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記者会見というもの [売文稼業]

去る木曜日に、当然桜咲き人々が昼間っから酒飲んでるだろーと思ってたらまだ二分咲きにもならんという春まだきの上野の杜は東京文化会館でクァルテット・エクセルシオの結成30年企画発表記者会見をなんとか無事に終え
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翌日に1ヶ月ぶりに温泉県盆地の仕事場に到着。「記者会見監修」としか言いようがないボランティア雑用でバタバタしていたために先延ばしにさせて貰っていた原稿の山を、ともかく慌てて1本はやっつけ、本日月曜日〆切の原稿はなんとか明日朝までにして貰い、午後1時半から遙か金沢で行われたオーケストラ・アンサンブル金沢の来シーズン主催公演発表記者会見に、オンラインで参加、というか、拝見させていただきましたです。
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ふううう…

「記者会見」というやくぺん先生の世を忍ぶ外の人の本来業務からすれば、前者は正に「隠居仕事」で、「記者会見で記者や参加者がどのような情報を欲しがり、記者会見で出された資料を原稿にするためにどのように利用するか」という視点から、会見の内容ややり方にアドヴァイスをする、という作業をしたのでありました。さらには記者顔をして会場にも座っていたわけで、なんとも中途半端な感じは否めなかったけど、なかなか興味深い状況ではありましたです。

一方、温泉県盆地の仕事場からパソコン画面の向こうに由布岳を眺めながら参加した後者は、コロナ禍以後の世界ですっかり一般化した「オンライン参加」という奴です。

これがねぇ、案外、難しいんですわ。要は、どんなにテクノロジーが発達したところで、現時点ではまだ「会見場の空気」というのがまるで判らない。記者席に着いている奴らは、実は向かい合ってる発言者だけではなく、席に陣取っている他の記者連中がどういう風にしているかを、案外とチェックしているんです。で、質疑応答になったときにどう動くかを考えている。オンラインでは、そういう周囲の空気読みがまるで出来ない。だから、「オンラインで質問はありますか?」と司会者から言われても、余程明快な質問したい事実関係チェックとかを除けば、挙手しにくいん。

今回も、現場に居ればいくつかのポイントで質問があったなぁ、と思いつつ、ぼーっと終わるのを待ってしまったのでありました。

これはちょっといくらなんでもなぁ…と、終わったら直ぐに司会者の方に質問のメールを入れたんだけど、考えてみたら、これって相手を知ってるから出来るんだよねぇ。だってオンラインじゃ、会見終わった後の名刺交換とか、やれてないわけだもんさ。

ええ、一応、やくぺん先生外の人がメールで尋ねたことと、そのアンカナさんからの回答をチョロッと記しておきます。以下。

質問:平日昼定期はやらないんですか?→回答:ランチタイムコンサートではやっているが、定期はやっていない。検討はしている。

質問:新作初演はないんですか?→回答:今シーズンは定期ではなく、岩城宏之メモリアルコンサートで行います。

てなわけでした。オンライン前提の地方移住、まだまだ難しいことはあるなぁ。

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田舎者3年目の謹賀新年 [売文稼業]

新年明けましておめでとう御座います。新春の冷たい風の中、遙か永代橋の彼方に聳える天樹を眺める大川端から、やくぺん先生とお嫁ちゃまのアイコンで新年のご挨拶でありまする。
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コロナ禍が一応収束に向かった2021年師走から本格的に始まった新帝都東京は大川端(お嫁ちゃまは上野の杜)と温泉県盆地の二重拠点生活も、去る年末でまる2年。少しは落ち着いたか、と問われれば、ドンドン落ち着かなくなっている、という感じの1年でありました。なんせ去る2023年の元旦から大晦日まで、コロナ禍前の秋から強制されている就寝時の医療機材の電源を差し込んだ場所がどこだったかで宿地地を勘定してみると…

温泉県盆地オフィス:147泊
東京都中央区佃塒:128泊
欧州(パリ、フランクフルト、ベルリン、マドリッド、ヴィーン、ホンブルク):22泊
韓国(ソウル、統営、ブチョン、仁川):11泊
シンガポール:5泊
香港:3泊
日本国内(仙台、長崎、大牟田、久留米、熊本、福岡、大阪、金沢、富山、名古屋、松本、箱根、いわき)&機上移動:49泊

えええ、そんなかなぁ、と思わんでもないし、なんかいっぱい数え間違えているような気もするけど、まあ、だいたいザッとこんな動きでありました。これでも、行く可能性もあったけど隠居の身としては自分ではなく別の方がやって人脈を広げていただくべきだろうと断ったヴェトナムとか、余りに急で行こうと思っても無理だったソウルとか、いくつかありましたです。

なんせ、昨年はメイジャーな国際コンクールにベッタリ付き合ったのは大阪の一度だけ、その他は欧州も後数年のチクルス完了までは恒例となるであろう秋のパリ《光》チクルスと春の《中国のニクソン》ツアーだけでしたから、ホントにコンクール業界からは「引退」だったわけですわ。まあ、覗きに行くとしても秋のミュンヘンARDピアノ三重奏くらいしかなかったわけだけどさ。

国内は、キューシュー島北部に拠点を移したこともあって、地勢的な観点からも眺めぬわけにはいかんことになってしまっている冬の日本フィル九州演奏旅行ながら、温泉県盆地からでは東京から行くよりも行きにくい場所ばかりということもあり、それなりの数のお泊まりということになってしまっている。なんせ温泉県盆地、長崎や熊本各所どころか隣の福岡県内でもソワレの演奏会があったら公共交通機関では戻ってこられないとんでもない僻地なこともあり(それどころか、佐伯やら隣の市の豊後竹田でもソワレは日帰り不可能!)、近隣県での寝るだけのカプセルホテルとか限りなくそれに近い安宿利用がそれなりに増えてしまってるのがねぇ。佃の塒からなら、その気になれば仙台のソワレだって戻れるんだけど(シンカンセンではないいわきは無理なんだわなぁ)。

そんなこんな、いきなり人心の乱れに対する天の怒りのような大惨事報道で埋まる元旦の晩、来る2024年の夏至くらいまでの日程をある程度本気で考えるに、昨年同様に三が日明けに温泉県盆地に戻り早速の来客に備え、翌日には老体駆り出される新年初仕事で朝から福岡アクロスまで記者会見ひとつ日帰りに始まり、月の半ばからは久しぶりのミロQの再会となる春節前の香港&オンちゃんと葵トリオがメインのシンガポールの新音楽祭で実質2月頭まで東アジアをウロウロ。そのまま福岡板付に戻るともう日本フィルの第49回九州ツアーが始まり、新帝都に戻るのは旧正月のインバウンド襲来も収まった税金の季節になりまする。

その先は、春は櫻の統営はやはりディオティマQくらいは眺めにいかんじゃろとは思うし、4月連休はホントは新帝都なんていたくないけどレオンコロQが来てるんだわなぁ。6月の室内楽のお庭はダネルQのヴァインベルクがやっとサントリーで響くのを眺めないと叱られるだろうけど、ベートーヴェンはもう隠居は関わる必要ないでしょ。

最大の問題は、6月8日から16日のボルチアーニ・コンクールをどうするかじゃわい。なんせ、今年は審査委員長にあのソニア・ジメナウアーおばさまがお座りになるというとんでもないことが起きていて、その意味が分かる世界中の「常設」で喰っていきたい弦楽四重奏が吹っ飛んでくる可能性があり、コロナ禍以降、レオンコロQの一人勝ちで推移してきたコンクール業界が色めき立つ可能性もある。この時期に渡欧するなら、22日にベルリン・ドイツ・オペラでプレミアが出る《中国のニクソン》まで眺めて来ないわけにはいけんし(なんせバウチャーあるからねぇ)。とはいえ今年はパリ五輪イヤー、更にはキシダ内閣やら自公政権やらが続かない可能性があろうが円安が急速に収束するとも思えず、更にはウクライナ戦争が愚着茶になりロシアと合衆国大統領選挙で世界が大混乱になる可能性もあり、こんな時期にテロリスト跋扈するであろう実質上の半戦時下の欧州に行くなんてホントに大丈夫なんじゃろか…

いずれにせよ、秋のル・バルコン《光》チクルスは一年お休みなんで、ヘタすると欧州には一切足を踏み入れない年になるかもしれんわなぁ。ま、貧乏なんで、それはそれで有り難いんじゃが。

夏ともなれば、忘れてはならぬ、我が温泉県盆地の小さな夏の風物詩「ゆふいん音楽祭」が今年も開催されます。日程は昔と同じ7月最後の週末、27と28日。今年も水谷晃&小林道夫のコンビによる演奏が予定されているとのこと。日程表に書き込んでくださいませ。

秋になると、顧問という名の雑用を仰せつかっておりまするNPOクァルテット・エクセルシオの創設30年記念シリーズがあれこれ本格化し、それに向けた作業もいろいろと入ってきそう。売文家業としては、日本フィル九州ツアー半世紀に向けた構想は、いろんな意味で実現は難しいなぁと思わんでもないながら、まだgive upはしておりませぬ。東夷からすれば、キューシューというのは想像以上に広く、多様であると実感しているところ。さても、どうしよーかねぇ。

一寸先も見えない2024年、ともかく、あと3年は佃と温泉県盆地の二重拠点生活は続く予定であります。具体的な動きは毎度ながら当電子壁新聞及びFacebookに晒して参りますので、連絡その他があります際は、適当にご判断あれ。

あとちょっとは、生きていきましょ。

[追記]

元旦午後4時過ぎに起きた能登大震災でヴィーンフィルのニューイヤーコンサート中継が中止になるという今年を象徴するような事態が勃発したのは皆様ご存じの通り。正直、やくぺん先生とすれば関心があるのは「ティーレマン御大がニューイヤーコンサートでブルックナーを振る」という一部で話題騒然となっていた話だったわけでありまして、その映像、今、世界各地で放送されたものが恐らくは非公式にYouTubeなどにアップされており、眺めることが出来ましたです。こちら、フランス語中継で、問題の作品は1時間19分過ぎくらいから。直ぐに視られなくなるんじゃないかしら。
https://www.youtube.com/watch?v=BnNB-uPWbCA

それにしても、まさかヴィーン楽友協会の黄金のホールから新年にブルックナーなんて、婆さんや、長生きはしてみるもんじゃのぉだっく。

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なぜ出版社が「クラウドファンディング」なのか? [売文稼業]

まず最初に申しておきますがぁ、今や老体のやくぺん先生ったら、新帝都は王宮を見晴るかす神楽坂の頂上から離れること直線距離で800㎞に蟄居しているわけで、思えばコロナ禍以降編集部にまともに足を踏み入れたこともない営利企業、社長が知り合いなわけでもなく、日常的に接している現場もみんな半分引退で内部事情などは全く知らない出版社の話題であります。ですから、「トップや現場の内部事情を知ってる奴が、社内の情報漏洩を無責任電子壁新聞にやらせている」などという大仰な話はまるでありません。全くの野次馬としての感想です。

そもそも、やくぺん先生の世を忍ぶ外の人とすれば、80年代終わりにこの業界で生計立てるようになってから、『レコード芸術』って媒体に記事を書いたのは…恐らく数回。それも「書き手の先生が持ち込むボランティアページ」として業界内では『音楽現代』にも匹敵する同人誌コーナーとして知られていた「海外盤新譜批評」だけだと思うなぁ。だって、恥ずかしながら遙か多摩県の東の隅、首都圏は帝都中枢から最も近いチベットと呼ばれた深大寺に庵を結んでいた頃から、帝都中枢を転転、ここ温泉県盆地に終の棲家を得るに至る迄、「家」と呼べる場所にちゃんとしたオーディオ装置があったことない!とてもじゃないけど、こんな媒体にお金貰って書けないでしょ。レコードって、別業種だからねぇ。

もとい。昨年の「レコ芸廃刊」は、日本よりも世界中の所謂クラシック音楽業界の衝撃を与え、特に「日本で売れて、評価を作る」というビジネスモデルがはっきり存在していたドイツフランスなどの業界では、「中国韓国と共に最後に残されたCD販売がキャリア形成に有効なマーケット」たる日本の貴重な媒体がなくなるなんてあり得ないだろう、なにか裏がある筈だ、という空気が流れていた。こういう異言語文化圏での空気、恐らくは神楽坂上層部やら大手株主さんたちには伝わってなかっただろうし、経営判断に影響を与えているとは思えませんが…

さても、そんな中で数ヶ月前にはこういう人事もあり(有料記事じゃないかぁ)
https://www.bunkanews.jp/article/342243/
こういう情報の常として、判る人がみれば何が起きているか判る、という状況になっていたのでありましょうねぇ。

そんなこんな、旧『レコ芸』編集部は跡形もなく解体され、編集長以下出版部やらに散っていき(結果として、今、神楽坂出版部、やたらと前のめりな感じですな)、アーカイヴ担当がいるのかもよーわからん状況になっており、「レコード録音」で権威や価値を作る他の媒体などでの新しい方策があれこれ模索され始めていた年の瀬、本来ならば『レコ芸』の存在が世界の音楽業界でも貴重とされていた最も大きな理由だった「日本レコード・アカデミー賞」が賑々しく発表され、レコード屋さんの広報さんなどが喜んだり嘆いたり、師走年末進行前の忙しいときに慌ててリリース作ったりしていた恒例行事もなくなった頃になって、こんなニュースが流れたわけです。
https://www.ongakunotomo.co.jp/information/detail.php?id=3202

なんせ、竹箒や納豆から先端工業製品に至る迄どんなニッチな分野であれ「業界紙」というものが存在する日本語文化圏にあって、何故か業界紙が存在しない日本のクラシック音楽業界(山のように存在する批評や広報のための媒体ではありません)、その事実を以て「日本語文化圏には真のクラシック音楽業界が存在しない」という情けない現実の証明とされていた極東の島国、本来ならば業界紙が事前に情報を流し様子を窺い…というのが常識な状況のにそれもなく、いきなり出版社自身が自分の公式媒体で発表するなんてオソロシーことになったわけですな。いやはや…

ぶっちゃけ、ビックリしました。「え、レコ芸分離して別社団法人だかNPOだかにして、そこで始めるのか」と、最初は思ったです。まともな大人(の振りしてる大きなお子ちゃま含め)なら、誰だってそう思うでしょ。だって、一応大手に入っている出版社が、自分のところの看板媒体を再興するのに「クラウドファンディング」なんて、常識的に考えればあり得ないでしょーに。

普通に考えれば、「Webでの再開を告知しサブスクライバーを募り、その際にオンラインでのドーネーションを行う」のが筋。まあ、有り体に言えば、一種の「相互会社」みたいなものにして運営する、ってことですね。

相互会社という企業のあり方は、20世紀前半に営利企業の限界が判ったところで生まれながら、結局、少なくとも日本では20世紀末までに絶滅してしまった。社会主義との関係はあるだろうが、高度資本主義の限界を乗り越える「ボランティア経済」のひとつのモデルだった筈が、あっさりと消滅させられた。「第一相互」で始まり、初期には「相互新聞」などという相互会社でのメディア運営までやっていた第一生命グループが株式会社になったとき、嗚呼ついに相互会社は終わった、とショックを受けたものでしたっけ。

ま、なんであれ、SNSが最も得意とする「微分係数値の大きな瞬発的な盛り上げ」のためには有効な手段である「クラウドファンディング」を、継続とデータの蓄積が最も重要な出版社に拠る月間雑誌の立ち上げに利用するって、どういうことなのかしら?艦隊戦するのに最新鋭の戦車ならべたぞ、ってくらいの違和感を感じるんですけど。

もう世の中には付いていけなくなった隠居爺である我が身である事実を、またまたひしひしと感じてしまうニュースであるなぁ。

言うまでもありませんけど、我が温泉権盆地の田舎町、かつてなら温泉地滞在中の客の暇つぶしのために必須だった「本屋」や「古本屋」は存在しません。その代わり、実質上の個人図書館なら、膨大なものがいくつもあるのじゃ。田舎あるある、じゃのぅ…

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評論家佐々木喜久氏没 [売文稼業]

別件で調べ物をしていて、遅ればせながら、ある方の記述で知りました。

音楽評論家の佐々木喜久さんが、4月7日にお亡くなりになられたそうです。残念ながら正確な生年データが見当たらないのですけど、80代半ばくらいだったんじゃないかしら。とはいえ、コロナ時代の2年が記憶や印象からすっ飛んでますから…

我が狭い業界のフリーライターにはいくつかの出自があり、佐々木さんは典型的な「新聞記者あがり」でした。現役バリバリのスターライターでいえば、キャラは相当に違うけど元日経のいけたくさんかな。毎日の梅津氏は桐朋学長なんで想像の遙か上を行く出世をなさってしまったんで比べようがないけし、辞めてフリーになれば朝日の吉田純子氏がもっと近いかしら(学歴の流れが違うけど)。そう考えると、いかにも「海外にはもの凄く優秀な人がいるんだけど、それが国に帰ると…」という愚痴で名高い(今もなのか)讀賣らしい、最後の20世紀大新聞者出身フリー記者だったかな、という感はあります。読響の当日プロが今の形になるときの編集長さんだったそうで、主著はこちらかな。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/464397026X/ref=dbs_a_def_rwt_hsch_vapi_taft_p1_i0

若い頃のやくぺん先生やお嫁ちゃまが、東京に戻るよりも安いからとマンハッタンの定宿に数週間滞在し、そのまま大西洋渡って独逸行く、とかしてた頃に出版された、NY記者時代の記事なんぞを纏めたものですね。

佐々木さんの「音楽ジャーナリスト」としての立ち位置は、良くも悪くも「音楽や音楽家が大好きなオジサン」でした。なんじゃそれ、と思うかもしれないけど、そんな立場を大手新聞記者時代からフリーになってまできっちり貫ける人って、案外、いそうでいない。

新聞上がりの方は、大手メディアの肩書きや名刺が無くなった瞬間に、どのような立ち位置で仕事をするか、己のあり方の決断を迫らます。やり手の方の多くは「音楽や音楽家をテーマに自分を売る」評論家というか、作家的な立ち位置、場合によってはプロデューサー的な立ち位置に移っていくわけですな。もうキャラの違いとしか言いようがないわけで、それで上手くいったり行かなかったりする。佐々木さんは、自分の意見や感想を売り込むわけではなく、あくまでも大好きな演奏家の奏でる大好きな音楽を聴き、最後まで「ファン目線」を貫けた。だから、音楽家に対する接し方も謙虚で、音楽という特別な時間を与えてくれる特別な人への敬意を抱き続けていらっしゃいました。

ああ、こういうのは俺はやれんなぁ、と羨ましく思ったものです。

千葉の方にお住まいで、何故か突然呼び出され、佃にいるというと、じゃあ東京駅八重洲口大丸上層階のレストランで、と指定されてお話したことがあったなぁ。特別な話があったわけでもなく、最近どうよ、みたいな感じの話だったっけ。最期にお姿を見かけたのは、松本ハーモニーホールで奥志賀とジュネーヴの音楽塾学生合同弦楽アンサンブルで小澤氏が作品135の第3楽章を振ったあと、人が溢れそうな島内駅ホームまで歩いていらっしゃるところ…だったかな。あたくしめは、なんか囲みがあるらしいという連絡が入り慌てて戻ったけど、佐々木さんはそのまま駅へと歩いて行ってしまわれた。思えば、小澤氏が振ってるのを眺めたのも、あれっきりだなぁ。

大手新聞メディアが衰退し、SNS上には断片化されたヘッドライン情報が某大に流れ瞬時にして消えていき、何も溜まっていかなくなった21世紀20年代の我が業界、もうこの先は出てこないであろうタイプのライターさんでした。あちらの世界では、いろんな演奏家さんが聴けて嬉しいんじゃないかしら。

合掌

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老人のたび [売文稼業]

完全に雑談です。ホントに読む意味はないですから、お急ぎの方はお帰りあれ。

先週の土曜日4月22日夜のコットブスから来週の月曜日5月8日の新帝都帰着までのまるまる2週間、ライヴの音楽を一切聴かないゴールデンウィークが続いております。もしかして、この商売始めてからこんなにライヴを聴いていないのって、初めてかも。それどころか、温泉県盆地オフィスに戻ってからスピーカーを通しちゃんと音に接したのは、ベルリンはリンデン通りのドゥスマンで買って来たクスQの"Berlin FREIZeit"という現代モノのコンセプトアルバムからのいくつかの拾い聴きくらい。
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誠に静かで心穏やかな日々が続いております。とはいうものの8日夕方以降は、今月たった4日しか滞在しない新帝都では連日の演奏会通いだし、12日には朝一新幹線で大阪に向かって以降1週間は連日コンクール漬け。またまた圧倒的な情報量に晒されねばならないのでありまするから、もう体力精神力共にガッツリ衰えている爺とすれば、これくらい頭スッカラカンにしておかないと肉体精神壊れてしまいますわい。

さてもさても、爺になってくると商売モノとしての音楽への接し方だけでなく、ツアーのあり方も変わってくるものでありまする。昨年9月に2年半ぶりに国境が開き、まずは単純な「慣れ親しんだ定宿で慣れ親しんだ会場に1週間ちょっと座ってるだけ」というミュンヘンARDコンクール見物でテストラン。11月には、10日間鉄道乗りまくり独仏英を駆け抜けるという無謀なことをやってみて、あああもうこれはいろいろと無理だぞ、と老いた肉体と精神とお財布の限界を痛切に確認。それらの反省を踏まえ、今回は統営から東京、パリ、マドリード、ホンブルク、コットブスと取材や仕事関連の移動は可能な限り日程を緩ぅく楽ぅにし、現地での作文作業を前提に予算的にもメリハリを利かせた宿泊を準備する「老人御隠居仕様たびの空」へとツアーの仕方をシフトさせたわけであります。ウクライナ戦争余波の公共交通機関ストでバタバタになってしまったのは致し方なかろーが、準備は準備。

で、そんな自らの老いを配慮した御隠居フォーマット最初のツアー、戻って来て連日温泉県の風呂に浸かり、やっと前頭葉ばかりか肉体の疲労もある程度恢復してきたところで領収書整理しながらつらつら振り返るに、現役時代の乱暴なツアーとの最大の違いは「演奏会やらオペラやらを聴くこと半分、いろいろな人に遇うこと半分」って様相になったことでありますな。

恐らくはコロナ禍を経てSNSという個人情報無作為発進システムが猛烈に広まった結果、Facebookやらに「こういう日程で動きますよー」とアップすると、やくぺん先生に用事がある方からあれやこれやと当日までというタイムスパンで連絡が入ってくるようになった。その日にフランクフルトにいるならちょっと用事してくれないかとか、俺はその夕方はパリで教えているから終わってから飯食おうぜとか、そんなノンビリした連絡が様々な方策で入るのでありますわ。なんせ、午前10時過ぎにパリ東駅でICEを降りて宿まで荷物引っ張ってノンビリ歩いている真っ最中に、パリに居るならこれから音楽院の辺りで昼飯喰わんかぁ、なんて連絡が入ったりさ。

こういうのって、00年代頃までには殆どなかった。ま、完全fix最安値のDB超早割とか航空会社の超格安fixチケットとか、移動はもうパツパツにタイトで変更不可能な日程が当たり前だったケチケチキツキツツアーを、戦時下欧州のトレンドに合わせ変更し放題の乗り放題鉄道チケットでの移動をメインに据える方向にしたのも、こんな変化を可能にした理由でありましょうねぇ。

そんなこんな、たかだか実質10日間の滞在で聴いたコンサートやオペラは8本(セミナーやマスターコース見物は一切無し)、遇って話したり飯食ったりお茶飲んだりした人は総計9名って、うううむ、やっぱりなかなかヘビーなツアーではあったわけじゃ。でも最大の違いは、隠居前のツアーではツアー期間中にも全く関係ない原稿が数本は入っていて道中で処理しながらの移動だったのが、この数年のお仕事激減で今回は道中で入れにゃならん原稿は1本のみだったという哀しい事実でありまする。

現役時代のツアーは、「本日使う経費生活費は、本日やっつける作文のギャラで相殺する」という方針で動いていました。つまり、2週間のツアーだったら、まあ最低でも5本から6本はツアー中のコンクールやら音楽祭やらとは全く関係ない原稿を抱えていて、長距離移動の機内や、欧州内移動の鉄道車中、宿のチェックアウトまでの朝から午前中などに2日で1本くらいはやっつけていた。そのギャラに相当する額くらいは宿代やら移動代で使ってもOK、という風にしていた。それでなんとか年間トータルでトントン、という感じにしてたわけですね。

だけど、隠居でそういう日常系作文仕事を若い人達に譲り、基本は専門誌は持ち込み仕事だけしかやらん、まともなギャラがいただける一般誌は依頼仕事を待つ、って感じの倹しい収入になったわけで、当然のことながらツアーの最中も「お金になる日常業務」は全然出来てない、ってことです。

なるほど、これが歳を取る、業界からもう終わった人間と認定されていく、ということなんだなぁ。世界のどこにいても関係ない作文必至にやって稼ぐ時間の代わりに、人に遇ってどーでもいい雑談してるのがツアーの日常になってきた、ってことでんな。

ま、そんなこんな、なんとか最低限の収入で生きてけるように生活を変えていかねばならぬのが年寄りになることであり、隠居生活なのであるなぁ、と今更ながらに実感する、黄金週間突入で春も盛りの盆地の宵なのであったとさ。そろそろ蛙も鳴き始めたわぃケロケロ。

ホント、単なる雑談だなぁ。トホホ…

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イースター休暇の日程 [売文稼業]

関係者の皆様向け、やくぺん先生世を忍ぶ仮の姿たる外の人の当面の日程です。御用の方は、今、新帝都でお捕まえ下さいませ。

本日、統営を早朝に発ち、霧で大混乱欠航だらけの釜山金塊空港から勇気あるチェジュ航空様のお陰でえいっと春の嵐横風吹きまくる成田に昼過ぎに戻り、日暮里からインバウンド観光客さん溢れる谷中墓地抜けて必要な荷物を置きにお嫁ちゃまの研究室に寄り、京成上野駅出口横の広小路見下ろすルノアールで本来は統営で終える予定だった作業にやっと着手。「東京春音楽祭2023」で最も期待のブラームス室内楽へと統営のカヴァコスと若者達のトンデモの耳を洗っていただくことを期待し走り込み、今、大川端に戻って参りました。
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うううむ、音楽祭タイプの室内楽というのは、いろんな意味で難しいなぁ、と考えさせられる統営と上野の夜でありましたが、それはまた別の話。上野の杜では、ゆふいん音楽祭2023の実質上の芸術監督として頑張ってくださっている我らが水谷キャプテンとも、ちょっとだけ必要事項の伝達作業なども出来ましたし、ホントのよく働いとるのぉ(ボランティア仕事ばかりじゃが…)、我ながら。

さても、てなわけで、明日からイースター休暇中は新帝都に滞在し、大きな原稿一本やっつけ、まだ全部は決まってない来週火曜日出発の欧州の日程詰めをせねばならんです。その間も、なんせ「東京・春・音楽祭」なんてものもやってるわけで、そっちにも顔を出しておかねばならず、明日以降の日程はこんな感じ。

6日:3:00pm 上野《マイスタージンガー》
7日:作文日
8日:2:00pm すみだ NJP新監督就任定期
9日:2:00pm オーチャード 《平和の日》
10日:7:00pm 上野小 ピアノ音楽眺望最終回現代物

以下、11日から25日は渡欧。27日から29日は宮崎音楽祭の予定。ゴールデンウィークは温泉県盆地居座りで、基本は完全休養&夏の音楽祭期間迄に大部屋や縁側で人がゴロゴロ泊まれるようにするための整理作業の予定です。ゴールデンウィークにお暇な方、宿泊無料ですから温泉県盆地まで手伝いに来てくれると有り難い、マジです。CDDVDの棚詰め(音楽史の知識が必要!)、可能なら移転以来未設定のままのオーディオシステム配線作業です。寝泊まりタダ、飯くらいは出しますっ!

なお、7月の音楽祭期間中は、冷房付き個室には某誌編集者様のご宿泊が早々と決定してしまいました。あとは大部屋しかないぞぉ!

ちなみに、この先の新帝都滞在は、ゴールデンウィーク明けの大阪国際室内楽コンクールが始まるまでの数日と、6月の溜池お庭の途中から10日程。実質、殆どおりません。かといって、温泉県盆地でノンビリと蟄居出来てるわけでもないんだけどなぁ…

さて、明日もがんばろー、あたし。以上、完全に関係者のみのお知らせでしたぁ。

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イースター明け欧州ツアー日程決定 [売文稼業]

関係者の皆様と御家族へのご連絡。(注:3月17日朝の追記あり!)


なんのかんのバタバタしておりましたが、来る4月半ば、イースター休暇明けの2週間(移動日総計まるまる4日で実質欧州滞在10日)のツアー日程が決まりました。《中国のニクソン》連発、レオンコロQ、菅尾《魔笛》プレミエは商売になったので、申し訳ないですけど、中身に関しては当無責任私設電子壁新聞には記せません。とはいえ、コロナ明け後の世界ではそれでもガッツリ赤字の持ち出しツアーですので、少しは娯楽も挟ませていただきます。御用のある方は、連絡いただければこのルート内であれば対応します。「風呂敷持ってシュトゥットガルトまで来てくれ」とかはちょっと無理そうですけど(苦笑)。←想定読者一名のみの発言

以下、全て月は4月です。なお、この騒動、結局、現時点では大人しくドルトムントで《中国のニクソン》抜萃なんぞが地震チャリティコンサートになるのか、眺めるつもりでおります。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-03-09

11日:夕刻成田発SQ→
12日:シンガポール→夕方フランクフルト着 フランクフルト泊
13日:移動日 宿泊未定
14日:ドルトムント劇場『トルコ・シリア地震チャリティコンサート』 ドルトムント泊
15日:移動日 午後デュッセルドルフ発AF→パリ・ドゴール パリ泊
16日:パリ・バスチーユ歌劇場《中国のニクソン》 パリ泊
17日:午前パリ・オルリー発IB→マドリード テアトル・レアル《中国のニクソン》 マドリード泊
18日:昼過ぎマドリード発LH→フランクフルト アルテ・オパー ガーディナー指揮《ロ短調ミサ》 フランクフルト泊
19日:終日作文作業(早く終われば当日券でフランクフルト歌劇場《魔笛》?)フランクフルト泊
20日:フランクフルト→ホンブルク ホンブルク音楽協会 レオンコロQ ホンブルク泊
21日:ホンブルク→ベルリン(移動手段未定) ブーレーズ・ザール ベルチャQ ベルリン泊
22日:コットブス劇場 菅尾友演出《魔笛》プレミア ベルリン泊
23日:早朝ベルリン・ブランデンブルク空港発LH→昼フランクフルト発SQ→
24日:乗り継ぎ18時間シンガポール滞在
25日:深夜過ぎシンガポール発SQ→早朝福岡板付空港着

なお、28日から宮崎音楽祭に行く予定もありますが、今はまだ考えたくないので…

以上、連休前進行で絶対に落とせない原稿〆切がツアー中にあるので、可能な限りゆったり、連泊中心の老人たびの空になっております。昨年秋の鉄道で連日移動のツアーで体力気力の限界を悟りましたので、これくらいゆるゆるの日程にしてありますです。結果、現時点では純粋娯楽はガーディナー御大バッハとベルチャQのみ。いやはや…

御用の方はメールなり、Facebookのやくぺん先生外の人のローマ字名称メッセージ欄でご連絡あれ。ただ、体力的にこれ以上なにか突っ込むのはほぼ無理です。13日ピンポイントでフランクフルトからドルトムントの間の、ボンとかケルンとかデュッセルドフルとかヴッパタールとかデュイスブルクとかハーゲンとかにひとつだけ用事、ってくらいなら出来なくはないですけど。悪しからず。

[追記]

何故かは知らねど、4月15日土曜日午後のデュッセルドフルからパリへのHOP便、時間を確認しようとAFのホームページに行こうとしたら
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などと訳の分からんことを仰る。えええ、と我が大蔵大臣様にクレジットカード引き落としを調べて貰ったら、前後のイベリア航空やらパリ・オペラ座やらの支払いは出来ているのに、どこを探してもエールフランスの引き落としがない。どーゆーことか知らんけど、これはなんか流れたのだと判断し、ここは朝一で起きて地上移動にすることを前提に予定を変更します。

って、それなら、もうドルトムントの変更不可で€100くらいの立派な宿は捨てて、ドルトムントのチケットも地震被害者のチャリティに€50くらい出したと考え、もうフランクフルト到着後にさっさと陸路パリに移動してしまう、という策も考えてます。つまり、現時点では、13日朝から15日にこの10年ほどのパリの定宿に入るまでの日程が決まってない、ということです。

ともかくこのツアー、前半は16,17日にステージを眺め、日本時間20日が〆切のそれなりの規模の原稿を入れるのが最大の責務のひとつになってきているので、一切の無茶はやらない、原稿量全部を投入する勢いで最大限に体と前頭葉に楽なツアーをやってみる、というのがテーマ。残り少ない命、やれることと無茶のバランスを探る老人たびの空の初実践になるなぁ。

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納税作業終了&弥生新帝都滞在日程 [売文稼業]

国民の崇高な義務作業に終始したこの数日、昨日午後に温泉県盆地から新帝都に戻り、今、新富座跡地京橋税務署までチャリチャリ行き、無事に書類提出。
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かくて毎年数日の国家による強制事務労働が終わりましたです。昨年は「税理士に金を払えば強制労働は免除可能」といういかにも「金」で何でも出来る(ように思わされている)資本主義社会を実感させられる制度を適応したため、東京都中央区民復帰後初の春の京橋通いとなった次第。それにしても、3月15日前の税務署行列、今やすっかり過去の話になったんでしょうかねぇ。みんな電子納税になったのか、行列は皆無。新装成ってからの初の税務署扉を潜ってから提出終了まで3分かからなかったんじゃあないかい。これを「便利になった」と言うのだろうが、「便利さ」の結果として「納税作業は国家による強制労働」という意識がますます薄まるとしたら、霞ヶ関洗脳の思う壺だぞおおお!

てなわけで、書きかけの記事が積み上がる当電子壁新聞、本日から次の次の日曜日早朝に福岡に向かうまでの実質10日間ほどの間にテープ起こしと面倒なインタビューひとつ含め原稿3本、現役時代に比べれば笑っちゃうような微々たる作業量とはいえ、隠居爺には充分にたっぷりな作業量でありまして、息絶え絶えの日々はまだまだ続く…であります。なんせ、その間に現役時代さながらの「売り込み」という作業もあるんで、考えただけで疲れるなぁ。なんでまだこんなことやってるんだか、って。

以下、やくぺん先生の外の人に用事のある方はここで捕まえられますよ、という連絡であります。こういうものを公開するのはセキュリティ知らずのバカだ、と世間の賢い方は仰いますが、ま、どうせ世を忍ぶ仮の姿の日程ですから。

7日:紀尾井ホール ドーリックQ
8日:杉並公会堂小ホール 川島素晴自作打楽器リサイタル
9日:未定
10日:美浜文化ホール 高橋姉妹デュオ→サントリーホール 東フィル カセッラ
11日:金沢音楽堂 ヴィドマン指揮アンサンブル金沢
12日:未定(金沢近辺?)
13日:港区公会堂 尾池五重奏→トッパンホール ヴィドマンの夕べ
14日:未定
15日:東京文化会館小 松原勝也リサイタル
16日:東京コンサーツラボ 會田瑞樹
17日:すみだトリフォニー NJP?→北千住藝大or 鶴見サルビアホール? (インタビュー日程に拠る)
18日:第一生命ホール エク&チェルカトーレ→サントリーホール 東京水谷コンマスさよなら公演

おお、久しぶりに溜池に2度も行き、上野は1日だけじゃないかぁ。未定、というのは、チケットが入手出来てなかったり、この辺りで休まないと流石にしんどい、という日。新帝都では出来るだけ小さなものを拾いたいのですが、そうともいかんですしねぇ。

以上、実態は自分の日程確認作業でしたぁ。さて、いよいよ3月末から5月半ばまでの日程をきちんとやらんとなぁ。

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「巨匠の時代」ガイドブック質問への回答あれこれ [売文稼業]

昨日、某氏からの電話での問い合わせへの返事に窮し、当無責任電子壁新聞で皆々様に緊急援助を求め
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-02-06
昨今の「weblogなんて眺めてる奴はたかが数十人」という世間の風潮に合わてFacebookにも貼り付けたら、世の知恵者の皆様からいろいろな声を寄せていただきました。というわけで、メールなどで非公開でいただいたご意見も含め、現状を整理させていただきまする。なお、()内は初版出版年というわけではなく、現在手に入る版が出ている年という意味です。

◆ご指摘いただいた書籍◆

★あらえびす『名曲決定版上下巻』(1939)
★志鳥栄八郎『不滅の名曲はこのCDで新版』(1991)
★グラウド/パリスカ『新西洋音楽史 上中下』(1998)
★星旭『歴史的名曲、名盤に聴く―レコードによる名演奏家の系譜』(2003)
★吉田秀和『世界の演奏家 吉田秀和コレクション (ちくま文庫)』(2010)
★Neal Peres da Costa "Off the Record: Performing Practices in Romantic Piano Playing"(2012)
★横溝亮一『クラシックの愉しみ アナログ主義者が選んだ名指揮者・名歌手・名演奏家』(2013)
★ノーマン・レブレヒト『クラシックレコードの百年史 記念碑的名盤100+迷盤20』(2014)
★あらえびす『クラシック名盤楽聖物語』 (2015)
★レコード芸術編集部『最新盤クラシック不滅の名盤1000』(2018)
★村上春樹『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(2021)
★毛利眞人『SPレコード入門~基礎知識から資料活用まで』(2022)

◆ご指摘いただいたレクチャー◆

★安井耕一『公開講座 20世紀名演奏家の系譜~巨匠の時代~』(2021/11/27)
https://koganeishop.miyajimusic.jp/event/20211127_seminar/?fbclid=IwAR3JFNsVFW9kTJWUem34GawtUa-qR-uuXXVPoPlKZWZaXzuB4KnRC-oDHOk

現時点ではこのような感じです。なるほど尋ねてみるものだ、という感謝の気持ちでいっぱいであります。中には、「そもそもそういう録音を聴く価値があるか」、「巨匠の時代という意味が判らない」など、当温泉県盆地の状況を真っ向から批判するようなご意見もあり、興味深いなぁ、と思わせていただいた次第。当無責任電子壁新聞の国際版ともいうべき「絶対書いてあることは信じてはいけない」ってレブレヒトおやじなんぞ、なかなかヤバヤバな書物も挙がってますけどねぇ。

やはり、こういう情報が「簡単に手に入る入門者向け定番ガイドブック」という形では存在していないのには、それなりに理由があるのだなぁ、とも思わされホントに勉強になります。それにしても、安井先生のレクチャーのようなものが開催されているし、あらえびすのデータとしては猛烈に古い著作が2015年に河出書房新社から出ているようですから、それなりの需要はあるジャンルのようですね。それから、この数年でレコード盤に関する書籍がいっぱい出てますねぇ。なんだろーねぇ、この業界ったら。

ぶっちゃけ、問題のFMラジオ担当者さんには「安井先生のレクチャーに行ってきてください」でオシマイのような気も。結局、志鳥&吉田という安全なところを、まずはお伝えしておくことにします。村上春樹も、昨今のLPブームに乗ったものでしょうが、紹介はしやすいですね。志鳥先生の著作って、まだ紙で買えるのかしら。あらえびす本は「青空文庫」でこの瞬間にダウンロードできますけど。

ともかく、もうちょっと整理して、今日は霧の中で曇ってまるで見えない由布岳麓の某氏に連絡します。皆様、ありがとうございました。

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ご質問:「巨匠の時代」を体系的に知るための文献 [売文稼業]

半月とちょいの新帝都避寒生活(?)を終え、春節以降ますます数が増えてる諸国善男善女観光客の皆さんを満載したバスの隅に座り、温泉県半島先っぽ空港から「ニッポン海陸機動部隊&やんきーマリンコ合同尖閣奪回演習」の準備進む日出生台を横目に標高500メートルの盆地に戻ってきたのが昨日の午後。人で溢れる駅前でようやく拾えた顔見知りのタクシー運チャンと、来週から始まる演習でもう別府のどこぞには米軍関係が来ているとか、先週の猛烈の寒波の話とか、あれこれ田舎の世間話をしながら田圃の中のオフィスに戻ってきたらぁ…あれほど周到に準備したと思ったのに、やっぱ、水道管破裂してましたぁ。

今、やっと当座の処理が済み当面は一件落着となった騒動、また別ネタで記すやもしれません。んで、やっと動けるようになった洗濯機がうっほほーいとがガタゴト音を立て始めたところに、ご町内の反対側、道夫先生んちの近くにお住まいの某氏から電話。あれ、到着しました、なんて旗を揚げたわけじゃないんだが、と拾い上げると、旧正月立春過ぎで明けましておめでとう御座いますもなかろーが、いきなりご相談があります、って。あらためてなんじゃらほい、としばし話を聞くに、以下。めんどーな細部は端折ってありますよ、勿論。

「この街のローカルFMで自分の番組を担当している若い人と話をしていて、どうやらハイフェッツとかコルトーとかピャテゴルスキーとか、知らないんじゃないかと思えてきた。最高の演奏家はアルゲリッチやマイスキーと信じているようで、まあそれはそれで良いんだけど、これまで自分がいろいろ話題にしてきた巨匠については、実は全然聴いたこともないどころか、名前も分からずにいたんじゃないかしら。こういう巨匠達について、せめてこれは聴いておけ、知っておけ、というような手頃な書物はないだろうか?」

うううむ、これって、真っ正面から尋ねられると、案外と「あ、それならこれがあります」とお答えするのが難しいなぁ、と言葉に詰まってしまったですよ。

某神楽坂とかから出ているムック本みたいな「マニアさん」対象のものではない。神楽坂をおん出て遙か多摩川の彼方は稲城永山の地で尖ったもんを出してるところがやってるようなものでもない。かと言って、伝統の白水社、創元社、みすず書房、などなどが出している演奏家や作曲家、はたまた偉い評論家先生の紹介本とも、ちょっと違う。「20世紀レコード巨匠の時代に積み上げられた録音を、体系立てて概論として整理紹介する今風の入門書」って、ありそうでない。ぶっちゃけ、野村あらえびすの21世紀版みたいなもの、かな。

要は、判っている人とすれば「古典なんだから説明しないでも判ってるでしょ」で済ませてしまうような部分を、大真面目で語っているものです。今時のマニア向け評論家さんや、売れっ子学者先生の書いているようなものとは違うのは、言うまでもありませんです。

なんかありませんかねぇ。これぞ、というものがあったら教えて下さいな。

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