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NJP《さんぽ》はパンデミックが生んだ最高の成果である! [演奏家]

2020年6月の現在、世界で最も売れているメイジャーな現役日本人指揮者は、久石譲と鈴木雅明であることは誰も否定できない事実でありましょう。マエストロ久石譲に限れば、世界のどこでも演奏会をすればアリーナ規模で完売。映像が公共の電波やネット上に流れれば翌日には海賊盤DVDが街角に溢れる都市だってある、って人気ですから。

パンデミック騒動が始まり、墨田区の善くも悪くも「スピード感のある」対応、いや、我が御上の得意技「スピードがあるっぽく見せることが大事で、実態はどーでもいい」というのじゃなく、ホントにスピードある対応で真っ先に国技館第九がキャンセルになり、それ以降もフランチャイズとなる区のホールが使えない状況が続いたNJPが、辣腕事務局も著名指揮者も関係ない、いかにも自主運営団体らしい団員の勝手連的な動きで「リモートワーク」の演奏を始め話題となり、この情勢下にあっても財政安定な自分のオーケストラは現状への対応らしい対応はなにもしてない公共放送にまで大きく取り上げられることとなり、パンデミック下での音楽家の生き方のひとつのシンボルともなってしまったのは、皆々様よーくご存じの通り。
https://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2020-05-31&ch=11&eid=15351&f=2443
あ、番組としてアーカイヴで視られるわけじゃないのか。ま、これはいずれ、誰かが新書版くらいの単行本やるだろうし。もう、企画書は上がって、ライターさんが始めてるんじゃないかな。←こういう「単行本フィニッシュ」的発想そのものが20世紀の生き残り、ネット時代に取り残された隠居爺の証拠なんだろーなぁ…

そんなNJPの、ってかNJPの某トロンボーン奏者さんのテレワーク、その後もいくつか行われ、団員さんに拠れば「今やうちは世界一上手なテレワークオーケストラ」とのこと(世界中で行われるようになったこの類いのテレワークの中には、音程を弄っていたり、場合によっては単なるカラオケになってたりするものもあるそうで…)。そんな中、満を持して、NJPワールド・ドリーム・オーケストラ監督たるマエストロ久石が登場!一昔前なら「フィドラー指揮ボストン・ポップス」やら「ボスコフスキー指揮(敢えてクレメンス・クラウスとは言いません)ヴィーンフィル」にも匹敵する最強コンビのテレワーク作品が完成し、公開されましたですぅ。ほれっ。

昨日くらいから公開されていたのですけど、何を隠そう不祥やくぺん先生、この《さんぽ》という音楽に対しては一種の「もうやめてくれ」アレルギーがありまして(ぶっちゃけ、アウトリーチでこれが鳴り出すとそれまでつまんなそうにしていた子供たち大喜び、という状況をある時期に眺めすぎ、《さんぽ》禁止令を出した事があるほどでありまする)、あああああ、なんでこれやるかなぁ、《ワールド・ドリームのテーマ》とは言わないが、《君をのせて》とか《アシタカ聶記》とかやればいいのにぃ、と思って眺めないでおりましたです。中身としては凄く上手くいっている、という話は気になってたけどさ。

で、訳あって、意を決して眺めることになり、先程やっと拝聴させていただきましたですがぁ…いやはや、これは凄い、なーるほど、と膝を打ち、大いに納得がいった次第でありました。

これ、要するに、《「さんぼ」による若い聴衆のための管弦楽入門》ヴィデオクリップなんですわ。テレワークがどうだ、というハンディキャップ(なんでしょうね)を全く感じることなく、「久石譲指揮でワールド・ドリーム・オーケストラが子供たちに視せるために制作した楽器紹介映像作品」として、極めてちゃんとしたもの。

だけど、この3ヶ月のテレワークという異常な環境がなかったら、誰もこんなアホで手間のかかることはやる筈もなく、コロナ無しでは存在しなかったパッケージであることは確か。

このコロナのパンデミックお籠もりが生んだ、恐らくは、最も意味のある「作品」でしょう。これ、ナレーターを差し替えて、各国語版を作って、NJPへのドーネーションをお願いします、と世界中に出せば、そこそこいくんじゃないかしらね。

プロデュースとしても、NJPの公式スポンサーのひとつがきちんと社名を出して提供しており、最後に出演者以下のクレジットも入ってるわけですから、団員のボランティア勝手連仕事を越えたものになっていることは明らか。いかにも「裁判だなんだ面倒を言ってるよりも、やれることやろう」と組合から分裂した創設の歴史を感じさせる(そして未だにその経緯を重視している還暦以降の方々も少なからずいる)、この団体らしいパンデミックの成果であります。そんな世代、ひとりとしていないけどね、この四角い箱の中には。

ともかく、背景なんてどうでもいい。状況を利用したのでも良いし、上手い具合に流れに乗っかったのでも良い。なんであれ、きちんと評価に耐えられるものが出てきたことを素直に喜びたいと思うのでありまする。誰がホントに偉かったのか、そのあたりの評価には、もう少し時間がかかるでしょうけど。

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