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みんな電子音が大好き [現代音楽]

去る土曜日午後、横浜の港からの夕べの浜風がすっかり高層ビル群で遮られてしまった紅葉坂をえっちらおっちら、神奈川県立音楽堂に行って参りました。
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シリーズ「新しい視点」紅葉坂プロジェクト、というもんを見物するためでありまする。おお、なんかアビーロードっぽくないかい。 
https://www.kanagawa-ongakudo.com/d/momijizakaproject
上のサイトをスクロールしていくと、企画プレゼンテーションの様子などの絵面もあり、当日の舞台の様子がだいたいお判りになると思います。実質、これまんまでした。

この演奏会、神奈川県立音楽堂が若手アーティストに「新しい視点」でパーフォーマンスする場所を提供する、というもの。公募された企画から一柳御大以下の企画委員が三作品を選択、公開GPなども行い中身を詰めて、この日の発表会に至る、という面倒なプロセスを経ています。要は、神奈川県のホールが主催者として神奈川県民の税金で若手アーティスト企画を3つ主催しましょう、って広義の「教育プログラム」ですな。

とはいえ、佃縦長屋に送りつけられてきていたプレスリリースを眺めても、予算がどういう風になっているのか、ぶっちゃけ、出演者には制作費が出るのか、ホールからのギャラが出ているのか、まるっきり判らない。常識的に考えて「神奈川県民ホール」主催公演で制作側が持ち出しでギャラはないなんてことはあり得ないでしょうけど、その辺り、もっとオープンにしても良いと思うんだけどなぁ。こういうのはプロデュースの教育でもあるんだから。公募の要綱をちゃんと眺めればいろいろと判るに決まってるが、残念ながら現時点では、もう県立音楽堂の公式ページに応募要項は挙がってません。うううむ、ちゃんと勉強しておくのだった。

てなわけで、午後3時から休憩挟みつつ午後6時頃まで続いた3つのパーフォーマンスを見物させていただいたわけですが、結論から言えば無責任言い放題やくぺん先生の感想は…

みんな、電子音好きねぇ。

以上です。オシマイ。

いくらなんでもこれだけじゃ酷いから、一応、感想にもなってない感想を記しておきましょう。ぶっちゃけ、後の自分への備忘録で、読者対象一切なし。

最初のヴァイオリンと電子音のデュオは正にそのまんまで、極端に言えばヴァイオリンのピアノの二重奏のピアノ部分をライヴエレクトロニクスに置き換えたもの。正直、説得力のある出し物にするためには、まだまだ見せ方にいまみっつくらいの工夫が必要なんじゃあないかしら。

その次の、みんなで太鼓取り囲んで、打面の上にいろんな道具でペタペタとお絵かきして、その音を拾って電子音で弄って(弄ってるんだろうなぁ)、ついでに後ろのスクリーンでやってる手元や打面に出来てくる絵面をでっかく投影する、というもの。所謂元祖「パーフォーマンス」系で、なるほどそういうもんなのね。でもあたくしめには、この音のみを延々と聴いてるのは極めて厳しいなぁ。かなり拷問っぽい。恐らくはそれが目的という迷惑なパーフォーマンスなのでしょうけど、流石にこの暑い中では溜まらん。スイマセン。

最後のヴァイオリンと電子鍵盤楽器のデュオは、完成度はいちばん高かったかしら。冒頭に電子的に弄って県立音楽堂とは思えぬ深すぎる音響をヴァイオリンとキーボードで作ってみた辺りでは、「へえええ」と思ったです。途中でひとつ、動きを後ろのスクリーンに変換して映し出し一切音はなし、という完全なパーフォーマンス作品があって、なんかこういうのよく見るぞ、でもなんでこの舞台でやらにゃならんかなぁ、県立音楽堂という空間でわざわざやる必要がないことをやってみるのが目的と思わざるを得なかった次第。その後には、耳をつんざく電子音を背景に演奏している楽器が聞こえなくなる、というパーフォーマンスもあったんだけど、これまた最初の30秒くらいで「判ったからもう結構」と悲鳴を挙げたくなった老人でありましたとさ。

神奈川県立音楽堂という放っておけば素晴らしい響きの空間の中で、みんな寄って集って電子音をあれやこれや、それも些か素朴過ぎて決して「美しい」とはいえない響きを、思い切りデカく奏でてくれた。そんな大音響の中で懐かしく思いだしていたのは、遙かコロナの前の夏にアムステルダムでの《光》抜萃上演の時に経験した「電子音もなんと美しい響きになったことか」という驚きでありました。あれ、当電子壁新聞でなんか書いたと思ってたら、どうやら商売もん原稿で書いてたらしい。ま、こういうのがあったときの感想。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2019-05-29
どういうわけか、神奈川県立音楽堂が選んだ3組の若い意欲的なアーティストの皆さんって、電子音と響きの美しさを両立させるという今時の課題には関心がまるでなかったみたい。どうしてなんでしょーかねぇ。ううううむ…

そんなこんな、暴言を許していただけば「ああああやっぱり酷い目にあった、まともに銀座のQインテグラに言っておくんだった」と大いに後悔しつつ、でもそんな本来の職種を捨てても敢えて失敗感を経験するためにわざわざ暑い中を遙々横浜くんだりまで来たのも事実なのであった。

さ、もう日が暮れる横浜の空、佃大川端縦長屋で御家族が横浜土産崎陽軒弁当を待っているので、慌ててもどらにゃならぬ。この企画の番外編みたいに上演された「みんなで《in C》を演奏しながら紅葉坂を練り歩こう」というアフターコンサート扱いのイベント準備が進んでいるロビーで知り合いの参加者さんに手を振り
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よたよたと港がまるで見えぬよう坂を達塞ぐビルの壁に向け下っていったのであーる。

演奏者やスタッフの皆様にはしっかりと感謝の意を表明すべきなんでしょうけど、こちらも聴衆として大いに疲れ、不快感や身体的な苦痛を経験するという貴重なデータ提供をしたのだから、お互い様。文字通り、お疲れ様でした。新しいことはそう簡単には上手くいかぬ、という当たり前のことをあらためて痛感した夏の午後でありました。

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