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チェンバーミュージック・ガーデンはゲームチェンジャーたり得るか? [音楽業界]

暦の上では夏になった昨日、サントリーホールから以下のようなアナウンスがありました。
サントリーホール CMG オンライン.jpg
https://www.suntory.co.jp/suntoryhall/feature/chamber2020/online/

このコロナ禍で中止となった初夏恒例のサントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)の一部公演をほぼ予定通りに行い、ブリーローズから有料でライブ配信する、というものです。

興味深いのは、予定されていた演奏会の時間や演目は基本的に変更せずに、日本の演奏会開演時間の常識となっている午後7時や週末午後1時などに配信。無観客とはいえ本来の会場、ヴァーチャルな形で可能な限り実際に「室内楽お庭」が開催されていたときと同じ状況で演奏が行われ、聴衆はいつも通りにサントリーホールの公式ページからオンラインチケットを販売する、というもの。ストリーミングのハードに関しては、以下のようなことになっております。

本公演は動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」を利用し、動画配信プラットフォーム「ULIZA(ウリザ)」を使用します。チケット購入から視聴までの流れは「PIA LIVE STREAM」特設ページ内の「購入 / 視聴方法」でご確認いただけます。
 「PIA LIVE STREAM」特設ページ https://t.pia.jp/pia/events/pialivestream/

ひとつ心配なのは、告知方法ですね。東京圏のクラシック音楽愛好家の多くの皆さんが「次にどのコンサートに行こうかなぁ」と思ったとき、驚くなかれ、「会場入り口でコンサートサービスさんが配る大量のチラシ」というデジタル時代には信じられないような思いっきりレトロな媒体に大きく頼っているのは事実でありましょう。21世紀初頭にオープンした晴海のホールでは、「もうチラシはつくりません」と宣言し、しばらくはコンサートサービスさん委託型のチラシをやらなかったのですが、聴衆の皆さんから大変に不評で、プロデューサーは白旗を揚げざるを得なかった、という事実があります。その後は「ぶらあぼ」という無料紙媒体が有料音楽雑誌のコンサート情報を駆逐して今に至っているわけですが、それもやはり「コンサート会場に行って貰ってくる紙媒体」です。

きちんとしたデータがあるわけではないけど、要は、今の興行の世界では例外的にデジタル宣伝に送れたジャンルだったんじゃないのかしら、所謂「クラシック」って。コアな聴衆層がデジタル弱者の高年齢層である、というとこともあるのか。はたまた大きなライヴでもたかが3000人が限界の、興行の世界からすれば小規模な世界だから情報伝達を広くする必要もないのか。

ま、なんにせよ、このデジタルお庭、告知方法が旧来のクラシック業界のやり方が全く不可能です。その辺り、現場担当者Cさんに直接尋ねたところ
「某巨匠デザイナーに、オンライン用のシンボルを作ってもらっただけです。感染症の先行きが見えなかったので、今回は印刷物に頼ることを避けました。そして、このタイミングなので、オンラインのみでの告知です。」
とのことでありました。このニッポン国民一斉巣籠もり期間中、人々のデジタル対応が一気に進んだのは事実ですから、こういうことも可能になってきたのかしら。

さて、この溜池夏の室内楽お庭、恒例のベートーヴェン弦楽四重奏全曲や、大いに期待が盛り上がっていたたわわに実った初夏の果実たる葵トリオのピアノ三重奏全曲がなくなってしまったのは残念だけど、巨匠のチェロ・ソナタ、ほとんど東京Qの先生たちの演奏などはあります。花屋さんでブルーローズを買って画面の横に並べて(普通には売ってない?)、とは言いませんけど、初夏の溜池の気分をおうちで味わってくださいませ。

水無月に入り、一気に「ライブの有料配信」の流れが出てきた感はある中、サントリーホールという東京のフラッグシップが、三密を避ける条件をクリアーする可能性があり、中身はオーケストラやオペラにだって負けない室内楽というジャンルでまずは世間の流れを変えていくことが出来るのか。大いに期待しましょうぞ。

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