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ながらにまた春がやってきた [音楽業界]

今を去ることもう随分と昔、ポーツマスから移ったロンドン国際弦楽四重奏コンクールがロード・ユーディ没後に金融街シティを離れ、行き先が定まらずウロウロしていた頃、メイン会場をロイヤル・アルバート・ホール裏のロイヤル・カレッジに移して開催されたことが一度だけありました。半島南では今をときめく人気ソリストとなっているボンソリ・キムちゃんがまだ10代のアイドルみたいな学生さんで、偉そうな先生たちに混じったKNUA弦楽四重奏団(だったと思う…)の第2ヴァイオリンで出場しており、なにやら大人気となってた年であります。ヴォーチェが勝てず、伏兵デーニッシQに優勝を持って行かれた年じゃたのぉ。その後、ロイヤル・アカデミーとウィグモアがメイン会場になり、なんだか良く判らん結果を連発しているロンドン大会が、まだまだコンクールっぽかった最後の年、って感じがするわい。

セッションの間に、会場となったロイヤル・カレッジのオーディトリアムで公開シンポジウムが行われ、なんのかんの英国文化圏の偉い方々が登壇しあれやこれや喋った際、最後に聴衆からの質疑応答になった。んで、おもむろに手を挙げた参加者のひとりが、「弦楽四重奏を団体として常設で続けるにはどうしたらいいですか」という、もう身も蓋もないというか、単刀直入この上ない質問を、壇上に居並ぶ面々に向けて発したわけであります。と、これは俺が答えるしかあるまいなぁ、という風に乗り出した英国文化圏では(敢えて「英国文化圏のみでは」とは言いません…)アマデウスQ以降絶に圧倒的な評価と絶大なる人気を誇ったリンゼイQの第1ヴァイオリンを務めたクロッパー御大が仰るには、「まず、どんな規模でもいいから、自分のフェスティバルを持ちなさい」でありました。

へえええ、と思いましたねぇ。

どういう意味か、アホなやくぺん先生ったらそのときには良く判らなかったんだけど、その後、あれこれそんな視点から世界の弦楽四重奏業界を見渡すに、なるほどねぇ、と思うに至った次第でありまする。

つまり、自分らが責任を持ち、アーティスティックなだけではなくその他諸々を含めた仕切りが自分らのクレジットでやれる、やらねばならない、そんなイベントを持て、ということ。常設の弦楽四重奏というのは、弦楽四重奏の楽譜を弾きたい4人が集まって練習して発表している演奏家の趣味団体ではない、団体としての運営やそこに集まってくる人々との関係を含め、自分らできちんとコントロールする訓練をしていかねばならない。そのためにも、どこまで自分らで出来て、どこからが出来ないかを見極め、他人任せではなくその勉強が出来る状況を持て、ってことでありますな。

ま、それだけが理由なわけじゃないけど、以降、エクの皆々様には「ともかくどっか田舎ででもいいから、音楽祭やりましょやりましょ」と勝手なことを言って焚き付けていたわけでありました。

ったら、今を去ることもう7年前に、こんなイベントが立ちあがることになった。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2017-02-09
ま、それ以降は、当無責任電子壁新聞のバナー左下にある「検索ボックス」に「ながらの春」と突っ込んでいただければ、だああああっと幾つも出てきますので、ご関心の向きはご覧あれ。

何処も同じコロナ禍、この小さな音楽祭も2020年春から開催出来ず。その間に長柄町内でもいろんな動きがあり、昨年はエクの参加はなく共同主催の「ゴーシュ音楽院」単独で開催する小規模なイベントとして再び様子を眺めてみることにしたようじゃった。んで、なんのかんのなんのかんのなんのかんのあったようで、とにもかくにも今年は、会場も全く新しい「ミルフィーユゴルフクラブ」なるもうちょっと五井寄りの長柄町西の方に移り、まずは「サロンコンサート2公演+終演後のティータイム」というミニマムなフォーマットで再開された次第でありまする。

会場となるゴルフクラブ、無論、バブルの時期に千葉の山の中に建てられたこのような施設ですから、とても立派な建物であります。ほれ、入口ロビー受付から階段を上がった上層階へどうぞ。
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ゴルフクラブとしては、コロナ前までの会場となっていたゴージャスなところよりも、よりストイックというか、ゴルフというスポーツに徹した簡素な造り。ゴルフをするのに必要なものがきちんとある、というヴェニュであります。メイン会場となるゴルフコースと中央の巨大なポチャン池を臨む部屋はこちら。
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数十席のコンサートスペースでのサロン型コンサートが大流行の昨今、まるで違和感はなくなってるでしょ、こういう場所。コンサートをやるのは初めてとのことで、ゴルフ場支配人さん以下スタッフの皆さん、とても献身的にサポートいただきました。音楽イベントそのものが初だそうで、スタッフのおねーさんたちもなんだか嬉しそうだったのは良かったですね。

無論、ピアノがどうやっても入らない、音響もまだまだ試行錯誤、等々、いろいろ課題はあるでしょう。でも、小さな会場のライヴでないと体感不可能なコントラバスのブンブン絨毯を揺らして伝わってくる響きには、遙々桜咲き乱れる千葉の山まで足を運んで下さった皆様も大いに満足なさっていたようでありました。

あ、ご存じのように房総半島内陸は付け根とは言え完全な車社会、せっかっく近くを走っている小湊鐵道さんからもアクセスはなく、五井駅から送迎バスになります。山道には雉さんなんぞもノンビリしておりますぞケンケン!

てなわけで、数時間前に無事にNPOエクも主催者の一部に復活した「ながらの春 室内楽の和音楽祭2024」のゴルフクラブ公演は終了。プログラムに挙がっている本公演の後の、別室でのお茶の席でのアンコール演奏も復活しましたです。今時の流行で、「写真撮影はOKです」だったオマケ演奏の様子をお聴かせしましょうぞ。目の前にお茶のセットがドカンとあるのは、あくまでもアンコールですよ、ってことですので。
(提供:ながらの春音楽祭&NPOエク・プロジェクト)

聞くところによれば、どうやらエクとしては、結成30年にしてこの余りにも有名すぎる名曲をコントラバス付きで弾いたのは初めてとのこと。やっぱりこういう音が座れてしまうカーペットが敷かれた空間では、ダイレクトな生音の低音は圧倒的な存在感を示しますね。残念ながら、YouTubeどころか最高級オーディオセットでも再現は絶対に不可能、やっぱり桜眺めるついでに千葉の山まで来なきゃ、と思わせてくれるわい。

「ながらの春」音楽祭、来週からはエクがプロやアマチュア奏者の間に入って弾く合宿セミナーです。週末にはセミナー発表会、そして次の日曜日には長柄町公民館でフィナーレのコンサート。お暇な方は、流石にもう「桜満開の」とは言えないだろーけど、知る人ぞ知る桜の名所にいらっしゃいな。

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