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現代音楽大人気? [現代音楽]

朝から春の嵐が荒れ狂う新帝都、やくぺん先生のちんまり寝床だけがある湾岸縦長屋も強風に煽られてギシギシ音をたてておりまする。桜も一気にオシマイかな。

とはいえ、上野の杜はまだまだお花見やる気満々の新年度最初の月曜日の宵、賑々しくも開催中の「東京・春・音楽祭」、始まった頃の「オペラの森」という言葉は今はどこ
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本日は巨大な都市型音楽祭には不可欠な「現代音楽」イベントのハイライトたる、アンサンブル・アンタルコンテンポランの名曲選が文化小ホールで開催されましたです。

「1ヶ月以上の長い開催期間に、古い時代の音楽から現代新作までありとあらゆる課目を揃え、都市の特定地域のいろいろなヴェニュを用いて規模も様々なコンサートが繰り返される」という所謂「都市型音楽祭」というのは、常設インフラとしての設備と組織がある程度備わっていれば広告代理店型巨大イベントのやり方でもなんとかやれるジャンル。演劇祭やら地域型アート・フェスティバルに比べると、先端的演出のオペラでもやらない限り、政治的な面倒さやら多様性やらや差別やらへの配慮もそれほど神経質にならんでもいい時効案件ばかりの安パイ「古典音楽」でありますから、「音楽の街●●」とか「音楽による街興し」とかは行政や地域商工会議所さんにとっては言い出しやすいことは確かなんでしょう。演劇祭なんて口の立つディレクターがしゃしゃり出てくるし、美術祭はブツとしての作品管理が案外面倒。いちばん簡単なのは「映画祭」だというけど…ま、それはまた別の話。

何の話じゃ。もといもとい、んで、本日のフランスは華の都を代表する常設現代音楽専門アンサンブルの来日公演であります。この団体のツアーというのは、特定の作品演奏でどうしてもこの方々が必要だとか、バリバリの現大作曲家がプログラムディレクターやら芸術監督を務める音楽祭でのテーマ性を持ったレジデンシィだとか、そういう事例が多い筈なんだけど、今回の来日はたった2日間の上野文化会館小ホールでの公演のための招聘。正直、やくぺん先生ったら発表を聴いた瞬間に「ああ、エトヴェシュ小特集をやるという話だった統営からこっちにまわるのか」と思い込んでしまい、統営がクラングフォーラム・ヴィーンと知ってちょっとビックリしましたっけ。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2023-12-21

ディオティマQは当然のように統営で弾いてから上野、という東アジア桜の2大名所ハシゴをやってきてるわけで、なんかあったんかいな、と思うなと言われても困るぞ、って感があるけど…ま、それはそれ。とにもかくにもホールの裏では人々が夜桜見物阿鼻叫喚の上野の杜で、世界一の現代音楽専門家集団が二夜にわたる名曲選を披露してくれるわけでありまする。

この類いのアンサンブル、日本でも常設のものだけでも、東京には老舗のアンサンブル・ノマドやら東京シンフォニエッタ、アンサンブル東風、大阪ではいずみシンフォニエッタ、などなど、たぁくさんあるわけですけどぉ、アンサンブル・アンサンブルアンテルコンタンポランの最大の特徴は、創設時からエレクトリシャンがメンバーに加わっていることにある。今はシテ・ド・ラ・ムジークに本拠地を移転しているけど、最初はかのポンピドーセンター隣の浅い池の橋を渡った向こうのIRCAMビル地下に無数の配線のたくらせた電子音なんてやってたわけで、そんなに移動が簡単ではない現代テクノロジーと音楽芸術の融合が前提だった。

ところがどっこい、今回の名曲選では、この団体のそのような要素はすっぽりと抜けて、まるで「クラシック」のライヴアンサンブルのような形での来日となってます。ってか、懐かしの東京ディズニーランド裏の第一生命ホールをメイン会場のひとつにして開催された「ブーレーズ・フェスティバル」の時以来、「電子音楽も普通の楽器のひとつとして新たな音響を開いて行く」というこの団体の本来の目的に沿った規模での来日公演って、絶えてないんじゃないかしら。秋吉台とか武生とかでそういう形での招聘って、してるのかしら?

そんなわけで、本日の公演は「アンサンブル・ノマドのフランス版」みたな形での20世紀の古典作品総浚え、というショーケースだった。んで、そういう形が功を奏したのかなんだか知らんけど、なぁああんと驚くな、会場はほぼ満員でございましたです。

ヴェーベルンからカーターに至る「20世紀音楽の著名代作曲家に拠る評価が固まった作品」が並ぶコンサート、演奏そのものも例えばヴェーベルンの協奏曲第2楽章がそれこそカラヤンみたいなレガートでセリーと音色旋律がつるりと美しく響き、ロバート・クラフトやハンス・ロスバウトの時代が懐かしいなどとふてくされたことは言わないけど、「あああ、古典音楽じゃのぉ」と安心して聴いていられる。音楽祭の偉い人やら評論家やらがいっぱい座った客席も、安心して大喝采を叫べる、いかにもメイジャー音楽祭っぽい一晩であったとさ。

去る土曜日のシェーンベルク弦楽四重奏全曲演奏もそうだったけど、いよいよ「ゲンダイオンガク」がホントに「古典」になってきて、作品の淘汰が進んでいるなぁ、と実感する今日この頃。考えてみれば、もう21世紀も四半世紀が過ぎようとしているんじゃからのぉ。

さても、今晩の「フランス作品ショーケース」はどれくらい聴衆が入るのやら。

[追記]

おはようございます。昨晩の「フランス作品名曲選」ですけど、聴衆の数は流石に初日ようなほぼ満席には至らなかったものの、この類いの演奏会としては異例の数の聴衆が詰めかけておりましたです。

これまた意外にも、ミライユやらデュサパンやら、日本でも著名な評価の固まった作曲家の作品は「ああそうですか」って感じだったんだけど、後半のマレシュとロバン作品が面白かったですわ。流石にこの類いの編成の新作をもう半世紀近くも積み上げてきたわけですから、IRCAMバックヤードには収めきれないほどの膨大な初演した楽譜の山があるわけで、このような「今回のツアーの編成でやれる受けそうな曲はないかな」と本気になって探せばいくつも出てくるんだろうなぁ、とその奥深さに驚嘆させられた次第。

こういうアンサンブルって、いつなくなるか判らぬ演奏団体有志や企業の趣味で成されるのではなく、実質上の国立できちんと組織として維持され活動拠点も確保されてこそなんだわなぁ。初台の武満メモリアルがそういう場所になることを、一瞬、期待したんだけどねぇ…

[追記の追記]

桜も流石にそろそろオシマイの上野の杜で、田舎者やくぺん先生が今年参加する最後の「東京春音楽祭」公演の私的音楽協会編曲選を拝聴しながら、ノンビリとヨハン・シュトラウスⅡのワルツに響く謎のハルモニウムに耳を傾けてたあと、ヴェーベルン編曲のシェーンベルク室内交響曲の相当に無理がある編曲を拝聴していて、急に思い出しました。アンサンブル・アンタルコンタンポランの「名曲選」公演って、香港芸術節で聴いたことあるじゃないか、って。

確か、ピンチャー御大が指揮者として出始めだった頃、比較的この団体としてはフル編成。でも、エレクトリシャンは無しで、数年前にサントリーの夏祭りで《大地の歌》編曲版をやったときみたいな編成だった。んで、やったのが、シェーンベルクの室内交響曲第1番だったわけでした。
https://yakupen.blog.ss-blog.jp/2016-08-26
ともかく、前半終わったところで香港駅から空港特急に飛び乗って、深夜2時発だかの桃さんだかで成田に戻るという無茶な日程だったことばかり覚えているなぁ。

てなわけで、この団体、それなりに「通常の室内オーケストラ」としてのツアーってやってるようじゃのぉ。このとき、香港作曲家の作品とかやったか…忘れてもーた。いやはや。

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