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コンクール委嘱新作の行方 [現代音楽]

昨日来、浜松市の「浜松ピアノコンクール中止」という決断が世間の話題となっております。大阪の1年延期からの中止決定は殆ど音楽業界メディアの関心すら集めなかったのに、やはりピアノというのは注目度が高いのかなぁ、とちょっといじけそうになるけど…やっぱり小説の舞台になって、映画化までされて、というだけの効果はあったのですなぁ。

…なんてどーでも良い話ではなく、ともかく、これが現時点での浜松事務局から出されている公式リリース。
https://www.hipic.jp/news/2021/05/0527news.php
余りにも真っ当な、現在のこの極東の列島の状況を考えれば致し方ない決定でありましょう。現在、ヨーロッパではメイジャー大会が次々と開催されておりますけど、参加者の偏りはもの凄く、大会としてのレベルの確保がなによりも心配される事態となってるわけですし。現在進行中の東京オリパラ騒動で露呈された「どうしても競技会を開催しないといろいろと困る主催者」の事情が、コンクール業界でもあれやこれやと露呈してますな。かえすがえす、よりによってこんなときに世界音楽コンクール連盟がいろいろあって上手く機能していない、というのは不幸だったのか、それとも神様が「もうコンクールという才能発掘の方法は止めなさい」と仰られているのか…

もといもとい。で、この浜松の決定が公式発表となった翌日、地元新聞社の追加報道として、このようなニュースがありました。
https://www.at-s.com/sp/news/article/shizuoka/907534.html
地元メディアさんが、このような形で報道の後追いをちゃんとしてくれるというのも凄いなぁ、と感嘆するわけでありますが(後援団体に名を連ねているから、というだけではないでしょう)、さりげなく重要な話が出ています。引用すると

「財団によると、コンクールでは2次予選の課題曲として、作曲家川島素晴さんの新曲を用意していた。応募者に呼び掛けてこの新曲を演奏・録画してもらい、インターネット上で公開する企画などを検討している。」

なるほどねぇ、こういう手があったか、と膝を打ったりして。

コンクールやら、はたまた学校の卒業試験のために作品の提供するというのは、近代以降の作曲科にとって大事な仕事のひとつとなってきております。名曲として生きている作品もいくつかはあり、そうねぇ、コンクール由来で最も有名なのは、やっぱりシャミナードのフルート小協奏曲かしら。弦楽四重奏業界では、かのヴィドマン御大が偉くなる前の最初の弦楽四重奏曲がベルリンで開催されたローカル大会の課題曲で、今思えば、あたしゃクスだとかディオティマだとか、はたまたアルモニコが世界初演するのを散々聴いたんだわなぁ。

一方で、「演奏が終わったらみんなで楽譜を焼いた」などと嘘かホントか判らない話を参加団体メンバーから聞いたこともある(笑いながら、だけどさ)悪夢のような、二度と弾きたくない、なんて曲もいろいろあるんでしょうけど。

昨年来のコロナ禍では、世界のコンクールが審査用に委嘱した新作が、いくつも初演されないままになってます。リストを本気で作り始めたら、恐らくは1ダースくらいはあるんじゃないかしら。この話とかみたいに、現状ではなんとか初演が迎えられそうな作品もありますけど。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-05-21
浜松の新作、作曲者さんの名前からすると、内部奏法とかもありそうなんだけど、どういう形であれ世の中に出ることを期待しましょう。そのうち、「コロナでお蔵入りになったコンクール課題曲特集」なんて演奏会もあり得るかもなぁ。

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