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「Nomori」終焉 [音楽業界]

キューシュー島は温泉県盆地の貧乏老人やくぺん先生ったら、新帝都に2週間弱出てきてなにやってるかといえば、ふたつの春のフェスティバルにせっせと通うばかり。ひとつは桜咲き誇る上野の杜で開催されている今や大メイジャーな都市型音楽祭「東京春音楽祭」で、もうひとつはこれまた上野以上に桜咲き乱れる千葉の山奥でひっそりと開催されているプライベートな小規模サロンコンサート&セミナー&発表会「ながらの春 室内楽の和音楽祭」でありまする。

んで、前者はやくぺん先生に関心がある類いは、昨晩の文化小ホールでの「シェーンベルク生誕150年記念私的音楽協会編曲作品名曲選」でオシマイなわけでありますが、音楽祭としてはまだまだ来週末まで続くどころか、昨日からがいよいよラストスパートというか、この音楽祭の創設の頃、ホーレンダー総裁&小澤ヴィーン国立歌劇場なにやら監督に拠る「東京のオペラの森」を彷彿とさせるラインナップとなるわけでありまするな。ほれ。
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いやはや、これを眺めるに、60と余年前に東京文化会館が建立されたときに多くの東京都民音楽愛好家が思い願った「戦後復興東京のオペラハウス」という夢が実現したようなラインナップではありませんかっ!

ま、みんな「演奏会形式」という潔さがなんとも言えぬところではありますが、とにもかくにも昨日木曜日から来週末までの10日間の間に、《ボエーム》、《アイーダ》、《エレクトラ》というメイジャーオペラハウスのスタンダードレパートリー演目が2回づつ演奏され、その間に合唱団メインで記念年作曲家ブルックナーのミサが入る。しかも、《アイーダ》は今やイタリアペラ専門家として世界一のスター指揮者が満を持しての登場だし、《エレクトラ》はドイツの口煩い評論家が選ぶ年間ベストオペラハウス賞を獲りまくっていたフランクフルト歌劇場のマエストロが専門分野をひっさげての登場ですから、誰がどう見てもここ上野公園口駅前に聳えるのは「世界の大都市のメイジャーオペラハウス」でないと言うのは不可能でありまする!

ああ、「のもり」もここまで立派になったのかぁ、大変なことになってもーたのぉ、我がトーキョーも…なーんて思いつつ、小ホールに上がっていくダラダラスロープ左手に貼られた過去のポスター群を眺めていたら…あれぇええ、「NOMORI」って表記、なくなったんかい?!

ほれ、よーくご覧あれ。ポスターの左下にある公式ロゴマークの下に、あの懐かしい《エレクトラ》で始まった、この音楽祭なんなんねん、ヘネシーシリーズとはちがうんかぁ、オケはNJPでもないしサイトウキネンでもないの、なんなんねん?…などとみんな不思議がっていた頃からお馴染みのロゴの下に、常に記されていた「東京のオペラの森」という文字がなくなってます。
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んで、K音楽事務所時代から見知ったスタッフさんに尋ねてみたら、「あ、気付きましたか。そう、ロゴを変更し、NOMORIはなくなりました」とのこと。

この音楽祭、ともかくある時期から誰がディレクターか、少なくとも外から見る限りは全然判らず、でも規模としては完全にメイジャーな「都市型音楽祭」なわけで、いろんな人から誰にアクセスすれば良いのか直接尋ねられることも屡々だった。そしてその際に、音楽祭の名前として「NOMORI」というなんともけったいな略称が定着してしまい、とりわけ日本語を理解しない方からすれば別に何が奇妙とも思わずに「のもりのもり…」と呼ばれていた。余りに繰り返されるんで、「♪のもりのもりせーねかぁ、のもーーーーりぃ」と歌っちゃうよ、ってさ。

ちなみに昨晩の《ラ・ボエーム》公演、なんとなんと80代後半のホーレンダー御大自らが舞台に登場、しっかり困った爺の役をこなして大喝采だったそうな。無論、マイク無しっ!

ま、なにはともあれ、「NOMORI」なる略称も正式に過去のものとなった「東京春音楽祭」、今の音楽好きの鑑たるスポンサー会社会長さんが個人的に頑張ってやってる感が漂う状況が、この先、どうなっていくのか?かつて「東京音楽祭」なんてものがあったことを覚えている方はどれくらいいるやら、長く続く上野の春のお花見シーズン定番オペラ演奏会形式上演祭りとして定着するのか?

このイベントにせよ、連休の有楽町祭りにせよ、21世紀の末期資本主義の都たるトーキョーのメイジャーな巨大都市型音楽祭のどちらもが、東京都やらニッポン国やら御上が関与する「オリンピック」やら「万博」やらなんぞという特定広告代理店と政府自治体政権のアヤシげな癒着で税金ガンガン投入する公的なフェスティバルとは違う枠組みで行われているというのは、なんとも気持ちが良いところでありますな。

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