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Webサイト紹介はブラック仕事なのであーる [売文稼業]

先週、月末締め切りの短い原稿が複数入り、そのために今週は頭からキッチン横の広い机の上にパソコン2台並べ、スピーカー繋いである程度の音量でちゃんと聴けるようにセッティングし、携帯端末を横に置き、世の中の風潮にすっかり乗り遅れ、ってか、乗る気が既にない爺初心者としては、まあなかなか「テレワーク」っぽい環境で作業をしておりまする。
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多くの舞台関係者の皆様、裏方のプロの皆様など3月から全くお仕事がなく、無収入で蓄え取り崩しだけで生きてらっしゃる方が大多数の中、オフィスの固定費と毎月落ちていく国保&生命保険代がギリギリ出るかどうか程度のお金であれ、なんとか目の前で動いているのは有り難いことでありまする。いや、ホント。っても、来月は現時点で締め切り一本(それも、以前に書いた原稿の差し替え全面書き直し)だけで、固定費捻出もアヤシい状態なんだけど。

そんな状況でいただけたお仕事、普段以上に一生懸命やるわけでありまするがぁ…いやぁ、まいったなぁ、という愚痴話なんで、これ以上は関係者の皆様は読まないよーに。

この数週間、同業者の皆様のお仕事をWebなり紙の上で眺めさせていただくに、正直、この環境はホントにみんな同じものしか見えないのだなぁ、と感じざるを得ません。取材する相手も、インパーソンでいろんな人に会えたり話したり出来るときに比べると、圧倒的に限られている。要は、デジタルディヴァイスを通した取材なり対応なりが抵抗なく出来る人や、せざるを得ない人に限られてくる。いつもの数十分の1くらいの限られた分母で、限られた現象をスクリーンの上を通して見てる、って感じ。結果として、どの書き手が書いても同じような原稿になってしまってる。極端な言い方をすれば、「Webの上を眺めていれば、いかにもこういう人が出てくるだろうなぁ、と誰だって思うような人が出てきて、この人ならばこういう風に言うだろうなぁ、と誰だって判ってるようなことが書かれている」という恐るべき惨状を呈している。いつもなら書き手のキャラによって見えてくる記事の視点の違いが殆ど無くなってるのは、驚くほどなのであります。

これ、商売柄そう感じるのか、それとも読者の皆々様もそう感じているのか?少なくともやくぺん先生とすれば、普段、我々が取材をしているときに、テープ起こしで書き下ろして手元に残ってくる話の内容そのものだけではなく、喋っているときや返事をする際に醸し出される空気感や微妙な反応のあり方などから、いかに多くの情報を得ているか、あらためて痛感させられる次第でありまする。

となれば、誰がやっても同じならデジタルディヴァイスの操作に違和感のない若い世代がやればいいだろー、と思ってしまうのは…もう隠居爺ということかしらねぇ。このようにして書き手の淘汰が進んでいくんだろうなぁ。当電子壁新聞にしても、10年前なら必死になってあちこちのネット上の業界情報をかき集めてはこの無責任電子壁新聞にアップしまくっていただろうけど、今はそういうことをしてくれてる別の若い現役バリバリの方がちゃんと出てきているし。これはちょっと危ないぞ、と感じることがあっても、ま、若いうちに酷い目にあっておくことも大事だろう、ってぼーっと眺めてたりして。

ま、それはそれ。今週頭からやっていた原稿は、一言で言えば「Webサイト紹介」でありまする。3月の半ば過ぎくらいから、世界中の様々な芸術団体、個人がWebを通して出している情報を整理し紹介、具体的にはオペラ団体や劇場、オーケストラなどのアルヒーフやら無料コンテンツやらの中からお薦めを挙げる、というもの。

なかなか気楽で楽しい、これがお仕事になるなら有り難いこっちゃないかい、と思われるかもしれませんがぁ…これって、「ちゃんとした図書館に納められた映像資料を眺めて、推薦を出しなさい」ってことですよ。つまり、「ひとつひとつの資料をちゃんとあたると数時間かかるアーカイヴから、何点か良いものを紹介せよ」って…そんなん、真面目にやったらどんだけ時間かかるってのよ!『カラマーゾフの兄弟』とか『失われた時を求めて』とか『金瓶梅』みたいな超大作がジャブジャブ並んでる図書館で在庫に目を通し、状態の良いもんを挙げよ、なんて言われても頭抱えちゃうでしょ。

かくて、たったふたつのアルヒーフの紹介だけで、まるまる月曜日から木曜夜の今まで朝から晩まで、もう目はしょぼしょぼ、正直、目が潰れるんじゃないかという酷い状況。画面など視ているのもままならず、当電子壁新聞などほったらかしになっていた次第。

恐らくは取材時給換算すると200円にもならないと思われる、巴里倫敦の最下層を彷徨ったオーウェルも吃驚のブラックさ。外に出る取材ではないから、取材経費も付かないだろうしなぁ。いやはや…

以上、Web時代の取材のあり方について行けない爺の愚痴でありました。冗談じゃなく、Web時代の原稿料って、「原稿用紙辺り〇〇円」とか「1ワード毎××セント」ってやり方では、プロの書き手は育てられないだろうに。校正校閲の問題も含めどうするんねん、としか言えんテレワークの時代にあれよあれよと突入してしまった2020年皐月の終わりでありましたとさ。

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ホントの蔵出し秘蔵映像配信 [音楽業界]

月末締め切りの細かい原稿、電話での編集者との対応などはあるものの、基本はパソコン上だけでの作業で、なんだか自分の見えている世界がホントに狭い箱の向こうにしかないように感じられてきて、やっぱり居心地が悪い老人なのであーる。これに違和感を感じるかどうかで「現役」と「隠居」の越えられない壁が出来つつあるようなコロナ&ラマダン明けの梅雨の走りのような曇り空。嗚呼…

さても、そんなこんなで明日までに某主催者さんが配信している某創作オペラの全曲配信を眺めねばならなくなり、毎日の午後の日課となりつつあった「今日の期間限定ストリーミング」見物が出来ぬ。松本で字幕席から眺めて腰を抜かしたあのルパージュの《ファウストの劫罰》をメトに持って行ってやった映像が視られないのはとても残念。ま、細々と毎月の固定費お一部なりとを稼ぐ口があるだけでも有り難いと、頑張りましょ。

なんだかもう世界中に「喰えずに死んでしまうよりもコロナに罹った方が良い」という世論が出来つつあるとしか思えないこの数日、欧州も恐る恐る動き出しているようだが、北米東海岸はまだまだ慎重でんな。そんなところに、今朝、トロントのカナディアン・オペラ・カンパニーの広報さんから、こんなリリースが来ました。プレス限定情報ではないでしょうし、ひとりでも多くの方に知って欲しくてよこしたリリースでしょうから、貼り付けます。ほれ。
http://email.wordfly.com/view/?sid=NDIyXzE3MzI5Xzc5ODY5XzcxNTE&l=20089b07-9b9e-ea11-bd94-e61f134a8c87&utm_source=wordfly&utm_medium=email&utm_campaign=20-21VaultWeeklyE1-WiderPublic&utm_content=version_A

なんだかすごいことが書いてあって、そこをコピペすると、ほれ。

These archival recordings are industry tools and historical documents that record the technical and creative elements of a production, such as the precise execution of set changes, what props are used, and how cast members move on stage. These recordings, taken by a camera situated in the soundbooth at the back of R. Fraser Elliott Hall, allow these details to be recreated in future presentations of a production.

Ordinarily, these videos are never seen by the public — they are technical tools rather than streamed performances. But now, in collaboration with our theatrical unions and the productions’ artistic teams, we are making these archival videos available as a token of our appreciation for all the support we have received from you, our COC community.

つまり、「本来は公開されることがない、あくまでも資料用に収録された映像を、この異常なパンデミックお籠もり状態のトロント市民、はたまた世界の皆さんにも、特別に期間限定で公開いたします」ってことだそーな。ホントの秘蔵映像特別公開でんな。

というわけで、日本時間だと明後日28日昼過ぎまでの限定公開、カナディアン・オペラ・カンパニーの《アラベラ》をご覧あれ。
https://www.coc.ca/Vault?utm_source=wordfly&utm_medium=email&utm_campaign=20-21VaultWeeklyE1-WiderPublic&utm_content=version_A

個人的にはこのカンパニーでいちばん視たいのは、これまでやくぺん先生が接した中で音楽的にはいちばん充実していたパブロ・エラス=カサド様が指揮なさった《中国のニクソン》なんだけど…ま、無い物ねだりはいたしません。

※※※

ついでに、などど申したら叱られそうだけど、もうひとつ。欧州各地から「三密回避無観客ライヴ」の情報がこの数日次々と届いております。フィルハーモニー・ド・パリの広報さんからは、パリ時間の27日と28日午後8時半からでっかいホールで無観客ライヴやりますのでご覧あれ、という連絡が先週末に来ました。ちゃんと英語のPDFでのリリースまで来てますので、貼り付けておきます。出演者まで全部出てるしね。
https://newsletter.philharmoniedeparis.fr/doc/KVxvzyNS.pdf

以上、本日の期間限定配信ご案内でしたぁ。なんか、このところこんなんばっかりだなぁ。

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ボルドーの《ヴァルキューレ》は勉強になる [音楽業界]

世間では「コロナ禍なかったことにする大会」が始まりそうな空気が流れるラマダン明けの目出度き日、皆々様はいかにお過ごしでしょうか。あたくしめは、先週くらいから細かい仕事がいくつか入り、パソコン2台開いて横にiPhone置いて、もう視力低下どころか目が見えなくなるんじゃないか、って酷いテレワーク環境で日々の食費を稼ぐ程度の仕事をしておりまする。ああ、コロナなき幻のタイムラインなら、2週間缶詰になった大阪からコンクール優勝団体と一緒に戻ってきて、佃の縦長屋に荷物を放り込んで、慌ててサントリーに向かってるところだったんだなぁ。周囲の世間は灼熱の五輪一色か、はたまた安倍内閣倒壊で永田町大騒ぎだったのか?

さても、すっかり夏の初めとなった湿っぽい空の下、御上がなんと仰ろうが今週も葛飾オフィスにお籠もりの日々が続きます。アジア圏ではヴェトナムや台湾はオケが通常業務に向けた動きを始めているけど、欧州やNYはまだまだ。各公共劇場がお届けするお籠もりストリーミングは2ヶ月を越える長期戦となりネタ切れの気配も。そんな中、まるでシーズン終わりの大盤振る舞いみたいに、先週からフランクフルトとアムステルダムの劇場が期間限定で《リング》サイクルの配信を始めております。ヴィーンもさりげなく先週だかに全部やったみたいだし、夏直前の皐月終わりのパソコン画面上は指輪大会の様相を呈してら。無論、どれもパッケージで既に出ている0年代から10年代初めの収録で、各劇場が映像化を競い始めた頃のもので、最新映像というのは案外と出てきてないんですよねぇ。映像収録の端境期に入ってたかな。

そんな中、昨日から期間限定で(フランス語情報しかないのでいつまでか判りません、スイマセン)なかなかレアなヴァーグナーを見物させていたけるチャンスがやってまいりました。こちら。

ボルドー歌劇場が昨年5月に上演した《ヴァルキューレ》全曲の配信でありまする。

この上演、昨年、ボルドー弦楽四重奏コンクールに出かけたとき、劇場の前で郊外のシャトーに連れてって貰うバスを待ってるときにまだ片付けられていない告知を眺め、「へえええ、この劇場で《ヴァルキューレ》やれるんだぁ、絶対にハープとか入らないだろうに」と驚いた。
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なんせ、上の写真からもお判りのように外見はもの凄く立派でデッカいけど実は箱としては小さな劇場で、《イェヌーファ》でもオケがピットに入りきらない状態だったんだから。ああ、10年も前のことなのかぁ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2010-05-12
当然、この劇場で上演したと思ってたら、なんとなんと、本日の配信タイトルをよおぉく見ると「ボルドー・オーディトリアムでの上演」とあるでありませんか。つまり、今やフィレンツェや京都と並ぶ世界の観光都市ボルドーのランドマークたる巨大オペラハウスではなく、トラム路線を真っ直ぐ駅方向に行って、曲がったところをさらに真っ直ぐ行ってバス通りに出たロータリー状公園の右にあって入り口が一瞬どこにあるか判らぬ(楽屋口なんて、もっとどこだか判らぬ)新しいオーディトリアムでの上演だという。

じゃあ、演奏会形式なのかと思ったらそういうわけでもない。いつもは大劇場で上演している地元カンパニーが、きちんと新制作したフルプロダクション。あの段差が付いたオーディトリアムの舞台の上に板を3枚置き、後ろの席は全部潰して巨大なスクリーンを上手下手と奥にガッツリ立てて、オケはどうやらステージの前半分くらいを下に下ろして、さらに平土間の前の方も潰しで巨大なピットにしているようです。なんせ弦楽四重奏コンクールをやるステージですからそんなに滅茶苦茶大きくはない。これ、Qベルリン東京が演奏を終えて拍手に応えてるところ。ここを舞台にしてる。
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簡素とは言え、それなりに「伝統的」な衣装を着けて演技もしている。メインは照明と後ろのスクリーンに投影される原色ギラギラな映像。この映像、数の限られたものを投影しているのではなく、実質ずっとなにやら変化しつつ流れていて、もの凄く力は入ってます。

つまり、流石にこの規模のオーケストラが必要な作品だとランドマークの劇場ではできないけど、こちらの1400席くらいの新しいホールを潰して1000席くらいにしてならなんとかやれるので、ボルドー市でもヴァーグナーをやってみよう、という試みですな。考えてみればオペラハウスのピットって案外大きなボトルネックで、かのシドニーの世界遺産オペラハウスはピットが小さ過ぎ、オペラ・オーストラリアが《リング》や《マイスタージンガー》をやるときには世界のランドマークでは無理で、メルボルンのアーツセンターを使わざるを得ない、なんてことも起きているし。

限定配信されてるこの映像でもうひとつ興味深いのは、正面上手側奥辺り(コンクールだと審査員の先生が座る辺りでんな)に据え置きにしたカメラを一切動かさず、周囲の騒音なども気にせず、3時間半視点を固定しっぱなしにして配信してること。このコロナ禍が始まった頃のびわ湖からの《神々の黄昏》も同じやり方でしたけど、劇場からのライヴ中継としては極めて珍しい事例ですね。細部の演技はまるで判らず、音もあの良く響くオーディトリアムのまんま収録、ホントに舞台を眺めている気分になります。個人的には、中途半端なカメラワークをされるくらいなら、このやり方の方がよほど有り難いんですね。

てなわけで、フランスの地方劇場が力を入れて作っている《ヴァルキューレ》全曲をノーカットの一発収録で視られるなんで、なかなかない機会。そもそもパリやエクサン・プロヴァンス以外の劇場のヴァーグナーなんて、需要がほぼ皆無の日本では目にできないでしょうし。あ、言うまでも無く字幕はフランス語のみですから、悪しからず。

やくぺん先生ったら、テレワークをしたり牛丼作りで煮込みしたりしながら、画面を視ている時間は三分の一くらいの感じで眺めさせていただきましたです。失礼しました、関係者の皆様。でもこれ、現実的には日本の関係者の皆様とすれば、メトやらヴィーンやらバイロイトやらの映像を観るよりも、よほど勉強になると思いますよ。身の丈に合った、ローカルなヴァーグナーをこうやって作ってるのかぁ、って、すごく学ぶことは多い。とくに「東京・春・音楽祭」のポンチ絵ヴァーグナーと陰口されている舞台を鑑みるに、びわ湖みたいなやり方とは違う映像処理もあるよなあ…

流石に2幕のジークムントが殺される場面とか、3幕頭のヴァールキューレがいっぱい出てくる場面などは
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メトのブリュンヒルデあひるじゃなくとも、ちょっとこの舞台は狭いだっくだっく、と思わざるを得ませんけどねぇ。

まだまだお腹がいっぱいにならない方は、フランクフルトのドイツ語台本をきっちり読み込んだ極めてまともな「人間」の物語としての演出と、ピットの大きさの限界を逆手にとったこれまた演奏会形式ギリギリながらハッタリ噛ました大舞台になってるアムステルダムの演出とが、月末まで観られるようです。どんどん勉強なさってくださいな。さあ、そして秋の初台に備えましょう…とは言いません。そもそもホントにやれるのかしらね。

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モルゴーアが来られないならネットで聴こう [弦楽四重奏]

226アベ要請以降次々と演奏会がキャンセルになる我が業界、6月になってもまだ状況は変わらず。なんせ、御上が「いいですよ」と仰っても、翌日から「はいそうですか」と演奏出来るのは巣ごもりで練習が出来ている独奏弦楽器奏者くらいでしょう。ピアニストさんとかでも、ホールのピアノの調律などをしなければならないから直ぐ明日やります、って訳にはいかないでしょうからねぇ。

そんな中、6月のモルゴーアQの演奏会を中止にした福島の主催者さんが、その代わりにモルゴーアQ1月末の上野での定期演奏会をまるまるYouTube上に提供してくれています。これが告知記事。
https://www.minyu-net.com/event/culture/morgaua_quartet/
ここはヴィオラの小野さんが地元アマオケで指揮をなさっていたりして、毎年演奏会をやっているところのようです。大ホールは1000人規模、小ホールは200人で、この6月のモルゴーアQはどっちだったか判らないけど、小ホールでの予定なら大ホールに会場を変更して三密を避けた客席で遠く離れてステージ上に座ってカーターの2番をやる、なんてこの会社の社長なら喜んでやりそうだけど…ま、そういうわけにもいかないのでしょうなぁ。

上のページに演奏画面に行けるURLがありますので、そちらからどうぞ。小野富士さんがお喋りになってます。この映像、今のネット上に山のように流れる無料の音楽ソフトにあっても異彩を放っているのは、その演目であります。やくぺん先生は1月の定期、絶対に行くつもりだったのだが、なぜかこの月は(その後のコロナ禍でのお仕事激減を作文の女神様が予期してか)普段の三倍くらいの原稿が山積みになり、泣く泣く諦めざるを得なかった。なんせ、ラフマニノフの短い2楽章の弦楽四重奏のうちの第2番、それにタネーエフ3番、そしてメインがボロディンの誰も弾かないので有名な長い長い第1番、というとてつもない演目。「誰も弾かないには理由がある」を確認するための、人生に二度と無い希有な機会で、大いに悔やまれるところでありました。まさかまさか、こんな形で映像で確認出来るとは。

てなわけで、若者達のベートーヴェンを堪能なさった皆様は、お口直しにどうぞ。特にボロディンの1番は、ロシア団体だって弾かない幻の大作ですから、とても貴重な映像です。ううん、面倒だから、直接貼り付けちゃいましょうか。問題あったらゴメンです。
福島の主催者の皆様、どうして収録したか判らないこんな貴重な映像を提供して下さったモルゴーアQの皆様、ありがとうございますです。

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ヴァーチャル大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門本選 [大阪国際室内楽コンクール]

熱演が続くヴァーチャル大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門、いよいよ本日金曜日午後1時から本選であります。さっさと開始いたしましょう。本日はいよいよ大作、ベートーヴェンの後期から1曲です。作品135を課題曲に入れるか、事務局と専門委員の間でも議論があったのですが、やはりいれるべきでしょう、敢えて作品135を選ぶ、という選択をする団体があれば、その意味を含めた評価をすれば良いのだから、ということでこういうことになりました。勝つつもりのある奴らなら、作品130+《大フーガ》を力演熱演する難しさと、作品135で居並ぶ審査員諸氏に「これは勝ちだ」と思わせる難しさの質の違いは、判ってない筈がないわけですから。

さても、とはいうものの、流石にこのラウンドまで来ると当無責任電子壁新聞上のヴァーチャル大会へのエントリーは激減してしまいます。まずはもうお馴染み、アイオロスQの登場です。堂々たる本選曲目、作品131全曲です。この映像の後半。


もうこれでお腹いっぱいですなぁ。続いてカオスQ。音だけの参加ですが、《大フーガ》で本選に挑みます。じっくりお聴きあれ。
https://soundcloud.com/chaos-string-quartet/l-van-beethoven-grosse-fuge-op-133

と、ここまでは良かったんですけど、以下の参加予定団体はベートーヴェン後期の音源を提出しておりませんでした。てなわけで、以上、ヴァーチャル本選は参加2団体でオシマイです。

結果として、当ヴァーチャル大会の結果は以下と言わざるを得ません。

優勝:アイオロスQ
2位:カオスQ
特別賞:アコスQ

単純にどれだけの演奏を聴かせてくれたか、です。アコスQの特別賞は、このパンデミックの異常事態、本来なら京都にいったり日本の実家に帰れたりした筈のときにも一生懸命動画をアップしている努力を賞讃しての授与でありまする。

せっかくですので、アンコールとして前回大阪でセミファイナルだったものの、その後に大活躍、バンフとボルドーで優勝を果たしたマルメンQの昨年のバンフでの作品131を聴いて、2年と少しの成長を賞讃いたしましょう。


なお、ヴァーチャルじゃない第10回大阪大会、中止ではなくあくまでも延期ということで、世間の情勢を眺めつつ着々と準備は続いているとの情報は大阪城近辺から伝わっております。若者達よ、鍛えておけ、かのいずみホールの舞台で君たちが演奏する日は必ずや訪れるであろーっ!

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祝ホー叔父さん生誕130年! [現代音楽]

「現代の音楽」なんだけど、「現代音楽」カテゴリーでええんかいなぁ?

ま、それはそれ、去る5月19日はヴェトナムのホー叔父さんの生誕130年だったそうです。で、ヴェトナム国立管弦楽団から公式にこういう映像がアップされました。

作品の説明は以下、面倒なんでまんま貼り付けます。

Song: Symphonic Poem "He who brought happiness to us" - Trong Bang
Conductor: HONNA TETSUJI
Performed by: Vietnam National Symphony Orchestra (VNSO)
Sponsored by: The Japan Foundation Center for Cultural Exchange in Vietnam

In commemoration of 130th birthday of Uncle Hồ (19/5/1890 - 19/5/2020), Vietnam National Symphony Orchestra has performed the symphonic poem "He who brought happiness to us". This symphony was composed by Trong Bang 30 years ago, in commemoration of 100th birthday of Uncle Hồ. Ever since, this piece has been performed in many concerts nationally and internationally, under the conducting of both Vietnamese and international conductors, and won the hearts of many audience. Conductor Honna Tetsuji himself and Vietnam National Symphony Orchestra also have a special feeling for this music piece and have performed it many times in Vietnam and Japan.

Please stay with us for 10 minutes to hear, to look back at the great life of the Vietnamese nationalist leader through the symphony "He who brought happiness to us" performed by Vietnam National Symphony Orchestra. More music is to be uploaded, so please stay tuned for more.

だそうな。このコロナ禍がなければゴールデンウィークには金沢で大活躍だった筈の本名監督とVNSOの皆さん、どうやらこの収録は5月14日のようですが(確認中)、流石に武漢から遠くない(わけではないが、地続きですからねぇ)土地柄、騒動勃発早々に厳しい入国制限や活動制限をし、コロナウィルスでの死者がゼロというヴェトナムはハノイ。今の世界でこれだけのオーケストラが集まって演奏出来るなんて、ここだけなんじゃないかしら。それとも、3月以前に収録された映像をお誕生日に合わせてアップしたということなのかしら。

見出しだけを眺めた方の多くは、こっちを思ったでしょ。ニャンさん、お元気なんでしょうかねぇ。https://www.youtube.com/watch?v=RpABi38Ovk0

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音楽関係認定NPO法人リスト [音楽業界]

短いけど、久しぶりにちょっと調べ物が必要な仕事がひとつ入り、昼過ぎから御上の資料をウェブ上でひっくり返して今に至りましたです。なんか、仕事したなぁ、って感じだぞ。

世の中に、「認定NPO法人」というものがあります。どういうものか、ま、知りたければこちらをどうぞ。
https://www.npo-homepage.go.jp/about/npo-kisochishiki/ninteiseido
で、NPO法人そのものはもういっぱいあって、アヤシげな団体もかなりあるというが、この「認定」というのは、ぶっちゃけ「プチ公益財団法人」みたいなもんですな。

ちなみにアート系NPOという中身の括りでは、いろいろと議論はなされています。このような評価をしている資料もあります。ま、当電子壁新聞を立ち読みなさってる方なら、お馴染みの顔ぶれが並んでますね。
http://arts-npo.org/img/artsnpodatabank/ANDB2018-19.pdf
でも、こういう議論と「認定NPO」という運営面の議論って、ちょっと微妙に違うんですよねぇ。

とにもかくにも、クラシック音楽関係にも認定NPOはいくつかあり、クァルテット・エクセルシオが去る4月に苦節10年だかで、やっと認定が取れました。それ絡みで、日本に音楽関係の認定NPOがどれだけあるか、一応、眺めておいた方が良いだろうと調べ始めたら、今までかかってしまった。目がしょぼしょぼじゃわい。

どうやら以下のような団体があるようです。北から順に、ほれ。

☆エク・プロジェクト←言わずと知れた、クァルテット・エクセルシオ
☆ミュージック・シェアリング←みどりさんの日本でのコミュニティ活動の団体
☆TAMA音楽フォーラム←故岡山先生がご自宅でやってる教育セミナー
☆トリトン・アーツ・ネットワーク←今更なにをかいわんやぁ!
☆おんがくの共同作業場←合唱とオケの演奏会制作、合唱指揮者の郡司先生も関わってるようだ
☆おたまじゃくしクラブ(足立区)←足立区でトリトンのコミュニティ系みたいなことをやってる
☆みんなの夢の音楽隊(さいたま市)←どうやらこれもコミュニティ系の団体みたい
☆湘南フィルハーモニー管弦楽団(茅ヶ崎市)
☆中部フィルハーモニー交響楽団
☆世界アマチュアオーケストラ連盟(愛知県)←へえええ
☆福山シンフォニーオーケストラ
☆鳴門「第九」を歌う会
☆響ホール室内合奏団
☆長崎OMURA室内合奏団
☆かごしまアートネットワーク←トリトンさんみたいなことをやってるなぁ

へええええ、トリトンさんやみどりさん型の地域に音楽をアウトリーチする、もしくは教育が中心、って団体を除いた「演奏団体」が活動ベースの認定NPOは、全国でも8つくらいしかないんだなぁ。

意外だったのは、認定NPOでやってる劇団とかダンスカンパニーが皆無だったこと。ヴェニュも、横浜にひとつコンサートスペースにもなる規模のところがあるくらい。活用が難しいシステムなんですかねぇ、確かに、書類仕事がアホみたいに多いからなぁ。

皆様の周囲に、このリストにない所謂クラシック音楽絡みの認定NPOがありますれば、ご教授下さいであります。よろしく。なんせ、団体名だけじゃ福祉団体か町おこし団体にしか見えないものもあるかもしれないので。

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ヴァーチャル大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門3次予選 [大阪国際室内楽コンクール]

新帝都川向こうの新開地はまるで梅雨になったかのような気圧と気温の低下っぷり。久しぶりに商売原稿をやっていて今頃になってしまいましたが、本日はヴァーチャル世界ではオオサカの3次予選が行われている日ではありませんかっ。主催の日本室内楽振興財団様から、こんな寂しい写真も提供していただきました。これが現実。

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ま、それはそれとして当コロナ禍などないヴァーチャル世界では、今日は望月氏の新作とベートーヴェンの《ラズモ》から《セリオーソ》まで、という、ある意味、最も実力がハッキリ出そうな興味深い日でありまするな。

残念ながら、望月京さんの公式サイトでは、本日5団体が初演する筈だった新作の情報はアップされておりません。
http://www.misato-mochizuki.com/Works
仕方ないから、まあ、ことによるとこんな感じだったかな、という気持ちを込めて、近作の小編成作品をお聴きあれ。管打楽器も入る曲ですけど、あくまでも「気持ち」ってことで。ふううう…
https://youtu.be/AR0_yCeJb-g

さて、では、気を取り直してベートーヴェンであります。これまた残念ながら、あまりエントリーがないんですけど。

まずはいつも通り、アイオロスQから。《ラズモフスキー第1番》の第2楽章です。
かなり昔の映像みたいだなぁ。ま、本選では大作を聴かせてくれますので、今日は顔見せ、ってことで。

続くカオスQは、このラウンドは参加の音源無し。残念。

カリストQは、昨年のバンフ本選での《ラズモフスキー第2番》全曲という堂々たる映像がありまする。もう、貫禄勝ち、って感じ。
この団体、なんだか知らないけどYouTube上にはフィショッフのときの同じ曲の映像もありますので、お暇な方はどうぞ。オオサカもこれが勝負曲だったんだろうなぁ。

続くQインテグラ。なんだかやたらと立派な収録の《ラズモフスキー第1番》で、カットがあるのが残念。「名曲アルバム」の練習かいな。

もうひとつ、《セリオーソ》があります。ほれ。


Qアコスは、このパンデミックの現実世界で頑張ってライヴ配信をしてくれてますが、先週末に配信されたこの映像の12分15秒から《ラズモフスキー第1番》第1楽章を披露してます。フランスのどこでどんな生活をしてるのやら。連絡してみようかしらね。ホントに今の状況、お聴きあれ。


ジュビリーQとゾラQは、残念ながら参加映像なし。両方ともありそうなんだけどねぇ。チェルカトーレQとほのQもめっからず。てなわけで、本日は割と早めにおわっちゃうかな。ま、がっつりラズモを何回か聴けたから、お腹はいっぱい。本選はいよいよ金曜日です。乞うご期待。

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ヴァーチャル大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門2次予選 [大阪国際室内楽コンクール]

おはようございます。現実世界では、また一週間の葛飾お籠もりのために佃縦長屋を出て、新川の肉のハナマサと上野ガード下昇竜に寄って食材を購入し葛飾オフィスに戻る途中、初夏の風が大川端に気持ちよく吹き抜ける新帝都の朝であります。

とはいえ、コロナ禍がない異世界のヴァーチャルタイムラインにようこそ。さて、本日17日日曜日、もう初夏の風が大阪城公園に凪がれるヴァーチャルいずみホールから、大阪国際室内楽コンクール&フェスタ弦楽四重奏部門2次予選となりました。
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一昨日の1次予選予選では、アメリカ合衆国はライス大学の団体が残念ながら敗退(音がWeb上に全然ないので参加出来ません、ってこと)。9団体が本日の「シューベルトからドヴォルザークまでのロマン派、またはドビュッシー、ラヴェル、またはショスタコ9番から12番まで」と「20世紀のガッツリ名曲」ラウンドです。あ、西村&細川は21世紀作品かな。それにしても、ショスタコのこの辺りの作品をロマン派枠に入れるって英断、この大会の味わい深さのひとつですなぁ。

もう四の五の言わず、さっさと本日のセッションを始めましょうぞ。まずは、アイオロスQ。ロマン派演目からはドヴォルザークであります。
この方々、バルトークまであります。しっかり聴きましょう。


続いてはカオスQの登場。音だけですけど、ドビュッシーの第1楽章がちゃんとあります。ご堪能あれ。
https://soundcloud.com/chaos-string-quartet/claude-debussy-string-quartet-in-g-minor-op-10-i-anime-et-tres-decide

どんどん行くぞ。カリストQです。これまたドヴォルザークの作品105。
モダンのあるぞ、リゲティの人気の娯楽作、第1番じゃ。


もう充分おなかいっぱいになってきたけど、まだまだ。溜池から、Qインテグラだぞっ。ロマン派はシューマンとか《死と乙女》とかありますけど、やはりこれでしょう。シューベルトの大ト長調だっ。


Qアコス、セカンドに日本の女性がいらっしゃいますね。では、《死と乙女》で日曜の午後を。


イギリスからのジュビリーQ。メンデルスゾーンの作品13がWeb上にはあるのですが、大阪がこの曲を入れてないんですよねぇ。これもまたなかなか興味深いぞ。で、ラヴェルの頭をどうぞ。
バルトークの4番も、ちょっとだけ。


いよいよ日本代表三団体のひとつ、Qチェルカトーレです。ご紹介の後ろにドビュッシーが流れてますね。
なにより、ブリテンの第2番があります。これは有り難い。ここでは第1楽章だけをアップしますけど、YouTubeには続きの2楽章があります。お暇な方はどうぞ。彼らにとってはこのラウンドが勝負!


最後はほのQ。メンデルスゾーン作品44の3の前半分。後ろ半分もYoutubeにありますよ。


以上、流石にこのラウンドはヘビーで、本気で聴いたら一日まるまる楽しめるなぁ。

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コロナに負けるな《ヴォツェック》三昧 [パンデミックな日々]

昨日、週末に佃の塒に週末で帰宅する京成電車、都営地下鉄浅草線、大江戸線、全体にずいぶんと乗客の数が増えており、浅草駅に人がいるのを久しぶりに眺めました。流石にみんなもうおうちに居るのがしんどくなってきたのかしら。

とはいえ、我が人の良さと御上への従順さだけが取り柄の業界、226アベ要請からの劇場音楽堂閉鎖を続け、先週くらいからなんとか再開に向けた動きは出ているもののまだ今月はとても無理。まだまだ続く「おうちで〇〇三昧」の日々でありまする。

欧州各地の主要劇場や楽団では、まさかここまで長引くとは思わずに、そろそろ自前の無料提供出来るソフトが底を打ってきたところもあるようです。権利関係が2ヶ月で切れてしまい…なんてリリースも某欧州メイジャー歌劇場広報さんから先週来ました。

そんななか、先週からこの週末にかけて、3つの歌劇場がそれぞれに力の入った演出で《ヴォツェック》を無料配信して下さるというオソロシーことが起きておりました。これがまた、それぞれの劇場のキャラクターをよく著したものとなっておりましたです。

まずはもう配信は終わってしまったアムステルダムの運河の畔の歌劇場でオランダ国立歌劇場が出したもの。3年くらい前のプレミアで、しっかりDVDパッケージにもなっております。こちら。
https://news.imz.at/music-dance-releases/news/dvd-blu-ray-berg-wozzeck-dutch-national-opera-4452954/
これ、今週の3本の中ではいちばん面倒くさいというか、いろいろと手が加わっているプロダクションで、いかにもこの劇場らしいなぁ、と思わせてくれます。演出のヴァリコフスキは、この「読み替え」がほぼ不可能というか、そんなことしてもさほど意味がありそうもない作品に敢えて大きく手を加えてます。

要はビュヒナーが『ヴォイツェック』断片を遺すに至ったライプツィヒでのオリジナルの事件に話を戻した、ってこと。ヴォツェックは現役の兵隊ではなく床屋かなんかになっていて、軍隊の暴力性の問題は全く表に出て来ません。ヴォツェックが沼に溺れて死ぬ場面もありません(なんせ史実では延々と数年に亘る裁判があって、最後は公開処刑になったわけですから)。なによりも大きな「読み替え」は、ヴォツェックとマリーの息子が実質上の主人公で、枠取りの子どもだけの舞踏シーンとか、幕の前に息子が朗読する場面が加わったりとか。

いちど映像でざっと眺めた限り、こういうやり方があるかぁ、と納得する演出家とプロダクションの力は判る。でも、確かにこの話はこれじゃなきゃダメだ、という気はしない。ぶっちゃけ、こんなことする必要あるかぁ、と思わないでも無かったです。最初に観るにはお薦め出来ないけど、この作品を観尽くしている方には大いに興味深い舞台だなぁ、と思わされました。

続いて、週の中頃に一日だけツルッと放送された、リンデン・オパーのシェロー演出バレンボイム指揮の舞台。90年代から定番の演出&演奏で、DVDもありますな。あ、日本語ではないのかしら。
https://www.amazon.co.jp/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF-%E6%AD%8C%E5%8A%87%E3%80%8A%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%8B%E5%85%A8%E6%9B%B2-DVD-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%98%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC-%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84/dp/B000T42Z46
この演出家らしいきちんと歌手に演技が入った細かい舞台で、この作品の演出上の最大の問題たる場面転換も簡素な舞台と照明の当て方で処理している、極めてまともな舞台。ある意味、同じ頃のアバド&ヴィーン国立歌劇場の映像と並び、20世紀末から今世紀初頭のスタンダードな舞台でしょう。ただ、映像収録がもうちょっとなんとかならなかったかなぁ、と思ってしまう部分もありますね。音楽は…やくぺん先生はバレンボイム大先生はいまひとつ得意ではなく、数年前にベルリンのシラー・シアターの方で観た《ルル》は、正直、やっぱダメだなぁと感じざるを得なかった。だけどまあ、《ヴォツェック》はなんとか許容量かな。シュターツかペレ・ベルリンも、まだ旧東独スゥイトナー時代の音が残ってる、とまでは言わないけど、洗練されすぎてないし。

で、もうひとつは、本日眺めさせていただいた、チューリッヒ歌劇場の舞台であります。これはまだ月曜日くらいまで観られるので、こちらからどうぞ。数年前の演出。
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/streaming/wozzeck/
これもパッケージ映像は既にあるようですし、それを流しているのかな、この無料時間限定放映にも日本語字幕が付いてます。画面右下の赤いCCというところをポチョっと押すと、数カ国語の字幕が選べるようになってますので、あまりこの作品をご存じない方も安心です。

演出はベルリンのコミーシュオパーのトップをやっていたホモキ御大、現役バリバリの大物ですね。中身は、ご覧になって判るように、舞台にいくつもの入れ子になった枠を作り、その枠を使って展開されます。アプローチはまともですが、1幕3場のマリーが登場するところから、マリーとヴォツェックの子どもが人形で表現されていることからも判るように、ヴァリコフスキのような「子どもの物語にしてしまう」みたいな強引な力業はやってません。あくまでもヴォツェックの悲劇で、舞台全体が狂気のヴォツェックが眺める世界のようになってます。些か抽象的な部分もあるので、この話をまるで知らないとわかりにくいところもあるかもなぁ。でも、オペラというのは何も知らずに観に来るものではないと割り切れば、それほど無茶ではありません。音楽も妙にお馴染みのルイージ様ですから、安心といえば安心。

そんなこんな、20世紀末のスタンダード映像を挟み、21世紀10年代のふたつのそれなりに欧州最前線のバリバリの演出が眺めれたわけです。初台でこの作品を眺めれば、あのミュンヘンから持ってきた演出に限れば、東京が世界の舞台創作の中でどういう位置付けかも見えるであろう有り難い一週間でありましたとさ。

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