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選手村入り口でダイクが鳴る筈だった午後 [ご当地五輪への道]

敢えて音楽ネタやパンデミックネタではなく、ご当地ローカルネタ、ということで。こんなカテゴリー、あったんですよぉ。

本日、東京オリンピック&パラリンピック選手村入口に聳える晴海トリトン内第一生命ホールで、「トリトン晴れた海のオーケストラ第一生命ホールライヴ配信」が行われ、客席で拝聴する機会を得ましたです。こちら。まだ視聴可能のようですな。

去る火曜日のミューザ川崎の「再開に向けた試演会」のようなもので、ご当地関係者として表周りのテストに動員されるのだと思っていたら、どうやらちょっと違いました。入口は三本のタワーの間にポコンと入り込んだまあるぃみはるちゃんへと向かうエスカレーターをいっぱい昇ったいつものロビーからではなく、地上階の駐車場の片隅の楽屋口。お久しぶりのスタッフと挨拶すると、今やすっかり日常風景となった体温検査を受け、よろしー、ということで、ホールへのエレベーターに誘導されます。
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エレベーターは乗員2名まで、とのこと。このトリトンオケでベートーヴェン交響曲全集を収録しており、本来ならば本日は第九のライヴ収録があった筈の某レコード会社の方と一緒に上層階へと向かいます。佃の住吉さんが祀られている通路を通り、いつものロビーへと抜けると、こういう表示はあるものの
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導線がテープで示されているわけでもありません。スタッフの誘導で、ここでもまたエスカレーターならぬエレベーターでひとつ上の一階席階に上ります。

オーディトリアムに入る扉がひとつだけ開けられ、スタッフが立っている。指定された席はひとりづつ空けられてます。テレビマンユニオンの収録スタッフが5名ほど、最後の打ち合わせをしているところを、画面に収まらないように気をつけながら席に着く。
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本日から東フィルがライヴ聴衆入りコンサートを復活しているので、多くの同業者さんはそちらに向かったのでしょう。客席には同業者数名、演奏家関係者、スタッフなど1ダースほどが静かに座ります。

映像をご覧になればお判りのように、ステージ上はこれ見よがしに席を空けたりするわけではなく、モーツァルトのクラリネット協奏曲で参加した管楽器奏者がちょっと広めの間隔かなぁ、という感じ。譜面台もひとりひとつではありません。

というように、「第一生命ホールの再開に向けたテスト」というよりも、五輪で賑わい始めた選手村入口というご当地でベートーヴェン生誕250年と東京五輪開催をダブルで祝ってしまおう、というイベントの残念会、かしら。

21世紀に911直後にお堀端から東京湾を望む湾岸の永遠の未開地に移転してきたちょっとでぶっちょころころの「みはるちゃん」が、いろんなことがありながら、ともかく20年に近い時間を過ごしてきた。当初は人口10万を割っていた「区文化財団もまともに存在しない文化果つる場所」、「銀座東京駅から最も近い田舎」、そしてなにより「過去の万博五輪で御上に騙され続けた街」に、地域に根ざした音楽提供NPOとして誕生したトリトン・アーツ・ネットワークが、地域というやり方は維持しつつ、当初の日本で初めて邦人団体がベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲を演奏した弦楽四重奏の聖地のレガシーを引き継ぐ弦楽四重奏に絞ったオフブロードウェイ的展開から、新興住民も増えてきた状況に鑑み、イグレッグQ(と言われても、困るかも)の矢部氏を中心とした指揮者無し室内オーケストラをレジデンシィとする路線に転換。そのひとつの集大成的瞬間として、「ご当地五輪&楽聖生誕250周年記念指揮者無しダイク」が佃嶋の先っぽから客船ターミナルの先端までの島に響き渡る善き日だった筈が…パンデミックの数ヶ月が終わることを祈る作品135第3楽章へと凝縮されていく。

この場所を地元民として眺めてきたやくぺん先生とすれば、そんな音楽家の皆さんの祈りにエア拍手及び最後のホントの拍手で応じる要員として、席に座らせていただいたのでありましたとさ。舞台の上には、パンデミック騒動が始まった頃、やくぺん先生が最後に経験した巨大オーケストラで首席を弾いていた方などもいらっしゃり、遠くから手を振ったりして。

無粋なことを言えば、この演奏、奏者の多くは先週来上野の東京文化会館などでやられてきた様々な演奏再開に向けた実験を経験してきた皆さんで、そこで現場で得たノウハウを業界全体で共有する場でもあったようです。日本フィルのサントリーでの無観客ライヴでの現場からの情報なども演奏家レベルでは情報として共有されているみたい。どんな詳細な文章でのガイドラインよりも、実際に経験してきた実験の結果を直接舞台で演奏家どうしが分け与え広めていければ、それがいちばん良いに決まってますからねぇ。

終演後、エレベーターに乗り合わせた大晦日上野ベートーヴェン弦楽四重奏大会で中間走者を務めた某氏と、この数ヶ月のことなど一瞬の立ち話。バイバイし、トリトン1階の駐輪場を出て、チャリチャリと誰も住まない五輪の街の中へと漕ぎ入れる。
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「からっぽなんですよ」と手持ち無沙汰な警備員さんと立ち話をし通り抜け、「東京でいちばん空いている観光地」として名高い客船ターミナルに至れば、コロナで5時で閉まってしまう送迎デッキには数名の人々がノンビリ座るばかり。夏至の日暮れにここで撮影会をしようとしていたアマチュアカメラマンさんとモデルさんが、もう閉まっちゃうんだと困惑してら。

そして、オリンピックでの大増便を理由に始まったトーキョー新名物、副都心上空を通過し羽田に降りていく機械鳥たちの下を、三密を避け夕方の風に吹かれる客をこぼれんばかりに乗せたヒミコ型観光船が大川河口をのぼっていく、梅雨の合間の水無月の日暮れ前。
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第一生命ホールの再開公演は、東混「八月の祭り」からだそうな。Tディレクターに拠れば、おいおいアウトリーチ活動なども復活の予定とのこと。

やっぱりまた御上に騙された水に囲まれた街には、ふろいでしぇーねるよりも、ミズヲクダサイの方が似合う…

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