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アジア・オーケストラ・ウィーク2021のプログラミングについて [音楽業界]

やくぺん先生が帝都に戻ってきてぐちゃぐちゃな作文作業の日々を過ごしている間に、遙か新帝都は内藤新宿の関の彼方、初台のオペラシティでは、秋の芸術祭オープニングを飾るアジア・オーケストラ・ウィークが開幕しておりまする。
https://www.orchestra.or.jp/aow2021/
夏のような異常な陽気も少しは和らいだか、本日3日目は音楽祭のハイライトとも呼べるであろう「冨田勲の夕べ」で、♩あああーあーあーああああああぁ、とかのジャングル大帝のテーマがフルオーケストラで響き渡るんじゃよ、皆の衆!これは行かないわけにはいかんえしょ。

今年は誰でも判る諸事情によりアジア各地からのオーケストラの招聘ままならず、結果として大阪、東京、名古屋のオーケストラが「アジア」をテーマにした演奏を繰り広げているのは皆様ご存じお通り。そのプログラミング、見れば見るほど味わい深い。要は、「明治終わりの山田耕筰から平成後期の細川まで、ヨーロッパの芸術音楽へのその時代のニッポンを代表する作曲家に拠るオマージュのような作品の間に、激動の20世紀に日本、韓国、中国の作曲家達が西洋音楽に真剣に対峙した創作を並べ、間に西洋音楽の古典中の古典、西洋での辺境からのアプローチ、異なる美意識の提示、を端的に示す大名作を据える」というもの。

故あって当日プログラムの作文を超特急作業でやらせていただいたのでありまするが、いやぁ、あらためて実際にその半分が音になったところで眺めても、ホントによく出来た「アジアと西洋クラシック音楽」のレジュメみたいなプログラミングでありまするな。

正直言って、このような明快な視点で並べられたプログラム、プログラミング・ディレクターさんのお言葉をいただくなり、可能ならば曲目解説も監修していただきたいとずっと思っておりました。ホントは俺なんかじゃなくて、プログラム・ディレクターさんが解説を書くべきだろうに、まあ、このご時世、演奏会を実現するだけでお忙しいので、やくぺん先生なんてヤクザな三文売文業者に放り投げて来たんだろう、と思っていた次第でありまする。はい。

んで、昨晩、もうこれ以上判りやすい中国っぽい音楽はない、ってコンチェルトを聴いた後、実質上のフェスティバル・プロデューサーであるところのオケ連の担当者さんに、「で、このプログラムって、どなたが作ったんですか?」と訊ねたですよ。

ったら、事務局さん答えて曰く、「いや、うちの事務局がオケの担当者といろいろ話をして、こういう風に決めたんです。誰か特定のプログラミングのプロデューサーがいる、というわけじゃありません」ってさ。

へええええええ、ビックリぎょーてんだわさ。

音楽史的な位置付け、作品のキャラクターとそれぞれの日に配されるバランス、それに敢えて冨田勲を20世紀後半の日本を代表する作家としてフィーチャーする英断、などなど、どう見てもはっきりした意志が働いたとしか思えない作品の配置。これが、一種の合議制の結果として自然に生まれたとすると、それはそれで驚くべき奇跡としか言いようがないじゃんかい。

別の見方をすれば、100年を超える西洋音楽スタイルの創作の歴史と成果の積み上げの中で、このような見せ方が自然と出来る位の作品が生まれているのだ、ということでもある。

それをどう考えるか、それは貴方次第。昨日や明日に披露されるヴァイオリンの協奏曲を、いくらなんでお恥ずかしい、と堂々と言ったって構わない。その恥ずかしさこそが、「自分らのもの」である証明なのかもしれないんだからさ。

アジア・オーケストラ・ウィーク、あと2日あります。まだまだ当日券はあるみたい。初台へ、是非どうぞ。それにしても今日の最後の曲、なんとか初音ミクさんをソリストに呼べなかったのかしら。ギャラ、お高いのかしら?

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