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ボルチアーニ大会始まりました [弦楽四重奏]

日本時間の昨日夕方、遙か北イタリアはイタリアQ第1ヴァイオリンのパオロ・ボルチアーニの生誕地レッジョ・エミリアの市立劇場から、第12回パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールのインターネットでのライヴ中継が始まりました。パスワードの登録が必要ですが、無料で視られます。これが昨日開催された1次予選というか、第1ラウンドの4団体。
https://app.idagio.com/live/event/12th-international-string-quartet-competition-premio-paolo-borciani-first-day-morning?utm_medium=share&utm_campaign=idagiolive&utm_source=pcl
https://app.idagio.com/live/event/12th-international-string-quartet-competition-premio-paolo-borciani-first-day-afternoon?utm_medium=share&utm_campaign=idagiolive&utm_source=pcl

この大会、結果的に9団体が参加で、本日の演奏が予定されている昨年のフィショッフ優勝のボストンのカッツ教室の「アメリカ系」団体を除けば、すべてが欧州に拠点を置いている団体ばかり。ぶっちゃけ国際大会というよりも、「ベルリン系(ABQ&アルテミスQ弟子筋)」「ザルツブルク系(バーゼルのライナー・シュミット含めハーゲンQ弟子筋)」「フランス系(プロクァルテット関係筋)」とも呼ぶべき、21世紀10年代の欧州弦楽四重奏教育のいくつかの流派を辿ってきたり、あちこちに顔を出している連中による「全欧f2選手権」って感じですね。10年代に本格的に始まったハイデルベルクの春音楽祭のコンクールや、パリのクァルテット・ビエンナーレのショーケースが、そろそろ若手発掘の場として機能し始めてるようなのも興味深いですな。

これら20代後半くらいの欧州で学ぶ世代となると、20世紀の終わりから今世紀初頭を席巻「アマデウス系」や「ラサール系」世代はもう審査員に入る側にまわっていて、その次が出てきているなぁ、と思わされます。時代はしっかりと動いている。

ただ、案外、というか、やはり「イタリアQという戦後のひとつの趣味を作った団体を顕彰するコンクール」という場所だからか、オランダベルギーやパリなどでひとつの勢力としてはっきり台頭してきているピリオド系、はたまた勢力としてはまとまったものにはなっていないものの北米では大きな流れとして確実に存在しているポスト・クロノス系の団体は、全く入っていません。

昨日今日の最初のラウンドは、このコンクール毎度お馴染みの「ベートーヴェン作品の冒頭楽章ひとつ」という課題曲は今回は作品18の1の第1楽章。それに、ハイドンかモーツァルトの成熟期作品を1曲まるまる、という、一昔前のフィギュア・スケートで言えば「規定競技」みたいなラウンドで、ぶっちゃけ、団体の地力を知るに理想的なステージであります(ここまで明快に古典ステージを設定する主要大会って、案外、ないんですよねぇ)。やくぺん先生ったら、上野でサーリアホのオペラを聴いて、サントリーでイェルサレムQのベートーヴェン初日を聴く合間にANAホテル足下のドトールでPC慌ててセッテイングし、最初の団体と2番目の団体をちょっとだけライヴで聴いたんですが
IMG_2100.jpg
勿論、ネットでの中継は途中にいくつかの処理が入るので、判らないことはいろいろあり、何より困るのが音のボリューム感(単純な音量とはちょっと違うんだわなぁ)が全然判らんこと。とはいえ、やはりこういうラウンドは有り難いなぁ、と思いましたです。最初の団体のハイドンなんぞ、「おいおいおい、どの先生にならったんだぁ」と苦笑しながらプロフィルひっくり返したり、近衛の血を引くお嬢さん(「おやかた」からすれば、曾孫世代ですな)がヴィオラに座る次の団体をかつての近衛邸ほど近くで聴く事実に妙に感じ入ったり。シュミット弟子のザルツの団体が、今風の古楽も知ってますよ、って片鱗を見せてるけど、なんせ名にし負う「音程フェチ」の先生のお弟子ですから、HIPというよりもそういう方向からの趣味かなぁ、とも。

今月半ばまで聴けますので、お暇な方はどうぞ。

[追記]

本日7日月曜日、日本時間の午後6時くらいから弾く予定だったフランスのアガーテQという連中が「隔離上の理由で、可能ならば10日に最初のセッションを延期」だそうです。

うううん、何があったのかしら。隔離の期間など最初から判っているだろうに。まあ、今は大会事務局に興味本位で尋るわけにもいきませんので、いずれまたなにか判れば、ということにしましょ。なお、プラハの春で勝った韓国の団体や、ボストンのカッツ教室の若いのは来ているので、「ヨーロッパ選手権」にはならずに済みそうですな。

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まるまる2年ぶりの… [音楽業界]

「音楽業界」ってよりも、「たびの空」カテゴリーがホントのところなんだけど、現実としてはたびの空ではないトーキョーベッタリ状態なんで、このカテゴリーにしておきます。無意味な駄文なんで、読む必要はありません、お忙しい貴方には時間の無駄ですっ!

木曜日には遙かトーキョー都下は谷保まで行き、金曜日は梅雨入り前の大雨の中を決壊しそうな大川六郷川鶴見川跨いで鶴見に向かい、ほのQの実質上の帝都の目利き聴衆前へのデビュー演奏会をマチネで見物。オフィス無しの居候状態縦長屋ではちょっとやれないきつい徹夜ありの作文をやっつけるためにそのまま京急鶴見駅向こうの国道1号線が深夜まで騒々しいシティホテルのビジネスルームとやらに宿泊(わずか€10程度のアップグレードで、机がちゃんと仕事できるだけの広さがあり、作文作業に耐えるだけの椅子も完備!)、崎陽軒生姜焼き弁当喰らいながら作文作業を敢行。土曜日朝には金曜締め切りだった原稿を編集部に投げ込み、JR鶴見駅から目の前のホームがなく通過する相鉄直通を恨めしげに眺めつつ川崎駅乗換で武蔵小杉に向かい、この街には絶対に住みたくないなぁ、と思いつつ東横線に乗り換えて、初夏っぽい湿った空気にオリンピックは他人事みたいな柿の木坂のワクチン接種会場隣のホールに到着。昼過ぎから延々と8時過ぎまでクセナキスの音に晒され、頭ガンガン、前頭葉崩壊の海胆頭怪人状態で途中の地下鉄乗換えを間違えながら、なんとか五輪準備粛粛と進む湾岸は縦長屋に戻って参りました。あけて本日日曜日朝、お嫁ちゃまは朝から夕方までオンラインで学会みたいなもんをやってるんで、さっさと塒を追い出されておりまする。

なんせ、本日から、ってか、今月に入ってからの日程を列挙すると…

1日:Qインテグラ(鶴見)→サーリアホ作品ワークショップ(上野)
2日:作文作業
3日:クセナキス音楽祭プレイベント(谷保)
4日:ほのQ(鶴見)
5日:クセナキス音楽祭本番(柿木坂)
6日:サーリアホ日本初演本番(上野)→イェルサレムQベートーヴェン初日(溜池)
7日:イェルサレムQ第2日(溜池)
8日:イェルサレムQ第3日(溜池)
9日:葵トリオ(与野本町)
IMG_E2087[1].jpg
10日:イェルサレムQ第4日(溜池)
11日:イェルサレムQ最終日(溜池)
12日:予備日(イェルサムQ+Qアマービレ?)
13日:エク定期(上野)

って、もうぐちゃぐちゃの大連チャン。冷静に見れば、この日程って、「5月の終わりに成田か羽田を出て欧州のどっかに入り、時差調整を兼ねて4,5日の間、シーズン終わりの歌劇場が出す特殊な現代オペラやら、一足早く始まった田舎のフェスティバルに知り合い団体に挨拶がてらに顔を出し、頭と体調を欧州モードに直しておもむろにコンクール開催都市に乗り込み、一週間の間、延々とセッションを眺める」って、2週間の初夏の欧州コンクール取材たびの空、まんまじゃんの。

セッションが進む真ん中辺りに休みが1日あって別のジャンルのマチネが用意されてる、なんてのもまるっきりコンクール取材日程だし、終わった翌日にまだホントは眺めなきゃならん演目が予定されてるんだが、とてもじゃないがその時点でまともに頭が生きているとは思えないので現時点では未定にしてきましょ、ってのも毎度おなじみのコンクール取材パターン。

冗談では済まないのは、やるかやらないか最後まで判らなかった北イタリアはレッジョ・エミリアのボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールが、どうやら付帯事業というか、同時に開催される世界音楽コンクール連盟総会も含めて本日から開催されることになったようで、この日程がまんま「成田を5月末に出て、ブリュッセルに入ってベルギーオランダドイツなどを数日ウロウロし、アルプス越えてボローニャ化ベルガモに入ってレッジョまで行き一週間べったり滞在、終わったミラノ出てスカラ座眺めて…」って2週間の3年に一度のツアーを、まんまトーキョーでやってるような錯覚がしてくるぞ。実際、庶民の意向など無視して五輪強行の御上は粛粛と開催準備を薦め、地元とすればもう実際は始まってる五輪など無縁に、別の世界のたびの空、って感じの曇り空なのであーる。

このたびの空から戻ったら、いよいよ冗談では済まないことになってるオフィス移転作戦に本格再着手し、なんとかトーキョー湾岸ご当地五輪悪夢の強行騒動に巻き込まれないようにしたいものじゃが…受け入れ先も緊急事態で動けない状況が少しでも好転するよう、fingers crossed…

さて、英訳の「羽衣」台本読みながら、そろそろ上野に向かうべぇかい。2021初夏のトーキョーツアー、いよいよ本格開幕じゃ!

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「18人のプレアデス」本番迫る [現代音楽]

足かけ5年の大企画となってしまった打楽器奏者加藤訓子プロデュース、というか、芸術監督、というか、学長さん、というか、「18人のプレアデス」が、この週末土曜日にいよいよ1年遅れの本番を迎えます。
https://npo-artsworks.org/ja/inc

一昨日の6月1日から、このプロジェクトを支えてきたくにたち市民藝術小ホールで最後の準備セッションが公開で行わました。これが昨年夏のセッションの様子。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2020-08-17
本日も客席に少数の関係者を迎え、全曲がプレビュー披露されました。

上のURLでお判りのように、土曜日の本番までもう目の前ですので、細かいことは言わず、土曜日の演奏について、現時点で判っていることを記しておきます。

クセナキスの6人の打楽器奏者のための《プレアデス》を18人の若手打楽器奏者で演奏する本番は、「クセナキスと日本」という午後まるまる開催されるミニフェスティバルのメインイベントとして、2度演奏されます。時間は、午後4時と午後7時。

◆16:00 大ホール1回目 開演
「ルボンと舞」(Rebons a.b.) :加藤訓子(打楽器)+中所宜夫(能楽師・観世流シテ方/能舞)
「18人のプレイアデス」 :inc. percussionists

◆19:00 大ホール2回目 開演
「ルボンと舞」(Rebons a.b.) :加藤訓子(打楽器)+中所宜夫(能楽師・観世流シテ方/能舞)
「18人のプレイアデス」 :inc. percussionists

この作品をご存じの方は、どうやってスコアで6人のために書かれた作品を18人でやるのか、そしてなによりも楽章配列はどうなるのか、等々、知りたいことがたくさんあるでしょう。最低限の、明かしてもいいであろうことだけを明かしますと…

※楽章の並べ方は、本日国立で演奏されたチームの演奏順は「ごちゃごちゃ」「金属」「鍵盤」「皮」の順番でありました。土曜日の2度の演奏で同じ順番で演奏するかどうかは判らない、とのこと。つまり、2回聴いても良いんですよ、ってことです。

※話が前後しますけど、プロジェクトに参加した若手打楽器奏者は、18人×2+α。最終的に土曜日の目黒パーシモン大ホールに登場するのは、2チーム36人です。「金属」「鍵盤」「皮」各楽章はスコア通りにそれぞれ6人の奏者で演奏。ひとり楽章ひとつで、ひとつの楽器に張り付いて持ち替えはなし。結果として、総計18名となります。すべての楽器が導入される「ごちゃごちゃ」は、この全員が参加します。

※「ごちゃごちゃ」楽章は、加藤さん曰く「そもそも6人で指定通りに演奏するのは無理なんです」とのこと。ぶっちゃけ、ジクセンからシロフォンからの持ち替え、なんて無茶な指定があちこちにあり、瞬時の超短距離ワープをし、更に時間の巻き戻しをしない限り、絶対に不可能。今回は、恐らくは史上初の試みとして、それぞれの楽器を奏者が固定し、6パートを分割して無理なくアンサンブルとして再現出来るようにしています。ほれ。
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このような試みは、「多重録音で6パートを全部ひとりで演奏する」という無茶なプロジェクトを経験し、総譜の無茶さを知り抜いた加藤さんでなければ不可能な決断だったでしょう。要は、「ごちゃごちゃ」に限れば、ストラスブール・パーカッション・グループなど伝説の団体がライヴ演奏の際にせねばならなかった妥協を一切排した、ライヴで聴ける最もクセナキスの楽譜の意図に近い再現ということ。

この機会を逃すと、クセナキスの実質再現不可能な《プレアデス》という史上最大の打楽器シンフォニーのライヴでの聴取は、ほぼあり得ないでありましょうぞ。

絶対、来ないとダメでしょ。

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サーリアホの《余韻》は室内オペラではない…そうです [現代音楽]

新暦の水無月に入ったと思ったら、ボーッとしていた時間がいきなり動き出したか、昨日からあちこちでいろんな事が起き始め、この商売を初めて30年近く、一ヶ月に締め切りが一本もないという驚異の完全失業状態だった5月が嘘のようなキツい日程の締め切りが並んでしまい、うううむ、あたしの守護神様ったら、いろいろお忙しいとは思うけどさぁ、もうちょっとバランスを考えてちょーだいな、と文句も言いたくなるもんじゃ。

なんせ、昨日からは週末の柿の木坂での本番に向けて遙か西の彼方の国立では加藤訓子さんのクセナキス・プロジェクトが最後の練習に入り、今日明日と実質上の公開GP。それとまるっきり平行し、日曜日の本番に向けて東の上野ではサーリアホのオペラ《余韻》の舞台上での仕込みが始まっている。んで、昨日はサーリアホ作品のスタッフやら出演者、はたまた作曲家も集めてこんなイベントがありましたとさ。
https://www.t-bunka.jp/cms/wp-content/uploads/2021/04/210601_r.pdf
ワークショップとされてますが、結論から言えば、実態は「記者会見」みたいなものでありました。

前半は日曜日の本番にも出演するフルートとカンテレの奏者さんが舞台に登場し、短いサーリアホの作品やら、カンテレは即興などを披露。まあ、演奏会というよりも「登壇者ご紹介」って感じです。そんなのが半時間ほどあり、小ホール舞台上中央に巨大なスクリーン、上手側に椅子が3つ、下手側に椅子2つが持ち出され、中央には来日隔離も13日目で明後日のプローベからは上野の杜にやっと来られるサーリアホ様ご本人がオンラインで、上手側にはフルート奏者、指揮者、演出家が座ります。反対は司会者さんと通訳さん。で、司会者さんが登壇者に質問し、一問一答という感じでサーリアホの音楽やら、日曜日に日本初演される作品について話がされる。

以下、その語られた内容を記すべきなんでしょうか…これは困ったぞ、とずーっと感じておりました。というのも、語られている内容が、まだ客席にいる聴衆のほぼ誰もがちゃんと耳にしたことがない舞台作品についてだからです。

正直、このイベント、まずはGPの映像なり過去の録音なり、はたまた会場に居る出演者(合唱団も客席にいると紹介されてました)なりが舞台の上からちょっとでも良いから日本初演を迎える作品の一部なり、さわりなりを披露してくれて、今時だから過去の舞台上演の映像をちょっとでも良いから観せてくれて、あああなるほどそういうもんなのか、と最低限の作品に対する具体的な情報を得た上で、議論がされるのだろうと思ってました。

だけど、そういうのは全く無く、いきなり能との関係のことやら、演出のことやら、カウンターテナーを使うことやら、中身について語られる。

ぶっちゃけ、なんだかちっとも判らんねん。

舞台上の皆さんは、もう数週間もひとつの作品に取り組んで来ている現場の方々ですから、語ることはたくさんあるのでしょうし、いくらでも語れる。聴衆とすれば、噂はいろいろ聞いているけど一度も見たことないゴジラという生き物について、ゴジラを飼育したり長く研究してきている方々の議論を眺めている、って感じかしらね。

おいおい、みなさん、ちょっとでいいからせめてゴジラがどんな格好しているか黒板に絵くらい書いて下さいな、ゴジラの尻尾の先が裏にあるんならちょっとだけでも良いから見せて下さいな、って気がするばかり。

うううむ、そういう聴衆の気持ちを盛り上げ、日曜日への期待を高めるのが目的の会だったのだ、と言われるなら、ああそうでしたか、としか言いようはないけどさぁ。

ぶっちゃけ、もの凄くストレスが溜まり、大川端の縦長屋に戻ったら、慌ててYouTubeをひっくり返し、アムステルダムで上演されたときのピーター・セラーズ演出のトレーラーやらを眺めたり

https://www.youtube.com/watch?v=kMxbhf6btYg&t=49s
やたらと元気なセラーズ御大の演説を眺めたり
https://www.youtube.com/watch?v=oonN06GkIhY
なんとか消化不良感を解決すべく深夜に至ったのであったとさ。

ま、そんな中でも、興味深いこともありました。コロナ下の公共施設使用時間制限が厳しいらしく、どうしても午後9時には終えねばならぬ、って感じな慌ただしい空気漂う中で成された客席との質疑応答で、どうも作曲科らしい若者と、自らがチェリストであると名告った青年のサーリアホ氏への直接の質問と、それに対する返答は、いろいろな意味で興味深かったです。中身そのものというよりも、サーリアホ氏の応え方、質問へのアプローチの仕方に、へえええええ、と思わされたのでありました。なるほど、流石にメイジャーな作曲家として世界を歩いている方だな、って。

全体のやりとりの中で最も重要だった発言は、サーリアホ氏が「この作品では室内オペラを書こうとしたのではない」と仰ったところでした。もしも自由な記者会見なら、あたしゃ、ここを突っ込みたかったなぁ。

だってね、この《Only the Sound Remains》って、エズラ・パウンドが英訳した死んだ平家の琵琶名人の亡霊と羽衣盗まれた天女と、ふたつの能台本をバリトンとカウンターテナーのふたりを登場人物にダブルビルのオペラとしたものなんだが、オーケストラは弦楽四重奏とフルートとカンテレと打楽器とエレクトリシャン、それに声楽四重唱の合唱だけなんですわ。恥ずかしながら、やくぺん先生ったら、昨日まで日曜の日本初演は小ホールだと思い込んでました。この編成で、空間はあの上野の大ホール。で、それを作曲者は「これは室内オペラではない」と仰るんよ。

これって、最大の突っ込み所じゃあないかい!「それってどういう意味ですか、こんな小編成で、敢えて大ホールでやらねばならないのはどういうことなの?」って、誰だって質問したいでしょーに。実際、ネザーランド・オペラでのセラーズ演出も、あの運河横のいつもの劇場が舞台だったようだし。

さあ、貴方も日曜日、上野の大ホールに行きたくなってきたでしょー!
https://www.t-bunka.jp/cms/wp-content/uploads/2021/01/210606_m.pdf

ちなみに、パウンド訳は、ネット上にありました。なんと「羽衣」にはイェーツの序文が付いてる、ってなんか凄いもんです。さあ、みんな、急いで勉強しなさいっ。
https://www.gutenberg.org/files/8094/8094-h/8094-h.htm
http://jti.lib.virginia.edu/japanese/noh/PouTsun.html

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遅ればせながら若者達の季節 [弦楽四重奏]

世間がコロナだ五輪だで大騒ぎのうちに、いつのまにか皐月も過ぎ、水無月となってしまいましたぁ。梅雨入り前の新帝都抜け、六郷川と鶴見川渡ってやってきた鶴見駅前ロータリを見下ろしながらコンビニで買った大人のガリガリくんパイン味なんぞペロペロ舐めてると、カラッとし切ってるわけではないけど充分に爽やかな風が吹き抜け、体に感じる空気や目に入る太陽の光は、まるでシーズンオフにコンクール行脚でICEが停まる駅に降り立ってさあ明日からどないしょ、ってボーッといてるときみたいな気分にすらなってくるぞ。

なんせ午後2時から、21世紀10年代に「ニッポン首都圏の弦楽四重奏の聖地」となってしまった鶴見はサルビアホールで、こんなシリーズが始まるのであった。
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本日はトップバッター、クァルテット・インテグラの皆さん登場じゃ。当電子壁新聞で敢えて宣伝しなかったのは、意外にも、というと失礼なんだけど、チケットがそれなりに動き、こんなご時世、溢れるようなことになったら困るかな、と思ったから。実際、100席の豪華過ぎる、弦楽四重奏には理想的過ぎる小さな会場にほぼ満員の聴衆が集まったのだから、これはもう、それだけで特筆すべき出来事ではあるまいかっ!

このミニシリーズ、もうお判りの方はお判りのように、当無責任電子壁新聞のカテゴリーとすれば「大阪国際室内楽コンクール」にしても全く問題ないラインナップ。なにしろ、本来ならこの5月の大阪で世界の若者に交じって闘っていたニッポンを代表する三団体が、大阪に向けて鍛えたら演目ドカンと並べ、日本いちばん口煩い聴衆達の前で競い合おうというのでありまする!実質上の幻の大阪大会国内本選みたいなもんですわ。

トップバッターとなったインテグラ、ベルク、シューマン、作品131って、逃げも隠れもせん演目を並べ、堂々の大演奏を繰り広げて下さいました。終演後は、大拍手!
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勿論、言いたいことはいろいろあったけど、ま、それは終演後に直接ご本人たちに言ったから、ここに記すようなものではありませぬ。正直、ベルクとシューマンのイ短調って、音楽としては似たようなものだし、作品131はいろんな意味で余りにも特殊な作品なんで、「若者よ、よくやった」としか言い様がないことも確かなんだけど…アンコールにチャイコフスキーの《アンダンテ・カンタービレ》をやってくれたお陰で、「あああ、なるほどこういう第1ヴァイオリンさんだからそうなるのね」って納得させてくれたから、今日のお仕事としてはやるべきことはやったんじゃないかしらね。

ただ、このサルビアホールという空間、ホントに怖いとあらためて思わされましたです。ともかく、本人達がそのつもりがあるかどうかにかかわらず、舞台の上でやってる細かいことがみんな聞こえてしまうわけで…

いろいろと場数を踏み、自分らのやりたいことをしっかり探してって欲しいものであります。なお、インテグラの皆さんに関しましては、ひとつ大きなニュースがあるのですが、秋の風を感じる頃になるまではまだ公表出来ません。乞うご期待、とだけ記しておきましょうぞ。

さて、次は金曜日のほのQですぅ。昼間に暇してる貴方、県境を越えるかを自主判断した上で、鶴見まで来たれっ!

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