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我が中央区に「文化行政」はあるのか? [新佃嶋界隈]

昨晩深夜に「お願いしていた原稿、紙面の関係で来月号に飛びました、ゴメンなさい」という神か悪魔か判らぬような電話があり、さても、月末までに3本、じゃあどの順番に処理しましょ。なにやら久しぶりに少しは日差しがある。ちょっくら清澄通り沿いの自転車屋さんまで行き、購入後いまひとつ調子が悪い自転車の様子を見て貰い、大川の風にぼーっとあたっていろいろ考えましょか、ってチャリチャリ押しながら露地を出たら、そこは4年に一度悪夢のように広がる選挙ワールド、住吉さんの例大祭よりも稀なる祝祭空間で……向こうの露地を候補者諸氏が旗持って練り歩き、通りに出れば選挙カーから「やくぺん先生、お仕事ご苦労さまです」と名指しで叫ばれる(これホント、働け、と叱られてるようだなぁ)。東京駅銀座から一番近い田舎町佃の区議会選挙は、文字通りの田舎の選挙そのものなのであーる。

なんせここ中央区にあって、有権者が最も纏まって住んでるのが佃月島地区となれば、選挙運動も残すところあと2日、トリトンの3本ビルとリチャード・ギアが宣伝する超高層ツインマンション建設を眺める十字路で候補者本人を乗せた選挙カーが3台はち合わせ、そこに旗立てた別の候補者が露地から歩いて出てくる、なんて騒動も珍しくない。観光バスからゾロゾロと降り、東京修学旅行のお昼にもんじゃ焼きを楽しむ福島の中学生たちも目を丸くしてる。
候補者はち合わせの図は撮影できなかったので、トリトン下、停車中の福島観光バスの横で奮戦する選挙カーの記念写真(候補者名がばっちり写ってるのに他意はありません)。

さても、かくいうやくぺん先生も一区民として清き一票を投ずるために、己の関心と問題意識に誠実に、支持ずる候補者を選ばねばならぬ。なんせ人口10万突破を祝う中央区、一般会計総予算650億円ほどというのは、兆単位の横浜市なんぞには遙かに及ばぬも、鳥取市なんぞよりも予算規模はデカイ。数年前のカンボジアの国家予算がODAなんぞかき集めても500億円くらいなんだから、あなた、軍隊だって持てるくらいの規模なんだよ、いくとこいけば。ま、トヨタが自動車レースF-1に投じてる資金が400億円から500億円、ってきくと、お金ってなんだろーなぁ…と思いますけどねぇ。

もとい。我らが区民税やら、我らの国税が還元される交付金やらから成り立つこれらのお金(別に区が稼いでるわけじゃないですからね)、どのように再分配されるべきや。そう考えると、小生なんぞがまともに思いめぐらすことが出来るのは、文化関係予算なのであーる。んで、「平成19年度中央区予算案の概要」なるPDFファイルを区のホームページから引っ張り出し、さても、我が区は文化予算をどう使っておるのか、と眺めるですね。

んで、あらためて、おいおいおいおい、と思ったですよ。

ええ、我らが東京都中央区は、「文化振興財団」とか「歴史文化スポーツ事業団」とか、その類の「自治体が実質的に運営している文化財団」がありません。これだけの予算規模の自治体なら普通はどこでも存在する「市が抱える文化専門職員」がないんです。今ネットで調べたら、首都圏音楽ファンなら知らぬ者ない「日本一のカタログショッパー」K氏が辣腕を振るう武蔵野文化事業団をバックアップする東京都武蔵野市ですら、一般会計予算が569億円なんですから。おおお、うちの区、武蔵野よりも金持ちなんかい!
だから、「日本橋会館」と「銀座ブロッサム」(クロノスQだかアルディッティQだかが初来日公演をやったのがここでした)という2つの区立公共文化ホールの指定管理でも、区の財団をどうするんだ、という問題は起きなかった。起きようがなかった。指定管理というやり方は、中央区とすれば願ったり叶ったりの制度だったわけですな。当然ながら、区が主催するクラシック音楽公演とか演劇公演とかは、殆どありません(今年も日本橋会館で区主催の能だかがあるみたいで、皆無ではないですけど)。

当電子壁新聞で新佃嶋界隈を「田舎」と表現することを不思議と思われていた貴方、我らが中央区の田舎っぷり、行政面からもイヤでもお判りになられたことでありましょーぞ。
ちなみに、文化提供NPOのトリトン・アーツ・ネットワークが「中央区での音楽活動、アウトリーチ」を定款に誕生させてもらえた理由のひとつは、普通ならば地方行政がやるべきそのような活動を担う団体が中央区には存在しなかったからです。他では自治体が税金でやってることを民間が積んだ金でやる、というテストケースですね。マンハッタンの状況なんぞに近いです。

専任の文化担当者(一昨日、晴海トリトンの第一生命ホールで延々6時間も演奏家らのプレゼンテーションを真剣に眺めていた地方ホールの方々、など)を区が雇っていないとなると、区の職員や議員さんに文化をきちんと考えて貰わねば困る。そー、中央区議会は、他の地域に比べ、文化に対する責任が大きいわけですよ。

                          ※※

さても、そんな目で「中央区議会議員選挙公報」を眺めてみよーぞ。これだけ議員がいるのだから、何人かは「文化担当」みたいな奴はおるじゃろ。音楽ジャーナリストたる小生の区民としての義務は、それらの議員の中から、今の中央区の状況を最も理解し、きちんとした文化行政の視点を持てる人を的確に選ぶことであろうなぁ。

って、隅から隅まで眺めたら、なんと、中央区議会議員に立候補なさってる総勢37名の候補者のうち、所謂普通の意味での「文化芸術行政」についての発言をなさってるのは、ひとりしかおりませんでした。若い公明党の候補者さんの、「文化芸術の振興をはかります!」って一行。これだけ。

あなた、650億の予算を持つ自治体で、文化芸術振興にあたしゃ関心がありますよ、と選挙公報で宣言してるのはたったひとり。それも、狸でも唱えられるような類型的スローガン!

ええと、小生は別に、中央区の予算を使ってシカゴ響公演をやれとか、森進一ショーをやれとか、メディアアートの実験をやれとか、そんなことを申してるんじゃあありません。決して小さくない予算規模を持つこの自治体では、そんな「興行を消費するタイプの文化」は一切やる気なし、と区議会議員がみんなで思っているのならば、これはこれでスゴイことです。
正直、小生としますれば、「税金で音楽事務所からいろんな公演や興行を買ってきて、市民ホールで安く納税者に鑑賞させる」ことが文化行政ではないと思ってます。「佃の伝統的な祭りを守る」とか、「区のあちこちに残る明治初期からの様々な文化遺産を保全する」とか、「大川の水運や水辺に生まれた生活を復活させる」とか、そんなことこそが中央区としてやるべき文化行政だと考えているなら、中央区議や区長は全く正しい。

興行を消費するタイプの「文化」なんぞ民間に任すべしと本気で判断し、企業や資本の理論では手が届かないことをすることが行政なのだとしっかり考えている、猛烈に先端的な地域なのかもしれぬ。

でも、もしかしたら、そんなことすら考えつかぬものすっごい田舎なのかもしれぬ。

ううううん…

というわけで、やくぺん先生の区議会議員候補者選び、己の職能を判断に用いることは不可能と判ったわけでありますな。いやはや、となると、もーこれはホントに田舎のどぶ板選挙(比喩ではないのがコワイ佃界隈)なのであるぞよ。

ちょっとだけ真面目になれば、佃住民としてのやくぺん先生が区長及び区議会議員に求めるものは、「新住民と旧住民双方の生活感情と利害を理解し、調整する能力」なんですけどね。なんせ勝ち組高層マンションの麓なる我が佃2丁目は、世界のどこよりもものすごい「格差シティ」なんだから。


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水の都

お騒がせでした。お祭より賑やかだったかも。中央区は色々な文化があるのに行政も議会もその点まったく遅れていますね。郷土天文館が出来いわゆるまちなみとか生活における文化研究が少し進んだかと思いきや、研究員さんは非常勤で任期がありなんとも一貫した研究が出来ない現状があります。
 安定した文化の研究環境が必要であると行政に物申したら、「文化といっても、江戸・明治・昭和と沢山あるから・・・」といって逃げ腰。国際文化振興協会もあるが何を活動していいやら暗中模索でいわば天下り団体になっています。
 中央区の水辺とか文化とか新しくこの街に引っ越してきた方々は快適な居住環境を求めていると思いますが、選挙となると「子育て・福祉」のほうが関心が高いようです。投票率46パーセントはどの議員も区長も民意を得たとは言えないのでは。
by 水の都 (2007-05-01 10:48) 

Yakupen

お疲れ様でした。仰るとおり、中央区の巨大な予算の多くは福祉や医療予算に用いられているわけですから、そのような関心が高いのは当然でしょう。

とはいえ、そこに川があって、運河があって、露地があって、世界に開けた港まであって、おばあちゃんが買い物する横に外国人もウロウロしているこの地域なりの「文化」は、生きていくうえで不可欠。中央区にとって文化とは快適な居住環境の不可欠な要素なのである、としっかり応えられる方にこそ、頑張ってもらいたいものです。

ただ病院いったり、長生きしたり、毎日何事もなく暮らしているだけじゃあ、絶対に人間おかしくなるものね。
by Yakupen (2007-05-01 17:49) 

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