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大阪国際2023開催決定 [大阪国際室内楽コンクール]

昨日、大阪からリリースが出ました。
http://www.jcmf.or.jp/img_sys/news/104/104_pdf.pdf

簡素な事実関係のみのリリースですので、※以下にまんま下にコピペします。

フェスタのやり方を含め、昨年予定され今年に延期されて中止になった第10回と同じ形のようで、第2部門がピアノ四重奏も含んだものになっていますね。参加団体にとって最も重要な課題曲に関してはまだ発表がありません。第10回がベートーヴェン記念年を意識したものだったのを継承するかは、これからの議論なのでしょう。また、公式な言い方が「第10回」なのか、ひとつ欠番にして「第11回」にするのかも判りません(まあ、殆どの方には表記の問題に過ぎないでしょうけど)。

当然、調査した結果の日程決定でしょうけど、なんせこの2年間で世界中のメイジャー・コンクールが大混乱になっているので(ついでにコロナ前から世界音楽コンクール連盟がゴタゴタしてるのもありますし)、参加したい若い者達がどうしていいか困るようなことにならないと良いんですけど。

スタッフの皆様、お疲れ様です、頑張ってくださいませ。

※※※

【大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2023 開催決定】

日本室内楽振興財団は、2023年5月に「大阪国際室内楽コンクール&フェスタ2023」を開催することを決定いたしました。
新型コロナウイルス禍で若手室内楽団体のチャンスが停滞してしまいましたが、2023年に再び有望なアンサンブルが大阪に集うことを期待しています。

<期日>
2023年5月12日(金)~5月18日(木)

<会場>
住友生命いずみホール (コンクール、フェスタセミファイナル/ファイナル)
富山県高岡文化ホール(フェスタ1次ラウンド)
三重県文化会館(フェスタ1次ラウンド)

<開催部門>
第1部門:弦楽四重奏
第2部門:ピアノ三重奏、ピアノ四重奏
フェスタ:2人から6人までの器楽奏者で編成される室内楽アンサンブルで、楽器の組合せは自由

<応募資格>
コンクールには、国籍に関係なく1984年5月1日以降に出生した演奏者によって編成される団体が応募できる。フェスタには、国籍・年齢に関係なく応募できる。

応募に関する詳細は、2022年3月に発表予定です。

公益財団法人日本室内楽振興財団

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ル・バルコンの《アッシジの聖フランチェスコ》ツァー2023 [現代音楽]

まだ随分と先の話だけど、今の感じではやっとこれくらいにならないと気楽に欧州の話は出来ないなぁ、と思いつつ記します。

先程、ちょいと指揮者のマキシム・パスカル氏と立ち話をする機会がありました。その際、教えてくれたこの先のご予定情報。マキシムが創設した「21世紀のEIC」とでも呼ぶべきアーティスト集団(演奏団体、という括りを外れてしまっているんで、こうとしか言いようがない)ル・バルコン、先月にはザルツブルク音楽祭で無事にシュトックハウゼン《Inori》を上演したりして、どんどんメイジャーなところにも顔を出し始めているわけですが、ずっと続けている《光》プロジェクト以外に、大きな企画があるとのこと。

時期は2023年、企画はなんとなんと、《アッシジの聖フランチェスコ》全曲上演ですっ!現在予定されているのは、メシアン音楽祭(どこなんじゃい?)とブダペスト。このふたつは演奏会形式だそうな。で、ステージ形式はリール歌劇場とシャンゼリゼ劇場。演出は、どうやら映像中心になりそうなのは、まあ、ル・バルコンのやり方と作品のあり方からすれば、当然でしょうねぇ。

お前が知りたそうだから教えてやるぞ、って感じの立ち話で、それ以上の情報を突っ込んでる時間もありませんでしたけど、ともかく2023年にメシアンの大作がヨーロッパの若い世代の演奏家で上演されるぞ、ってニュースでした。

その前に、台湾の準メルクルの上演予定はどうなってるのかしら…

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EIC松花堂弁当 [現代音楽]

水戸は黄門様と後印籠の銅像近く
IMG_E4162.jpg
わけあり直前割引き1泊簡易朝食付き2600円也の超格安和室ビジネスホテルにおります。先程、アンサンブル・アンテルコンテンポラン(EIC)日本ツアーの水戸公演が、無事に終わったところ。

なんせ、昨日になってやっと演目を真剣に眺めた瞬間、「あああ、これは転換にもの凄く時間がかかって、終演はヘタすりゃ9時半に近くなるぞ」と思った。翌土曜日の夕方には恐怖のコロナ蔓延都市新宿で《ルル》見物するという日程もあるし、午前中にはオフィス引っ越し騒動で税理士さんとのミーティングもあるので、老体に鞭打つのは避けるべきであろー。んで、上野東京文化会館で若きこんにゃく座ピアニスト氏がジェフスキー追悼(とは記してはいないけど、客のほぼみんながそう思ってたでしょ)《不屈の民変奏曲》が始まる前に慌てて小ホール客席から楽天さん検索して最安値の宿を予約。だってさ、「ああ、最終東京駅行き特急に間に合うか、水戸駅までの路線バスに乗れるか、走るのは嫌だなぁ…」なんて思いながらマデルナの曲なんぞ聴いていたくないもんね。心というよりも、体に悪いわ、そんなん。

結果から言えば、終演は9時4分。その後に12人だかの団員さんがお花もって何度も出てきてニコニコするのをしっかり眺めてからでも、東京組の何人もの皆様、水戸駅9時53分だかの最終ひたちだかには間に合ったことでありましょう。今頃は車内でつくばも見えぬ真っ暗な車窓を眺めてらっしゃる皆様も多かろうに。お疲れ様でしたです。

そんなこんなのコロナ禍でもなんだか団員さんみんな楽しそうなEIC日本公演、サントリー公演を全て終えた本日は、こんな演目。
https://www.arttowermito.or.jp/hall/lineup/article_4299.html

URLがなくなっちゃったら判らなくなるんで、自分へのメモとして演目コピペしとくと、こんなん。

★エドガー・ヴァレーズ:〈オクタンドル(8つの花弁をもつ花)〉8つの楽器のための(1923)
★ピエール・ブーレーズ:〈デリーヴ 第1番〉6つの楽器のための(1984)
★三善 晃:〈ノクチュルヌ〉5人の奏者のための(1973)
★フランコ・ドナトーニ:〈ルーメン〉6つの楽器のための(1975)
★エリオット・カーター:〈モザイク〉室内アンサンブルのための(2004)
★マグヌス・リンドべルイ:〈コヨーテ・ブルース〉室内オーケストラのための(1993)
★ヤン・マレシュ:〈アントルラ(網目模様)〉6つの楽器のための(1998)
★ブルーノ・マデルナ:〈セレナータ 第2番〉11の楽器のための(1954)

ほれ、アンサンブル・ノマドやいずみシンフォニエッタなどの演奏会に慣れた皆様なら、この演目一覧を眺めた瞬間に、「これはヘタすると演奏時間と転換時間がほぼ同じになるな」とお思いになり、終演時間を心配なされることでしょうねぇ。なんせ今、コロナでどの会場も終演が伸びるのを極端に嫌がりますから、場合によっては会場に行ったら「リンドベルイを泣く泣くカットします」なんて告知が出てるんじゃ、と悪い予感すらするでしょ。なにしろ水戸芸術館は、県がコロナの緊急事態発令だかになっているので臨時休館中。本日は特別に午後4時以降開けます、という異常事態下なんですから。
IMG_4160.jpg

そんな中で、まるでシテ・ド・ラ・ムジークのアンフィシアターくらいの規模の、これらの演目には適正規模な会場で開催された演奏会は、何事もなく無事に終わったわけであります。中身に関しては、なんだか知らないがやたらと世間が盛り上がっていて、東京組もいっぱい会場で顔がみられたので、SNS上あちこちで賞讃激賛感動の声が挙がりまくるでしょうから、あたくしめがどうこう言うつもりはありません。やくぺん先生的にいちばん興味深かったのは、中身よりも(勿論、中身は「アンサンブルのアルディッティQ」みたいなヴィルトゥオーゾ性で大受けなのはお判りの通り)「見せ方」のセンスの良さでしたね。これはもう、ニッポンの類似アンサンブルの皆さんや現代音楽系マネージャーさんやら裏方さんには是非とも見習って欲しい、いや、これはもうセンスの問題としか思えぬから、見習うと言うよりも「すげぇ」と思って精進していただきたい、と敢えて偉そうなことを宣っちゃうよ。

この演奏会、まずステージ上に不思議な形で楽器が配置されてます。で、いきなり、水戸まで遠征してきたピンチャー御大抜きの12人のアンサンブル全員(だったと思うが)が舞台に出てくる。かくておもむろにヴァレーズの超有名曲から始まるんだが(思えばレコード末期にはブーレーズ指揮この団体しかなかったなぁ、この曲って)、ステージ上の演奏している連中にだけ光が当たっている。8分くらいの演奏が終わると、拍手を待たずに、光が別の演奏家のまとまりのところに移り、ブーレーズの妙に耳に優しくドライヴ感すらある音楽になる。んで、また拍手もなく、ある意味で今回のEIC来日公演の隠れた目玉演目たる三善作品が奏でられ、最近は杉山氏の努力もあってかどんどんと認知が進んでるドナトーニの小品。

ここまで、実質、5分から8分くらいの4つの楽章、総計30分弱くらい、丁度ハイドンの四楽章交響曲一曲がまず演奏された、という感じで纏まって演奏されたんですわ。で、ステージ明転、大拍手。演奏家もいちど引っ込み、カーター翁最晩年、やくぺん先生がボストンのシンフォニーホール楽屋でインタビューさせていただき、御大は早く終えてロブスター食いに行きたくてしょーがなかった頃に書いていた最晩年様式の、弦楽四重奏曲第5番と殆ど同じ音楽に聴こえちゃいそうな実質上のハープ小協奏曲へと転換が始まる、という次第。カーターが終わって、前半終了。後半はそれなりに編成が違うので、一曲づつ念入り譜面台や椅子など消毒しながら転換作業、ってもんでした。

いやぁ、なるほどねぇ、こういうやり方があるんね。このやり方、正に「EIC水戸松花堂弁当」とも言うべき、とっても美味しそうに綺麗に盛り付けられ、でもそれぞれの味は移らずにかっちり仕切り分けされてる。メインの海老やら常陸牛煮こごりやらは、それなりのスペースゆったり並べてるし、ってね。

転換そのものの動きや、メンバーが交代に指揮を行うさりげない格好良さ、アンコールに応える姿が醸し出すだらしなさギリギリの楽しそうな感じ、そんな全体が、まるで夏のヨーロッパ田舎の音楽祭での現代音楽アンサンブルのソワレ、って空気を醸し出す水戸の夜でありましたとさ。

ちなみに本日の演奏会、先月のアンサンブル・ノマドによる「前の東京オリンピックの年回顧」の半券を持ってると25%引きになる、という太っ腹さ。無論、水戸市民の皆さんに深く感謝しつつ、ご利用させていただいたでありまする、はい。なんせやくぺん先生の世を忍ぶ人間体、大昔に当時ここを仕切ってたO氏(指揮者さんじゃなくて、オケの偉い人の方)と喧嘩になり水戸芸術館からずっと出入り禁止になってるらしく、招待なんて勿論ありませんので。いやはや…

[追記]

その後、無事に首都圏にお戻りになられた内部事情を良く知る方曰く、「指揮者がいなかったらねぇ」。なるほど、社長がいない遠足のノリだったのね、と大いに納得した次第。

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ミュンヘンARD一次審査終わってました [演奏家]

昨日はやくぺん先生高齢者カウントダウンのお誕生日、たまたま新帝都に仕事で上京している若い友人が佃縦長屋近くのビジネスホテルに宿泊中で、夜に部屋でひとりでビール飲んでコンビニ弁当喰ってるのも寂しかろうと、佃縦長屋で家庭内感染に気をつけながらプチお誕生会。とはいうものの、思えばこんな家呑みだって1年半ぶりで、あるところから記憶がなく、今朝になって久しぶりの本格的二日酔い。頭は動かぬ、気持ちは悪い、風呂に浸かって動けなくなってる今日この頃、皆様におきましては残暑いかがお過ごしでありましょうかぁ。

んで、なんにもしないでいるとかえって気持ち悪いんで、記し忘れてたネタをひとつあげておきます。あくまでも、事実関係のみ。

毎年、南独の秋を告げるバイエルン古都の年中行事のミュンヘンARD国際コンクール、昨年は流石に弦楽四重奏部門など含め全てキャンセルという設立以来初の異常事態となったわけでありました。今年ははやばやと開催が宣言され、一次予選参加者も発表されておりました。こちら。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-06-23

その後にコロナの状況はニッポンでは過去最悪となり、どうなっていることやらと思ってた。先頃、上のリストにも名前が出ていた数人の方々とちょっとだけ話をする機会があったので「どーするの、いけるんですか?」と訊ねたら、もう一時は終わっちゃってますよ、と言われた。

えええ、なんなん。で、慌てて公式サイトを眺めると、へえええ…
https://www.br.de/ard-music-competition/index.html
あらまぁ、確かに一次予選は終わっちゃってるじゃないの。なんのことはない、一次予選は普通の言い方をすれば「テープ審査」、つまり、ミュンヘンのスタジオや大学の部屋に行って、審査員の先生達の前で弾くんじゃなかったのね。

てなわけで、それぞれのジャンル、関心のある方は上の公式サイトから眺めていただけばお判りなんですがぁ、ま、一応、いちばんあたしらに近しい名前があるヴァイオリン部門を眺めておくと、二次予選という名でミュンヘン中央駅北東隅っこのバイエルン放送スタジオに9月7日と8日にやっと招聘されて弾けるのは、これらの方々。

September 7

from 10:00
Louisa Staples, Great Britain
Dayoon You, Korea
Eva Rabchevska, Ukrain
Hiu Sing Fan, Hong Kong

from 15:30
Fumika Mohri, Japan
Fabiola Tedesco, Italy
Youjin Lee, Korea
Louis Vandory, Germany

September 8

from 10:00
Seiji Okamoto, Japan
Filip Zaykov, Czech Republic
Judyta Kluza, Poland
Yun Tang, China

from 15:30
Dmitry Smirnov, Russia
Alexander Won-Ho Kim, Korea
Alexandra Tirsu, Moldova/Rumania

おおおお、なんかトッパンホールが渡航費出さにゃならんのか、って馴染みの名前が並んでるではないかい。

極東の島国との時差は8時間、無料で会場前に並んでるいつもの熱心なおばちゃんたちは客席にいないけど、ストリーミングはありますので、お暇な方はどうぞ。

それにしても、歌手はここまで韓国勢が少ないって、異常事態としか言えませんなぁ。うううむ…

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Works in progressとしての《大地の歌》 [演奏家]

ホントにやれるのか、という不安と期待の声に応えるように、サントリー芸術財団主催のサントリー・サマー・フェスティバルの目玉、アンサンブル・アンテルコンテンポラン来日公演が、昨晩、賑々しく溜池はサントリーホールで行われました。なんと、外国オーケストラの来日は昨年秋のヴィーンフィル以来、コロナになって2団体目だそうな。へええええ…

この団体、やくぺん先生は数年前に香港のシティホールでピンチャー御大の指揮で前半だけ聴き、後半はこの団体が結成されたときのオリジナル編成を決定したシェーンベルク室内交響曲だったんだけど、午前2時ランタオ空港発の東京便に乗らねばならぬので、泣く泣く空港特急駅まで走って以来。パリでは、随分前にこの団体の参加ということで《木曜日》の「ミカエルの世界旅行」の部分だけを聴いたことがあったような。その前は、遙か昔にディズイーランドの裏の第一生命ホール(という名前ではなかったけど、なんてったっけか)でブーレーズ・フェスティバルをやったときに来日して、なんのかんの聴いたような。正直、ヨーロッパの現代音楽系フェスティバルやらシテ・ド・ラ・ムジークの演奏会で聴いているんだろうけど、どうも「アンサンブル・アンテルコンテンポラン演奏会」という形では殆ど出会うことがない。ある意味で、レコーディングなんぞはともかく、裏方に徹したような、作品の影に隠れるような仕事音仕方をしている団体ですな。

それが、団体名を全面に押し出した来日公演ということで、広報の仕方も「世界一の現代音楽アンサンブル」とか、なんだか凄いことになってる。で、久しぶりの来日公演(だと思うんだけど…)の最初の公演は、この団体を少しでも多くの人に聴いて貰おうという配慮からか、細川俊夫《二人静》とマーラー《大地の歌》室内管編曲版、というなんとも不思議な演目になったわけですな。

うううむ、これは一体どういう意図なのか、なんだか良く判らぬままにサントリー大ホールのもうこれ以上後ろはない天助桟敷に陣取ったわけでありまする。

細川の能発声を用いたミニオペラ、数年前に統営の音楽祭の小劇場でアジア初演され…って、当電子壁新聞記事を貼り付けようとしたら、ない。あ、あれは表の商売もの記事をガッツリ出したので、一切ないんだっけ。しょーがないから、こういう場所。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-04-02
ま、その統営で演奏された舞台をガッツリ眺めていて、やっと日本初演になる、どうやらパリでの世界初演の平田オリザ氏のセミステージみたいな舞台を再現するらしい、なんて聞いてたのだが、なんのことはない、極めてストレートな演奏会形式上演でした。後でサントリーホールスタッフに尋ねると、どうも最初から特別の演出は提示されていなかったというので、コロナ下の来日を前提に最初からこの形だったようですな。ちょっと残念。ま、純粋に猛烈に繊細な音楽が最良の条件で聴けたのだから(些か広すぎたことは否めないけど)、これはこれでありだったでしょう。

問題は後半のマーラーであります。これ、今やあちこちで演奏され録音も何種類もあるシェーンベルク&リーンの私的演奏協会編曲版ではなく、サントリー室内楽アカデミーのメンバーががっつり後ろに座り、懐かしのクァルテット・アルパのチェロ抜きまで顔を揃えた室内管編成の編曲。当日プログラムには2008年にポーランドで世界初演されているというデータしかなく、コーディーズ(Glen Cortese)という編曲者がどういう人で、どういう経緯で出来た楽譜なのかはまるで触れてないのが残念であります。ま、そんなことに関心ある奴は、今時ネットでいくらでも調べられるだろ、ってことなんでしょうが…出版社さんの公式ページにも、編曲については何も触れてないなぁ。
https://www.universaledition.com/gustav-mahler-448/works/das-lied-von-der-erde-12993
あ、こんな映像もあるんだ。へええ。
https://www.digitalconcerthall.com/ja/concert/1728

ま、この版、上のベルリンフィル・デジタルコンサートホールの解説にもあるとおり、良くも悪くも「妙なことはせずに、オリジナルの雰囲気を可能な限り小さなオケで再現する編曲」でした。ベリオなんぞがやってたような、一種の再創造としてのオーケストレーション変更ではありません。そこにもってきて、ピンチャー御大は意外な程まともな解釈で、結果として「オリジナルでは絶対にライヴでは聴こえないテノール救済版」という感じが前に出てしまったのは否めないところでしょう。

正直、この作品、個人的には「20世紀半ば以降の録音というテクノロジーによってホントに傑作として認められた楽譜」のひとつ、その筆頭格だと思ってます(もうひとつの救済作品は、《グレの歌》)。録音とライヴ演奏は全くの別物で、この曲のライヴでの楽しみというか、醍醐味というか、聴き所は、絶対に無理なオーケストレーションを突き抜けようともがくテノールを鑑賞する、ぶっちゃけ、一種の演奏に於ける表現主義芸術ですな。ダメなところ、無理なところ、無茶なことをするところが「芸術」なのだ、って作品。ベン・ヘップナーみたいな巨漢が強引に声を張り上げて聴こえれば聴こえたで、「おおおおお、凄い凄い!」と盛り上がれるわけだしさ。ボストン響小澤指揮カーネギー公演でヘップナー&ノーマンという当時の二大巨頭で聴いたときも、ライヴとしては最も聴こえた演奏だけど、それでもそんじょそこらの録音みたいに完璧に聴こえるわけではなかった。ちなみにヘップナーはミネソタ管大植英次でヴァルデマール王を聴いたこともありますが、やっぱり無理、って思わされましたっけ。

恐らく、マーラーが生きていてメトのいちばん声がデカい歌手かなんかを引っ張ってきてNYPで自分の指揮で演奏していたら、練習の間にガンガン改訂をし、そっちを出版したことでしょうねぇ。で、現行版は「幻の《大地の歌》初稿」などと伝説とされ、ユニヴェルサールがマーラー・ブームの中でブーレーズ辺りに校訂させて大騒ぎになる、なんてこともあったんだろーなー。

昨晩の演奏、特にテノールさんがお仕事終わったあとの《告別》なんぞをボーッと聴きながら、この作品、用は「Works in Progress」なんだろうなぁ、と思っていたです。どうやっても楽譜通りでは完璧な演奏は出来ないので、いろんな人がいろんなやり方で、その人なりに「これが本質」と思うような譜面を作ってしまって構わない。で、永遠に「完成版」は出来てこない。そういう曲であっていいんじゃないかな、って。

ベトケの詩を巡っても議論は次々と沸いてくるし、演奏だって中国語の歌唱版なんぞ出現している。それぞれが、それぞれに言いたいことを言っている。20世紀の「原典縛り」の呪縛を抜けたところにある、サンプリング時代の新たな創造のあり方を示す楽譜がここにある…ってことを2021年コロナのニッポンに示すべく、天下のアンサンブル・アンテルコンテンポランさんはこの曲を上演してくれたんじゃないかしら。

なんせ、前半の作品の最後は、「私はどこからきて、どこにいくのか」だもんねぇ。

ちなみに、あの《大地の歌》が気に入った方は、こちらもどうぞ…って、抜萃しかないのかぁ。アンサンブル・アンテルコンテンポランが30数年前にやってたような尖ったことをやってる、2020年代の旬です。
https://youtu.be/36GyxfWpBkk
https://youtu.be/VHEyLOvxfpE

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ヴェネツィア・ビエンナーレのテーマは「声」 [現代音楽]

ここ極東の島国は昨年来のコロナ禍が世界から遅すぎる頂点を迎え、感染者爆発株価GDP下落、いよいよ日常生活のインフラにも影響が出始めている今日この頃、皆様はお元気にお過ごしでありましょうか。

地方自治体主催の運動やら音楽やら演劇やらのイベントも次々と中止になる一方で、国営世界大運動会パートⅡみたいなもんもやるとか、初台の国立劇場では新作オペラが世界初演されるとか、頭がクラクラするようなわけのわからんことが起きている。朝起きてメールのチェックをすると、欧米圏ではもうすぐ始まる2021-22シーズンのオープニングを巡る具体的情報が次々と送りつけられており、「コロナの時代が終わり、いよいよ再開だぞ」って空気が流れてくる。ニッポン列島、いよいよ別次元の空間に突っ込み始めているなぁ…

てなわけで、当電子壁新聞を立ち読みなさるような酔狂な方に関心がありそうな情報を貼り付けて起きます。こちら。9月17日開幕のヴェネチア・ビエンナーレ、今年は音楽です。
MUSICA_390x390_611e4b3517782.jpg

https://www.labiennale.org/en/music/2021

ディレクターさんの趣旨はこちら。“composing for the voice, based on the monumental choral works of the past decades to the dramaturgical explorations of the most recent vocal production” (L. Ronchetti).

うーむ、なるほどねぇ、としか言いようがにですな。んで、演目も奏者も、ご覧のようにわしら極東の島国に既に1年半も押し込められてるガラパゴス状態田舎者にはもうそろそろ付いていけない状態になりつつありますねぇ。へええ、と思えるのは「金の獅子賞」はサーリアホ様であります、ってことくらいかな。
https://www.labiennale.org/en/music/2021/biennale-musica-2021/golden-lion-lifetime-achievement-2021-09-17-12-00

昨日は松本のオープニングがキャンセルになり、敬遠していた初台の子供&電子音オペラ新作初演を見物に行かねばならぬかと調べたらコロナ売り止めでチケットがなく、ボーッとしてたんだけど、このヴェネチアのテーマなど、ある意味で近いと言えば近い。なんのフォローアップも出来ない今日この頃であるなぁ、と絶対に行けない遙かアドリア海奥の島の街を思うのであった。チケットを買いたい方がまさかいらっしゃれば、こちらからどうぞ。羽田成田からのミラノ便はあるようだし、開幕までまだ2週間以上はありますから。
https://www.vivaticket.com/it/biglietto/biennale-college-musica-jack-sheen-croon-harvest-1490-1562/162296

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大晦日に新人登場! [弦楽四重奏]

先頃、主催者のミリオンコンサート協会さんから、公式なリリースがありました。今や東京の大晦日恒例となった「ベートーヴェン弦楽四重奏9曲演奏会」、生誕251年目となる今年、若い団体が参加いたします。こちらをご覧あれ。
https://twitter.com/millionconcert/status/1428528221943783426/photo/1

まだ公式のホームページの方には挙がっていないようですけど、公式twitterで一足先に情報公開になったようです。

ラズモフスキー・セットを担当するクァルテット・インテグラ、コロナ禍の日本を拠点に活動する若手ライジング・スター団体は片手の指くらいはいるなかで、世代交代したミリオンのプロデューサー氏がこの団体を抜擢した理由が何だったのか、もう少し経ったら記すこともあるかな。なんであれ、個性的な長老、安定した中堅と共に若手枠を担う大きな仕事、しっかり完遂していただきたいものでありまする。

とにもかくにも、現時点でのインテグラの音を聴いておきたい方は、この週末に横浜は上大岡で演奏会がありますので、是非どうぞ。もの凄いガッツリした演目、市民はちゃんと選挙に行って、しっかり飯食ってから来るよーに。
クァルテットインテグラチラシ表.jpg
https://himawari-sato.com/event/20210422-3

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中止だったり開催だったり [パンデミックな日々]

先程、横浜は鶴見で某地元プロデューサーさんと林市長のバレエ劇場騒動が市長選に影響しているのか、なんぞの話をしていたら、こんな連絡が飛び込んで参りました。

2021セイジ・オザワ 松本フェスティバル (2021OMF) OMFオープニングコンサート、ふれあいコンサートI開催中止のお知らせ
新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、8月21日(土)「OMFオープニングコンサート」と8月22(日)「ふれあいコンサートI」の開催を中止し、開催期間を短縮いたします。楽しみにしてくださっていたお客様には大変申し訳ございません。対象公演チケットの払い戻しについては後日、OMF公式ウェブサイトで発表いたします。(以下略)
https://mailchi.mp/3e4fc5aad8b2/2021omfno4omfi?e=8cb4064c45

いやはや、中央線の大雨で果たして行けるのか、ということばかりを考えていたこの週末の松本、中止になりました。うううん、高速バスとあずさの切符、払い戻しせにゃならんわい。

その一方で、本日から始まっている草津音楽祭は、一部の演奏会でのキャンセルは発表されていますけど、なんとか開催されているようです。
https://kusa2.jp/

出演予定者のお宅には、事務局からPCR検査キットが送りつけられているそうで、これだけコロナ禍が長引くと、主催者側も独自の基準をきっちり定め始めているようですね。

松本からほど近い木曽福島も、先程、関係者の方とちょっと話をするに、現時点では開催の予定だそうな。ただ、刻々と情勢はかわっているようで、次の公式発表は20日になる、とあります。誠実な言い方ですな。
https://www.town-kiso.com/manabu/event/100210/

来日出来るのか心配されていたサントリー芸術財団のサマー・フェスティバルのメイン招聘団体、アンサンブル・アンテルコンテンポランの演奏会ですが、先週末からサントリーホール公演の招待状が関係者にやっと送られ始め、その先の神奈川県立音楽堂の招待状も昨日くらいから到着しているようです。どうやら、無事に開催されるみたい。

もうひとつ、二期会の《ルル》。少なくとも指揮者のマキシム・パスカル氏はずっと前からもう東京に到着しており、そろそろ2週間待機が終わって練習に参加出来るくらいなんじゃないかしら。

てなわけで、演奏会が開催されるかどうか、ホントにギリギリまで全く判らない、こっちがやってるからあっちもやってるだろう、とは全く言えない状況になってます。皆様も、お出かけ前にご確認を。無論、しっかり感染防止策をなさって、ですけどねぇ。

[追記]

8月19日夜、木曽町長さんから苦渋の決断のアナウンスがありました。
https://www.town-kiso.com/manabu/event/100210/

コロナだけではなく洪水被害、鉄道アクセス寸断も大きな理由なのでしょう。残念ですが、現実的で正しい判断だと思います。関係者の皆様、お疲れ様です。

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横浜市のバレエ劇場問題 [音楽業界]

当電子壁新聞で取り上げたか、情けないことに忘れてしまったんだけど、今、世間で注目のコロナ禍での市長選挙が盛り上がってる横浜市では、「市長の趣味でみなとみらい地区に東京バレエ団専属みたいなバレエ劇場建設構想」という問題が起きていました。こちらに公式な市からの発表がまとめれてます。
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/gekijyou/gekijyoseibinokentou.html

もの凄く乱暴かつ「書いてあることはみんなウソ、信じるなぁ」のモットーに則って言えば…

いろいろ話題の林市長さんがもの凄いバレエ好き、市長さんとか行政の偉い人とかとは関係なく単なるひとりのおばちゃんとして東京バレエ団のバレリーナさんのファンで、それが高じて市民の税金で自分のお気に入りのバレエ団が常駐する世界にも例がないバレエ専用の2500席の大劇場をみなとみらいの今は寂しいNISSANの向こう、米軍基地に面するヘリポートの隣辺りに建てて、運営は良く知ってるNBSさんにやってもらいましょうよ…って考えてるらしい
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これはいくらなんでもちょっとマズくね…って声が横浜市民の一部からあがって、既に億単位の金を使って調査などを始めて事業家間際だったのに異を唱える活動も始まっていた(報道は神奈川新聞くらいしかなかった)。
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-243704.html
https://news.yahoo.co.jp/articles/38fca00db8d3d925d6ee49e9056b5cb23ed24129
ホールやバレエにあまり関心無いような市民の方の分析記事はこちら。
https://1201.yokohama/yokohama-art-theater-release/
建設業界新聞の淡々とした新ハコモノ計画紹介記事はこちら。
https://blog.goo.ne.jp/9hjkl33/e/1d5a40946e60b41e1efa4e21cd047fa7
議員さんが出してる議会での議事録もありまする。
https://www.fujisakikotaro.jp/blog/activity/entry4818.html

そんなこんな、コロナ日本発祥の地にしてカジノが最大の議論だった横浜、市民の話題には殆どならず、業界関係者しか知らないままに、市はいろんな動きを始めておりました。この騒動を巡り異を唱えたみなとみらいホール館長の池辺先生が頸を切られて市長派のプロデューサーさんが館長に据えられた、なんて業界内の噂も流れてるし(ご本人は絶対にそんな経緯は話さないでしょうけど…)、なかなかドロドロした業界内コップの中の嵐になってたわけです。

さて、今の市長選の中でこの話がどの程度の位置づけなのかは別問題として、何故か東京新聞が各市長候補者に、このバレエ劇場構想に対する意見を聞いています。その返事は、以下。ほれ。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/124211

ま、ぶっちゃけ、ハコモノ行政の親分みたいな小此木息子を筆頭に、現職以外はみんな「こんなときに何言ってんねん」でオシマイみたいですね。流石の林市長も、一頃のイケイケではなくなってる。

どうやら一瞬の花火すらあがらずに終わる可能性が高くなってきているような横浜みなとみらいバレエ専門劇場計画、どうなることやら。

敢えてこのプロジェクトを評価すれば、これまでの日本の行政のハコモノとは一線を画し、「実質的な東京バレエ団の専属劇場として構想され、企画段階からバレエ団を運営する某業界超大手公益財団関係者が加わり、建設後の運営もその財団が指定管理で入ることが構想されている」という点でしょうね。立派なホールが欲しいんじゃなくて、自分とこでお気に入りのバレエ団が観たい、ってのは、林氏が市民から選ばれた市長じゃなく、かのオペラ大好きで中東世界最高のオペラハウスを建てちゃったオマーンの前スルタン・カリフ、はたまた単に自分が音楽好きなんてジュリアード音楽院を誘致して立派な分校施設を作っちゃった天津市長みたいな方だったならば、誠に有り難いことなんだけどねぇ。

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今年のアジア・オーケストラ・ウィークは… [音楽業界]

昨日、文化庁主催お盆のオペラシティでのプチ「地方都市オーケストラ・シリーズ」を話題にしたついでに、こっちも取り上げておきましょうか。

毎年、文化庁さんが主催して日本各地、というか、最近はオペラシティと東北311被災地のどこかで開催されている芸術祭の開幕を飾る「アジア・オーケストラ・ウィーク」、昨年はそもそもトーキョー2020疲れでやるんだかやらんだか判らん妙な空気だったところにコロナ禍で、結局、やるもやらんもない中止にきまってるでしょ、って感じで過ぎてしまった。五輪関連で文化予算を使い果たしてしまった今年はどうなるのか、なんせまさかコロナ禍がここまで引っ張られるとは思ってなかったし…

ったら、どうやらちゃんとやるようです。ほれ。
https://yufuinbkff.wixsite.com/bunkakiroku

なーるほど、こういう手があったか、と恐れ入るラインナップですな。いや、批判や皮肉ではなく、ホントに心から驚嘆しておりまする。

公演は10月4日から7日まで、会場はオペラシティのみ。参加団体も、大フィル、読響、東フィル、セントラル愛知と東海道新幹線で来られる団体に限る。出演者も指揮者ソリスト国内アーティストのみ。

うううむ、どこが「アジア・オーケストラ・ウィーク」なんじゃい、と机を叩きそうになる貴方、まあまあ、演目をご覧あれ。ベートーヴェン《運命》、ドヴォルザーク《新世界》、ドビュッシー《海》、ストラヴィンスキー《火の鳥》、などなど泰西名曲以外の演奏予定曲目を、団体演奏者無視し演奏される順番でだああああっと列挙してみると…

★グエン・メイツィ・リン:「穏やかな風」オーケストラのための
★細川俊夫:月夜の蓮―モーツァルトへのオマージュ―ピアノとオーケストラのための
★ベイサン・ユン:Bara(1960)
★陳鋼&何占豪:ヴァイオリン協奏曲 「梁山伯と祝英台」
★冨田勲:交響詩「新・ジャングル大帝 2009年」
★冨田勲:「ドクター・コッぺリウス」Rise of The Planet 9より
★山田耕筰:序曲ニ長調
★貴志康一:ヴァイオリン協奏曲
★ペルト:東洋と西洋

いやぁ、やってくれるわ、なるほどねぇ。この手があったか!

恐らくは、最も多くの注目を集め、人々が詰めかけるのは、冨田勲の《ジャングル大帝》組曲でありましょうなぁ。独奏者の都合であまり無茶は出来ないコンチェルトにも、よくまあこれだけ定評のある定番作品(若しくは定番になりつつある作品)を並べて来たものだ、と。

流石に「現代音楽」カテゴリーにするにはちょっと躊躇するラインナップではあるものの、こういうときなんだからこういうものをしっかり聴かせちゃいましょう、という割り切った企画、大いに賞讃せねばならんでしょうなぁ。無論、欲を言えばあれこれ言いたいことはありますけどねぇ、ま、そういうもんはまた別の機会があるでしょうし。

10月の頭、ちゃんとやれると良いんだけど…どうなることやら。

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