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人事異動:エベーネQ [弦楽四重奏]

日本時間の昨日午後7時過ぎという不思議な時間に、ジャパンアーツさんからの速報メールという形で公式リリースがありました。以下、昨晩中にジャパンアーツの公式ニュースページにも同内容がアップされているようですので、そっちを貼り付けておきます。
https://www.japanarts.co.jp/news/p8361/
なお、日本でのマネージャーのメロス・アーツさんからは関係者向け告知は来ていませんけど、同社ホームページは昨晩中に新しくなってます。
https://www.melosarts.jp/melos-arts/foreignartist/QuatuorEbene
https://www.melosarts.jp/news/20240131

無論、彼らの公式ページも新たな写真になってますし
https://www.quatuorebene.com/
いちばん対応が遅れていた感じがあるジメナウアーのページも深夜過ぎには新しくなりました。それにしても、若社長になって、随分空気が変わりましたねぇ、この「世界の弦楽四重奏界のラスボス」会社も。指揮者や歌手までやってるじゃん、最近は。
https://www.impresariat-simmenauer.de/
で、このジメナウアー事務所が出している2ページのPDF公式リリースが最新のエベーネQバイオということなのでしょうから、英語版をまんま貼り付けておきます。バイオというのはこういうものだ、というお手本みたいなものですな。最近の英語圏のチャラチャラした「はーい、みんな元気」みたいなもんとは違う、王道のプロフィル。
https://www.impresariat-simmenauer.de/wp-content/uploads/2018/07/2023-2024_QE_BIO_EN_New.pdf

ちなみに、演奏会告知はほぼ日本以外の公式レップのジメナウアーがいちばん判りやすい。こんな感じで、新生エベーネ、ラジオ・フランスの制約があれこれあるパリ以外では合衆国ツアー含め、滅茶苦茶忙しいなぁ。
https://www.impresariat-simmenauer.de/kuenstler/quatuor-ebene/

今回の人事異動でいちばん心配なのは、やはりコーチングの部分でしょう。ミュンヘンの音楽院のエベーネ教室って、マドリードのピヒラー教室みたいな「学校の中にある私塾」みたいなものなのか、それとも大学組織の中のファカリティとしてのポジションなのか、当人らに訊いてみないと良く判らんからいーかげんなことは言えませんが、なんせ岡本氏よりも歳がいった韓国の弾けるおねーさんなんぞがジャブジャブ集まってるわけですから、そこでいきなり「教える」ってのは現実的ではないでしょう。ここは学校と交渉して、レッスン期間中はチェロは別行動、ってことになるのかしらね。ラファエルの個人発信を見ていても、彼が昨年秋から盛り上がっている新任地ジュネーヴから教えに来ている、って感じはないですし。

現実問題として、今、ツアーだけで生活が成り立つ「常設」弦楽四重奏は世界に存在していません。「常設弦楽四重奏」は、敢えて言えば、愛好家の皆様に夢を与えるための幻想です。どこもいかに安定した教職ポジションが得られるかが存続のターニングポイント。中にはフェスティバルのディレクター職なんてのを上手に獲ってくる連中もいるが、それはまた別の才能ですからねぇ。メンバー交代と教職の問題は、現実的にはいちばん大きな課題なんじゃないかしら、あれこれの事例を眺める限り。

ま、そんなのいずれご本人らに尋ねればいいことで、とにもかくにも、以上のような人事に決定しました、ということ。日本は来年冬の終わりにベルチャとのオクテット、岡本氏情報が既に業界内ではあれこれと流れていた時点で某ホールのディレクターさんから「うちは買ったよ」という話は聞いてるけど、この新しい状況を受けてザ・シンフォニーホール級の大規模会場が手を上げてくれると良いんですけど。現役バリバリの横綱揃い踏みのベルチャ&エベーネで400席やら700席では、流石にこの業界、寂しすぎる。なんせお隣半島では、来月頭のノヴスQなんて、地味地味なオールイギリス作品プロでソウル・アーツセンター大ホールなんだからなぁ。

音楽の中身に関してですけど、やくぺん先生ったら、去る11月のヴィーン・コンツェルトハウスでの「エベネ&ベルチャ・シリーズ」で披露したシューベルトの大ト長調は、客席に鎮座していたピヒラー御大が第3楽章トリオで頭を抱えて感極まっているのか、はたまたその真逆なのか、まるで判らぬ反応だったのを遠くから眺め、おおおおやるじゃないか、と大喝采のホールで驚嘆しておりました。
IMG_0799.jpg
そんなことよりもなによりも、現役でも数少ないホンマモンの「天才」タイプのピエールが、久しぶりに自在に振る舞い、自分のやりたいことがやれている感が漂っていて、あああ誰にとっても大変だろうけど(誰になっても大変だろうけど、が正しいかな)もしかしたら岡本くんでいけるかな、と思っていたもので…良かった良かった、なんでしょうね。

弦楽四重奏ジャンルに関してはハーゲン&エマーソンで時間が静止しているニッポンの音楽業界、岡本ショックでやっと世界の常識に追いつけるかな。ベルチャの第2ヴァイオリンも韓国人女性になったわけだし、数日前に発表されたジメナウアーおばちゃんが審査委員長を務める来るボルチアーニ大会の参加者リストはなんと11団体中4団体が韓国という衝撃的な状況だし
https://www.premioborciani.it/quartetti-ammessi/
いよいよ室内楽もアジアの時代…だといいんだけどねぇ。

なお、このニュースに関しましては、諸処の事情から当無責任私設電子壁新聞としましても情報管理が成されておりました。関係者の皆様にはいろいろご迷惑かけたことを、この時点であらためてお詫びいたします。

[追記]

何の因果か知らんけど、ルクセンブルグ・フィルハーモニーさんから「こんなんあるぞ」という映像クリップが来たので面白がって貼り付けておきます…と思ったら、チェロはどっかでみたことあるような若い別の男子でありました。1月始め頃の収録。こんな断片映像でも、ピエールの切れっぷりは判りますね。やっぱりこの曲は「ベートーヴェンの弦楽四重奏全曲演奏を何度も繰り返している団体が、そのオマケみたいに地元オケに呼ばれて披露する」って曲だなぁ、と思わされますわ。
https://fb.watch/pYherxagKw/

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サンフランシスコ人

「ツアーだけで生活が成り立つ常設弦楽四重奏は世界に存在していません....」

サンフランシスコのクロノス・カルテット.....現在、地元での演奏会は殆どありません....ツアーだけで生活が成り立つ常設弦楽四重奏?
by サンフランシスコ人 (2024-02-02 07:18) 

Yakupen

サンフランシスコ人様

確かにクロノスはフィックスした教職は持ってませんねぇ(笑)。仰る通り、もしかしたら世界で唯一「ツアリングだけで生活出来る団体」かもしれないけど…それゆえに社長以外はドンドンメンバーが替わる、ということなのでしょう。そう考えると、今のメンバーでこの10年以上安定している東の横綱アルディッティはスゴイなぁ。

ツアリングで生きていける人達は、地元の演奏会は少ないのでしょうね。タカーチュも、地元での演奏会ってほぼないんじゃないかしら。なんであれ、弦楽四重奏団は流行の「サステイナビリティ」が極めて低い形態であるという認識は、若い人たちの間ではすっかり定着しちゃってますね。それが良いことかどうかは…わからんです。

by Yakupen (2024-02-02 14:04) 

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