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日本フィルの九州ツアーについて [音楽業界]

先程、杉並公会堂で日本フィルさんが恒例の九州ツアーに関する記者会見を行いましたです。
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見よ、記者席にちょこんと並べられたお菓子ったら、訪れる九州各地から持ち寄られた逸品ぞろいじゃぞぃっ!博多のカステラ巻きみたいなもんは食べちゃったんで、包装紙だけでごめん。

やくぺん先生ったら、いつもの「賑やかし要員」、要は質疑応答でシラッとしてしまったときに手を挙げてなにか突っ込むための存在として呼ばれたのだろうと思ってたら、なんと某媒体から記事を作れということになってしまい、中身についてはこんな無責任電子壁新聞に記すわけにはいかなくなった。とはいえ、せっかくのこのこと杉並まで出かけて皆さんがいろいろ喋ってくれたんだから、関心がある方もいらっしゃるやもしれぬので、データ的なことではなく、その意義についてちらっと記しましょうぞ。

ええ、こんな壁新聞を眺めてるようなすれっからしの皆々様とすれば、「日本フィルの九州ツアーなんて、なにが珍しいんじゃ?オケの地方ツアーなんて近衛管弦楽団の頃からいくらでもやってたことじゃないかい」と思ってらっしゃるでしょーねぇ。確かにその通り。大戦前に今のN響前身の新響やら、東フィル前身の松坂屋管弦楽団、はたまた宝塚のオーケストラなんぞが地方公演をやってたのか、それはそれでまた別の議論になるのでそれはそれ。少なくとも戦後、オケが稼ぐために生き残るためになんでもやり、諸雑の歴史状況からニッポン国開闢以来「クラシック音楽」の人気が最も高かった敗戦後から占領下、そして独立後の高度成長始め頃には、オーケストラはいろんな苦労をしながら地方公演をやっていた。その辺りの苦労話は、先頃亡くなった宮崎マー坊さんなどがいろいろと語って下さっております。じゃあこの日本フィルの九州ツアー、何が他と違うかというと…ぶっちゃけ、運営の仕方です。つまり、ホントのことを言うと、聴衆には別にどーでも良いこと。でもオケ側とすれば、とても重要なことなのでありまする。

この九州各県を巡るツアー、最大のポイントは「地元のボランティアによる実行委員会」形式のツアーだということ。要は、「九州のローカル音楽事務所が日本フィル公演をうん千万円だかで買って、それを地方の主催団体に売ったり、場合によっては自分でホール借りて切符売ったり」というのではない。無論、今のオーケストラ地方公演の常識たる「公金で運用される地方音楽ホール(を運営する指定管理者やら地方文化財団)が、オーケストラ公演を買って、切符を市民向けに売る」というのでもない。地元の日本フィルを聴きたい人たちが集まり、主催者となり、ホールを借りて演奏会を行う。ましてや今回のツアー、御上の助成が取れなかったそうで…

ですから、今、急に流行の「公金を用いた文化事業」でもなければ、「民間が営利行為として行う興行」でもありません。似たものとすれば労音のやり方などに近いが、既存の鑑賞団体に乗っかるのではなく、このツアーだけのための実行委員会が作られるのですね。なんでこのようなやり方が出来ているか、45年目、という数字を見ればお判りになるように、日本フィル分裂騒動後の「みんなで日本フィルを守ろう」運動の流れであります。

実は、このような実行委員会による日本フィル招聘は、分裂後のある時期までは日本各地でありました。ところが、時は「芸術文化に公金を用いる」方向に流れ、いくら公的助成金が出ようがあくまでも「聴きたい奴が集まって勝手にやってる」ローカル実行委員会型の招聘はどんどん淘汰されていった。そりゃそうで、激安武蔵野などの例を出すまでもなく、公金を投入すればいくらでもチケットを安く出来る。自分らが実行委員会に入るような熱心な方はともかく、普通の聴衆は「市がいっぱい補助金を出してくれるんで、今度の新しいホールではN響が5000円で聴けるぞ」なんて状況になるわけで、そうなれば持ち出しにも限界がある実行委員会型が値段で勝てる筈がない。それに、実行委員会方式は、それこそゆふいん音楽祭の歴史を見ていただければお判りのように、実行委員となる人が高齢化し去っていったあとに、後を継げる情熱を持った人がいるかどうか判らない。ぶっちゃけ、運次第。いい人がいればやれる、だけど、殆どはそういうことにはならない。かくて、今や日本フィルの九州ツアーは、殆ど文化財クラスの貴重なイベントとなっている。

無論、かつては博多から殆ど出なかった九響が、九州のオーケストラとしての活動をするようにもなってるわけですし。地方オーケストラの力がどんどん上がってきた今世紀、中央に拠点を有するオーケストラが地方公演をやる必要があるのか、ベルリンフィルやらヴィーンフィルやらコンセルトヘボウらの世界に冠たるブランド・オーケストラ(今や、こういう言い方が普通になりつつあります)ならともかく…って意見もあるでしょうしねぇ。

日本フィルさんとすれば、その歴史的使命は終わっていないどころか、僕たちの闘いはこれからだ、という気持ちであることは確か。その旗振りにラザレフ御大というのは、旗振りならぬ棒振りの司令官としては、なかなか良い人選なんじゃないかい。ほーれ、記者会見もこの有様。
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とにもかくにも日本フィルの九州ツアー、九州方面の方はいろいろ情報が出てくると思いますので、ご関心の向きはお気を付けあれ。

願わくば、チケットを買うだけじゃなくて、俺が実行委員会に入って盛り上げてやろう、って方がいらっしゃれば有り難いんですけどねぇ。

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古典こてんコテン [弦楽四重奏]

…ってアホなタイトルを記して、あああ、今日は古典Qがあったのだが、お仕事で遙か横浜向こうの杉田劇場まで行かねばならなくなり、またダメになった。そもそも今日はソウル・アーツセンターでペンデレツキ様がKBS響で《ルカ受難曲》を振るんで当然ながら出かけるつもりだったのが、去る夏以来の病人認定遠距離出陣禁止命令で諦めねばならず、幸か不幸か久しぶりに古典さんにお邪魔出来るか、と思ってたんだけど。ふうう…

で、古典、ってもそっちじゃなくて、昨晩、関東地方を襲った猛烈な大雨もどうやら収まった頃に、マッカーサー道路の入りっ端になってしまいまるで周囲の景観が一変してしまったJTアートホール、最後の日に向けてカウントダウンが始まっているバブル期ホールの最後のひとつに詣で、カザルスQを聴いたのでありました。ホント、ここ、目の前に立派なチャリ専用道路があるのに、チャリじゃ行けない場所になってしまったなぁ。

さても、カザルスQといえば昨年の溜池初夏の室内楽お庭で、かなり強行軍の中でベートーヴェン全曲を披露してくださったのは皆々様の記憶に新しいでありましょう。今回はアジア・ツアーの一環でこの天候不順列島は2公演のみ。で、運んできたプログラムが、なんともまぁ、妙な、とまでは言わないけれど、かなり特殊なものでありました。こんなん。

ハイドン:《冗談》
ベートーヴェン:作品18の6
モーツァルト:《プロシア王セット》第2番
ベートーヴェン:《セリオーソ》

ですっ。えっ、って感じでしょ。とても「海外の著名常設弦楽四重奏団の来日公演」とは思えない地味さ。みんな大好き《アメリカ》や《死と乙女》、はたまた《ラズモフスキー》や《皇帝》は入っていない。そもそも「どっかに行って、広い客層に向けて自分らの達者さを聴かせ、喜んでもらう」という「お金で娯楽や感動を売る」なら、なんだか判らないけど凄かったと思わせられるバルトークとかの近代現代物をひとつ入れ、最後は芸術感動商売の元祖たるロマン派大作で終わらせるのが定番。すれっからしのファンがどんなに文句を言おうが、公演が成り立たなければ話にならないんですからっ。

皮肉ではなく、先月の末に首都圏三会場で「《鳥》+《アメリカ》+《ラズモ》第3番」というもうベタベタなプログラムを繰り返してきっちり客を入れたタカーチQの、いかにもかつての三大東京音楽事務所の系譜にあるメイジャー音楽事務所さんの作るウルトラ王道プログラムなんてのもあったわけでさ。地味さ、という意味で言えばトッパンさんでハーゲンQがやった「ハイドン作品76の2曲でバルトークをサンドイッチ」というもんもあったが、これは地味に徹し3晩ぶっ続けで並べればフェスティバルになる、って文字通りの地味自慢プログラミングになっていたわけだし。

そういう常識的な、はたまたはっきりとマニア向けを意図した戦略的な「来日公演プログラム」から見れば、昨晩のカザルスQのプログラムは、「何じゃこりゃ」で一発却下の可能性も大いにあり得るものでありました。だってね、どれも昔の言い方をすればレコード片面の曲、誰も悪い曲とは言わないけど、どれもが普通の意味でのコンサートを大いに盛り上げて終わるメイン演目になるにはちょっと弱い、ってもんばかりを集めている。こういうプログラムを何日か並べるフェスティバルならともかく、それを一晩やって帰っちゃうんだから…

お判りの方はお判りのように、このプログラム、「古典派4楽章形式の多様性」なんてタイトルを付け、「弦楽四重奏の歴史的展開」なんて集中講座に天下のカザルスQが招かれて大学のオーディトリアムで披露し、学生たちは来週までにレポート提出、なんて思えるようなもんでありますわ。で、明日は「古典派の解体」とかいう題のコンサートがあって、そうねぇ、ハイドンの作品103やって、シューベルトの《断章》を書きかけで止めちゃった第2楽章冒頭断片付きでやって、《大フーガ》やって、後半は作品130を改訂終楽章版でやる、とかね。なんか、いろんな事情がありまして本日はそういう企画もののプログラムひとつを取り出してやってみました、みたいな。

確かにこれはこれで面白く、特にハイドンは雑司ヶ谷拝鈍亭に通ってるような古学系マニアさんも大喜びしそうな娯楽巨編。そう、こういうのを面白がれるかどうかが古典が好きかどうかなんだよねぇ、ってやり放題な音楽。それに比べると、ベートーヴェンってやっぱり大真面目だなぁ、モーツァルトのこの曲集のテンポ設定って凄く意図的なんじゃね、ああああベートーヴェンさんここまでやっちゃったかぁ…って、古典派4楽章の定型もんばっかりが並ぶ故の中身の違いが良く判る。名店の素うどん食べ比べ大会、はたまた老舗盛り蕎麦一気喰い、ってね。あ、最後にデザートでファリャの「粉屋の踊り」と、これをやらねば客も帰れまい《鳥の歌》があったのは、やっぱり来日公演でありましたが。
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終演後、重労働のサイン会を終えたヴィオラのジョナサンくんとちょっと立ち話。これ、めちゃくちゃ面白かったけど、すごおおおく変わったプログラムじゃね?ソウルで何か古典派を巡るシンポジウムでもあってこういう特殊な演目をやってきたの、と身も蓋もないことを尋ねたら、「いや、そういうんじゃないんだ。やっぱり変わってるよねぇ。僕としても、弾いていて上手くいっているプログラムかどうか良く判らないんだ」とのこと。なーるほどねぇ。

とにもかくにも、こういうどう考えても小さな会場じゃないと成り立たないプログラムの公演が行われ、多い筈はなかろうがそれなりの聴衆がやってきて聴いているんだから、良かった良かったとしか言い様がありません。招聘元のメロス・アーツさん、先日のヴィジョンQと言い、夏のエベーヌQの世界ツアーといい、敢えて大手では出来ない冒険的なプログラムを仕掛けてくれて、ありがとうございますと感謝するしかないぞ。

ホントはこういうものこそ、公共主催者が公金使って「聴衆の動員は難しいが公益性が高い」イベントとしてやるべきことだと思うんだけど…向かいの人の姿が消えた文化庁東京出張所に向かって叫んでも虚しい秋の夜。いやはや…

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ヴィルタスQがいわきの水族館で弾きます [弦楽四重奏]

去る土曜日、久しぶりに多摩は武蔵小金井でヴィルタスQを聴かせていただいたであります。
https://twitter.com/Virtus_Quartet

丸山夫妻が主導するこの団体、個人的には未だに「結成四半世紀を迎えたすばるQ」なんだけど、「メンバーが交代したらもうそれは違う室内楽団体」というファンの認識が極めて強いニッポン音楽文化圏ではそういう訳にはいかないのかな。昨今のヨーロッパ北米の若手団体なら、創設メンバー二人がいれば立派に同じ弦楽四重奏団、ってのが常識ですからねぇ。

なんであれ、セカンド戸原氏時代は聴きに行こうと思ったら台風接近で相模湖駅まで電車がいかなくなりそうで断念、ということもあったこの団体、新セカンドで初めて聴かせていただきました。ま、ゴツゴツしたバスの響きを中声がしっかりコントロールし、ソプラノが歌う、という基本は同じ、ってのは言うまでもないかな。

この団体、創設の拠点いわき、録音もやれる相模湖、そしてここ小金井と、結成10年ちょっとできっちりホームベースが定まってる。こういう団体、案外、ニッポン首都圏にはありそうでないんですよねぇ。で、正に震災の年の秋から始まったこの「音楽談話室」と題されたシリーズ、いわきのプロデューサーを務めるA氏が企画と司会をする典型的な「地方音楽協会」の武蔵野版でありまする。100人ほどなのかしら、毎回、室内楽をホントに好きな、だけど所謂「マニアック」という感じとはちょっと違う聴衆が集まり、まともな弦楽四重奏演奏と、時に長すぎることもあるA氏のまともな音楽談話を楽しんでいく、という集まり。こういう楽友協会が人口20万くらいの町ごとにあれば、ニッポン国拠点の室内楽団体も喰っていけるんだけどねぇ…などとかなわぬ夢を漏らすより、今あるこういう集まりを大事していくことがなにより、なんだろーなぁ。

主催側の流れからして、この小金井の出し物は直接いわきにも繋がってる。小金井で演奏を終えたヴィルタスQ、新帝即位式で戒厳令となる新帝都を離れ、今週は広大ないわき市のあちこちで活動をしてる。そう、震災&原発事故に続き、今度は河川氾濫のいわき市であります。今月の頭、アジア・オーケストラ・ウィーク2019取材で訪れた頃は、「この辺りは福島といっても震災の被害はなく、いわきなどの方から移って定住する人も増えてるのです」なんてノンビリした話をしていた白河やら郡山でありますが、この前の台風後の水害で大変なことになっていて、そのいわきもアリオス裏の川が溢れ、対岸の専門学校などは浸水被害があったとのこと。地元のスターこばけんが地元アマオケを振るという大事な演奏会もキャンセルになったものの、幸いにも風の関係でアリオスは浸水被害はなく、「おでかけアリオス」もほぼ予定通りにやるそうな。

ヴィルタスQのいわきでの活動、昨日はありおす音楽ホールで公開リハーサルがありました。本日は山の中の草野心平文学館で演奏会が予定されていたのですが、中止になったようです。いろいろ大変そうだなぁ。あそこまで行けないのか、それとも聴衆が集まれそうもないということなのかしら。結果として、当初は超広いいわき市の山と海にアウトリーチする予定が、海だけになった。こちら。明日土曜日。
https://iwaki-alios.jp/cd/app/?C=event&H=default&D=02476
なんとなんと、水族館での演奏会。当初は、ホントに巨大水槽の前で弾くつもりだったんだけど、水族館スタッフから演奏のための照明が魚たちに影響を与えるとのことで、そういうわけにはいかなくなったそうな。まあ、魚たちには残念ながら聴こえないだろうしねぇ。

この演奏会、もうひとつの目玉は演目。ピアソラが唯一ヴァイオリン独奏を前提に書いた《鮫》をクァルテットに編曲して披露するのでありまするっ!既に小金井で演奏されたんだけど、いやぁ、これ、凄く格好が付いてます。まるでオリジナルで弦楽四重奏に書かれたみたい、と敢えて激賛しましょうぞっ。で、その編曲者が、こばけん氏以来のいわき市内から藝大作曲家に進んだ地元期待の若き新鋭、富岡篤志なのであります。

きっちりローカルに徹しながら、きっちりしたレベルを維持し続けるいわきの活動、ホントに耐える力を試されているような日々であるなぁ、などと他人事のように思っていられるのもいつまでやら…。お暇な方は、明日の夕方にいわき市南の水族館へいらっしゃいな。予約が必要なようですので、ちゃんと上のウェブサイトを眺めてください。演奏会そのものは1000円也だけど、諸事情で水族館料金が別途必要だそうなんで、午後からいって鮫を眺めてからピアソラ聴くよーに。…鮫、いる、のかしら。

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豊洲で「鳥獣戯画」を聴く [現代音楽]

東京湾岸は豊洲、舞台の後ろに遙か晴海大橋、豊洲大橋、そしてトーキョー虹橋の夜景がいっぺんに眺められるシビックセンターホールで、京都の(だと思うんだけど)作曲家鈴木陽子の個展を聴いて参りましたです。
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なんでまたそんな地味な、とお思いになられるかもしれないけど、理由はまあいろいろあって、ひとつはアンサンブル・ノマドのメンバーが限りなく「我が街」に近い豊洲なんぞにやってきてくださるなら、これは行かねば、ってこと。

それから、この作曲家さん、昨年だかに大川遡った門天ホールで、今、一部で話題のヴァイオリニスト石上真由子なんぞが加わる弦楽四重奏団で全部新作の弦楽四重奏と朗読だかのコンサートをやっていて、それでなんとなく気になっていたということ。そのときの演奏会のCDが出ているようなのだが、なんかわざわざ買うのも面倒だが、恐らくこの演奏会に行けば売ってるだろう、って魂胆があった。買い物ついでに聴いてくる、みたいで失礼この上ないなぁ。

てなわけで、新帝即位式があけ晴れ渡った空の下、未だ新帝都の空は戒厳令下で警察と消防ヘリ以外一切飛ばない妙な秋の素敵な日が釣瓶落としに暮れていき、風もそれなりに冷たくなった頃、チャリチャリと佃大川端縦長屋から豊洲の駅横、今時のモダンにガラス張りオシャレ空間になっちゃったシビックホールに向かったわけであります。

作品は実質全部新作で、ノマドの木管五重奏にピアノ&指揮で巨匠中川賢一が参加。どういうものかはこっちをご覧いただいた方が面倒ないでしょ。
https://atelier-canon.jp/office/1023yoko-suzuki/
って、殆ど作品の情報がないですねぇ。ぶっちゃけ、日本というか世界の漫画の元祖たる『鳥獣戯画』に描かれた動物の姿を「絵巻物の時間軸の水平移動に着目」(鈴木)して音にした連作木管室内楽集です。全部で7部から成り、編成はホルンとピアノの二重奏、フルートとオーボエとピアノの三重奏、という調子にいろいろあり、最後は木管五重奏にピアノ(半分以上仕事は指揮)が加わる大編成になる。演奏時間は休憩込みでまるまる一晩の演奏会なんで、こういうの、案外、ありそうでないわな。

音楽は、基本的に「小品の集まり」です。絵巻物、というと武満の《カトレーン》とかを嫌でも思い出すわけだが、要は「テーマが時間軸に沿って展開していく」のではなく、漫画が次々と繰られていくようにあまり多くない素材を楽器がやりとりする瞬間が重ねられていく、というもの。曲によってはある対位法と呼ぶべきものはあるけど、ガッツリなにかが起きていくというよりも、瞬間の積み重ねです。

楽器に動物が当てられて相撲をしたりする、って部分もあるそうだが、あくまでも作曲者は「鳥獣戯画」にインスパイアーされて作品を作っているのであって、決して「鳥獣戯画」の世界を音で描こうというオペラっぽい、交響詩っぽいものではありません。これはこれで、納得は行く。NHKEテレの日曜8時の番組で「鳥獣戯画」を精密に映していくときに、背景にBGMで流れていれば、ああああ、なるほどねぇ、ってなんとなく納得は行くかな、という感じ…かな。

最大の聞き物は、全楽器が登場する「法会」といういちばん大きな、20分以上かかる6部から成る部分。ここが最後に演奏されました。興味深いのは、管楽器の「吹く」という行為を思いっきり拡大していること。楽器を叩いたり、吸い口部分だけで吹いたり、楽器なしで吹いたり(要するに、限りなく声楽パートです)、いかにも今風に様々にノイズも素材として利用する。小林一茶の6つの俳諧を奏者が読むところもあるのだけど、言葉として「意味」が伝わることが目的ではなく、あくまでもサウンド。最後は、音色旋律みたいに6人の奏者が断片をつないで「我と来て 遊ぶや親の ない雀」と叫び(喋り、でも、歌い、でもないんで…)おしまい。ここだけはちゃんと言葉として聞き取れる。

木管五重奏とピアノという、かなり多彩な音色が引っ張り出せる曲で、「言葉」や「絵画」を創作のインスピレーションにしながらあくまでも純粋に音の世界を展開している、なかなか飽きない時間が東京湾岸の橋々のライトアップを背景に展開されたのでありました。

というわけで、この作品は意外にも全く寝ないで聴けた(失礼ながら、つまらんと平気で寝ちゃう爺なもんでして)んだけど、そもそも目的だった弦楽四重奏のCDは無事に購入出来たものの
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果たして鈴木さんという傍目から眺めた京都の喫茶店の人の良さそうなおばさまにしか見えない作曲家さん、弦楽四重奏という極めて音色としての素材が限られた世界でホントにやれるんだろうか、要らぬ心配をしてしまうのであります。まだ封を切っただけで、明日、朝っぱらに葛飾オフィスで柿の実掃除をしたら、別の作文仕事しながらになりそうだけど、聴かせていただきましょう。ちょっと想像が付かないなぁ。

身近なところでいろんなことが起きている。トーキョーはまだまだ面白い場所ですわ。

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葛飾柿の実収穫祭のお知らせ [葛飾慕情]

新帝都トーキョーは新開地、荒川放水路の東のやくぺんぺん先生隠居オフィスの巨大柿の木で、恒例の柿の実収穫祭を開催いたします。
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期日は来る日曜日10月27日、午後2時くらいから取り入れ作業を行います。

今年は例年よりちょっと早い気もするのだが、なんせ夏が暑く長く、日当たりの良い場所の柿の実がやたらと熟れて、既にボコボコと舗装された公道に落ちては、向かいの町工場のトラックに踏み潰され、とんでもない状態になっております。そんなわけで、まだ日陰だった実は緑っぽいのだが、そうも言っておられない。敢行いたすことにした次第でありまする。なお、台風などの場合は中止、雨天の場合は…ううんFacebook(Yawara Watanabe)で告知しますので、ご覧あれ。

なんせこの1週間くらいで一気に熟成が進み、既に柿の木近辺はこの方とか
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この方々とかが
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良い按配に枝から突っつける熟れた実を巡って制空権争奪を繰り広げていらっしゃいます。基本、帝王ヒヨちゃんは孤高の闘いなんだが、なにせムクたちときたら、まるでレギオンが押し寄せるように数を力に束となってやってくるので、柿の木上空のF-22たる機動性と俊敏性を誇るヒヨちゃんが制空権確保というわけにもいかない。そこに、ちっちゃい声でちちちぃと叫びながらこいつらも小さな群れとなって狙ってるわけだし。
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建て替えの話が現実化している古い家、ことによるとこの柿の老大木も今年でその命を終えることになるやもしれません。今年は豊作ではあるのだが、台風で実があたって商品になるような(って、こんな渋柿は商品にはならんのだが)もんは殆どありませんけど、ま、それはそれでいかにもこの老木の最期らしいかな。

お暇な方は是非ともどうぞ。

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クララ・シューマン生誕生誕200年によせて [音楽業界]

実は、世界中眺めると地味ぃいいに盛り上がっているクララ・シューマンの生誕200年、秋も深まる神無月半ば過ぎの湿った曇り空の土曜日午後、ライプツィヒともデュッセルドフルともボンとも縁がなさそうなトウキョウは練馬の駅前にも、こんなものすごい垂れ幕がぶら下がっている。
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恐らくは、ニッポン国建国以来(いつのことか知らんが)、最も大きく記された「クララ・シューマン」という文字でありましょうぞっ!これを毎日眺めていた西武池袋線沿線の善男善女の多くは、「シューマン」という作曲家の名前はクララっていうのか、なんか女の人の名前みたいだなぁ、と思いつつ脳内には頬杖をついて物思いに耽るイケメン作曲家の肖像が浮かんでいることでありましょうねぇ。いやはや。

とにもかくにも、客観的にデータを調べれば今年の「記念年作曲家」の中では、オッフェンバックと並び、ヴァインベルクなんぞは遙かにぶっちぎり、頻繁に記念されているのがクララでありましょう。交響曲全曲演奏会やら主要オペラ連続上演なんて派手派手なイベントは不可能な作曲家なれど、ちょっと前には藝大なんてメイジャーな場所で特集をやって最も知られた作品たるピアノ協奏曲が上演されたし
https://www.msz.co.jp/event/08826_geidai2019/
やくぺん先生が哀れ病気療養渡航中止に至るまでにも、ゼーリゲンシュタットの音楽祭で蓼沼さんが何曲かピアノ独奏曲を弾くのを耳にし、松本の音楽祭リートとピアノ二重奏セミナー発表会ではなんのかんの半ダースほどの曲が聴け、中には《ローレライ》なんて珍品もあったり。他にもまだどっかで聴いているような気がするぞ。

そんなかな、本日のこの練馬の演奏会は,「石神井の森トリオ」なる思いっきり直球ローカルな団体名の地元在住ピアノとチェロとヴァイオリンの皆さんが、区の「公益性の高い」(←今や皮肉でしか使えない言葉)イベントとして行っている週末午後の1000円也のコンサートであります。聴衆は練馬区のご隠居中心の皆様。ぶっちゃけ、演奏されてるのがクララ・シューマンだろうがファニー・メンデルスゾーンだろうが、ナディア・ブーランジェだろうがシャミナードだろうがビーチ夫人だろうが、はたまた田中カレンだろうがキャロライン・ショウだろうが、別にどーでもいい。土曜日の午後に素敵な音楽が聴ければ文句はない、という方々です。これは皮肉でも嫌みでもなく、そういうものなのだ、ということ。
そこに「クララ・シューマンと仲間たち」というテーマを持ち出して、前半のメインはクララ・シューマンのピアノ三重奏曲、後半のメインはファニー・メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲。その間に、FAEソナタからスケルツォとか、弟メンデルスゾーンのチェロの無言歌とか、「ノクターン」という言葉を発明したといわれるシマノフスカヤの短いノクターンとか、女性作曲家で世界で最も知られたバダジェフスカの《乙女の祈り》とか、マニアっぽさギリギリのきわどいところをつきまくった演目を並べる。当日プロに説明は一切なく、舞台の上から最初はピアノさんがクララ、チェロがロベルト、ヴァイオリンがブラームス、という設定での掛け合いをするつもりが、途中でグダグダになってやめちゃった、というのもいかにも(言葉の最良の意味で)ローカルっぽい演奏会でありました。

なるほどねぇ、クララ・シューマンだと、こういうやり方も出来るんだなぁ、と勉強になることしりでありましたとさ。

作品については、Youtubeでいくらでも聴けますので、ご関心の向きはどうぞ。ファニーのニ短調トリオって、弟の同じ調性の天下のド名曲が20回演奏されるなら1回くらい弾いてあげてもいいんじゃなの、というくらいの典型的なロマン派作品でありまする。最近はハ短調のトリオが人気急上昇なんだから、ぐぁんばれ、ファニーのピアノトリオ!

で、これはあまり大声では言いたくないんですけど、この数ヶ月のそれなりにあちこちで耳に出来たクララの作品でありまするが、ぶっちゃけ、正直に言うと、演奏なさった方が盛んに口になさる「弾きにくいのよねぇ」という感想は、まあ、なんとなく判る気はします。特に歌曲のピアノパートではっきりそれを感じるのだけど、要はこの作曲家さん、音楽のパルス感を全部音符に置き換えないと気が済まないところがあるんだわなぁ。

ご主人の超一流(些か問題はあって秀才タイプではないけど)作曲家の仕事では、音符に書かれないパルス感というものがきちんと存在している。ってか、立派な作品はみんなそうですね。譜面に書かれたリズムとはまた別の、音として書かれていることもあれば、書かれていないこともあるパルス感というものは音楽の中に存在している。それを、クララさんったら、どうも左手の細かい動きとかで、譜面に書かずにいられない、って感じ。結果として、そういう響きのコントロールが必要になってきて、見通しが悪くなるということではないけど、弾く方も聴く方も、なんだか妙に疲れる。恐らく、クララさんのピアニストとしてのキャラクターが関係してるんだろうけど。

先程聴かせていただいたピアノ三重奏でも、それなりに複雑なソナタ楽章とかではそうでもないのだけど、第3楽章みたいな音楽では「クララ節」としか言い様がないキャラが立ってくるなぁ、と感じましたです。第2楽章のフレーズが凄く作りにくそうなテーマも、小節線で示されているリズムと音楽の持つパルス感のズレみたいなもんが原因のようにも思える。無論、それこそがこの作曲家の魅力にもなり得る重要なポイントなんでしょうけど。思えば、旦那シューマンって、そういう微妙な部分のコントロールの名人でもあるわけだわなぁ。

なんでれ、そういうところまで思わせてくれた記念年のクララ・シューマン様プチ流行、あと2ヶ月ちょっとでまだどれだけ聴けるやら。それにしても、どうしてボザール・トリオなんぞがクララを弾かなかったのかなぁ。今は簡単に手に入る楽譜、それこそここで今、この瞬間に手に出来るわけだが
https://imslp.org/wiki/Piano_Trio_in_G_minor,_Op.17_(Schumann,_Clara)
20世紀90年代頃までは出てなかった、とかなのかしら?というその辺り、プレスラーじいさんに誰か尋ねてくれんかね。

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さかいのあっちゃんは指揮もするのだっ! [演奏家]

昨晩はインバウンドさんたちが観光バス待ちをする銀座通りはヤマハホールに行き、酒井敦さん、ってか、「名古屋のあっちゃん」が仲間たちと奏でるガンバの妙なる響きに浸っておりましたです。

皆様ご存じのように、20世紀最後の10年くらいにスタジオ・ルンデの鈴木さんが「とんでもない天才少年がいる」と大いに賞賛し、その後、順調に、というべきか、いろいろ紆余曲折あって、というべきか、東京ではもう誰も覚えていないと思うけど最後の頃のカザルスホール・チェロ連続リサイタルの若手ばっかり並べた年に登場。パリに渡り研鑽を積み、いつのまにかコアン弟子となってチェロからガンバにメインの楽器を持ち替え、今ではなんといってもカンビニQのチェロ奏者としても高い評価を得ている。日本はすっかり疎遠になってしまい、やくぺん先生が斉藤秀雄賞の選考委員なんてものを仰せつかっていたときには、毎年騒いだのだがやはり日本拠点ではないことがハードルになったか、やっと選考委員最後の年に見事受賞に至りました。これで日本でも一気に…と思ったけどなかなかそういうもんでもなく、東京春音楽祭で受賞コンサートはあったものの、今回のガンバ2台とチェンバロの三重奏での来日で、やっとその真価を発揮することになった次第でありまする。なんとも目出度いことでありますっ。
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そんな終わっちゃったコンサートの話を聞かされてもちっとも有り難くないぞ、とお思いの皆々様。大丈夫、なんとなんと、来月の末に東京は池袋でさかいのあっちゃんのもうひとつの顔、恐らくこれまでニッポン国ではちゃんと見せてくれたことがなかった指揮者としての才を開陳して下さるのでありまする。ほれ、こちら。
https://toshima-theatre.jp/event/000031/
http://joy-ballet-studio.com/les_paladins/4445/

会場はなにやら劇場都市にしたいらしい豊島区肝いりでやってる区役所近辺再開発のひとつとして出来る新しい劇場。一応、こけら落としシリーズのひとつのようでありまする。これまた目出度いことでありますなぁ。

昨年だか、このガンバとチェンバロのツアーをなんとか実現すべく動いていらっしゃった頃、いろいろお話をして、なかなか大変だよねぇ、なんてため息漏らしていた中で、「オペラの指揮もしたいんです」などと仰っていて、おおおお壮大な夢を抱くのは素晴らしいことだが、うううん、今は東京は北区とか川口とか、神奈川は県立音楽堂とか、はたまた大阪はいずみホールとか、バロック系オペラに関心を持つ適当な規模のところはあるにしても、どこも欧州からのメイジャーどころの売り込みが激しいし、なんせクラシック業界でもキャラの濃い方々が揃ってる古楽界だからねぇ…なんて無責任なことしか言えなかった。どういう風な経緯だったかなーんにも知らないのだけど、とにもかくにも実現出来たのだから、やっぱりさかいのあっちゃん、ただ者ではありません。いや、ホント。

昨晩も低いピッチのニ短調とニ長調、それにト長調の世界にじっくり浸っていると、わしらが普段耳にしているソナタ形式とかって、こういう世界から眺めるとホントにとてつもない妙な、ってか、強引な世界だよなぁ、なんてどーでも良いことを考えたりしてさ。

新帝都のオペラ好きの皆様、今、世界でいちばんとんがった舞台が観られる可能性があるのはバロックオペラの世界でありまする。ま、トレイラーを眺める限り、この舞踏団が既に何度も出している定番演出のようで、今時のヨーロッパで大流行の演出家やりたい放題なんでもありのバロック・オペラ演出とは違うようですが、逆にこの類いの音楽の基本が「舞踏」であることをしっかり判らせてくれるんじゃないかな。さあ、来る11月27日にはにはみんなで池袋西口へとはせ参じましょうぞ。

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日本でも中国建国70年記念演奏会 [音楽業界]

日本国メディアではまともな報道はされていないけど、今、秋のお休みが明けつつある中華世界では、「中国建国70年」記念イベントで大いに盛り上がっているのであーる。80年なら判るけど、中華文化圏で70年というのはどういう意味の記念年なのか、いまひとつよく判らぬのだが、ともかくそうなんだから仕方ない。某業界関係者に拠れば、「世界の5カ所くらいで公式な70周年記念演奏会があり、タン・ドゥンが振ったりしている」との話なんだけど、中華世界で独自に広がるネット文化圏に直接アクセス出来ない情けない我が身、まとまった情報が拾えません。ま、自分とこでやってる「オリンピック文化事業」でさえ、JOCや日本国政府や東京都やなんのかんの4つの団体が全く横の連絡なしにやっていて、誰一人全体像が見えている奴がいないという情けないことになってるのだから、単純に人口10倍以上の社会、世界に広がる文化圏とすればニッポン語文化圏の20倍以上あるところをきっちり統括するなど、誰にも出来てないんだろうなぁ。

てなわけで、世界でこんなことが起きてるぞぉ、というご紹介は出来ないのだけど、とにもかくにも目の前にある差し迫ったイベントのご紹介です。これ、なんだか殆ど知られてないみたいなんだわなぁ。
https://www.njp.or.jp/concerts/11327

なんせ、「中華人民共和国建国70年記念コンサート」で、「NJPとチャイナフィルの国際協力プロジェクト」なんだそうな。おいおいおい、こんなことがあればわいわい言ってくる筈のチャイナフィル広報君からこの期に及んで何も連絡がないし、どうなってるんねん、完全に内部だけのためのクローズドなコンサートなんかいな。

ってわけで、NJP広報に尋ねたところ、「普通の演奏会です。決まったのが比較的急でしたので…」とのこと。ロイヤルフィル、フィラ管、マリンスキー劇場管、トゥールーズ・キャピタル管、ミラノ・スカラ座管、それにNJP、という世界の6つのオーケストラによる共同プロジェクトで、主催はチャイナ・フィルだそうな。これが20日に開催されるミラノでの演奏会の案内。
https://www.teatrionline.com/2019/10/china-night/
フィラデルフィアは去る金曜日だったようです。なんとなんと、中国本土では禁断の《中国のニクソン》からやってるなんて、タン・ドゥン、剛の者だなぁ。「中国国民の心を傷付けた、ガソリン撒いて火をつけてやる」なんて脅しが来かねないもんね。
https://www.philorch.org/concert/19-20/china-night#/

これが東京のチラシのPDFファイル。
china_flyer_ura-2.pdf
china_flyer_omote-2.pdf

指揮は、この前のチャイナフィル日本公演に来たおにーちゃんだわねぇ。ロン・ユー御大は来てくれないのかぁ。

まあ、10月22日の昼って、新帝都は実質戒厳令状態で都民はうかつに出歩けないような日になるでしょうから、さっさと地下を抜けてオペラシティに行き、人民中国まんせー、と叫ぶのも一興かもね。なんせ、この先、聴きたくても聴けないような曲ばっかり並んでますから。

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台風一過の川崎にて [音楽業界]

荒川放水路や中川放水路が決壊し葛飾巨大柿の木周辺も水没するやもしれぬ、という不穏な情報が金曜朝くらいからマスメディアやらSNS上で乱れ飛び、あっちいったりこっちいったりのバタバタの台風19号襲来、皆様いかがお過ごしでありましょうか。ここ大川端は大川の水位は上がっていつものノマド場藤棚下の水辺プロムナードも冠水していたようでありますが、まあ、あそこはそういうための場所なんだからそれはそれ。治水こそが領域国家統治の基本と、20世紀前半に伊藤左千夫が牛に餌やりながら歌詠んでたような湿地帯に巨大な放水路を掘ってトーキョーの東をまともな場所にした先達の努力に、感謝するばかりでありまする。なんせこの場所、たかがまだ400年程度の新開地なんですからねぇ。

って世間話は、実は本日のネタの本論に繋がっているわけでありましてぇ…本日午後、各地で河川氾濫情報相次ぎ鉄道寸断、神無月も半ばとは思えぬ湿った熱風が南西から強烈に吹き込む晴れ渡った空には国土交通省の河川管理の新型ヘリが飛び回り、足りなくなって関西からも助っ人が荒川放水路河口埋め立て地ヘリポートへと押っ取り刀で駆けつける姿が目撃される中、ミューザ川崎に詣でて参りましたです。

荒川放水路と大川に挟まれ、かつては縦横に走っていた運河が埋め立てられて道やら公園になっている墨田区では、昨日はさっさとトリフォニーのNJP定期はキャンセル。金曜に武蔵野で哈爾浜交響楽団が大盛り上がりで演奏を終え、携帯をオンにしたら、事務局から中止の連絡が入ってました。んで、本日の川崎も、なんせ皆様ご存じのようにシン・ゴジラにやられまくった武蔵小杉やら、ポップカルチャー系展示で人気の川崎市美術館がある辺りの多摩川が決壊、水が出ているという。ミューザ川崎がある区でも冠水し避難している市民がいるらしい。これはやっぱり中止かなあ、と思ってミューザのスタッフに「やるんですか?」と連絡したら、昼前にくらいに「オケマンが全員来られると判ったのでやります」との返事が。

うううん、果たしてどれだけ聴衆が集まれるのやら、そもそもスタッフがちゃんと集まれるのか?どうなることか、ノット御大がアイヴス《答えのない質問》とシューベルト《未完成》を続けてやるという、とっても今風のやり方がどんなもんなのか眺めてやろうと思ってた関心は、まるで別の方向に向いてしまった。同じ区内が冠水している中で敢えて「クラシック音楽の演奏会」を市が開催する決断は、どのような結果になるか。世論の動きに拠っては、主催した市の文化財団は世間から大非難に晒される可能性もあるぞ。そうなったときには、一応、ぎょーかいの内部が見える人間として、客観的に何か言えるようにしておかないとまずいかもなぁ、まあそれが役回りな訳だし…

ってなわけで、些か、ってか、ものすごおおおおおく気が重いけど、大川端は佃縦長屋から六郷川の向こうまで出かけることにした次第。電車はちゃんと走ってるかいな。月島駅に向かう途中、大川から水ががっつり入ってきた佃堀には、神田川辺りから流されてきたのか、こんなでっかいもんが哀れな姿を晒しカラスやらトンビやらがご飯にしてくれるのをプカプカ待ってるし
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月島駅大江戸線の改札駅員さんに「川崎まで、京急で行けるんですか?」と尋ねると、浅草線から京急への直通運転はしてませんが品川に行ける列車は何本かに一本はあるようです、とのこと。普段は大門乗り換えで30分ちょっとで京急川崎まで行くんだもん、開演まで2時間近くあるからなんとかなるだろーに、と大江戸線に乗り込む。東京駅からJRという道もあるが、JR東日本は昼前の段階でウェブの案内ではまだ動いていないみたいだし、動き始めは大混乱だろうし。

さても、誰がこんな日に地下鉄乗ってるのやら、と思えばそれなりに人はいる。大門駅で大江戸線からいつものように浅草線のホームに上がってくると(あれだけどんどん上がっても、まだ地下なのじゃ!)、ホームにはでっかい荷物を引っ張ったり背負ったりしたインバウンドさんがいっぱい。ああ、なるほど、みんな羽田アクセスなのかあ。で、駅員さんが必死に対応している。曰く、「品川京急方面の連絡はしておりません!JRかモノレールに行ってください!」おいおい、それならそうとさっさと教えてくれれば東京駅に出たのに…と文句を言ってもしょうがない。状況は刻々変化し、インバウンドさんお上りさんの最後にして最大の武器たるグーグルマップさんやらNAVITIMEさんやらは対応など出来ていない。これはもう流されるしかないと、慌てて浜松町駅に向かえば、目の前をネイビーブルーのスコットランド応援団さんたちが歩いて行く。ちゃんと時間までに競技場に到着出来ると良いんですけど、スクラム組んで突進しても電車は走らないしなぁ。
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とにもかくにも浜松町駅京浜東北線ホームに向かうと、こんな表示。
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おいおいおい、川崎まで行かないじゃないかぁ。蒲田で京急に歩けというのかい、おおおお、目の前を東海道線が下って行くうううう!これはともかく、来た列車で品川まで行ってみるしなかない。と、京浜東北は全然来ず、山手線がやってきたので、慌てて乗り込み、建設中の高輪門駅は妙な場所にあるなぁ、と眺めながらJR品川駅に至る。上のコンコースに上がれば、おやまあ、京急乗り換えはでかい荷物のインバウンドさんで溢れかえっていて、向こうには何事もなかったかのように快速特急三崎口行きなんぞが停車しているじゃなの。

京急蒲田でNAVITIMEガン見のインバウンドさんたちがどっさり降り、列車はいつもより若干のんびり気味に六郷川にさしかかる。おおお、濁流が渦を巻いておるわい。
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降り立った川崎の街は、洪水騒動で人も閑散かと思ったら、なんてこった、水ならぬ人で溢れてます。地下の飯屋街は半分くらいが閉まっていて、結果として開いている店はどこも大行列。JR超えてミューザ側に行っても、マグドナルドからリンガーハットに至るまで行列で、カフェには食い物らしきもんはなく、コンビニにもおにぎりサンドイッチ類はスッカラカン。しょうがないので「肉まんください」というと、すいません、肉まんは今入れたばかりであと20分くらいかかるです、ピザまんなら出来てます…

かくて、どこから出てきたか、思ったよりいっぱい人々が待っているミューザ川崎チケットもぎり口前でピザまんなるものを喰らうが…売れてなかったのはやっぱり訳がある好き嫌いがはっきりした食い物であったぁ。いやはや。

ミューザのスタッフさんに拠れば、本日はオケマンは来られたけどスタッフの数は万全ではなく、いつもの散らし挟み込みなどは出来ていない、開演も10分押します、とのこと。こんな告知が。
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正直、やくぺん先生ったら、ホールが当日プログラムに挟んで下さる自分のところの公演チラシは全部チラシスタンドに戻しているので、挟み込んでくれない方がよほど有り難い…けど、そうも言えないもんね。

客席はどこからどうやって来たのか、毎度ながらのご隠居中心の休日午後のコンサート、6割くらいかなぁ。昨日はサントリーで東響定期演奏会として予定されていたが中止となり、それまで3日も練習してきたのでどうしてもやりたい。幸いにもホールは自前みたいなもんだし、夜の公演は貸ホールとして入ってなかったようなので、開演が押しても問題はないのだろう。で、開催を決定したそうな。

音楽は、目的だったアイヴス+シューベルトは余りに違和感なくフィットしちゃって、「ああそーですか」って感じ。意外にも、といったら失礼だけど、後半にメインに据えられたブラームスの若い頃のピアノ協奏曲が、細部の猛烈に魅力的な断片をぶちまけただけの音楽ではなく、特に冒頭楽章が無茶な造りなりにそれなりにちゃんとした音楽に聴こえたのに、大いに感心させていただきましたとさ。

終演後、スタッフにご挨拶もそこそこ、京急の混乱を避けてダイヤなんてあってなきが如きJR東海道線に飛び乗って、あっという間に東京駅まで戻り、何事もなかったかのように走ってる都バスで大川端まで戻ってくれば、午後5時ともなればすっかりのんびりした釣瓶落としの夕暮れが大川を照らしてる。まるで「世は全てこともなし」、と言いそうになっちゃうぞ。

先程、ラグビー大騒ぎで沸くお茶の間の隅っこでパソコン開いてたら、先程忙しそうにしていたスタッフさんがFacebookでこんな風に記していらっしゃいます。まんま、貼り付けます。
「今日の公演、随分とチケット忘れのお客様が多いなあと思ったら。全員には聞いていないけれど、ほとんどの方は避難所から直行された方々でした。昨晩避難して、家に戻れず、そのままいらしたと。その方々の置かれた状況を考えると辛いですが、それでも来てくださるなんて嬉しいじゃないですか。開催できてよかったです。」

あの客席でロシア美女の意外に無茶のないブラームスを一緒に聴いていた人々の何人もが、所謂「被災者」さんなのだった。家に帰れないから切符が手元にない、でも、晴れ上がった午後、避難所にいるくらいなら歩いてでも駅前のホールまで行って、素敵なブラームスを聴こうじゃないか…そういう人たちに、あの音楽は深く染み入っただろう。スポーツの熱狂でこの瞬間の苦しさを忘れられると仰るなら、シューベルトやアイヴスの音の世界にも同じくらいの力はあるのさ。

あそこにいた数十人の人たちのためにも、川崎市は膨大な公金を使ってこの場所を用意し、音楽家が人生をかけて練習をして、披露してくれた意味はあった。これだって、アートの力。

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アジアでいちばん古いオケ大暴れ! [演奏家]

アジア・オーケストラ・ウィーク2019の番外編、哈爾浜交響楽団の演奏会が颱風迫る中、都下武蔵野市の市民文化会館、数ヶ月前に改装成った大ホールで開催されました。オケ連の偉い方やら先頃までAOWについて回っていたステマネさんなども顔を見せ、ホントにまるで今年の4つめのオケみたい。
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この演奏会、なんせ主催は哈爾浜市という文字通りの「御上主催の文化事業」であります。このポスターも、じっくり見ると興味深いところがあり、なんせオケの前に立ってるのが普通なら音楽監督だけだろうに、どうみても事務局だか市の人だかみたいな人物が両側にいらっしゃるんですよねぇ。

その指揮者ったら、なんとまぁ、ロン・ユーが世界で華々しい大活躍(日本での認知度は知りませんが…)を始める前は、ぶっちゃけ客観的に見て「中国出身&拠点でいちばん世界的に名前が知られている指揮者」のムハイ・タン御大であります。今年のAOW週間、香港シンフォニエッタのイップ様といい、中国の実力派著名指揮者をしっかり並べてきたんですよねぇ。オーケストラ・アンサンブル金沢はスダーン御大ですから、なんと立派なラインナップかっ!これも建国70年記念祝賀なのかっ!

金曜の午後2時という不思議な時間に開催されたこの演奏会、まあ、裏番組で皇居挟んだ反対側の錦糸町でもNJPが音楽監督で《オケコン》などという本気定期をやってるわけだから、格別珍しいとはもう言えないのかもしれないけど、やっぱり普通に働く人には絶対に来られない時間。じゃあ哈爾浜市や中国大使館関係の招待客ばかりで入り口で哈爾浜名物腸詰を配ってるのか、ってばそういうわけでもない。無論、関係者は多かったものの、たまたまなんかの形で告知を目にした多摩地区のご隠居音楽好きが「へえ、2000円で《新世界》が聴けるなら安いじゃないか」とやってきた、という感じでした。マニア層の顔は皆無で、唯一いらしたのは我が共著本の共著者、ハマの名プロデューサーH氏だけでありました。

演目は、期待していたローカル作品がなくなって《フィガロの結婚》序曲になっちゃったりで、えええええ、って感じだったんですけど、いやぁ、マジ、これがもう、めちゃくちゃ面白かった。今年のO楽のT誌年間コンサート・ベストテンに絶対に入れねば、という程の内容でありましたよ、皆のしゅー!

朝比奈隆ファンの皆様なら誰でも知ってるこのオーケストラ、創設やその経緯は面倒なのでググってみてください。恐らく、マニア向け記事がジャブジャブ出てくるでしょう。今時の中国らしい、バブル期ニッポンに匹敵するみてくれ外観のハッタリかまし放題、もとい、ランドマーク公共建築粒としての存在感たっぷりなコンサートホール(ぶっちゃけ、中国人民解放軍海軍の空母みたいなもんですわ)が次々と誕生している景気良いイケイケ社会らしく、2014年には哈爾浜市コンサートホールが経済特別区みたいなところに出来て、そこを本拠地に活動してる。長田音響さんが手がけていて、長田音響のホームページにしっかり「手がけたホール」のひとつとして挙がってます。外観の絵面は、ま、「哈爾浜市音楽庁」で適当に探してくださいな。いかにも今風なもんです。
https://www.nagata.co.jp/sakuhin/concert_halls.html

音楽都市宣言をし、モダンな立派なオペラハウスまで建てちゃってる哈爾浜市のオーケストラとなれば、広大な中国全土に雨後の竹の子のように誕生している振興オーケストラとはちょっと違うだろう、という期待は、ぞろぞろと舞台に登場するメンバーを眺めるだけでも高まってくる。北京国家大劇院管弦楽団の人に「中国で外国人団員を迎えたのはうちが最初」という話を聞いたことがあるけど、まあそれももう思えば10年以上の昔、経緯がどういうことかは知らぬが、新潟から武蔵野にやってきた哈爾浜響ったら、カンブルラン・ヘアのコンマスを筆頭に、コントラバス、ホルン、ファゴット、トランペット、フルートの首席奏者はヨーロッパ人。ヴィオラのトゥッティにも若い欧州人らしき男の子がいる。ホルン奏者に舞台袖下からお婆ちゃんが紙袋渡してるところをみると、どうやらホルンには日本人の若者がいるのかな。メンバー表を眺めれば、第1ヴァイオリンに山本要子さん、チェロには渋谷陽子さん、と明らかに日本人系な名前も。ホルンはキム・スジョンくんかな。どーでもいいことだけど、メンバー表に挙がっている「ネット放送」担当の李航さんって、なにやってるんだろうか?ベルリンのフィルハーモニーみたいに、ホールそのものにネット生中継用のシステムが組み込まれ、団としてもその専門家を雇っている、ということなのかしら。

ああ、コンマスに座ってた奴、こいつじゃないか。ザンクト・ガレンなんかで仕事してて、今シーズンから哈爾浜響に指揮者コンマス兼任のレジデンスで来てるそうな。
https://www.robertbokor.com/

…ってな経歴からもお判りのように、このオーケストラ、中国地方都市に10年代になって次々と結成されてる若いオケとは明らかに一線を画してます。敢えて語弊のある言い方をすれば、東アジアのまともなオケのひとつ、ってこと。タン監督が得意のハンカチパーフォーマンスで登場し、いきなり《フィガロ》序曲が鳴り始めるや、あああ、これはちゃんとしてる、と思わせてくれました。縦の合わせということはあんまり気にしておらず、声部全体がビエネッタ・アイスがズルズルっとずれちゃうみたいになることもあったりするけど、それでもなぜか格好はついてる。比喩的に言えば「音程がちゃんとしてるロシアのオケ」って感じです。後述のような大爆演をやらかしてくれるんだけど、でも音程がちゃんとしてるんで耳を聾さんばかりの騒々しさにはならないのは立派。

哈爾浜出身で国家大劇院管コンマスというソリストのヤン・シャオユのチャイコ協奏曲は。まあ独特の歌いまわしの芸でこれはこれ、なんかあんまりチャイコフスキーに聴こえないというのが凄いなぁ。
とはいえなんといえ、本日の白眉はタン御大の《新世界》にトドメを刺すっ!最初から指揮台なしの舞台中央へと歩いて出てきた御大、ポディウムに向かいながら流麗に右手の指揮棒を対向配置に振ったヴィオラの方に向かって突き出し、なんともう音楽が始まってしまう。そこからは、「おいおいおい、そんなこと楽譜のどこに書いてあるだぁ」と突っ込んでもなーんにも意味がないやりたい放題。楽器や音を変えちゃうわけじゃないけど、そこで強烈なリタルダンドするかぁ、そこであんた太鼓にfいくつ付けさせたいんだぁ、という音楽。だけど、それがなんかいかにも格好が付いているんだから、まあこれはこれでありだろう、チェコの連中だってもっとトンでもないことするもんね、って納得しちゃう。正に巨匠芸、荒れる暴れる大爆演、「中国のストコフスキー」とは言わないが、敢えて「中国のコバケン」「中国のエンリケ・バティス」と賞賛しよーではなかいっ!

聴衆に楽章間の拍手なんぞさせまいぞと全部アタッカで続け、聳え立つ摩天楼を仰ぎ見るといよりも、聳え立つ摩天楼をぶっ潰せと中国北方から遠路飛来したドラゴンが大暴れするような終楽章が、ニュージャージーならぬ満州の彼方に壮大に沈む夕日のように金管の雄叫びに消えていくや、一瞬の静寂を破り客席からは怒号のような喝采が武蔵野の地に巻き起こるのであったぁあああ!

割れるような喝采に応え、なんと和太鼓なんぞがいつのまにか舞台上手に引っ張り出されていて、始まったのはあっと驚く、小山清茂《木挽き歌》ではないかいっ!さらにさらに、なんか知らんが中国の作曲家の管楽器がマウスピースだけを吹いたり、オケマン全員が声を出したり大騒ぎの音楽が、ホール天井も割れよ、颱風なんぞいっちまえ、とばかりに響き渡るっ。出口での告知に拠れば、この曲らしいです。
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そして終演後には、でっかい横断幕が出てきて、ホールの真ん中に座っていた市関係者らしき人々も舞台に上がり、大インスタ大会で熱狂の時間は幕を閉じたのであった。
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哈爾浜交響楽団、いったいいくつあるか判らぬ「アジアで最も古いオーケストラ」としてのプライドも、振興音楽都市としての誇りも決して嘘ではない、大盛り上がりの秋の午後でありました。H先生苦笑しつつ、「ウラル交響楽団以来だねぇ」とのこと。なーるほどね。

哈爾浜、やはり一度くらいは行ってみないといかん都市だなぁ。

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