打楽器奏者の會田瑞樹氏がやる演奏会が久しぶりに新帝都にいるときにあるし、この日は体を空けようと思えば空けられそうなんで、板橋までちょろっとでかけてみるか、って程度の軽すぎる気持ちでありました、スイマセンっ。

んで、いかにもトーキョー私鉄沿線駅前グチャグチャ商店街の一本裏、みたいな場所にあるコンサートスペースに開演10分前に到着し
IMG_8790.jpg
入口にちょこんとお座りになっていらっしゃったご本人に挨拶したところで、やっと「打楽器奏者會田瑞樹がバロック・フルートと共演する為の自作新作」ではなく「作曲家會田瑞樹によるバロック・フルートの為の新作」だと知った次第。情けなや…ボケ老人、と罵倒されても返す言葉がないわい。

とはいえ、そうなればそうなったでスイッチの入り方が別になるだけなわけでありましてぇ、最近一種の大流行でもある「モダン楽器とは違い扱いが極めて面倒な古い時代の楽器のための新作を、超定番古典と一緒に上演する」という興味になるわけでんな。数週間前、16世紀宗教曲からシュトックハウゼンまで歌う歌手さんとあれやこれやお話させていただく機会があり、この歳になっても勉強になることは多いなぁ、と己の未熟さあまりのモノを知らなさに呆れていたこともあり、そのときの話の続きみたいな気持ちになって、天井の無闇に高いコンサートスペース天井桟敷(?)に大人しく座ったのでありましたとさ。

バッハの真作とされるフルートと鍵盤のためのソナタ全曲演奏の方は、「あああ、このような楽器って、書かれている楽譜と出てくる実音の間のズレをどう処理するかが最大の課題なんだろーなー」などと今更な事をあれこれ考えさせてくださる時間。んで、前半後半それぞれバッハ作品の間に挟まれた新作も、当然、そのような関心のコンテクストの中で聴くことになる。そりゃ、そうなるな、という方が無理じゃわい。

前半に披露された藝大でファゴットやってからオランダに渡り作曲家として研鑽を積んだ水谷晨さんというお若い作曲家さんの作品は、プログラムノートを拝見する限りぶっちゃけ「表現主義の響きを外から眺める」ってお仕事をしようとなさっているらしく、音符に書いてあることをキッチリ弾くという作業があまり意味が無いバロック・フルートという楽器に対するための最適解のひとつでありましょうね。出てきた音がどうなのかは、ま、聴く方次第、としか言いようがない。

んで、後半の新作を任された會田氏がやったことは、プログラムノートに拠れば、委嘱者の背景にある出身地京都と現在お住まいになっている大分、それに奏者の名前を音名化した音、それらがバロック・フルートという素朴な音響発生装置とどう関わるか、という真っ正面からの試み。要は、ちゃんと楽譜に音符が書かれ、それを奏者がどうするか、というある意味で伝統的な「作品」です。ほれ。
IMG_8796.jpg
あ、これ、作曲者演奏者のご両人が「どんどん撮影してください」と終演後にロビーに展示していたものでして、違法なパイレーティングではありませんのでご安心なさってくださいじゃだっく!

たまたま、先程、今はパリに戻っていらっしゃって次のプロジェクトで新作楽譜に取り組んでます、ってご連絡があったソプラノさんに「ワシは今日はこんな楽譜が音になるのを眺めて来たじゃ!」とSNS会話したら、「音符!」と叫んでらっしゃいましたぁ。そう、確かに、21世紀の今となると、音楽を音符で書き記すというのも、いろいろある音楽を伝える選択肢のひとつですからねぇ。

ノンビリしたことを言えば、會田作品で興味深かったのは、かなり重要な仕事をする一種のガジェットです。譜面台いっぱい並べて紙楽譜をだああああっと置き、奏者が上手側から移動しながら演奏していく、という現代音楽独奏作品あるある風景が展開する下手側に、譜面台の裏にピラっとアルミホイルが1枚、ぶら下がってるんですわ。で、ぶっとくて扱い難そうな木製(なんかな?)の横笛のお尻から吹き出される空気の流れを、そのアルミホイルにぶつける。当然、音がします。トラヴェルソを吹く、という普通の意味での演奏行為をしながら、同時にもうひとつの音を出す作業も出来るわけですわ。

なるほど、リード楽器の真逆、というか、空気の動きという撥で薄い金属を叩いている打楽器というか、こういう響きの広げ方があるんだなぁ。どんな音がするか関心がおありなら、キッチン横収納棚開けてアルミホイル引っ張り出して、叱られないくらいの長さで切り取り、台所の風の通り道にぶら下げてご覧なさいな。

果たしてそんな響きが音楽作品の全体像の中でどのような位置付けになっているのか、そもそも音程とリズム以外のコントロール困難な要素が極めて多い楽器に、更なる不確定要素を加えて、何を語ろうというのか?

終演後に會田さんに「アルミホイルって、いろんな重さがないの?」と「楽器」についての間抜けな質問をしたら、基本的にどれも同じなんだそーじゃわい。へえ、我が盆地オフィスに備わっているアルミホイルって、パリやらフランクフルトのスーパーで買って使い切れずに持ち帰ったEU仕様と、ニッポンの景品でもらったりするもんとが混在しておるもんじゃから、いろいろな違いがあると思い込んでおったわい。

てなわけで、ゲンダイオンガク、まだまだやることはあるな、と思わされた晩でありましたとさ。

なお、個人的には、作曲家會田瑞樹の今年最大の期待はこちら。
https://kitabunka.or.jp/event/16865/

やくぺん先生とすれば、翌日午後に遙か温泉県首都で沼尻オペラがあるのに行かにゃならぬんで、なんともバタバタしておるものの、こればかりは聴かんとなぁ。

そんなこんな、全く耳に出来ない作品の話ばかりをしたんで、最後にアンコールじゃ。演奏会の最後に披露された小品、演奏者ご自身から「録音録画撮影してくださって結構です」ってご推奨なんで、どーどーとアップしてしまう無責任私設電子壁新聞なのであった。

古い時代の音楽は、実質ほぼゲンダイオンガクなのであーる。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。