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アジア・オーケストラ・ウィークの質が変わった [音楽業界]

まるで文化庁かオケ連の広告マンのような、完全なる宣伝です。あんまりお暇じゃない方も、1000円札と百円玉ひとつ握って日曜午後2時の初台オペラシティ・コンサートホールに突進せよ、日曜がダメな奴は火曜日夕方に台中の小ホールに急げ、って宣伝なのじゃ。これが€10でおつりが来るのじゃぞっ!
https://youtu.be/eD1t1cuYtm8

木曜朝から「旅のしおり」を懐にお付き合いしているアジア・オーケストラ・ウィーク2019
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既に金曜の郡山公演、先程はオーケストラ・アンサンブル金沢の東京公演まで終わり、アウトリーチを含めると半分以上のイベントが終わってるのだけど、まだまだあるぞあと2日。

今世紀に入って始まり、今年で18回目を迎えるこの「今話題のニッポン国文化庁が実質的に主催する年間で唯一のクラシック音楽系イベント」たるオーケストラ・フェスティバル、ぶっちゃけ、最初の頃は「イロモノ」としか言い様がない、「へえ、アジアにもオーケストラなんてあるんだぁ、チャイコフスキーやベートーヴェンやってるんだぁ」なんて、ニッポン国はアジアの例外史観(懐かしや、某一見放送交響楽団著名オケの名物偉いさんが「アジアでクラシックが出来るのは日本だけ」とおっしゃって韓国系某女流大スターのソリスト起用を拒否した、という裏が取れっこない昔懐かしい伝説すらあるのじゃよ)の「上から目線」で人々が面白半分で付き合ってたとしか言い様がないイベントですがぁ、あれよあれよと時移ろい、東アジア各都市は世界の音楽マネージメントの商売テリトリーになり、「本場」のブンカ事業産業草刈場となっている今日この頃。各地のオーケストラもなんのかんのめきめき成長し、天下のベルリンフィル、ヴィーンフィルなんぞは「ブランドオケ」としてフェラーリやらメルセデスやらエルメスやら同様の特別な価値で商売するようになって来てる。それはそれで音楽家が喰ってくためには当然のことでありますが、わしら無責任な消費者聴衆とすれば、世界各地で学んだアジアの若い演奏家が無事に国に帰って仕事を得たり、世界中の若くて質の良い演奏家が貧乏で喰えない自分の故郷じゃなくて景気が良く食い物も美味しそうなアジア圏の大都市に職を得たりするようになり、結果として質の良いものが安く入ってくるようになったのは良いことでありまする。

もとい、で、18年目のアジア・オーケストラ・ウィーク、なんといってもポイントは本気の演目でありましょうぞ。なんせ初台での本公演では、各オーケストラがまずは自分のところの文化圏の作曲家作品を聴かせてくれる。列挙すれば…

★池辺晋一郎《この風の彼方へ》
★ロ・ティンチェン《オータムリズム》
★マティアス・サンボーン《故国の海の四つの風景》
★ダダンWS《ダンドゥットの肖像》

ちなみにサンボーンの曲は発表されているプログラムには挙がってませんが、手元の「旅のしおり」のジャカルタのオケの練習日程表にはしっかり入ってますから、追加でやるということなのでしょう。公式Facebookにも練習風景がアップされてますし。
https://www.facebook.com/asiaorchestraweek/
それぞれ12分から8分程度の作品とはいえ、きっちり新作を聴かせてくれる、それも全体のプログラムの中で聴かせてくれるのですから、とても有り難い。「自国作品を紹介する」という目的はこのイベントの初期からあり、ある意味でこのイベントが存在する理由のひとつでもあるのでしょうけど、オケの側が本気になってプログラミングしてきてくれるようになってきている。

それに、なんせアジア圏の若手クラシック系作曲家は、もう音楽創作活動を始めたのはポストモダン、場合によってはポスト・ポストモダンの時代で、60年代前衛の呪縛からは全くフリーな世代。池辺先生の前衛の時代の「ゲンダイオンガク」を潜り抜けてきた響きが懐かしいくらい。オーケストラは自分の周りにあるいろんな表現手段のひとつとして素直に使い、好きなことをやってる音たちが聴けるのですから、これはもう、いかにゃならんでしょ。

プログラムという意味でも、かつての「地方公演のためのファミリーコンサート」演目ではなく、普段やってたり、勝負定期でやるようなもんを並べてきてます。なんせジャカルタのオーケストラがシベリウスの第7交響曲ですからねぇ、今世紀初めだったら冗談と思われそうな。

そして最大の聴きものが、明日日曜日の香港シンフォニエッタの《兵士の物語》です。今回のこの団体の東アジアツアーのメイン演目、目玉中の目玉で、既に台北でやって東京に持ち込み、来る火曜日には台中でも公演がある(そして、《神々の黄昏》聴くために列島から繰り出してるマニアさんたちがこぞって見物するらしい)自信のプログラムであります。上のプロモーション映像でもお判りのように、ストラヴィンスキーの小編成アンサンブルに広東語の語りと舞踏が加わる。舞踏というジャンル、恐らく現代の舞台芸術で最も国際化が進んでいて、アジア圏のレベルはものすごく高く、国際フェスティバルも散々にやられている(その意味で、ちょっと前に話題となった新潟市のレジデント舞踏団追い立て騒動など、世界の趨勢に棹さす情けないもんなわけでありまするが…)。香港で最初のプロダクションが作られてから改訂と再演を重ねているそうで、オケがこれなら本気で世界に持って行ける、と自信をもってるもんでありまする。

こういうのが一番高くても米$30くらい、お安い席なら$10で見物出来るんですから、文化庁さんもちゃんとしたことをしてるんですよ、と褒めてあげてもいいでしょ。

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