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長い長いファミリーコンサート [演奏家]

すっかり夏恒例となったチェロ奏者上森祥平氏の「1日でバッハとブリテン無伴奏全曲」演奏会、今年も恙なく開催されましたです。
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http://www.alti.org/at/20220709.html
http://www.millionconcert.co.jp/concert/detail/2022_07/guide/220718uwamori_bach.html

この演奏会、コロナの一昨年を除けばもう10年以上やってて、死ぬまでやりますと舞台の上で公言しちゃってる文字通りのライフワークでありますな。で、昨日もしっかり完奏なさり(やくぺん先生ったら途中でアウトで、バッハの4番はロビーのフカフカ椅子でぼーっと座ってました)
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最後には昨年同様に奥様とお二人の息子さんが出てきてアンコールにパパお疲れ様御家族アンサンブルがあったりして。なんせ上森氏、知る人ぞ知る話でしょうけど、この演奏会がバッハ全曲だった10年ちょっと前に6番を弾き終えた舞台の上から公衆の面前でプロポーズしてOK取った、というトンデモな心温まるエピソードがあるわけで、そのときからの聴衆がかなりいるであろうことを考えれば、文字通りの「今年も我が家はみんな元気ですよ」って演奏会なわけですわ。

ま、正直、純粋に音楽という意味で聴けば、このような演奏会ってやはり特殊だなぁ、とあらためて思った1日でありましたです。朝のブリテン1番から始まり夕方のバッハ6番まで、全てを暗譜。ということは、録音してパッケージで世に問うような「正確で精密な演奏」である筈はない。特にバッハに関しては、もう午後最初の1番冒頭から極めて上森流の音楽、それが曲の性格に合わせてどういう風にますます上森流になっていくかを一緒に体験する、という午後なのであります。で、最後に、お疲れ様でした、ってファミリー総出演。

音楽的にはこういうやり方だと曲の性格の違いが凄く分かる結果になり、特にバッハ5番の難しさ、その後に長い長い音合わせの後に始まる6番のまるで楽器を変えたのかと思う程の色の違いなど、勉強になった。ブリテンに関しては、夏の朝一発の1番というのはこの曲に凄く合ってるし…で、3番はやっぱり良く判らん、ってものでしたね。

こういうコンサートのあり方がある。ホント、上森氏はなんと幸せな音楽家なのか、と羨ましくすら感じてしまう。ああ、某賞の選考委員をさせていただいていた頃、この方をプッシュしてホントに良かったなぁ、と思わせて下さいました。たまにはこういう時間に接しないと、ニンゲンドンドン悪くなる。ありがとう御座いました。

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ケント・ナガノとうとう山鹿に登場 [演奏家]

まだ音楽祭公式ホームページなどにはアップされていないようなのですが、何故かtwitterでは発表されているようですので、記します。

昨年、コロナ禍でなんとか初回が開催されたくまもと復興国際音楽祭、第2回の開催がアナウンスされました。こちらをご覧あれ。
https://mobile.twitter.com/kumamoto_rimf/status/1544676177327292416/photo/1

ハイライトは、指揮者ケント・ナガノ氏がおじいちゃんの故郷たる熊本県山鹿の八千代座という由緒ある劇場で指揮する、昨年予定されながら実現しなかった公演でありましょう。こんなとこ。
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映画『るろうに剣心』の舞台となった、とのことです。こちらが八千代座公式ページ。
https://yamaga.site/?page_id=2

演目は昨年予定されていた《月に憑かれたピエロ》など。詳細はいずれ発表されるでしょうが、ともかく、しっかりと上のチラシをご覧下さいませ。参考までに、これが昨年のお話。商売作文をやったので、当無責任電子壁新聞では中身についてちゃんと取り上げておりませんです。スイマセン。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2021-09-11

9月9日の熊本市内での九響公演など、このクラスの指揮者とすればビックリするぐらいお安いですから、来週土曜日の発売日にはチケット争奪戦になる…のかな。とにもかくにも、東京首都圏からでもいらっしゃるという方は少なくないことでありましょう。頑張って闘いに参加して下さいな。

ちなみに、あたくしめはミュンヘンARDコンクールの弦楽四重奏本戦が終わり、慌てて日本列島に戻ろうとしている辺りなので、取材なりには行けません。昨年いろいろお世話になりましたから、本来はやらにゃならぬのでしょうが。関係者の皆様、なんとかしてみます、ちょっとお待ちを。

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50回目の《ゴルドベルク》は8月29日です [演奏家]

40代か、と呆れられるような滅茶苦茶な日程、者を考えただけで涙が出てくる状態の前頭葉過労をもう体力でカバー出来ない老人、無責任私設電子壁新聞放置状態でスイマセン。weblogって、完全にMD化しつつあるんでしょうかねぇ。

さても、やっとこの情報が公開になりました。数日前から東京ローカルな新聞やら、昨年12月にチケットを払い戻しされた方には告知がいっているようですので、もう大丈夫なのでしょう。
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昨年12月に中止になった小林道夫先生50回目の《ゴルドベルク変奏曲》、真夏の9月29日に開催することが決定しましたです。

チケットの動きは良いとのこと。お急ぎあれ。

なお、道夫先生はお元気で、今月半ばにはゆふいんラックホールで歌手の方との共演があります。お忙しくあちこちに出歩いていらっしゃり、東京では8月に久しぶりに指揮もなさる予定。
https://www.officearches.com/concert/2022-08-06/
今をときめくBCJの原点のようなこの団体、聴かない手はないでしょうに。

翁、お元気です。若い爺も頑張るしかないなぁ。

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Z時代古楽到来…か? [演奏家]

昨晩、こんな演奏会に行ってきたです。
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やっぱりなんのかんのあったコロナ禍もまる2年目となった上野の春、官立イベントでは不可能な年度跨いで開催される東京春音楽祭の最後の公演であります。最後ってのは別に意図したわけではなく、びわ湖監督率いるオケをバックにスターが燃え上がる炎背負って「さらばさらば」と叫び終わりになる筈だったのが、なぁんということでしょう、ヴォータンがコロナに罹ってしまいキャンセル。んで、これが最終公演となってしまった。

いやはや、コロナは全然終わってません。なんせこの演奏会の主役だって、先月にコロナに罹ってしまい果たして国に戻れるのか、ましてや息が命の楽器の演奏家、ご本人twitterで大変だぁ、と仰ってたわけですし。

ま、いろいろなすったもんだはあったものの、無事に演奏会は開催され、会場はいかにも「古楽」って感じの様々な種類の鍵盤楽器がまるでミュージアム・コンサートでもあるかのような舞台上。上手下手のチェンバロやらフォルテピアノやらはともかく、真ん中には奇妙なレトロ電子楽器らしきものまで並んでら。舞台前に人々がワラワラ寄って眺めてる、ってのも伝統の古楽演奏会であるぞ。
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主人公の柴田氏も、トラヴェルソ2本どころかモダンの楽器まで持ってきて、ますます会場は「古楽」っぽい風貌でありまする。

中身は、上の演目リストをご覧になれば判るように、バッハのフルート・ソナタがメインに据えられているものの、実質は「柴田くんとアンソニーがあれこれの楽器を次々繰り出して延々と楽しい音楽の時間を提供する」というもの。ぶっちゃけ、今、何の曲をやってるのかはどーでもいい。C.P.Eバッハだろうが、グラスだろうが、はたまたクルタークだろうが、まあ、どーでもいー。なんせアンソニーったら、「まるでバッハっぽい即興」とかいくらでもやっちゃい、学校の隅っこにあるぶっ壊れたハルモニウムの音を増幅してくれるようなレトロ電子ピアノの椅子に座ってカッコ良く笛の調性をする柴田君をニコニコ見守って、はいよ、って次の曲に入っていく、途中の拍手はしたけりゃしてね、って。要は、昨今のドイツグラモフォンのアーティスト主導コンセプトアルバムみたいな造りでありまする。

あああ、なるほどぉ、これが「Z世代古楽」なのかぁ。一昔、二昔前の「古楽器」界に漂っていた「私だけが本当の音楽のあり方を知っている」「このやり方が正しくてカザルスもフルトヴェングラーも間違った音楽をやっているのだ」ってカルトっぽさは皆無。スッキリ爽やか、気持ちよい空気が流れる2時間とちょっと。

20世紀に入り、世界をマーケットとした録音や放送媒体が音楽消費のメイン媒体になってきたときに一生懸命求められた「誰にでも判る楽譜通りの正確さ」「誰もが文句が言えない上手さ」なんてものが、もう価値として追求されなくなってきている。そういう中で生まれてきた、良くも悪くも好きにやってる(風に見せる)音楽のあり方を、どうやってマーケットの上にのっけ続ければ良いのか…それにしてもこういうやり方をやるなら、ずっと座って聴いている必要は全然ないわなぁ。

…なーんてどーでも良いことを後半はずーっと考えてた、まだまだ寒い春の宵だったとさ。こんな風にすぅっと終わるお祭りも、あって良いのかな。

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シューベルト弦楽五重奏をコントラバスで弾きます←注:エイプリル・フールではない! [演奏家]

ご報告が遅れ、卯月初日ってことで世間はエイプリル・フールのネタと思ってしまわないか心配なんだけど、創刊以来「書いてあることはみんな嘘、信じるなぁ」をモットーとする当電子壁新聞の4月1日なんだから、無論、書いてあることはホントです。なんとなんと、天下の名曲、妙なる響きの天国的な長さに春の午後の魂も溶けてくよなフランツ・シューベルト作曲弦楽五重奏曲ハ長調、明日と明後日の午後、チェロ一本をコントラバスに代えて演奏されます。こちら。
https://i-amabile.com/concert/hibiki_string_quintet220403
https://www.nishinippon.co.jp/kyushu_event/11520/
んで、こんな音らしい。

どうも天下の西日本新聞の記者さん、事の重大さを判ってらっしゃらないんじゃないかとしか思えぬさりげない記述で、延々と説教してやるからそこに座れ、って気になっちゃうぞ。だってあなた、あの曲をコントラバスですよ、コントラバス!そりゃね、実は滅茶苦茶音域広いヴィオール系の楽器だから理屈としてはやれないことはないんだろーが、例えばゲーリー・カーとか、こんなことやってるんでしょうかね?

こんなトンデモを考えるのは、当然、頭に座る我らが福崎氏であります。北九州は響ホール合奏団のコンマスを務めるばかりか、上野の藝大オケのメンバーとしてきっちりお仕事をこなしつつ、一昨年のベートーヴェン生誕250年では世界でもそんなことやった奴はどれだけいるんだ、って呆れかえる「1日でベートーヴェンのヴァイオリンとピアノの二重奏ソナタ全曲演奏」なんてことを地元黒崎で敢行、北極回りで羽田からフランクフルトまで行けるくらいの時間を付き合ったこっちがもうクタクタになってもーた。

無論、無謀な突撃ではなくちゃんと勝算はあってのことでしょう。どうやらコントラバス・パートは若干手を入れる部分もあるそうです。演奏するのも、この人なら大丈夫、と見込んだ逸材のお嬢さんあってのことらしいし。

うううむ、本来ならばもう四の五の言わず九州北に行かにゃならんのだが…残念なことに日曜日は上野でながああああい1日を過ごす先約があり、そっちにお付き合いせにゃならん。

九州北部、ホンシュウ島西端辺りにお住まいのシューベルト好きよ、さあ、週末は戸畑か福岡に結集せよ!やくぺん先生も、楽屋への差し入れだけはお願いしたぞ、がんばれえええええ!

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ゲルギーは元気でやっているようだ [演奏家]

音楽情報というか、噂をどんどん流す当無責任電子壁新聞以上にアブナイSNS媒体に、ちょっと前からこんなニュースが踊り始めました。出所は「タス通信」だそうですが、西側の関係者に流れている話の出所はこの辺りなのかしら。
https://www.washingtonpost.com/theater-dance/2022/03/25/putin-bolshoi-mariinsky-gergiev/

要は、「プーチンがマリンスキーとボリショイの統合を口にし、ゲルギーに意見を求めた」みたいなことでありますな。で、これをネタに、それぞれの論者さんが現状に即した好き勝手な憶測をくっつけたりくっつけなかったりしてネタを拡散している。

ま、個人的にはなーんにも興味が無い世界なんだけど、この短信をみた瞬間、「あああ、ゲルギー、ちゃんと生きてるんだぁ、良かったねぇ」と思ったです、はい。シベリア送りになったり、最前線に慰問に行かされいつ死ぬか判らぬ状況に置かれたりはしていない、ってことなのね。

なんせ「タス通信」ですから、もうホントに時代が一気に半世紀以上向こうにぶっ飛んだような感は否めず、ジダーノフ批判時代に鉄のカーテンから漏れてくる話を眺めるような気持ちで接するべきなんでしょう。

うううむ、ゲルギー、まあ人口が日本より多く、無意味に広い領域の「国」ですから、実質鎖国しようが文化やってる奴らには上手い具合に立ち回っている限りは食い扶持はそれなりにある、ということでしょう。忙しすぎで出がらしになってたわけですから、今こそ勉強できる良いチャンスなんでしょう。

別に「頑張れゲルギー」とはいわんが、もう空港で自家用機を強引に割り込ませて大事故起こしかけるようなことはせんですむのは、みんなのためにもゲルギー氏自身のためにも良いことでしょ。もう、あんな無茶な日程をする必要もないわけだしさ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-11-17

アーティストの生き方にはいろいろある。それだけのこと。こんなネタもあったんだなぁ。なんか、当無責任電子壁新聞で、ゲルギーって格好のネタ演奏家だったんですねぇ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2015-08-31
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2008-08-23
やくぺん先生ったら、ゲルギーといえば未だに、五反田に簡易保険ホールが新しくなったばかりの頃、恐らくは日本で開催されたほぼ最後くらいのソ連系御用演奏会みたいなやつで東響かなんかでカリンニコフの交響曲かなんかを振った若造、ってイメージなんだよなぁ。あれが初来日だった筈で、そっから先は、何一つ殆どまともに聴いてません。唯一記憶にあるのは、ロンドンのバービカンでマリンスキー引っ越し公演の《パルシファル》かなんかをやったときのこと。長いけどバービカンの周囲はちょっと喰うところが案外なくお弁当をどうしよう、って宿でいろいろ悩んだ記憶くらいしかないなぁ。ま、そんな出会いもある。

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勇気 [演奏家]

東フィルの事務局から数百メートル、オペラシティ脇のドトールに座ってます。朝っぱらに温泉県は470メートルの盆地を出て、福岡空港から成田経由、内藤新宿の西の先に到着。これから武満特集。

で、今、隣のビルからメールで連絡がありました。こちら。
https://www.tpo.or.jp/information/detail-20220301-01.php
プレトニヨフといえば、日本では「ロシア・ナショナル管」という名称で知られる団体を率いている方なわけで、この瞬間に日本に客演して、ましてや《我が祖国》を振るなどという行為は国内的に大丈夫なのか、心配になるなと言われても無理。ご本人はいざとなれば亡命でもなんでも可能だろうが、御家族などに何もなければ良いんですが。

東フィルは、プレトニヨフ氏の以下のようなコメントを発表しております。この数日のものではなく、2019年のもののようですけど、今の状況を受けて変える必要は無い、ということですな。
https://www.tpo.or.jp/information/detail-20220302-01.php

軍隊を動かしている「国」と、国を作っている人は同じではない。当たり前のことですけど、そこを間違えてアホなことを言ったりやったりしたくないものであります。

なお、もうひとつ、こういう演奏会があります。
https://www.tmso.or.jp/j/concert/detail/detail.php?id=3497
この瞬間に、ユダヤ人のインバル御大が、《バビ・ヤール》を演奏する。たまたま、といえばそれまでなんでしょうけど、東京都民納税者として、これほど我が都響が存在していることを誇らしく感じたことはありません。

何が大切か、また本気で考えねばならない時になっている…

[追記]

3月8日夕方、東京都交響楽団から正式なアナウンスがありました。こちら。
https://www.tmso.or.jp/j/news/16434/
数日前から情報が流れており、替わりの指揮者を立てて予定通りの演目で公演を行おうと努力なさっていたようですが、残念ながら作品が作品だけに、3日間隔離で緊急来日とか、日本列島にいらっしゃる指揮者での代理とか、日程的に無理だったとのことです。道義氏以下、プレトニヨフとかパスカルくんとか、作品を扱えそうな人は日程がダメ。事務局某氏の奮闘ぶりが眼に見えるようですな。

あちこちから、「●●さんがコロナに罹った、陽性反応が出た」という声が聞こえてきます。ここまで多数の実演者の方々の感染が直接演奏会に影響している状況は、この2年のコロナ禍でもなかったような。まだまだコロナ、終わってません。

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必聴!ピアノ三重奏のための協奏曲 [演奏家]

来る週末金曜日と土曜日、名古屋は愛知芸術劇場コンサートホールで、カセッラのピアノ三重奏とオーケストラのための協奏曲が演奏されます。こちらが案内。
https://www.nagoya-phil.or.jp/2021/0303113451.html
うううむ、相も変わらず名称表記の問題が起きているAlfred Casellaですけど、今回も名フィルさんは「カゼッラ」としてますねぇ。ま、昔は一字一句一致していないと検索してくれなかったWebの世界ですが、最近では「カセッラ」でも「カセルラ」でも出てくるみたいなんで、気楽にあたくしめの慣例を貫かせていただきまする。はい。

んで、カセッラのこの協奏曲、所謂「トリプル・コンチェルト」と総称される類いの作品ですな。ピアノ三重奏がオーケストラに独奏者としてゲストに呼ばれるとき、持ち出せる作品と言えば100回中の99.99回までがベートーヴェンの三重協奏曲になるのは致し方あるまい。他に曲があるの、って、なんとwikiで調べると、それなりにあるんですね。ほれ。
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_triple_concertos_for_violin,_cello,_and_piano
勘定してみると32曲が挙がっており、なんとチェレプニンには2曲もあるじゃんか。

興味深いのは、やはりというか、その8割までが20世紀後半以降の戦後の音楽、所謂「現代音楽」であること。古典派やロマン派時代はベートーヴェンを除けばフンメルの弟子ヴォジーシェクなるヴィーンで活動した作曲家がひとつ遺しているだけ。15分くらいの単一楽章ロンド、なかなかお気楽で楽しい曲ですな。なんとNMLに入ってます!
https://czechmusicdirect.co.uk/product/triple-concertos-by-beethoven-and-vorisek/

楽器の発展やらを考えれば、まあ、確かにそういうことになるんじゃろーねぇ、と納得はいくものの、ベートーヴェン作品って、ホントに特殊なのね。

そんななかにあって、何故か1933年頃というのが奇妙なことになっており、カセッラとマルティヌー、それもマルティヌーは2曲も書いている。2年前にはチェレプニンが最初の三重協奏曲を書いていて、5年後にはマリピエロが書いている。なんとなんと、1930年代はまあ世の中の音楽ファンが名前を知っている作曲家がこの特殊なジャンルに総計5曲もの音楽を書いてくれていて、「人類史上稀なトリプル・コンチェルトの黄金時代」と呼んでもかまわない時期なのであーる…って、誰もそんなこと言わないけどさ。普通に考えれば「大戦間弦楽四重奏創作の黄金時代」と呼ばれる頃だわな。

どうしてこんなことになってるのか、調べればなんか理由がありそうだけど、ま、誰か調べて下さいな。チェレプニンはともかく、誰かその辺に居た奴に頼んで歩いたのかもしれんなぁ。

閑話休題。カセッラの作品でありまする。作品については、残念ながらYouTube上に楽譜付きの音はないようなので、ライヴ映像を貼り付けておきましょう。第1楽章など、音で聴いただけでは独奏とオーケストラの関係が判りにくいので、ご覧あれ。
映像と音がある曲をどうこういうのもアホだけど、やっぱりコンチェルトって第1楽章の作りが難しいなぁ。終楽章がいちばん成功している感がするけど、第1楽章みたいな曲想でピアノ三重奏の協奏曲やろうってんだから、ライヴで聴いてみないとバランス含め何やってるかよーわからんもんね判らん。

次に聴けるのはいつか判らぬ、ことによると葵トリオの定番演目になるやもしれない。それよりも、こういうのを聴くと、マルティヌーとマリピエロは聴いてみたいなぁ。お願いします、葵トリオの皆様。ちなみにこれがマルティヌー。後期ロマン派引っ張ったカセッラに比べると、圧倒的に新古典主義的じゃんけ。ところでアトス・トリオって、どこで聴いたんだけっけか?
https://www.youtube.com/watch?v=2mMOS4pYi9Q

残念ながら、マリピエロの作品はYouTubeにもNMLにも発見出来ないみたい。ううん、今時、そんな作品、あるんだなぁ。

おっと、忘れてた。チェレプニンはこちら。あっさりYouTubeにあるぞ。うううむ、これは野平一郎指揮オーケストラ・ニッポニカ辺りに持ち込めば、喜んでやってくれそう(トリオの方が面白いかは判らぬけど)。もうとっくにやってたりして。
https://www.youtube.com/watch?v=MUH1QECgd44

てなわけで、あたしゃ、土曜日に名古屋に参りますです。

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川崎和憲氏逝去 [演奏家]

先程、東京藝術大学から関係者に連絡がありました。ヴィオラ奏者の川崎和憲さんがお亡くなりになったとのことです。既にお悔やみの会はご家族のみで終えていらっしゃるそうです。

いろいろと皆様には思い出がおありでしょうが、個人的にはカザルスホールのふたつめのレジデント・クァルテットたるゼフィルス弦楽四重奏団のヴィオラ奏者でありました。YouTubeにあったこの音、結成直後でセカンドに景山さんが座っていた頃の演奏。若々しく颯爽とした音楽で忍ばせていただきたく思います。


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室内楽ネットワークというもの [演奏家]

こんな演奏会に行って参りましたです。
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Qアルモニコと「びみょーに澤Q」によるメンデルスゾーン弦楽八重奏曲がメインで、前半にハイドンの《ラルゴ》が付いている。主催は、また別の項目を立てて議論せにゃならん公益財団さんの無料コンサート。演目からお判りのように、午後6時に開演して正味一時間、要は「ラッシュアワー・コンサート」ですな。新浦安でやるかぁ、と湘南やら多摩地区の方々から突っ込まれればそれまでだが、それなりの人口と独自のコミュニティが存在する浦安新住民やら、蘇我方面にお帰りになろうという千葉都民、はたまた武蔵野線で帰れる沿線住民からすれば、案外と良い立地なのかも。

ま、そういう議論はそれとして、ともかく久しぶりのアルモニコでありまする。チェロが安定してからもう10年、とはいわないまでも、ずいぶんになるような。やくぺん先生ったら、どういう訳かこの連中が演奏会をやる日はいつも日本にいなかったりなんか先に入っていたりで、きっちりハイドンを聴いたのはこのメンツになってから初めて…かな、ヘタすると。んで、アルモニコの必殺技とも言えるさやちゃん(などというともう失礼なレディでありまするが)のお茶目さ炸裂、あああああ、久しぶりのアルモニコだなぁ、と感慨深かったものでありました。

今となればもう時効でしょうから記してもかまわんだろーけど、今世紀の頭くらい、山岡先生の大プッシュでマイスル御大のところに預けられるように「藝大初の弦楽四重奏として大学院に入った4人」がヴィーンに渡り、グラーツで優勝し、なんのかんのなんのかんの。あのときに、ヴィーンで出会った日本人ではないチェロを迎え、音楽の都に骨を埋める決意をし、なんのかんのなんのかんのなんのかんの、とかするなんてことになっていれば…そうねぇ、今のシンプリーQみたいなポジションには付けられた可能性もあった。アマデウスの爺ちゃん達を魅了した、上手いだけと揶揄されていた日本の団体にはなかった独特のキュートなセンスの良さは、正に90年代アマデウスの子供たちの最後の末裔として、大流行の「HIP」なんぞ何処吹く風のスタイルで、同じ頃にやってくるクスやらベルチャやらエベーネやらの新世代との世界覇権の闘いの中に独自の地位を占められたかもなぁ…なああああんて、失礼と言えば猛烈に失礼な妄想をかき立てられながら、ホントに懐かしく、そして、それなりに経験もお歳も召した音楽に浸っていたわけでありまする。

あああ、こういうことを考えるようになったら、ホントに隠居老人じゃのぉ。

んで、問題は後半じゃわい。なんと、こんなん!
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いちやんが都合でキャンセル、代打は我らが吉田様ではあーりませんかぁあああ!

うううん、エクは今年になって、少なくとも2回はこの曲をやってるし、夏の甲斐路で共演した方が本日もいらっしゃったりする。舞台上からアルモニコ・シン・チェロ氏がお話になるに、かなり急な話だったみたい。ともかく、話があって時間が合えば、はい行きましょ、ってちゃんとアンサンブルがやれる。音楽としてはもう林さんノリノリで引っ張り、曲のキャラとして第1ヴァイオリンはどんどん行ってくれ、あとはみんななんとかするから、というアンサンブルがほいやっ、とやれてしまう。

正に、ニッポン首都圏(林さんが東京かはともかく)の室内楽ネットワークはそれなりにきちんと機能しておるなぁ、と感深いものがありました。

室内楽には、はっきり「業界」があります。そこで商売が成立するフィールド、お金の動き方という意味ではなく、要は「〇〇弦楽四重奏団のヴィオラ奏者が急病だ、じゃああいつに連絡しよう」というネットワークのことです。こういうネットワークの中に入ってくる、そういうことが出来る奴と認識される、それがホントの意味での「室内楽業界に入る」ということ。こういう広がりがどれくらいあるかが、その都市の音楽的実力になる。

無論、そんなネットワークがきちんと出来れば国境を越えた対応も出来、例えば最近ではモディリアーニQのアメリカ公演が、ヴィオラがコロナ絡みだったのかな、ともかく渡米出来ず、さあどうする。で、声がかかったのが、前アタッカQのルークくんだったそうな。無事にツアーが全部出来たかは知らないけど、ともかく、代打には入れたらしい。ニッポンでもいつだったか、イェルサレムQだかがチェロがダメになって、たまたま日本にいたボロメオQのイーサンに声がかかった、ってのがあったような。そういうのは全然珍しくなく、「業界」としては当たり前。そうそう、最近ではプラジャークQのカニュカ氏がヴィーハンQの日本ツアーに入ってたっけ。

こういうことが出来るネットワークが、ちゃんとニッポンにもある。分母の規模がどれくらいなのか、ってのはまた別の問題だけどさ。トーキョーも、なかなか捨てたもんじゃないじゃんか。

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