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ヴィルタスQがいわきの水族館で弾きます [弦楽四重奏]

去る土曜日、久しぶりに多摩は武蔵小金井でヴィルタスQを聴かせていただいたであります。
https://twitter.com/Virtus_Quartet

丸山夫妻が主導するこの団体、個人的には未だに「結成四半世紀を迎えたすばるQ」なんだけど、「メンバーが交代したらもうそれは違う室内楽団体」というファンの認識が極めて強いニッポン音楽文化圏ではそういう訳にはいかないのかな。昨今のヨーロッパ北米の若手団体なら、創設メンバー二人がいれば立派に同じ弦楽四重奏団、ってのが常識ですからねぇ。

なんであれ、セカンド戸原氏時代は聴きに行こうと思ったら台風接近で相模湖駅まで電車がいかなくなりそうで断念、ということもあったこの団体、新セカンドで初めて聴かせていただきました。ま、ゴツゴツしたバスの響きを中声がしっかりコントロールし、ソプラノが歌う、という基本は同じ、ってのは言うまでもないかな。

この団体、創設の拠点いわき、録音もやれる相模湖、そしてここ小金井と、結成10年ちょっとできっちりホームベースが定まってる。こういう団体、案外、ニッポン首都圏にはありそうでないんですよねぇ。で、正に震災の年の秋から始まったこの「音楽談話室」と題されたシリーズ、いわきのプロデューサーを務めるA氏が企画と司会をする典型的な「地方音楽協会」の武蔵野版でありまする。100人ほどなのかしら、毎回、室内楽をホントに好きな、だけど所謂「マニアック」という感じとはちょっと違う聴衆が集まり、まともな弦楽四重奏演奏と、時に長すぎることもあるA氏のまともな音楽談話を楽しんでいく、という集まり。こういう楽友協会が人口20万くらいの町ごとにあれば、ニッポン国拠点の室内楽団体も喰っていけるんだけどねぇ…などとかなわぬ夢を漏らすより、今あるこういう集まりを大事していくことがなにより、なんだろーなぁ。

主催側の流れからして、この小金井の出し物は直接いわきにも繋がってる。小金井で演奏を終えたヴィルタスQ、新帝即位式で戒厳令となる新帝都を離れ、今週は広大ないわき市のあちこちで活動をしてる。そう、震災&原発事故に続き、今度は河川氾濫のいわき市であります。今月の頭、アジア・オーケストラ・ウィーク2019取材で訪れた頃は、「この辺りは福島といっても震災の被害はなく、いわきなどの方から移って定住する人も増えてるのです」なんてノンビリした話をしていた白河やら郡山でありますが、この前の台風後の水害で大変なことになっていて、そのいわきもアリオス裏の川が溢れ、対岸の専門学校などは浸水被害があったとのこと。地元のスターこばけんが地元アマオケを振るという大事な演奏会もキャンセルになったものの、幸いにも風の関係でアリオスは浸水被害はなく、「おでかけアリオス」もほぼ予定通りにやるそうな。

ヴィルタスQのいわきでの活動、昨日はありおす音楽ホールで公開リハーサルがありました。本日は山の中の草野心平文学館で演奏会が予定されていたのですが、中止になったようです。いろいろ大変そうだなぁ。あそこまで行けないのか、それとも聴衆が集まれそうもないということなのかしら。結果として、当初は超広いいわき市の山と海にアウトリーチする予定が、海だけになった。こちら。明日土曜日。
https://iwaki-alios.jp/cd/app/?C=event&H=default&D=02476
なんとなんと、水族館での演奏会。当初は、ホントに巨大水槽の前で弾くつもりだったんだけど、水族館スタッフから演奏のための照明が魚たちに影響を与えるとのことで、そういうわけにはいかなくなったそうな。まあ、魚たちには残念ながら聴こえないだろうしねぇ。

この演奏会、もうひとつの目玉は演目。ピアソラが唯一ヴァイオリン独奏を前提に書いた《鮫》をクァルテットに編曲して披露するのでありまするっ!既に小金井で演奏されたんだけど、いやぁ、これ、凄く格好が付いてます。まるでオリジナルで弦楽四重奏に書かれたみたい、と敢えて激賛しましょうぞっ。で、その編曲者が、こばけん氏以来のいわき市内から藝大作曲家に進んだ地元期待の若き新鋭、富岡篤志なのであります。

きっちりローカルに徹しながら、きっちりしたレベルを維持し続けるいわきの活動、ホントに耐える力を試されているような日々であるなぁ、などと他人事のように思っていられるのもいつまでやら…。お暇な方は、明日の夕方にいわき市南の水族館へいらっしゃいな。予約が必要なようですので、ちゃんと上のウェブサイトを眺めてください。演奏会そのものは1000円也だけど、諸事情で水族館料金が別途必要だそうなんで、午後からいって鮫を眺めてからピアソラ聴くよーに。…鮫、いる、のかしら。

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