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写真撮影お喋りOKのコンサート [音楽業界]

昨晩、欧州超短期滞在から戻り前頭葉がまるで海胆のまま、現在鋭意社会復帰中のお嫁ちゃまに引っ張られるように東京オペラシティに参上させていただきましたです。こんなコンサート。
http://www.smf.or.jp/concert/thats_20191211

なんと、「撮影・SNS拡散OK!服装自由!おしゃべりOK! クラシック音楽にありがちな煩わしいルールはなし!没入感のある映像とのコラボレーションや、まるでROCKのLIVEのようなエキサイティングな照明演出や特殊効果による、これまでにない体験、さらには出演者による解説付きで、いつの間にかクラシック音楽が楽しくなるような仕掛けも満載です。」
DSCN4815.jpg
とのこと。

要は、今の「クラシック音楽コンサート」の会場で原則としてはやってはいけませんと叱られるようなあれこれをやってもかまいません、ってコンサート。ぶっちゃけ、聴衆の皆々様が「おおおお、じゃあ行ってやろうじゃないか」と思うよりも、業界関係者、特に制作現場の人間たちが大いに関心を抱いたようで、やくぺん先生ご夫妻が座らされた一列は右側が東京歴史文化財団の文化会館政策担当者とオケ連の方、反対側にはサントリーホールの制作担当者、で、前の列には某評論家ご夫妻がお子様連れでご家族でいらしてました。他にも、そこの所属ソリストがいたとかいうわけでもないのに某大手音楽事務所の方とかも。

んで、結論から言えば、ロックライヴのようなエキサイティングな照明かどうかはともかく(まあ、この写真のようなもので、オルガンを使ったこともあってかステージ奥にスクリーンを作るのではなく、ホール全体に映像を投影するようにしてます)、《惑星》では探査船ヴォイジャーが木星に接近する映像が出てきたりしてる。基本、「意味」を伝える映像ではなく抽象的なイメージが飛び交う。
DSCN4838.jpg
当日プログラムにあるクレジットに拠れば、どうやらこの会社がやってるようですな。外資系ですね。SONYさん、相当お金出してそうだなぁ。
https://www.prg.com/ja/ja
演奏の間には司会の方と川瀬氏のお喋りがあって、少なくとも司会さんには台本があったようです。川瀬氏は、基本的に「こんな変わったコンサートでいろいろ大変」というぼやき系のネタ。スターウォーズのときには「ホントはライトセーバーを振りまわしたかったけど、重いので、ライトセーバー箸にしました」と笑いを取ったり。楽器紹介もあったけど、ひとつひとつじゃなくて、弦楽器、木管、金管…ってものだったのは面白い。ただ、全体を「宇宙旅行」にするコンセプトとか、台本をどういう方向にまとめるかとか、トータルなプロデュースが誰なのかはクレジットにはありません。そういうもんなんでしょうかねぇ。まあ、SONY芸術財団さんに尋ねれば教えてくれるだろうけど、商売もんの作文じゃないからそこまでやる気はない無責任電子壁新聞なのじゃ。

で、最大の関心の「撮影OK&お喋りOK、どんどんアップしてね」なんですがぁ…正直、やくぺん先生ご夫妻なんぞが座ってた辺りでは会場の空気は良く判りませんでした。なんせ、お喋りっても、演奏中はみんな静かにしてるし、後ろに座ってた招待券もらっちゃったぁ、という感じのOLさんがトークのときにいろいろ話してたくらい。ぺちゃくちゃやら、突っ込みやってる奴やらはいなかったです。

写真にしても、案外とみんなおとなしく、映像が派手に動き始めるとシャッター音がしてましたが、記者会見のときの写真撮影みたいなシャッター音の嵐になったりはしません。それにしても、日本の携帯やスマホって、撮影時消音が出来ないんですよねぇ。これって、こういうやり方の時には問題だなぁ。

それから、撮影はOKでどんどんツゥイートしてくださいといいながら、携帯電波遮断装置が働いていて、その場でのインスタアップなどは出来ない。そのためか、今調べても、拍子抜けな程にネット上に写真がアップされてはいませんね。うううん…

ちなみに、楽器紹介のときは「トトロ」なんぞがあったから、《スターウォーズのテーマ》のときはもろにジョン・ウィリアムズ御大がご存命だからか、司会のお姉さんが「ここは写真録音なしです」と舞台から仰います(せっかく「クラシック」やってるなら、嫌でも著作権が関わってくるロックコンサートには絶対に不可能な著作権切れてる作品だけでコンサートを埋めるのだって、ちっとも難しくないと思うんだけどねぇ)。また、《月の光》の情けなぁい編曲オーケストラ版のときには、川瀬氏が「この曲は沈黙も音楽ですので、音は立てないで」と仰り、それならそうでみんな静かにしてる。

つまり、このイベントでのトークの仕事って、「演奏者のキャラをしゃべりでみせる」とか「転換の間の時間を稼ぐ」とかじゃなくて、聴衆管理にあったわけです。その意味では、まあ、そこそこ上手くはいっていたのかも。要はお客様を接待するファーストクラスやビジネスクラスじゃなく、ソフトに客を管理するエコノミークラスのスチュワーデスさんのお仕事みたいなもんですな。

あ、一応、川瀬氏指揮東フィルさんの演奏について触れておけば、まあ、良くも悪くも「ちゃんとしたクラシックのオーケストラコンサート」でした。《スターウォーズのテーマ》にしても、映画音楽としてミキサーの耳を通って映像に付与されている必要な部分の輪郭線をハッキリさせた音楽ではなく、どの声部も過度に強調せず、スコアのバランスをきちんと再現する音楽で、えええこんな金管の声部があったんだぁ、と思わされたりする。《フィンランディア》では、かの有名な「♪やすかれぇ、わがぁここぉろよぉおおお」の讃歌部分も決して濃厚に歌うわけではなく、はいまずは木管さん、ピアノですよお、次は弦楽器さんだけど、これもあまり歌いすぎないでねぇ、って、拍子抜けと言えば拍子抜け。もっとガンガンに煽ってもええんでないかい、と思っちゃったりもするけど、確かにそう書いてあるんだもんねぇ、ってか。その意味で、「これがクラシックなのだ」という音楽。ま、その辺りのギャップは意図的なだろうけど。

そんなこんな、いろいろな大人の事情もある中でのひとつの「タブー破り」の実験、上手くいったかどうかはともかく、関係者興味津々の中で粛々と行われた、という感じでありました。誰よりも大変なのはレセプショニストさんたちだったんじゃないかしら。いつもならマニュアルでストップをかければ良い行為の一つ一つを、状況の中での判断で止めるか、やってもいいと見過ごすか、判断しないといけないわけですからねぇ。プロのお仕事が必要になってきますな。

このような試み、この先も試行錯誤は続けられそう。ま、実験を重ねる意味はありそうでありまする。関係者の皆々様、お疲れ様でした。

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