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「げーぶん」が30年経って… [音楽業界]

昨晩、池袋は西口、東京芸術劇場上層階のコンサートホールに出向き、賑々しくもお目出度くも開館30周年を祝う野田秀樹版《フィガロの結婚》を見物させていただいたでありまする。
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中身に関しましては、一言で言えば「人口10万から30万人くらいのICEが停まるくらいのドイツ地方都市の、劇場とオペラハウスが一緒になって、自前の歌手と合唱団、50人くらいのオーケストラがあるムジークテアター系の市立劇場で、オペランヴェルトの今年の劇場ノミネートを狙ってるくらいの勢いがあるところが、気鋭の演出家で自前のスタッフキャストで出したプレミア」ってテイストの舞台でありましたね。

いろいろなことをやっていて、当然ながら賛否両論、ってか、接した人が接した人それぞれの関心から好き勝手なことを言ってワイのワイの盛り上がれているようです。やくぺん先生も、いつもの「感想になってない感想」を始めれば、がががががががぁ、っていくらでも書き流していけますわ。つまり、「ローカル・ガヴァメントがやってる劇場での、公金を使ったプロダクション」としては成すべき仕事をきちんとやった、ということ。

今から30年前、池袋の立教大学側のしょーもない場所に長距離エスカレーターを備えたガラス張り建築
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上層階に据えられた音楽専用ホールに収まるオルガンは表裏回転、なんてアヤシげな都立の新文化施設「げーぶん」(当初は東京芸術文化会館という名前だったので、業界ではげーぶんと呼ばれており、未だに爺はげーげきじゃなくてこっちで呼んでしまう)が出来たとき、これは一体なんじゃらほい、と思わざるを得なかったものです。やたらと楽屋がデカい大ホールはあるものの、下層階には室内楽ホールなどではなく規模を違えた劇場スペースがいろいろあるようだし、同じ財団が運営するなら上野との棲み分けがどうなるのか、都響がここに移ってきて上野はオペラハウス専門になるのか、だって二国、出来るんでしょ…

シノポリ指揮マーラー全曲演奏会で賑々しくオープンし、《嘆きの歌》はなあんとなんと、当時はまだナクソスに駆逐されておらずやたらと権威があった天下のDGから晋友会が歌うライヴが発売されるビックリ仰天もあった。とはいえ、いろいろ噂があったレジデントのオケが来るでもなく、都響が常駐する様子もない。

やくぺん先生とすれば、20世紀末から世紀転換期の数年、西武線沿いの目白に庵を結んでいたこともあり、ある時期は自宅から歩いて通える、ってか、池袋方面から戻ってくるときには横を通るホールになっていた。とはいえ、根津に居た頃に上野文化会館に通ったように足繁く訪れることもなく、人と待ち合わせに使うには良い場所なんですけどねぇ…ってかさ。

そんな「げーげき」が、いつの間にやら演劇の方から活性化されていき、それに引っ張られるように上のコンサートホールでもオペラっぽい企画が始まったり。ふと気付くと、ニッポンのポンピドーセンターを狙っていた筈のオペラシティの向こうを張るような「ゲンダイオンガク」企画もそれなりに出されるようになったりして。

かくて時流れ30年、世界の超一流の舞台を札束積み上げて引っ越し公演するんじゃなく、「ホールオペラ」のひとつの集大成として、この劇場の芸術監督が自ら演出したニッポン文化圏以外では作れない、それでいてイロモノではなくまともな、オペラ演出史の流れに沿った議論にも値するプロダクションを、きっちり出せるまでになった。あらゆる面から眺めて完成度が高い、というわけではなく、カンパニーを持たないプロダクションとしての限界をあちこちに感じさせるでこぼこのある舞台であることが重要。まだまだダメだ、という伸びしろがあちこちに感じられるステージ。

いやぁ、まさか、あの「げーぶん」がこんな場所になるとはねぇ。生きてみるもんだなぁ。

祝、げーぶん30年。

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