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古楽系弦楽四重奏団を聴こう [弦楽四重奏]

来る火曜日の晩、実は意外な東京東の室内楽プチ・メッカ(?)になりつつある日暮里駅東口出たアジアチックな喧噪のど真ん中のホテル4階、日暮里サニーホールで、こんな演奏会があります。
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https://quartettooceano.wixsite.com/main/concerts

東京首都圏の古楽系アンサンブル奏者などを務める連中が、「ピリオド楽器に拠るクァルテット」を定期的に演奏していこうと活動しているクァルテット・オチェーアノが、ギロヴェッツ作品集をCDとして発表するのに合わせてライヴをやるぞ、というもの。

東京圏、というか、日本で活動するホントのピリオド系団体というと、雑司ヶ谷のお寺でずっとやってる鈴木秀美さんのクァルテットがまず頭に浮かぶでしょう。一頃は古典Qが古楽系と思われていたこともあるようだけど、流石にその誤解は解けたみたいなのは良かった、というか、面倒がなくなった。一昔前までは、古楽系というと「意識高い=いろいろ能書きが長くてめんどー」というイメージもあったけど、流石に21世紀も20年代の今やそういう空気もなくなり、当たり前に聴けばいい、って空気になってきたのは、マジ、よろしいことでありまする。

とはいえ、ピリオド系で弦楽四重奏というのは自ら手足を縛っているようなところもあり、なかなか大変。秀美さんとかクイケン御大みたいな大家となればどうにでもやりようがあるけど、この類いのアンサンブルが山のようにある仏蘭白独英なんぞからでも、人気団体として認知されつつあるキアロスクーロQなんぞは例外中の例外。酒井のあっちゃんのカンヴィニQもまだ来日出来ていないし、高松古楽音楽祭の招聘で期待されたコンソーネQもコロナ禍で今年は来られなかった。そんな中、古い楽器愛好家さんの渇きを癒やしてくれる演奏会があるのだから、これはもう、聴かないわけにいかんでしょ。

来る火曜日に披露されるギロヴェッツは、バッハ以前のなにやら同じ事を繰り返しているような音楽ではなく、生まれは1763年のボヘミアというのだから、なんのことはないベートーヴェンよりちょっと上、ってくらいの人で、普通に言えば古典派からロマン派を生きたヴィーンの作曲家さん。要は、ベートーヴェンの弦楽四重奏文献を眺めていると名前はいっぱい出てくる同時代の弦楽四重奏作品を遺した人のひとりであります。別に隠れた、埋もれた作曲家というわけでもなく、知ってる人は知ってる、という方ですな。弦楽四重奏の録音もなかったわけじゃなく、NMLなんぞ開けばプレイエルやらチェルニーやらの弦楽四重奏と一緒になったディスクが出てきたり。音楽としても、ビックリして腰を抜かすようなものではありません。なんのかんの言わずに、まずはお聴きあれ。

幸か不幸か、コロナ禍で御上がこういう映像収録の支援をしてくれるという環境を用い、こんな映像が出てきてるのは有り難いことでありますな。

お暇な方も、そうでない方も、火曜日は日暮里へどうぞ。そろそろベートーヴェンも飽きてきたでしょ、とは言わないけどさ。

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神様はいないけどブラームスはいっぱいの月 [演奏家]

神様が出雲に集まってる間に、いつの間にかニッポンの島々にもやたらと外国から音楽家の皆さんが押し寄せる状況になり、未だ鎖国状態が解けぬわしら庶民はどこへやら、連日著名ピアニストさんやら長老指揮者が溜池やら池袋やらの舞台上に戻ってきているらしー今日この頃、皆々様はいかがお過ごしでありましょーかぁ。

住民票は諸事情で東京湾岸に置かねばならぬもの、既に気持ちは半分温泉県民になってるやくぺん先生ったら、そんな新帝都の秋空をシン・ゴジラ視点から他人事の様に眺めつつ、あーそーなんだぁ、としか思えぬ。なんか、ホントに内田光子やらツィンメルマンやら、関心がなくなってしまったなぁ、ましてやショパン・コンクールをや、ってご隠居気分。とはいえまだまだ年金生活など出来ない我が身、魂に鞭打って出かける演奏会場、この神無月はどういうわけか「ブラームスのヴァイオリンとピアノの二重奏」強化月間になってしまったぞ。


まず先陣を切るは、思えば去る1月のイザベラ・ファウスト以来の「外国人著名ソリスト」の二重奏、かの「カヴァコスなんて誰も知らない」って、現藝大准教授さんの手になる捨て身のキャッチコピーも懐かしいカザルスホールでの文字通り誰も客がいないデビュー演奏会から幾年月、今やニッポンはともかくヨーロッパ、とりわけドイツ語圏では最も売れっ子ヴァイオリニストとなってしまったレオニダス・カヴァコスによる、「ブラームスのヴァイオリンとピアノの為のソナタ3曲+アンコールFAEソナタからスケルツォ楽章」という定番中の定番、ど真ん中もど真ん中な演奏会でありまする。

久しぶりにいっぱいに見える客席、周囲には同業者さんの顔が溢れ、楽器を背負った若い音楽家もたくさん。おお、向こうから手を振っているのは某弦楽四重奏団のヴィオラ奏者くんではないかい。こんなとこじゃじゃなく、ステージの上から手を振って欲しいぞ。うん。

先頃のマスタークラスでガッツリとレッスンを受けたというピアノの萩原女史の旦那さんが、譜めくりという超特等席でのレッスンを受けながらのデュオ。最初の1番のソナタは、ピアノのバランスにあれぇと思わされ、このような大ホールでの二重奏なんて数年ぶりで、すっかりこっちの耳がおかしくなってしまったかと己の老化に呆れていたら、休憩時に某長老ローカル主催者さんがやっぱり同じご意見だったので、ちょっと気分を楽にした次第。

なによりも「デカいホールで、でっかい音できっちりピアニッシモを響かせる」という20世紀スタイルの大スター二重奏演奏会を21世紀も20年代の今に聴かせていただいた、貴重な経験でありました。勉強になったという意味では、ブラームスというか、ロマン派作品の重音ってのはバッハのそれとはまるっきり質も意味も違うんだなぁ、という当たり前の事実をしっかり音で聴かせてくれたこと。批評家ごっこをすれば、「重音の多彩な音色感が魅了する」って言い方になるんだろうけどね。


あらためてギャラの高いスターさんとはどういうものなのか見せつけられ、遙か温泉県に向かい、新オフィスからのこのこ出かけた大分での我らが川本いねこさんの演奏会、無論、ここで披露されるのはヴァイオリンではなくヴィオラで、コロナ下のエリザベートで見事入賞し世間の話題となったピアノのウルトラ技巧派阪田知樹氏との二重奏。披露して下さるのは、ブラームスのヴィオラ・ソナタ第2番でありまする。

いやぁ、これはもう、川本さんと一緒に阪田氏のパワーと能力にただただ口をポカンと開く、って音楽。いねこさん終演後に曰く、「この曲ってピアノが凄く大変で、チャラチャラっとやっちゃうことが多いんだけど、ここまでちゃんと弾いてくれるともうビックリ」。とりわけ終楽章は、晩年のブラームスの諦観なんて俗説はどこへ、まるで巨大シンフォニー終楽章の如くに盛り上がるハイパーデュオが展開されたのであったぁ。この曲って実はこんなんだったんだぁ、と腰を抜かしてる間もなく、続いて《イタリアのハロルド》が披露されちゃったんで、ちょっと勿体なかったけど。

それにしてもこの阪田さんというピアニスト、翌日の別府ではあれだけの狭い空間であれだけのでっかい楽器を使い、fffでも全く煩くならない、高音域の音量が全く落ちない、という信じがたい超絶技巧を聴かせてくれて、ああああこういう無茶な編曲ものをちゃんとした音楽として綺麗な音で聴かせてくれる新しい才能が出てきたなぁ、と感無量でありました。時代はまた、ひとつ変わる。


そんでもて神無月ブラームスのヴァイオリン二重奏強化月間、最後を飾るのは、昨晩の秋深まるハクジュホールで披露された渡辺玲子さんと江口玲さんのレクチャー付き、ヴィオラ・ソナタ第1番の作曲者自身に拠るヴァイオリン・ソナタ版、って珍品。いねこさんはヴィオラだったとはいえ、これでブラームスが書いたヴァイオリンとピアノのための二重奏楽譜は全て網羅ということになった次第。

これがまぁ、ぶっちゃけ、大学レジデントアーティストの先生が自分の興味で好きに喋って、おっとちょっと手加減しなきゃ、と言いながらもなんのかんの言いたいこと言ってる、という内容。なんせブラームスの正規のヴァイオリンとピアノのソナタに関しては隅から隅まで判った人が、殆ど眺めたことないブラームス最晩年のヴァイオリンの為の楽譜を前にいろいろ思ったことを喋るわけですわ。こういうのって、まずありそうでない。無論、クラリネットやらヴィオラの為の楽譜をほぼまんま弾くわけで、音域が低いことに関してはまあ、誰でも判ります。第3楽章トリオの書き直しとかも、聴けば判るといえば判る。

それより面白いのは、転調に関する議論とか、調性の拡大というか不安定化の試みとか、ブラームスも時代なりにいろいろあったんだなぁ、とあらためて思わされます、って話ですな。いやぁ、勉強になりました。


かくて、ブラームスがヴァイオリンに書いた二重奏ソナタ楽章を、わずか10日弱の間に全部聴かせていただくという、なんとも希有なる体験をさせていただいた神無月も恙なく過ぎる。コロナ禍まだまだ続くニッポン列島だって、案外と心豊かになれる場所ではありませんかい。

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コロナはちっとも終わってない [弦楽四重奏]

やっと本日昼過ぎに修理委入っていたメインパソコンが戻って来て、当電子壁新聞も通常営業を再開出来ます。なんせ足かけ16年も使っている古いweblog作成フォーマットなもので、このメインマシンに引き継いでいる画面からしかまともなアクセスが出来ず、失礼いたしました。っても、別に誰が困るわけじゃないんだけどさ。

さても、再開第一弾のお知らせが碌でもない話なんですけどぉ…この話の続報。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-10-07
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-10-09
この秋、外国拠点弦楽四重奏の唯一の来日公演となりそうだったヴォーチェQ、来日が中止になりました。

で、実はもう10日程前に主催者の方から悲痛な電話連絡をいただき、招致はしていたのですけど、招聘元のテレビマンユニオンさんが公式発表をするまで理由その他は明かさないでくれとの厳しい通達があり、直ぐにお伝え出来ないうちにパソコンが修理に入ってしまい、今に至った次第。こちらが正式リリースです。
http://www.tvumd.com/artist/detail/?artist_code=voce_q

なんてことはない、来日前のチェックで、メンバーのひとりが新型コロナ陽性と発覚、当然ながら一緒に練習していた他のメンバー3名は濃厚接触者で、来日は不可能になった、という極めて単純で判りやすい理由であります。

どういわけか今月後半になって、著名ピアニストやらスター独奏者やらの来日が相次ぎ(お隣韓国からも、ダネルQがコロナ後初のアジア・ツアーをしたぞ、などと連絡して来たりして)、まるでコロナ禍などどっかにいっちゃったみたいに錯覚するような空気が流れていますけど、少なくともニッポン国の国境という意味では、まだまだ状況はそう違っておりません。帰国後の待機が10日に短縮されるとか、いろんな話は出ているものの、「来週、フランクフルトで用事があるからちょっと行ってくる」という状況が戻って来たわけではない。それどころか、ペテルスブルクでは再び感染が拡大してロックダウン、なんてニュースも流れてるわけだし。

コロナがどうあれ、ニッポン国境、まだまだ壁高し!うううむ…

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別府にて [たびの空]

温泉県空港のカードラウンジにいます。そもそもは明日のジェット★さんで戻る予定だったんだけど、コロナ減便であえなくキャンセル。しょーがないなぁ、それなら前の晩にはかわもといねちゃんが別府アルゲリッチハウスで弾くので由布岳跨いで別府まで出てくるので、そのままオフィスには戻らず別府市内に泊まり、その足で空港に向かう、って日程にいたしましたです。

なんせ、別府市内から由布岳向こうの盆地まで演奏会終了後に戻る公共交通は大分経由のJRしかなく、1130円也。流石に深夜に田圃の中を歩くわけにもいかず、JR九州由布院駅から観光地お迎えタクシーに乗れば800円也。で、翌朝にバスセンターまで歩いてまた朝一のバスで別府まで戻ってくれば950円也。以上、総計2880円也かかってしまうわけじゃ。ちなみに、タクシーナビで別府ビーコンプラザから石武温泉近辺までお値段調べると、下道で行っても7000円弱とのこと。うううむ、羽田国際線ターミナルから佃縦長屋までタクシーぶっとばすくらいかぁ。

となれば、別府市内の3000円台の素泊まり安宿に飛び込んでも違いはあるまいて。なんせ、演奏家さんとちょっと会って挨拶するだけでも終演後延々待たされ、一体いつになるか判らぬご時世、最終列車に乗れるか心配しながら待ってることを考えれば、別府に泊まりましょとまりましょ。

別府に素泊まりするとなれば、考え方はいろいろあるわな。まずは定番の、「温泉施設付き旅館若しくはホテル」でありますな。無論、「チェーン店ビジネスホテル」というのもあり、高崎山巻いて大分までいけばごっそりありますけど、この町で超少数派(それでも、「温泉施設のないビジネスホテル」ってのは駅前に新設されていて、この町の新たな展開を感じさせるが、それはまた別の話)。あとは、昔からの古い家族経営に毛が生えたような駅前商人旅館、という地方都市らしい選択肢もなくはない。別府の場合は、こんな宿にも温泉施設がそれなりに付いていて、それはそれで奥が深いなぁと感じさせてくれるわけであーる。

コロナで値段が滅茶苦茶な今、県内限定GOTOくずれみたいなキャンペーンもやっているが、そいう温泉県民観光客の関心ともちょっとズレるところ…この機会に泊まっておくのなら、やはりこの方のお膝元であろーにっ。
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そー、別府駅前でクックロビン音頭やってる変なオジサン、大分県民みんな知ってる別府湯布院を創った偉人、亀の井グループ創設者にして日本の観光イベント広報のパイオニア、油屋熊八氏でありまするな。

やくぺん先生がなんのかんの終焉の地として温泉県由布岳向こうの盆地を選ぶことになったのは、言うまでも無く、もとをただせば90年代初頭からの音楽祭との縁あってのこと。んで、その音楽祭の発端は、70年代初めの亀の井別荘や玉ノ湯の若い経営者たちが結果として高度成長後のディスカバー・ジャパン「故郷見直し一村一品運動」の先駆けとなることになった温泉地広報活動の一部たる震災復興イベントとして始まったもの。んでんで、その亀の井別荘の地を他所者の中谷家に託したのが油屋さん。

つまり、このオッサンがこの地上に居なかったら、この瞬間にやくぺん先生が温泉県と関わっていることはなかった。我が家にとっても恩人なのであるぞよっ。

ってなわけで、現在は別資本になっているとか言い出せばキリがないけど、せっかくこのような機会だから泊まってみようではないかぁ、と別府亀の井ホテルに素泊まり宿泊したのであーる。ほれ、JR別府駅を抜け東側に出て、線路に沿って歩いてくと、こんな案内。
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ううむ、味わい深い。奥の今風のホテルが、現在の別府亀の井旅館でありまする。

本来ならば団体バスが並んだりするのかしら、感染も落ち着き昨年来の閑古鳥ではなくなったとはいえ、やはり寂しさは隠せないホテルロビーでチェックインしようとすると、フロントさんというよりも番頭サンというオジサンからアップグレードしますと言われてビックリ。まる2年まともに利用していなかった宿泊予約サイトで上級会員特典がまだ維持されているなど思ってもいなかったわい。別府駅から別府港を見晴らす無駄に広いツインの部屋に入り、ちょっと古い立派なホテルの常としてネットワークや電源関連が今時の別府市がアピールしてる「ワーケーション」対応としては心許ないなぁ、と感じつつ、直ぐに風呂に行って、あとはもーどーにでもなれ♪ちょチョンノパ(おお、風呂に入ると「船橋ヘルスセンターの唄」が口を突いてしまう千葉県遺伝子の情けなさよ!)。

館内はそれなりに「レトロモダンの街ペップ」をアピールしようとする努力はあり、カウンターは閉鎖されていてフロントでの支払いになってるお土産物屋さんでは、こんなもんも売ってます。
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へえ、じゃあ、大人向けの伝記もあるじゃろ、と探したけど、ない。レトロ別府を懐かしむグッヅをいくつか購入し油屋じいちゃんへの責任を果たしたような気になったものの、一応、フロントの番頭サンに「子ども向けはあるみたいだけど、油屋さんの公式伝記みたいなものって、ないんですか」と訊ねたら、御座いません、と一刀両断。今は資本が違っちゃってるとはいえ、どうみても昔からいらっしゃる方みたいなんだが、なんかいろいろ思うところがあるのかしらね。

ちなみに、油屋氏をニッポン広報の父のひとりと尊敬する藝大で広報を教える准教授氏に伝えると、油屋伝は某出版社から出ているが、初版の事情で絶版状態だそうな。ううううむ、大人の世界だなぁ。ま、逆に考えれば、油屋さんのやらかしたあれやこれや、まだ生きている、ということなんだろーけど。

駅近辺のまだ寂しい飯屋で、なぜかありそうでない鶏天丼なるものを喰らい、ダラダラ坂を登り、上野公園のそれみたいにモダンでオサレなスタバを横目に日も暮れた真っ暗な公園を突っ切り、別府アルゲリッチ・ハウスでいねこさん&阪田氏の超絶リスト=ベルリオーズを堪能し、またダラダラと線路の海側まで戻って来てぶっ倒れ、朝一の成田便に間に合うべく目覚まし鳴らし、おもむろにカーテンを開けるや
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おおお、朝の光を浴び、別府港に大阪からのさんふらわぁが入港してくるのであった。

これからのやくぺん先生、人生最期のフェーズに別府という街がどう関わってくるのか、まだ皆目判らない。そもそもゆふいん盆地という場所とどういう付き合いになるのかすら、まだまるっきり判らない。そんな今回のトラッド亀の井ホテル滞在での最大の収穫は、金600円也だかで購入したこのレトロ絵葉書かもね。
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中谷宇吉郎氏が天下の名文「由布院行」に描いた関東大震災直後の風景よりもちょっと前くらい、油屋さんが先々々々代(なのかな、今は)中谷さんに託した頃の金鱗湖。今は湯ノ岳庵やら庄屋やらになってる辺りがまだ田圃で、隠れキリシタン時代よりも前の古墳じゃないの、と言われるポッカリした丘から安永氏別荘辺りの集落がまだなにもない、我が温泉県盆地の原点の姿。

この場所で俺はどーするんじゃ…

さてと、まだ暫くは、どんどん三等国へと転がり落ちていくニッポン帝都の惨状を眺めに戻るとするべぇかい。

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室内楽としての《イタリアのハロルド》 [演奏家]

どういう因果か知らないが、大分県知事さんが「アルゲリッチの日」なんてもんを制定なさり
https://www.argerich-mf.jp/Argerich_day.shtml
その記念イベントがこの初夏の「別府アルゲリッチ音楽祭」でご本人迎え賑々しく祝われる筈が、ご多分に漏れずコロナ禍で中止。世の中少しは落ち着いてきたんだかなんだか、少なくとも事実としては本日今頃に大分市内のスタジアムでは日本ナショナル・チームとオーストラリア代表のラグビー親善試合が行われる迄に日常が戻ってきている今日この頃、皆様いかがお過ごしでありましょうか。

さても、やくぺん先生ったら、昨日朝っぱらに佃縦長屋を出て、別府経由の通勤時間がっつり9時間、温泉県盆地の新オフィスに到着し、なんのかんの雑用。今も熊本復興音楽祭の原稿やりながら、地元工務店さんがリフォーム前の最後の打ち合わせに来るのを待っておりまする。どうも昨日の半島先っぽ空港は、まるで日常が戻ったかのような賑わい。別府から由布岳登山口を超えて盆地に下ってくる路線バスも、半分は観光の老若男女で、ああ紅葉まだなんだぁ、って空気が漂っておりましたです。

かくて…なんだか知らんが羽田空港にまでアルゲリッチ様のポスター出しちゃって、すっかり「温泉県観光大使」っぽい空気すら醸し出していた現代ピアノの女帝を記念する演奏会も、やっと開催されます。ほれっ。
https://www.argerich-mf.jp/haus/2021/2021_10_24.shtml
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なんと、アルゲリッチを顕彰してモダンピアノがバリバリ鳴ると思いきや、何の因果か我らがヴィオラの賢人川本いねこさんが、突拍子もない作品を披露してくれるというでないの。

数年前のベルリオーズ記念年にだって、いかにもこの類いのものをやりそうな人がやったかどうか、ってくらいの貴重な楽譜、「リストが編曲したベルリオーズ作曲ヴィオラ独奏付き交響曲《イタリアのハロルド》のヴィオラとピアノの二重奏版」の貴重な生演奏でありまする!

なんでまた、と思わんでもないが、そんなこと言ってる暇があれば、さあ、今からでも遅くない、ANAJALやらソラシドエアには乗れない貧乏な貴方でも、成田朝発のももさんやジェット★で空港から大分駅行き直行バスに飛び込めば、明日日曜日の公演だってがっつり間に合います。明日は流石に無理という方は、もっと条件が良いこんな演奏会も月曜日にあります。
https://www.argerich-mf.jp/haus/2021/2021_10_25.shtml

さあ、このまたとないチャンスを逃すことなかれ。考えてみたら、ベルリオーズの弦とピアノの二重奏って、他にありますかね。 Youtube 上に、どっかのフェスティバルで弾いてるライヴがあるから、お勉強にどうぞ。こりゃピアノさんが大変だなぁ、まあ、リストの曲だもんね、実質。
https://www.youtube.com/watch?v=iMa-NO3xutk

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メインPC修理中 [お詫びと訂正]

一昨日からメインパソコンが電源が入らなくなりました。以前なら、やれやれと舌打ちし、チャリチャリと末広町のToshibaパソコン修理センターに持って行き、その場であっという間に直すなり入院なりになったのだが、トーキョー芝浦電気さんがパソコン部門売り払ってしまい、センターもなくなってもーた。
しょーがないから、iPadをサブマシン化しなんのかんの。ともかく、先程、佃縦長屋までヤマトさんだかが取りに来て、アホみたいにデカい段ボールに小さなラップトップをちょこんと納め、サインしてどこぞに持って行かれてしまいましたです。

これまではこういう時の為に葛飾巨大柿の木下にバックアップ・マシンが置いてあったんだけど…今は遥か温泉県の盆地で、アヒルたちと一緒にワクワク紅葉を眺めておるっ!いやはや、まさか遠距離オフィスの問題点が、いきなりこんな風に露見するとは。

この駄文、オペラシティの某カフェで、iPhoneから入力してます。オリベッティの電気サポートなしクラシック・タイプライターのキーボードに始まり、叩き続けて半世紀を超える爺いには、この入力方法では頭がうごかんわい。ともかく明後日金曜日午後に石武オフィスにたどり着くまで、当無責任電子壁新聞、放置状態が続きます。ヴォーチェQ来日中止騒動も、昨日の黛敏郎幻の未完のオペラも、明日の金沢ミンコ翁見物日帰りも、アップはあっても先のことになります。悪しからず。


[追記]

今9時間超え9時間超えで石武オフィスに到着。バックアップ・マシンを立ち上げ、5月以来のセッティングをしました。やっと仕事が出来ます。ふうう…温泉県の盆地は、もう寒いです。

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オレンジ海亀が日常を運んできた真昼 [たびの空]

石武オフィス3度目の滞在を終え、先程、大川端縦長屋に戻りました、今回、往路はお嫁ちゃまと一緒で「大川端から由布院町石武地区までGoogleマップさんが指示する豪華コース」をやってみて東京駅からの成田エクスプレスの使えなさを実感(もう二度と成田エクスプレスに乗ることはないであろー)。復路は一転、どれだけ安く戻れるかの実験で現状の別府バス乗り継ぎの限界をあらためて認識した次第であります。次回来週金曜日は「ジェット★九州路線往復買えば片道999円爆安セール!」利用で熊本空港に入る、という更なる無茶な最安値に挑む予定。通勤路低コスト化は、この大川端・温泉県盆地往来の新生活が続くこの先数年間、永遠の課題となりそうなのであーる。

さても、本日の復路、ウェルナーの《野ばら》を朝霧の田圃に奏でる午前6時の町内防災無線が鳴ったのを確認し荷造りを終え(冗談ではなく、金1800円也で購入した預手荷物の中身ったら、石武パーシモン・ゲートから採取された柿の実1ダースほどを除けば、この先の年内いっぱい収集のタイミングにぶつからないので佃まで持ち帰らねばならぬプラゴミ&カン瓶ゴミ、あとはリフォームまで洗濯機がないので新帝都に連れて帰る洗濯物なのであーる)、平成の大合併のお陰で彼方に由布市役所がある庄内の山の上からやっと太陽が姿を現す中を始発前の久大本線脇を歩き、百舌鳥さんやら鷺さんやらご近所さんやらに挨拶し
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土曜朝というのに官舎から露天風呂付き駐屯地へと迷彩服着てチャリ通勤する兵隊さんに追い抜かれ、駅前バスセンターに到着。しらっと観光客の顔をして運ちゃんに荷物置き場はないの尋ねると、どうせ満員にならない土曜日朝の山越え別府行きバス、その辺の席に置いといて下さい、とお墨付きを得るのじゃ。

午前7時前発の始発別府駅西口行き亀の井バスは観光地脇の道路を峠へと進み、途中に見える道夫先生のお宅にご挨拶、ウネウネとヘアピンカーブを繰り返しながら由布岳登山口に向け盆地から登り始める。おお、我が田舎町、石武地区が旭を浴び始めておるわ。
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我が軍最強海兵隊の官舎があれで、あれがお寺の森、こっちが大地主Tさんの田圃で…って、いろいろ判るくらいの地元民にはなってきたわい。カーブが終って標高300メートル以上は登ったろう、植生が代わり始めるのが見えるくらいの峠道を抜け
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キラキラと朝の光を反射する別府湾が見える辺りになると、別府から上がってくる反対車線に妙に小型乗用車が増えてくるぞ。この路線を始発で乗るのは初めてではないけど、こんなに対向車、それもトラックや商用車、日出生台に向かう軍用車両じゃない一般車ばかりが列を成して峠を越えてくるなんて、まるで観光地みたい…って、天下のかんこーちだろーにっ!、と自分に突っ込んでみたりして。夏が長すぎる2021年、盆地の朝晩はめっきり冷えるようになってきたとはいえ、紅葉はまだまだ。去りゆく九重の夏を楽しんで、せいぜい町に小金を落としていってくださいませ。かぼす一山150円の旬はあっという間に過ぎたものの、朝どれ野菜、早成蜜柑などなど、その辺にいっぱい出回ってる田舎ですから。

かくて、「河野一郎来訪!」などと煽る政権党の立て看板が並ぶ別府駅前を小走りに、海沿いの表通りバスセンターまでダラダラと下ってみれば、おおおお、なんだかすっかり休日の朝の空港バス乗り場。でかい荷物持った観光客としか思えぬ皆様、新帝都やら食い倒れの町やらに行くべくウキウキ楽しそうなカップルやら若いもん集団、などなどで溢れてら。大分から下道で客を拾いながら来たバスは、もう2人がけを1人が座って満席状態。スイマセン、そこよろしいですか、と隣席に荷物置いた一人客に声をかけ、ほぼ満員となって、土曜日とはいえ朝8時過ぎの市内渋滞をノロノロと半島先っぽ超僻地の空港へと向かうのであった。

なんせ、1日1便しかないももちゃん、親会社ANAの地上職員お姉さんが担当するチェックインは90分前まで始まらず、まだ時間がたっぷりある。温泉県空港内ターミナルは、ローカル空港とはいえ空港値段の飯屋しかないので、ちっちゃなターミナルから駐機場を眺めながらちょっと歩いた先にある地元農家直売センターにゴミばかりの荷物転がして向かい、農家お手製弁当のイートインで朝ご飯。
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当然のことながら、激安、ってか、値段があってないようなもんの地産野菜を買い込んでしまい、機内持ち込み背負子7キロ制限に引っかからないか不安になるも、ま、そしたらカメラは着れば良いじゃろ(←LCC常用者なら、意味はお判りであろー)。

なんのかんのなんのかんの、曇り空の房総半島、高度数百メートルまで下界は見えず、親父とお袋とご先祖の墓の上を通り抜けた筈だが判らず、雲を抜ければもう香取神宮と坂東太郎を眺める成田Bラン北側着陸の大旋回真っ最中。するっと大地に戻り、早速今来た道を調べんとFlightradar24画面を開けば、あれぇええええ
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お隣Aランに、今、正にファイナルアプローチ状態の38くんがいるわい。おおおおおっ、なななななぁああああああんとぉ、ANA海亀38くん兄弟の末っ子、トゥールーズで完成したもののコロナ需要減でずっと生まれ故郷に留め置かれていたオレンジくんが、遙々シベリア跨いで新たな塒の成田に到着する瞬間ではないかぁあああ!

これはターミナルも空港周りももの凄い祭りになってるぞ、っても、到着してスポットに向かう元ヴァニラももちゃん機内でそんなことに気付いている奴は誰もおらん(運転手さんは知ってるだろーが)。ガラガラな機内、反対側の窓に目を凝らしていると、我が元ヴァニラももちゃんはボーでイング・ブリッジ側に行かず沖止め、なんとなんとなんと、隣にはANA海亀兄弟あおちゃんとみどりちゃんが、ドカンと並んで座っておる。まるで弟君を向かえるような場所に、我がちっちゃなももちゃんがスポットインするのであった。歓迎レセプション招待席みたいな場所だぞ。

いちばん後ろの席で、さあトーキョーだわ、とウキウキとバスに向かう乗客を追いかけながら外の様子を眺めつつ通路を歩けば、第1ターミナル南の隅、Aランからの誘導路をわざわざターミナル側近くまで、悠然とオレンジ色の巨体が進んでいくのであーる!
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この日、成田に繰り出した無数のマニアさんにあっても、ANA海亀三兄弟のこんなスリーショットを撮影出来た奴はひとりもいなかった筈じゃぞ。えっへん!

バスに乗りこんでる間、長男の海亀あおちゃんが引っ張り出され、次男のみどりちゃんとの間をバスは抜けて行くトンデモな状況。
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そして、遙かVIP機スポット彼方の貨物大型機置き場でじゃ、オレンジちゃん到着セレモニーが始まっているよーであった。
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なんかデッカい飛行機の間をすり抜けてすげえええ流石トーキョー、って声が上がるバスが無事にターミナルに到着。荷物を拾って、上層階の展望デッキに行って騒動を眺めてみるか、と思ったものの、既に上から長いレンズを抱えたマニアさん達がぞろぞろと降りてきているわい。こりゃ、とんでもない密が発生していそうだわい、まだまだ危険、近寄らないこに超したことなし。

んで、京成電車乗って、そのままダラダラと一切乗換無しで大門駅まで1時間とちょい、旧巨大柿の木の辺りを眺めるとかつての通勤路に合流、大江戸線に乗換え月島駅にたどり着いたのは午後3時。総計9時間弱の新通勤路には、まるでコロナなんて終わったようないつもの世界が広がっていたのでありましたとさ。

ももちゃん会社がコロナで発売を先送りにしていた「一ヶ月乗り放題パス」を19日から発売すると告知したし、デルタ航空&スカイチームは羽田国際線ラウンジ工事を再開したというし、そしてANAさんが海亀三兄弟を成田に揃えたし、これはもう、月が代わり選挙が終わったら一挙にニッポン国国境オープン、一気に日常が帰ってくる空気が航空業界(なんせ天下の政権与党支援企業、自民党野党時代にもひたすら膨大な献金をしてた業界ですからねぇ)に漂いまくってる神無月半ばのたびの空。

ってもさ、幸か不幸か、やくぺん先生の場合は、かつての日常が戻るんじゃなく、文字通りの「新しい日常」が始まるんだけど。

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ゆふいん音楽祭2021秋は電話予約のみ [ゆふいん音楽祭]

石武新オフィス滞在も3度目、ゴミ出し問題、リフォームの最終打ち合わせ、パーシモン・ゲートにたわわに実った小さな甘柿の収穫と処理などなど、数日の滞在でやらねばならぬことが山積みで、その間に日常業務の作文仕事や別府アルゲリッチ音楽祭やら神楽坂やらとの連絡など細々とはいえ入るとあって、無責任電子壁新聞まで手が回っておりません。とはいえ、大事なお知らせがあるので、慌てて記します。

2009年に夏のレギュラー音楽祭が35回で終わった後、2016年熊本大分大地震復興として旧実行委員が集まり臨時復活したこともあるゆふいん音楽祭、去る6月には半世紀の宿望たるホールが新公民館内に誕生し、また定期的にやっていこうということになりつつある。とはいえ、このコロナのご時世、来月になると一斉に日常に戻り、1年半ぶりにニッポンも開国するような空気が流れている(流されている?)とはいえ、まだまだ気を抜くわけにはいけん。

というわけで、過去のような「毎年7月の最後の木曜日から日曜日」というレギュラーなやり方はとらず、年に数回の演奏会をボランティアの「ゆふいん音楽祭実行委員会」が主催し、現時点でこの盆地で何がやれるか様子を眺めていこう、ということになっております。実質上創設来の実行委員長だったK氏がご隠居相談役となり、市役所に勤める若きS氏が現場をやることになる。

実質上の最初の新体制での演奏会として、来る11月27日土曜日に、新たな拠点ゆふいんラックホール(かつての公民館の向かいの振興民間内にあります)で「秋の音楽祭」が行われます。こちら。
http://www.yufuin.gr.jp/%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88.html
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…って話は、既に初夏以降、何度か触れていたと思うんだけど、ようやく詳細が出ました。スイマセン、なんせ別府や霧島、はたまた木曽福島なんぞとは違って、プロの専任職員は皆無のホントにボランティア・スタッフがやってるこの人口1万人の盆地の田舎町の音楽祭、市議会議員選挙と市長選で現場の実行委員が猛烈に忙しく、毎度毎度のゆふいんタイムでの告知ありまする。

重要なのは、ここから。この演奏会、チケットは電話のみの予約による完全予約制です。今時のコンサートの常識たる、ぴあやらオンラインやらで売ったり、はたまたコロナ後の常識となりつつあるスマホの中にダウンロードされる電子チケットなんぞではありません。ゆふいん観光総合事務所に購入希望者が連絡、電話のみでの受け付けになります。繰り返します。チケットは電話で予約、当日精算です。
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当日の対応がかなり心配だけど、幸か不幸か「コロナ禍の為、限定100名のみ」。要はサルビアホールと同じ規模ですから、まあ、なんとかなるのでしょう。うううむ、かなり心配だ。

予約の連絡先は0977-85-4464です。

21世紀も20年代の今、こんなレトロなやり方をしてる主催者があるのか、呆れるかもしれませんけど…ゆふいんですから、ま、お許しを。

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サルビアホールが激安やります [弦楽四重奏]

一昨日だか、ヴォーチェQが驚きの来日公演実現、武蔵野がチケット売り始めると告知しました、という壁新聞を貼り付けましたです。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-10-07
で、その後、更に未だコロナの状況故の珍事、というか、好事というか、興味深いことが起きると判りましたので、お伝えいたしましょうぞ。

10月28日ヴォーチQ鶴見サルビアホール公演を、主催する横浜楽友会としては異例の激安3500円にて提供いたします。14日までの限定販売!かの激安で知られる武蔵野と同じお値段ですっ!

うぉー、これは大変だ。サルビアは音は良いと言われるが、チケットが些かお高くて…とお思いだった貴方、サルビアホールのまるでピアノの内部に頭突っ込んで聴いてるみたいな音響を経験する、またとない機会でありますぞ。詳細はこちら。
https://musikverein-yokohama.jimdofree.com/
説明が面倒なんで、必要な部分をまんま貼り付けます。以下。

★★★


横浜楽友会
ヴォーチェ弦楽四重奏団 公演開催について

海外からのクァルテットの来日中止が相次ぐ中、ヴォーチェ弦楽四重奏団の来日が3日待機のバブル方式によって、実現の可能性が高まってきました。取りあえずチケットの予約受付を行うこととしました。SQSは、本来ですと3公演を1シーズンとしてセット券の販売などを行っていますが、現状、他のクァルテットの来日は見通せず、今回は単独での販売とさせていただきます。いつもSQSにご来場いただいている皆さまには、今回特別料金(3500円)での予約を承ることとしました。10月14日締切です。FAX、郵送、メールのいずれかでお申込みください。メールでの場合は、席数、氏名、チケット送付先、電話番号(昼間、連絡つきやすいもの)をすべて記入してください。

5,500円 ⇒ 3,500円
今回は、バブル方式での来日となりますので、客席前方のA・B列は販売しません(できません)。

一般発売(10月15日)後のお申込みおよびサルビアホールでのお求めの場合は、一般価格(5500円)となりますのでご注意ください。チケットは、一般発売後に郵送します。代金は、チケット到着後1週間以内に銀行振込でお願いします。中止となる場合は、別途連絡させていただきます。

不確定要素の多い中での予約受付となりますが、事情をご賢察いただき、お申込みいただきたく、よろしくお願いいたします。

メールでのお申込み: heymann@s9.dion.ne.jp

★★★


てなわけでありまする。ここからはオマケ。なんでこんなことになったのか。

現在、ニッポン国への外国演奏家の来日公演の許可が正式に御上から下りるのは、入国の数日前とのことです。だから、どの公演も基本的には「来日許可を前提としたチケット発売」という日本国の興行の常識からすればあり得ない綱渡りが続いているそうな。演奏会告知期間も超短期間、公演2週間前に発売開始、なんて無茶苦茶なことになる。

規模がある程度以上あって、いろんな方向での告知が可能な主催者はやりようがあるのかもしれませんが、小規模な主催者はどうしようもない。文字通りの口コミ意外に手はないのが状況。

さても、そういう状況にあってのヴォーチェQの来日公演決定であります。招聘元のテレビマンユニオンさんの公式ページの日程は、以下。
http://www.tvumd.com/artist/detail/?artist_code=voce_q

音楽業界関係者の皆様なら、この一覧を眺めお気づきでしょう。なんとこの来日公演、初日の鶴見の横浜楽友会を除き、全て主催が招聘元でマネージャーのテレビマンユニオンさんなんですわ。公共ホール&主催者の武蔵野も京都も、ホール側は共催。つまり、チケット販売やらを協力しているようなので聴衆とすれば判る必要もないことだけど、親子鷹で武蔵野の激安路線を作り上げた文化財団は主催ではありません。だから、なのかな、一昔前の武蔵野常識なら1000円か、はたまた2000円という激安値段が付いていたであろう今回の公演も、3500円という「公共ホールだからサントリーよりはちょっと安いかな」という感じになっている。

今や「トーキョー首都圏の弦楽四重奏の聖地」としての評価が世界中に固まっちゃってるサルビアホールといえば、そもそもがこの弦楽四重奏シリーズ、「いろんな都合で間違って響きが良すぎるホールができちゃった鶴見の指定管理者が、沼南地区でサロンコンサートの実績を積み上げていた先生にどうしたもんか相談した結果、民間主催団体の横浜楽友会が弦楽四重奏に特化したシリーズを主催し市のホールが協賛する」という形を採ってます。つまり、誤解なさってる方も多いようですけど、このシリーズには横浜市からのお金は一切入ってません。完全な民間主催イベントなのです。余りのホールの響きの良さと、実質上「音の良すぎる公共ホールでやってるサロンコンサート」としての性格を理解し、それに価値があると判る100人が来れば成り立つ、という値付けでギリギリでまわしている。

というわけで、武蔵野とサルビアが同じお値段という、今回のようなコロナ禍でしかあり得ない事態が発生してしまった。プログラミングも同じなので、両方聴いてみる、って手もあるかもよ。

とはいえ、4人のメンバーのひとりでも陽性が出ちゃえば全てはパー。興行としてはあり得ないリスクを背負ったバブル方式での来日、どうなることやら。なにしろ鶴見の広さで5メートル以内に演奏家に近寄れないって、どうするんねんっ!

[追記]

主催の横浜楽友会さんからの連絡に拠りますと、激安効果かこの告知の短さでも順調にチケットは動き、ほぼ完売に近くなっているそうです。売り切れゴメン!

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巴里遙かなり… [たびの空]

いろいろと考え、ワクチン・パスポート(ってか、中央区発行の証明書でんな)も用意し、あれこれ方策を巡らせてみたものの、最終的には貧乏人には決定的な予算の壁に阻まれ、来月のパリ行きを断念しました。これで、2019年12月にブリュッセルから成田に戻って以来、2020年、21年とまるまる2年間以上、一度としてこの列島を出ないことが確定しました。うううむ、国際線の乗り方を忘れてしまいそうだわい…

後の笑い話として纏めておきましょうかい。そもそもの話の発端はこれ。
https://philharmoniedeparis.fr/en/activity/opera/22671-stockhausen-donnerstag-aus-licht
先頃、2021年東京のベストのひとつに挙げられること必至の《ルル》上演のために池袋に滞在していたパスカル氏とちょいと話す機会があり、《光》チクルスのコロナによるすったもんだ、で、ともかく今年はこういうことになった、と上のURLのイベントを教えて貰う。当然、来るんでしょ、という勢いで、こっちも売り言葉に買い言葉(なんか、正しい表現ではないような気がするけど、まーいいや)、おお行ってやろーじゃないかい、と応えてしまう。

とはいえ、後で冷静になれば、遙かシベリア越えて欧州は華の都に至る道程は、未だそんなに楽ではないのであーる。

ワクチン・パスポートとやらを用意し、それなりの手続きをすれば、ドゴール空港から先へと足を踏み入れるのはそれほど難しいことではないようだ。だけど、問題はニッポン国に戻ってから。10月上旬の時点では、ニッポン国は羽田やら成田やら関空やらに降りたあと、「10日間の隔離」が必要だという。

そもそもこの日数の数え方が良く判らないので、もう何度も欧州とニッポン列島を往来している方々などに教えを請うたところ、「到着した日は0日と換算されて、10日に交通機関を使わずにテストを受けその結果を保健機関に送り許可が降りてから。なので、動けるのは早くても11日目から」、「10日目に検査を受けて、その日中に検査結果を得るのはかなり難しいはずなのと、隔離明けの許可はどう出るのか未定なので、本当に11日目から動けるのかはよく分からない」、等々、いかにも我が業界らしい極めて具体的で他人事ではない貴重なアドヴァイスをいくつもいただきました。

うううむ、11月15日の晩にフィルハーモニー・ド・パリで《光の木曜日》2幕の「ミカエルの世界旅行」を堪能し深夜過ぎに宿に戻り、翌16日の朝っぱらにドゴールに向かい、フランクフルトで昼前便に乗り継いで翌17日朝っぱらに羽田に戻ってくる。さても、そこから帰国第0日が始まり、羽田から隔離パックに含まれたタクシーだかでどっかに送り届けられ、その晩から籠城生活。27日に御上のご命令による監禁が終わり、上手くいけば翌日から無罪放免となる…ってことらしい。

ああそうですか、なんだけど、ここに問題がありまする。11月27日土曜日午後、由布院町は新設なった公民館Lack Hall(誤植じゃありませんっ!)で、秋のゆふいん音楽祭「山崎とこさん&津田氏デュオ演奏会」が開催されるのでありまする。ううううむ、これに間に合うために、なんとかソウルや台北経由で福岡は板付空港に到着し、我らが糸島のスーパー庭師さんに頭下げて石武新オフィスまで運んで貰い、そこでオフィスの整理をしながら10日間の籠城生活を過ごし、晴れて堂々と新公民館に出かける、という計画も考えたのだけど…どうやっても1日足りない、ってか、拘束が長い、ってか。

そこにもってきて、石武新オフィスの水まわりリフォームが11月のいつまでかかるか、現時点では見えていない。

そんなこんなで、温泉県での隔離も現実的ではない、ってか、無理。

更に更に、巨大な壁として予算の問題が立ち塞がる。なんせこのような日程、ギリギリまで確定出来ないので、現時点で羽田パリ往復航空券を抑えたとしても、最安値で16万円くらい。安く行くためのUAEやら経由、板付に入るための仁川やら台北経由、なんて考え始めると時間がもっとかかる。しょうが無いから羽田と諦めても、今度はご家族が同居する新帝都は大川端縦長屋での隔離生活は実質上不可能。隔離パックを利用せざるを得ず、安くても8万円だかくらいはかかってしまう。更に、まさかパスカルくんちとかフィルハーモニー・ド・パリのディレクターさんちとかに転がり込ませろというわけにも行かず、パリのいつもの宿に数日逗留すれば、それもそれでお金がかかり…なんのかんの、最低でも30万円台の超豪華ツアーになってしまわざるを得ない。

パリで披露してくれるのが、昨年やれなかった《月曜日》とか、来年以降に予定されているという《金曜日》だというのならば、老い先短い命、これは払うだけの価値はあるだろうと考えることも出来るがぁ、うううむ、お馴染みの《木曜日》、それも音楽的にはいちばん難しい第3幕がないとなるとなぁ…

かくて、これはこういう巡り合わせだっのだ、と11月のパリ訪問は断念することにした、というわけでありまする。ふううう…

今のやくぺん先生、冷静に考えれば葛飾オフィス退去時にドサクサ紛れに破棄してしまった洗濯機とか、葛飾から持ってくることは断念した自転車とか、リフォームが終わった温泉県の新オフィスで用意せねばならぬものはいろいろある。シベリア越える金があるならそっちに使いなさい、と守護天使様が仰ってるのであろーと考えましょうぞ。

巴里、遙かなり。沈み往く太陽を追いかけシベリアを越える日が、ホントにまたやってくるのであろーかっ?

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